Sheryl Crow @ JCBホール (東京) (Dec.11 & 12, '08)
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12/11, 12の東京公演 2 Days、観客の反応が大阪公演よりずっと良好で、とても良かったです。特に12日は、前回来日公演の福岡ほどではないとしてもそれに近い盛り上がりで、個人的にもこれほど拍手や歓声を送ったのはいつ以来だろうと思ってしまうくらいで、その場にいるのがとても楽しい、幸せな時間でした。会場が前回の武道館と比べてずっと小さいということもプラスに作用したと思いますが、近年(The Globe Sessions以降)の東京公演では会場のノリ、会場全体の一体感、そして内容的にも一番良かったのではないでしょうか。観客の反応の良さと、(日本以外も含めた)今年のツアー最終日ということからくる解放感、充実感もあってか、Sheryl は終始リラックスした様子で、その実力を遺憾なく発揮してくれたと思います。MCの場面でも、大阪では英語で喋ることを申し訳なさそうに少し恐縮しながら話してましたが、この2日間は普通に話してましたし、終始笑顔を浮かべて楽しそうに演奏してたことからも、観客の反応に満足していたことがわかりました。

11日、12日ともチケットはソールドアウトだったようで、会場には開演前から立ち見客も見られる状態でコンサートが行われました。Sheryl の服装は、11日は下が黒のパンツに上は大阪と同じ(オフィシャル・サイトに写真があります)。12日は一転して、白のパンツに白のノースリーブ(ジャケットなし)でした。私は11日はアリーナの16列目中央(前回の武道館2日目のようにSheryl の正面)、12日は2階(1F バルコニー)の中央よりやや右のブロックの4列目で見ました。11日はJonの位置より左はほとんど見えなかった(前のSheryl を挟むような位置に背の高い人が3人ほどいたため、前回のようなお見合い状態にはならず、、)のに対して12日は視界を遮るものがほぼなかったためバンドメンバー全員がよく見えたし、音響的にも12日の方がバランスが良く、バックボーカルや各楽器の音も聞き取りやすかったです。会場全体の盛り上がりも、2階から見ていても12日の方が良かったことはよくわかりました。

11日はアンコールでI Shall Believeが演奏されなかった以外は大阪とまったく同じセットリストで、会場の反応が良かった以外は内容的に特筆することはあまりありませんが、12日は途中で曲順の入れ替えがあって、Steve McQueenが5曲目に繰り上がって、Leaving Las Vegasからの3曲がその後に入りました。個人的にはこうした方がA Changeからの流れも、Motivationにつながる流れも良くなったと思います。また12日はI Shall Believeも復活しました。ただ、曲順が変わったときにはこれまで演奏していない曲(たとえばThe First Cut Is the Deepest)とか、Home for Christmasの収録曲をやるかな、と期待してしまったのでそうならなかったのは少し残念ですが(日本ではThe First Cutはもう聞くことが出来ないかもしれない、、)、新旧の曲がバランスよく配置され、聞かせどころを心得た構成は満足できるものでした。

12日はほとんどの曲で観客の反応が良く、Sheryl の調子も最高でどの曲も良かったのだけど、個人的に特に印象深かったのはCan't Cry AnymoreとRun, Baby, Runです。Can't Cry Anymoreでは、曲の途中でバンドの演奏が中断してSheryl が声を張り上げて歌うところで、11日はMichael Jacksonのバックボーカルをしていたことを引き合いに出してMichaelのかけ声を真似するというシーンがあったのですが、12日には今回のツアーで初めて会場からかけ声が返されました。これに気を良くしたSheryl が観客の反応を期待してもう一度叫び声を出すとまた観客からの反応が返ってきたので、Sheryl が満足したように「トーキョ〜」とちょっといたずらっぽく観客に話しかけるシーンは、この日の観客の反応が良かったことを示す、最も印象深かった瞬間となりました。Run, Baby, Runは曲紹介の喋り方からもSheryl の気持ちがこれまで以上にノッていることがわかったのですが、その歌声は他の日よりもさらに丁寧で感情が込められていて、感動しました。If It Makes You HappyやEveryday Is A Winding Roadといったおなじみの曲はもちろん、Motivation, Gasoline, Out of Our Headsなどの新作からの曲でも、会場からの反応は今回のツアーで最も良く、多くの人が一緒に歌ったりかけ声を出していたようです。大阪ではほとんど聞かれなかったWinding Roadでの"Hi", "Lo"のかけ声もちゃんと出ていたし、I Can See Clearly NowでもSheryl から促されたときに他の日よりコーラス部を歌っていた人が多かったです。アンコールも、12日は他の日とちょっと違ってました。復活した I Shall Believeの後に演奏されたAll I Wanna Doでは、Sheryl を始めバンドメンバー全員がクリスマス仕様の被り物をしながら演奏したのです。Sheryl はバニーの耳、他のメンバーのほとんどはトナカイの角を被ってましたが(オフィシャル・サイトにやはり写真があります)、Tim, WallyとJonはちょっと違ってて、Timは覆面付きのサンタの帽子(相当恥ずかしかったのか、それとも演奏しづらかったのか、この曲が終わったところで外してスタッフに渡してた、、)、Wallyは頭全体を覆うようなトナカイの被り物、Jonはトナカイの角が生えたサンタの帽子を被ってました。。。(Tim以外は)みんなほんとに楽しそうに演奏してました。この曲の演奏後、Sheryl はこの日が1年近く続いたツアーの最終日であることに触れた上で、バンドメンバーだけでなくツアークルーもステージに呼んだ上で紹介し、またアリーナ最後部にいたPA(やっぱり被り物してた)も紹介した上で、全員に感謝の意を述べてました。そんな状況で演奏された最後のHigher Groundでは会場全体の一体感が感じられ、最高の状態でコンサートは幕を閉じました。

今回のツアー、Sheryl が音楽に回帰したことを強く印象づけてくれるとてもいいツアーでしたが、これまでよりもSheryl はシンガーであることを意識していたように思います。多くの曲でギターを弾きながら歌ってはいるのだけど、これまでよりはそのような場面は少なく、楽器を演奏しない曲ではエンターテイナー的な動きを多くしていた前回の来日公演ともまた違って、歌に専念している曲、また途中まで/途中からは歌に徹しているという曲が多かったと思います。'05年のWildflowerツアーでのドレスにハイヒールという衣装でもほとんどの曲でギターまたはベースを弾きながら演奏していたのに、今回のような動きやすい服装(※今回もハイヒール履いてましたけど)で逆に楽器をあまり弾かないというのは意外にすら思えます。今回のバンドが大所帯で音数的に不足することはない、バックアップシンガーがいるので歌で対比をつけやすい、などいくつか理由は考えられますが、いいショーをするために必ずしも自分が演奏する必要はないとSheryl が考えるようになったのではないかと個人的には思っています。Sheryl はプロデューサー的な視点を持っているため、ステージの上のすべてが(ある程度のゆるさを残した上で)コントロールされた状態に保つのにこれまでこだわりを持っていたと思うのだけど、この数年間で様々なことを経験したためか人に任せられることは任せればいいとある意味開き直れるようになり、また逆にそうすることでさらに表現の幅を広げられるとも思ったのではないかと思います。前回の来日公演くらいから顕著ですが、年を経るごとに歌唱力が確実に向上しているため、歌を前面に押し出しても成立するようになったというのも大きいでしょう。これまで個人的にはSheryl をソングライター > プロデューサー = パフォーマー > シンガーの順で評価して来ましたが、今回のツアーでSheryl のシンガーとしての評価は大きく上がりました。今回のツアーが終わったばかりですが、次に見るときにSheryl がどこまで大きくなっているか、楽しみになりました。

12/11@JCBホール
1. God Bless This Mess
2. Shine over Babylon
3. Love Is Free
4. A Change
5. Leaving Las Vegas
6. Strong Enough
7. Can't Cry Anymore ~ I Can See Clearly Now
8. Steve McQueen
9. Motivation
10. My Favorite Mistake
11. Gasoline
12. Run, Baby, Run
13. Detours
14. If It Makes You Happy
15. Out of Our Heads
16. Soak up the Sun
17. Everyday Is A Winding Road
(Encore)
18. All I Wanna Do
19. Higher Ground
演奏時間:1時間40分強(本編だけだと1時間30分弱)

12/12@JCBホール
1. God Bless This Mess
2. Shine over Babylon
3. Love Is Free
4. A Change
5. Steve McQueen
6. Leaving Las Vegas
7. Strong Enough
8. Can't Cry Anymore ~ I Can See Clearly Now
9. Motivation
10. My Favorite Mistake
11. Gasoline
12. Run, Baby, Run
13. Detours
14. If It Makes You Happy
15. Out of Our Heads
16. Soak up the Sun
17. Everyday Is A Winding Road
(Encore)
18. I Shall Believe
19. All I Wanna Do
20. Higher Ground
演奏時間:1時間50分強(本編だけだと1時間30分強)

最後に会場について。この会場は「ミニ武道館」と言えるようなレイアウトで、アリーナの周囲を取り囲むように(アリーナに重ならないような配置で)3フロアのバルコニー席が円弧状に設けられています。アリーナは横長で縦方向は短く、2階から4階のバルコニー席は6、7列程度しかないためステージからの距離は一番後ろでもそれほど遠くなかったです(会場のサイトの説明文によると25m)。でも、武道館の悪いところまで受け継いでいて、UDOで特別販売されていたステージサイド席というのは武道館のようにステージの真横に位置するのでかなり見にくいだろうし、そして椅子はとてもチープな作りでした(※アリーナだけそうなのかと思っていたら常設の2階席でも同じでした)。座席番号は人が座っていたら確認不可能だし、アリーナは座席の前後間隔が狭いこともあって中央のブロックは一度中に入ったら外に出たくなくなるようなセッティングだし(外に出てしまうと戻るのがきわめて大変)、コンサートを最初から想定して建設された現代のホールとは思えません。この規模(2000〜3000人収容)の会場は(旧)渋谷公会堂とか各地の厚生年金会館や県民会館とか古いものばかりなので、そういう意味では確かに貴重な存在なのだけど、古くてもとても見やすく聞きやすく居心地の良いイギリスのライブハウス(Shepherds Bush EmpireとかHammersmith Apolloとか)や音楽専用設計のホール(The Stablesとか)を少しは見習って欲しいものです。


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