Talking Heads - Stop Making Sense ('00/4/28@渋谷シネクイント)

Scene from the Movie

Why "Stop Making Sense"?
Why a movie? Why tour?
Why do the musicians come out gradually?
What will the band do next?
Where do the odd movements come from?
Are live concerts better or worse than records?
Why no "special effects" in the movie?
Why a big suit?
Why was a digital system used for the sound?
Why re-release the record?


待望のリバイバル公開の初日に見てきました。

'84に公開され、コンサートフィルムの歴史的傑作との評価を受けたこの映画はTalking Headsにとって最後のツアーから'83の12月にハリウッドで行われたライブをまとめたもので、David Byrne(バーンと読む)のこだわりが全編から感じられる映像となっている。この後Talking Headsはシンプルな演奏に立ち返ったLittle Creaturesを発表、ライブ活動を停止するが、これはDavid Byrneがこの作品でライブにおいて考えられる表現はやり尽くしたと感じたことが影響したとされる。監督はこの映画で一躍名前を知られるようになり、その後「羊たちの沈黙」でアカデミー賞を受賞したJonathan Demme。

私はオリジナル公開時はTalking Headsの名前すら知らなかったが、その後ビデオ(レーザーディスク)が発売された際に様々な雑誌のレビューでその年のベストに選ばれているのを読んで名前を知った。翌年出たアルバム、Little Creaturesで彼らの音に初めて接した私はたちまち彼らに夢中になったが、当時ビデオデッキもなかったのでビデオを買うことなど考えもつかなかった。また'89くらいにレイトショーで再上映されたが、上映が終わる前日くらいに知った為にやはり見に行くことが出来なかった(しかたないのでその後レンタルで借りてビデオで見た、プログラムも中古を見つけて買った)。それ以来映画館で見るのを切望するも、以降東京圏では映画館での上映はされていなかった。それが去年アメリカで大々的に再上映され、さらに1年を経て今回めでたく再上映されることとなった。

公開初日ということでもしかしたら'94だかに自身のソロツアーがビデオ化された時のようにDavid Byrneが舞台挨拶(そういえばあれも同じ劇場だった気がする)に来ないかなと期待していたが、さすがにそれはなし。しかし劇場ロビーはプログラムなどを買い求める列(最初チケットを買う列かと思って前売りを買っていた私は並ばなかった)が出来ていて、熱気に包まれていた。私の後ろの列には映画が始まった瞬間から大きな歓声や拍手、足踏みをする外人さん?のカップル?がいてちょっとやり過ぎなような気はしたけれど、アメリカで公開された時はこんな感じだったのかもしれない。私も後半はじっとしてられなくて(控えめだけど)手拍子、拍手をしてました。

ここからレビューです。

手書きのクレジットの後、David Byrneが一人で何もないステージにラジカセを抱えて出てきてPsycho Killerが演奏され、その後徐々にメンバーが登場して行くという構成も画期的だが、この映画が他のコンサートフィルムと決定的に異なるのは観客をほとんど写さない(最後の方になって数秒写るが、それまでは影になった頭しか確認できない)ということだ。ひたすらステージ上のバンドを様々な角度からライティングも工夫しながらカメラが追い続け、視聴者にコンサートを生で見ているような錯角を起こさせる。観客席からは見られないようなアングルからのショットもふんだんにあるため、実際のコンサート以上にコンサートらしい映画ということもできる。

David Byrneを始めバンドメンバー(Tina Weymouthも結構凄いんです)は終始観客に「見せる」ことを意識した動きをしていることも特徴で、特にDavid Byrneの動きは凄まじい。一人で出てきて演奏するPsycho Killerから彼独自の一見奇妙な、しかも1曲毎に全く違う動きをしている。立っているバンドメンバー全員で(同じ場所で)ジョギングしたり、ふいによろよろとよろけてみたり、体をくゆらせてみたり、びっくりして両腕を上に挙げてみたり、「独裁者」でのチャップリンよろしくライトスタンドで遊んでみたり、自分で自分を殴っては起き上がる動作をしてみたりする。特に圧巻はこの映画の象徴ともいうべき、アルバムのジャケットにもなっただぶだぶなスーツを着て踊るシーンで、このシーンになると(映画館の)観客からも大きな歓声と拍手が沸き起こる。

さらにこの映画はカメラの写し方や舞台装置、さらに裏方さんにまで配慮は行き届いている。照明を暗転して下からのスポットライトだけでメンバーをアップで写したかと思えば(このシーンは「羊たちの沈黙」でJodie Fosterが殺人鬼Billを暗闇の中で探すシーンに通じていると思う)、一転ステージが明るくなってメンバーの姿をステージ後ろのスクリーンに投影してみせたりする。スクリーン上にそれぞれに関連のないと思われる単語を投影してみたり、人の体のアップを写してみたりするシーンもある。フラッシュライトでメンバーを写してストップモーション的な効果をあげている演出もある(ポケモンで気分悪くなった人は注意(^^;;)。舞台装置を担当しているスタッフは皆黒子の衣装であるところも、最初のうちは何も感じないがステージが進むに連れてその必然性を理解出来るようになる。

総勢9名による演奏は隙がなく、Burning Down the HouseやOnce in A Lifetimeなどアフリカンリズムを大きく取り入れた曲で発散されるエネルギー量は凄まじい。演奏面だけとっても、David ByrneだけによるアコースティックなPsycho Killer, バンドの一体感を感じさせるBurning Down the House, TinaとChrisによるTom Tom Clubによる演奏、緊張感を漂わせる演奏のGirlfriend Is Better、そしてアルバムと違いちょっとブルージーなイントロで入り、一気にファンキーな演奏になる最後のCrosseyed and Painlessなど見せ場は数多く、最も才気走っていた頃のTalking Headsの姿が記録された貴重な作品ということができる。

初めて見る人にも、音楽の好みはともかくとして、その映像表現と演奏の密度で大きな衝撃を与えてくれる作品であると思う。これが気に入った人にはDavid Byrneが'92〜'93に行ったソロツアーをビデオ化したBetween the Teeth(前出のもの)もお薦めします。Stop Making Sense同様、David Byrneの映像への執念を感じさせる作品です。このときのソロツアー自体もTalking Heads時代の曲を7曲程フィーチャーした素晴らしいものでした。

Stop Making Senseは昨年アメリカで再上映を記念してデジタルリマスターでVHS(通常版とワイドスクリーン版がある)、DVD(リージョンフリー、私は現状見られないのに買った、、、)、CD(オリジナルに7曲追加して映画と同じ曲数になった)が再発されています。映画館では新しいプログラム、Tシャツ(数種類あるけど、5040円!とバカ高い)、今回一緒に(日本でだけ)再発されたCD(True Stories, Naked, Sand in the Vaseline)などが売られていました。

東京での上映の後、名古屋、大阪、京都、札幌、福岡でも上映される予定です。

Leaflet

こちらでメンバーのインタビューが読めます。
オフィシャルサイトはこちら

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