Jamiroquai ('02/1/6@東京ドーム)
日本公演初日@東京ドーム見てきました。
前回のツアーが期待してなかったわりに以前と比べて格段の成長を感じさせる良い出来だっただけに、新作の完成度が前作より断然高い今回はどんなステージを見せてくれるか、期待して見にいきました。
今回の私の席はアリーナではあるものの、左のスクリーンのさらにちょっと左側、前から2つ目のブロックの中ほどと、普通のホールなら左端かという位置で音響的にもバランスが悪く、前回よりだいぶ悪かったです。なんで、それが演奏の印象に影響を与えてる可能性はあります。観客の入りはいまいちという感じで、アリーナはともかくスタンドはごそっと客のいないブロックがあって(2階席とか人を入れてなかったらしい)、チケット割り振りの不手際か、売れ行きから調整したのかよくわかりませんが、前回よりだいぶ少ない印象でした。それともアーティスト側の意向か?2日目のドーム公演が武道館に振り替えになったのもそれが影響してるのかも?
今回はちょっと短かめのステージでした:
Twenty Zero One
Cosmic Girl
Main Vein
Little L
Love Foolosophy
Canned Heat
Bad Girls
(桃太郎)
Space Cowboy
Corner of the Earth
Black Crow
You Give Me Something
Deeper Underground
(Encore)
Alright
今回のバンドはギター、ベース、キーボードがToby Smithともう一人、ドラムスも2人と女性コーラスが3人という編成。今回のポイントはギタリストが新しくなったことと女性コーラスが加わったことで、それが新鮮な印象を与えてくれた曲も多かったですが、必ずしも上手くいっている曲ばかりではありませんでした。
まず良かった例。最初のTwenty Zero Oneではいままでほとんど印象に残ったことのないギターのソロが聞かれたのがまず新鮮で、次のCosmic GirlとかLittle L(この曲はとてもライブ向きだと思う)とかではギターのカッティングがとても心地良く、これまでなかった要素がJamiroquaiに加わった、という感じで良かったです。女性コーラスはアルバムでも印象的なMain VeinとかLove Foolosophyなど主に前半の曲ではJayの歌をしっかり盛りたてててました。でも良かったのは前半、Canned Heatあたりまででした。
Donna Summerの大ヒット曲であるBad Girlsあたりから、お得意のくねくねしたダンスやこれまであまり見られなかったパントマイム的な動き(これ相当研究してるに違いない)を交えて動き回っていたJay Kayの動きが止まり、観客もあまりこの曲を知らなかったと見えて、一気に客席の反応がトーンダウンしました(イギリスではきっと違うのでしょうが)。Jayは力強い歌声を聞かせてくれていたと思いますが、ギターの音や女性コーラスにJayの声が埋もれるのもしばしばでバンドの演奏とはちょっとミスマッチだったような気がします。この曲はもっと粘っこい声の人の方が合うような(全盛時のGeorge Michaelとか良さそう)。この後ドラマーのDerekによるパーカッションソロからSpace Cowboyに突入!と思いきや桃太郎の歌をDerekが日本語で歌うというお遊びがつきましたが、Derekの演奏が良かっただけにこれもちょっといけなかったように思います。パーカッションの音色はSpace Cowboyの曲調とはちょっと合ってなかった気も正直しますが、そのまま演奏に入って欲しかったというのが本音です。で、Space Cowboy含めてわりとスローな曲が3曲続き、それまでとの曲調の違いにどう反応して良いかわからない人達が周囲には結構いたようです。
私自身はCorner of the EarthとBlack Crowの両曲はJay Kayのとてもしっかりした歌(ただ要所以外は声量抑え目、というか女性コーラス隊の音量が必要以上に大きかったかも)には満足しましたが、Space Cowboyの演奏はなんかバラバラな感じを受けました。Jay Kayの歌は満足できる出来だったと思いますが、ツインドラム(というかパーカッション+ドラムス)のバランスが悪く、またギターがこれまでより前面に出て来たためにJamiroquaiサウンドを特徴付けるToby Smithのキーボードが埋もれてしまい、バンドの作る音がJay Kayの歌とミスマッチを起こしてるように感じました。さらに音響もとても悪くて(ドーム特有の多重コーラスがガンガン発生してました)聞こえるのは低音部ばかり(そのくせベースはほとんど聞こえなかった)というのもマイナス印象を増した大きな要素だったと思いますが、個人的に一番大きい理由は新作の音が前作とは大きく方向性が違うことのように感じました。前作はディスコ一辺倒のちょっと安直な、いかにもスタジアム向きの作品でしたが、それに伴うツアーはある意味統一感があり、勢いで突っ走って盛り上がったものとなりました。でも今回のアルバムは前作の延長上というよりはむしろTravelling Without Movingをベースに発展させたようなサウンドで、よく考えて造られたことを感じさせる、曲調に変化の感じられるアルバムです。特にCorner of the EarthとBlack Crowは、Deeper Undergroundのような派手な曲とは違ってアコースティックセットの方が似合うような雰囲気を持つ曲だけに、ドームのような大きな箱を埋めるような数の雑多な観客を前に演奏するのは不向きな気すらします。コンサートの前半は元気に溢れていたJay Kayの動きが後半少なくなったのも観客の反応に影響したと考えられますが、それ以前にアルバムの志向する音がドームクラスの会場と合ってなかったのがいまいち盛り上がりに欠けた最大の理由だと感じました。
本編最後はDeeper Undergroundでむりやり盛り上げてましたが、だいぶ待たせて始まったアンコールで1曲(これは前回も同じだけど)やってJay Kayがすんなり退場、その後なぞのBGMがかかったもののそのまま終わってしまってちょっとがっかりでした(Virtual Insanityもやらなかったし)。アンコール含めてもわずか14曲、時間にすると1時間30分強ありましたが、ちょっと不完全燃焼に終わった感の強いコンサートでした。
Jay Kayの歌に関しては、激しく動いたあとでもけっして苦しそうな表情をすることもなくしっかりとした歌唱を聞かせてくれ、シンガーとして一段と魅力的になったことを感じさせてくれましたが、コンサートとしてはJamiroquaiが現在過渡期にあることを伺わせるイマイチな内容となってしまったのは残念でした。
売ることを宿命付けられているために自らに課した制約を取り払って、ボーナストラックのDo It Like We Used to Doのような、自分達が本当にやりたいと思うサウンドを突き詰めたアルバムを作って、次のツアーはできればライブハウスクラスでやって欲しいと感じさせられたコンサートでした。
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