Fairground Attractionの紹介記事
”あくまでアコースティックで暖かく、実に人間的。”


 フェアーグラウンド・アトラクション。移動遊園地の見世物とでもいうのか、移動遊園地というのは、日本でいえば縁日と遊園地が一緒になったのが、サーカスみたいにあっちこっち動き回るんだそうだ。しかし、キラキラした、楽しいばっかりの光景を思い浮かべてはいけない。ブラッドベリの小説にでてくるような遊園地、そこまでいかなくても、閉園間近、落暮の遊園地を思い浮かべて欲しい。

 ここまで読んで、あー、すごくよさそう。と第六感、ビビッときたあなた。正しい。実に正しい。いいんだわ、これが。デビュー曲の”パ−フェクト”がいきなり全英チャートの1位、1ヶ月以上トップ10にランクするというのもうなずける。

 このグループは、紅一点、ヴォーカルとギター担当のエディ・リーダーを中心に、ギター・ベースの役割のギタロン、それにドラムスという編成(注:ちょっと正確な描写ではありません。。)。あくまでアコースティックで暖かく、かつ哀愁味を帯び心休まるサウンドだ。そしてカントリーとジャズのエッセンスがなんとも新鮮。また、このギタロンというやつが、類い稀なあったかくてまあるい音を出し、あたかもグループのサウンドを象徴しているかのようなんである。アリソン・モイエ、初期のユーリズミックスなどのバック・ヴォーカルをつとめた経歴をもつエディのヴォーカルも、素直な発声が心地よく、とても人間的な表情をもつ。

 イギリスでは5月に発売されたデビュー・アルバム「ファースト・キッス」、評判は上々である。なんと3週間と2日で録音を完了したそうだ。もとは本業のかたわら、街頭で演奏していた彼らだから、レコーディングもそのノリで、スムースにこなしたのだろう。音楽を仕事にしようとは思っていなかったというが、その余裕あってこそのこの質、か?

「最近のヒップ・ホップを聴いていると、自分が人間じゃないような気がする」という言葉、とても印象的である。

筆者:河地依子

from Music Life '88/9号 ”今月の新人 The Small Faces”より

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