どんな音楽をやっても褪せない独自の音
Fairground Attraction Live in Japan
   @ 渋谷クラブクアトロ('89年7月3日)


 この前日、チッタ川崎にも足を運んでいた私は、開場後も当日券を求めて列をなす人達を見て、『こりゃまたスゴイ人気だなぁ』とびっくりしてしまった。 確かに、今回の初来日公演はどの会場もチケットはソールド・アウトだと聞いてはいたけれど、まさかこれほどまでにすごいとは…。嬉しいやら、驚くやら。当然のごとく、この日のクアトロも満員御礼だった。

 さて、場内のライトが落とされ、まず耳に飛び込んできたのはアコーディオンの音色。幕開けからすでにフフフッとなってしまった。”さあ、フェアーグラウンド・アトラクションの始まり始まり〜”と、アコーディオンが語りかけているようで。そしてメンバーがステージ上に現れ、オープニングにふさわしく”ハレルヤ”が演奏された。 ギターのマーク、ギタロンのサイモン、ドラムのロイ、ヴォーカルのエディという4人のメンバーに加え、アコーディオンを中心にマンドリンやピアノもこなすグラハムとビブラフォンのロジャーという6人編成だが、やはり紅一点のエディの存在感は際立っている。

 まず彼女が第一声を発した時から、あの澄み切ったみずみずしい歌声に観客のほとんどがハッとし、そして我に返ってしみじみとしていた様子を場内の空気が伝えてくれた。そして彼女への賛辞の拍手はステージが進むにつれて大きくなっていったのだ。 エディは気持ちよさそうに音に身を委ね、軽やかにステップをふむ。スカートを翻し、時にはちょっとコミカルに、また時には力強い足どりで、ステージ上を所狭しとクルクル回る。

 デビュー・アルバム『ファースト・キッス』からのお馴染みのナンバーに加え、初めて聴く新曲もかなりたくさん披露された。 中盤を大いに盛り上げた"Home to Heartache"(この曲、とってもよかった!次のアルバムに必ず入れて欲しいなぁ)や"Fear is the Enemy of Love"ではマークが俄然張り切って『イチ、ニ、サン、シ!』と日本語でカウントをとってギターを弾きまくるといったエネルギッシュな一面を見ることも出来た。

 ドラムのロイが途中コンガを叩いたり、エディ自身もマンドリンを弾いたりとメンバーそれぞれが曲に合わせて様々な楽器をプレイしてみせてくれたが、それだけ曲にも様々なタイプがあって、スウィング、カントリー、ロック (E・プレスリーのカヴァーまでやったのだ)、ポップス、ケイジャン、ズンタッタ、ズンダッタとリズムをとりたくなるようなワルツ…そのどれもが変に浮かないところがこのバンドの個性だろう。一貫した彼らの色が感じられるのだ。私もその色に染まってみたくて、”パーフェクト”をおもいっきり歌って、最高の気分を味わったステキな一夜だった。

 

評者: 赤尾美香

from ミュージック・ライフ '89/9号