Peacetime
(アルバム, '07)
Rough Trade, RTRADCD233(英盤)
ビクターエンタテインメント, VICP63690(日本盤)
Compass, 7 4449 2(米盤)


曲目Cover of Peacetime
1. Baron's Heir + Sadenia's Air
2. Muddy Water
3. Mary and the Soldier
4. Aye Waukin-O
5. Prisons
6. The Shepherd's Song
7. Ye Banks and Braes O' Bonnie Doon
8. Should I Pray?
9. The Afton
10. Leezie Lindsay
11. Safe As Houses
12. Galileo (Someone Like You)
13. Peacetime
*上記トラックリストは英盤。日本盤、アメリカ盤にはそれぞれボーナストラックが1曲収録。

オフィシャル・サイトで試聴が出来ます。

クレジット
(ソングライティング)
 1. Traditional/John McCusker (Sadenia's Air)
 2, 13, 14 (米盤). Boo Hewerdine
 3, 4, 7. Traditional
 5, 8. John Douglas
 9. Johnny Dillon
 6. Traditional/Eddi Reader & John Douglas (lyrics)
 10. Traditional/Robert Burns (chorus)/Eddi Reader & Boo Hewerdine (verses)
 11, 14 (国内盤) Eddi Reader/Boo Hewerdine
 12. Declan O'Rourke
(プロデュース)
 John McCusker

解説
約3年半振りとなるソロ8作目。’06年12月にまずオフィシャル・サイトとiTunes Store (UK) で先行発売され、年が明けて1月に日本、イギリスで、2月にアメリカで発売された。イギリス盤に対して日本盤、アメリカ盤ではそれぞれボーナストラックが1曲(異なる曲、後述)収録されている。半分弱が前作同様のトラディショナルナンバー(うち3曲はRobert Burns絡み)、残りがオリジナルまたはカバーで占められている。今回、前作に収録されていたWild Mountainsideの作者であるJohn Douglasの参加が増えており、その分Boo Hewerdineの参加がやや減っている。John DouglasがBoo同様に基本的にギターを担当するというのもあるだろうが、ジャケット写真を始めとしてブックレットに使われている写真にJohn DouglasとEddiが撮りためたものが使われていることも考えると、Eddiの生活のベースが以前と変わったことも影響しているように思える。レコーディングには前作同様のメンバー(Roy Doddsも参加してます)のほか、ツアーにも参加していたAndy Cutting, Michael McGoldrickを始めとしてJohn McCusker絡みと思われるフォーク/トラッド系のミュージシャンが多く参加している。また、演奏には参加していないようだが、レコーディングスタッフとして前回の来日公演でベースを担当していたAndy Sewardが参加している。さらにEddiの子供や、妹のRichael母娘が参加している曲もある。ブックレットには前作同様にEddiによる各曲の紹介やポエムがつけられている。

全体的な印象としては、これまでのアルバムと比べてEddiの歌唱は穏やかで、アップテンポなナンバーはほとんどない。きれいなメロディに乗ってEddiが清らかな歌声を聴かせる冒頭の2曲とBooらしさに溢れている13といったところは一聴して耳に残るが、トラッドナンバーの3、4あたりからEddiの歌声と曲の雰囲気がだいぶ変わる。ストリングスやフルートの音色で演奏そのものは牧歌的なものが多いのだが、中盤の曲をどう思うかで全体の印象が左右されるだろう。5、7といったところはライブでは煌めくような演奏になるのだが、アルバム中では歌も演奏も控えめになっているし、その他の曲でもやはり穏やかな歌唱の曲が多かったSimple Soulと比べてもEddiは意図的に抑揚を抑えて歌っているように思える。8や11で聞ける歌声はこれまでのEddiに比較的近いが、それでもやはり表現はこれまでより穏やかだし、ゆったりとあまり抑揚をつけずに歌われる6や9といったところには、もしかすると気が滅入るという人もいるかもしれない。だが、こういった中盤の曲は繰り返し聞くことで印象がだいぶ変わってくる。6、9、10といったところは聞き込むにつれてEddiがとても丁寧に歌っていることがわかるし、これまでのアルバムに1曲は収録されていたやや実験的な曲(Simple Soul収録のEdenとか)のようなアプローチを好んで取っているのかもしれないと思えてくる。また8や11にしても、Kiteflyer's HillやDear Johnのような比較的わかりやすい歌い方ではないものの、聞くほどに味わいが増してくるような、何とも言えない魅力がある。ライブで人前で歌うときにはまた違った姿を見せてくれるEddiだが、このアルバムで聞かせてくれる表現が、実はいまのEddiの素の姿により近いのかもしれない。前作とは違った意味でこれまでとは一線を画するアルバムだが、このアルバムの中盤の曲を楽しめるようになると、これまで以上にEddiを魅力的に感じることが出来るだろう。

日本盤およびアメリカ盤ではいずれもボーナストラックが1曲収録されているが、その扱いはいずれも感心できない。オリジナルのイギリス盤ではPeacetimeのあとにシークレットトラックがあるのだけど、その後にボーナストラックである"Ontario"を収録したアメリカ盤に対し、日本盤ではボーナストラックの"Tinderheart"の後にシークレットトラックを「15曲目」として持ってきている。並びとしては一見日本盤の方がいいようにも思えるが、本来の意図を尊重するなら、アメリカ盤のような順番になって然るべしだと思う。だが、アメリカ盤でも「14曲目」としてシークレットトラックを収録し、曲名を裏ジャケットに書いてしまっているので、やはり本来の意図に反した扱いになってしまっている(※イギリス盤およびiTunes Storeではあくまで「13曲」収録です)。ボーナストラックを収録(&収録していることを宣伝に利用)することを優先し、アルバムとしての形態を崩されてしまっている(というようなことはEddi自身もオフィシャル・ゲストブックで書いていた)のが非常に残念(こういうのを見るとPrinceがLovesexyをああいう風にした気持ちがわかる気がする)。

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