Eddi Reader: "Eddi Reader"
”発作と向き合った微笑み”


 エディ・リーダーのソロ第2作(注:この記事ではタイトルは”ハッシュ”と書かれている)はRCAからWEAに移籍してのリリース。前作がティム・バックリィも唄っていた”ドルフィンズ”を取り上げたり、リヴァティ・ホーセズ(注:”リバティ”です、念のため)からなるバック・バンド、パトロン・セイント・オブ・インパーフェクションによる重厚なトラッドを聴かせていたのに比べれば、今回はk.d.ラングのプロデューサー・チームを迎え、行間を読む手間にわずらわされない、シンプルかつタイトな音づくりになっている。 そしてなにより今作がすっきりと晴れやかに感じられるのは、M・E・ネヴィンの参加。あのフェアーグラウンド・アトラクションの再現なのである。突然の成功がもたらした悲劇が両者の別れを生んでしまったのだが、ここにきてのコラボレート、『将来的には気の合うミュージシャンたちと気の向いたときにお庭でジャムれるのが夢』と語っていた彼女ならではの、これは嬉しい合体と受け取っていいのだろう。

しかし実際はそう上手くはいってなかったみたいで、次号掲載予定の彼女のインタビューに立ち会った際、過去に触れる質問に対して、彼女はときどき発作のような口ごもりをみせていた。なんでも、まだセラピーに通ってるそうなんである。うーん、それで『やっといい場所にたどり着いた』と唄うか。年を取るにつれ自分が平凡だとわかることが、何で責められようかと思ってる私にとって、彼女の道程の辛さと精一杯の肯定には、少なからず応援したい気になるのだ。


評者: 宮嵜広司

from rockin' on '94/8号

 

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