Boo Hewerdine, Gary Clark & Ricky Ross @ 吉祥寺スターパインズカフェ (May 19 〜 21, '02)
Boo Hewerdine, Gary Clark(元Danny Wilson) & Ricky Ross(Deacon Blue)の来日公演を3日間とも見ました。イギリスではBooとGary Clarkに元SqueezeのChris Diffordを加えて同様の形でミニツアーが行なわれたものの、今回の日程にはChris Diffordの都合があわなかったため、Gary Clarkともともと親交のあるRicky Rossが加えられての日本公演となりました。
今回はBooがClive Gregsonとずっと二人で演奏してた'99の来日公演とは違い、まず最初の二人がそれぞれのセットを行い、セット交代時には2人による共演、その後20分弱の休憩が入り、最後の一人が自分のセットをやった後に3人による共演が行われるという形で、演奏順は初日がGary Clark → Ricky Ross → Boo Hewerdine、2日目がRicky Ross → Boo Hewerdine → Gary Clark、そして最終日がBoo Hewerdine → Gary Clark → Ricky Rossと、ローテーションしてました。登場順こそ毎日違うもののそれぞれが座る場所は3日間とも同じで、右からBoo Hewerdine, Gary Clark, Ricky Rossという席順でした。
私は19, 20日のチケットは3月のEddiの来日公演会場(東京初日)で買っておいたこともあって、整理番号はそれぞれ4番、2番とめったにない番号。で、より前の番号の人達が開場時にはいなかったために両日とも1番で会場入りしたので、席は選り取りみどりだったのだけど初日は最前列中央のテーブルの左側(Gary Clarkの目の前)、2日目はあえて最前列で中央より2つ右(Boo Hewerdineの真正面)に座りました。最終日は行けるかどうか分からなかったのでチケットを買っていなかったのですが、2日目のBoo Hewerdineのステージを見た直後に買ってしまいました(^^;;。で整理番号は13番だったけど、あえて開場後にやってきて、ちょっと後ろ(と言っても2日目の真後ろ)に座って見ました。
初めて生で見るGary ClarkはDanny Wilsonの頃とは違ってかなり太めで、しかもスキンヘッドで、見た瞬間とっても驚きました。最初のうちは(初日の)始まる直前に出てきた似た体型のスタッフかと思ってたのですが、ギターを持って歌い始めたところでやっぱり本人なんだとわかって、しばしその現役感の無い姿に考え込んでしまいました(でも帰ってからKing Lのアルバムのブックレット見ると6年前とかにはもうこんな感じだったみたい)。で最初のうちは声色もちょっと変わったかな、とか思ってましたが、ハイトーンで声を伸ばしたときとか昔と遜色のない歌声で、曲が進むにつれて声もよく出て、声を発する瞬間とか声量を保ちつつもかすれることなくきれいに声が伸びていくとことか、アコースティックでの演奏によく似合う歌声だと思いました。
初日は持ってきたドラムマシーンが壊れたとかで一人での完全弾き語りスタイルで、曲によっては静かに爪弾いたかと思えば次の瞬間とても力強い演奏を聞かせてくれたりとメリハリがあり、演奏に合わせて歌声も変化に富んでいてじっくりと聞かせてくれる良い演奏でした。私はつばが飛んでくるかという位置にいましたが、本人の表情も様々に変化して、体全体を使って表現しているという感じでした。
二日目以降は日本で買った新しいドラムマシーンを曲によっては使いつつ、曲によってはやはりギターによる弾き語り、さらにピアノを弾きながらの歌も聞かせてくれました。Ricky Rossのようにはうまく弾けないけど、なんて本人は言ってましたがじゅうぶん様になった演奏で、Garyの声はピアノの音色ともよく合ってました(Ricky Rossとは対照的にマイクから顔を離して歌うのがいいんだと思う)。ドラムマシーンの音はGaryがギターを弾きはじめるまでは少し違和感を感じさせるものの、いざGaryのギターと歌が被るとこれが結構なマッチングで、Garyのプロデューサーとしての資質を感じさせてくれる効果的な小道具になってました(まぁRoy Doddsとかが生のドラムを叩いたらもっといいんでしょうが)。
Booほどではないものの毎日リクエストを取り入れたりして少しづつ曲目を変えながら、各日ともDanny Wilson時代の曲、ソロアルバムの曲、King Lの曲などを取り交ぜて9曲前後で40〜50分の演奏はとっても楽しめるものでした。最後に登場して演奏し、曲数も多かった2日目が特に良かったです。特に気に入った曲は、顔を上に上げながら熱唱を聞かせてくれたNancy。他にもBaby Blue No.2とか、唯一のソロアルバム(持ってたつもりだったら持ってなかった)の曲にいい曲が多いと感じました。King L時代の曲も生でシンプルなアレンジで聞いてみると結構良いですね。Danny Wilson時代の曲ももちろん良かったです。
Garyは初日と3日目はセットが切り替わるときにRicky Ross(初日)、Boo(3日目、後述)と共演したのですが、初日はDeacon BlueがかつてシングルカットしてヒットさせたI'll Never Fall in Love Again(バカラックナンバー)を、ピアノを弾きながら歌うRickyとボーカルを交互に取りながらの演奏で、これもかなり良かったです。
Ricky Rossはピアノを中心に曲によってはギターを持って、Deacon Blueのレパートリーからソロ最新作、そして未発表曲?などを各日やはり9曲前後で40〜50分演奏しました。でも最初の二日は正直な話、声量はあるものの昔よりだいぶハスキーになってしまった声(Bryan Adamsに似てきたと思いました)に馴染めませんでした。ピアノでの演奏が多くしっとりめの曲が多かっただけになおさら、フレージングの終わりの部分で声がかすれてしまうのが気になりました(こんなこと気になるのも、Eddiのコンサートの後遺症かも)。マイクに顔をピタッと寄せて声を振り絞るような歌い方のため、他の二人とは違っていかにも”マイクを通しました”って感じの声に聞こえてしまったのも辛かった。でもそんななかでもDeacon Blueのデビュー作のタイトル曲RaintownはRickyの声がその曲調にとてもよく合っていて、あらためていい曲であることを実感しました。またギターを持って演奏している時はそのダイナミックな歌声がよくマッチして、特にソロ最新作のタイトル曲とかで時折ギターを叩きながら熱唱する様は、Big Loveを歌うLindsey Buckinghamを思わせるような迫力があり、とてもいい感じでした。
そしてBoo Hewerdine。初日はGary Clark, Ricky Rossの後、最後に登場したのですが、Booがギターを弾き、歌い始めた瞬間に空気が締まったというか、これまでとは明らかに違う雰囲気になりました。一人で弾いているにも関わらず様々な音が紡ぎだされる豊かなギターの音に透き通ったハイトーンの声という組み合わせは、やはり前の二人とはひと味違いました。
1日目は新作からの曲は1曲だけ(Peacetime)でEddiに提供した曲を中心に、今年のEddiの来日公演で”前座”として歌った曲もやってくれたので、ある意味一番Eddiファン向けに配慮されたセットリストでした。でもPlease Don't Ask Me to Danceを歌う前、曲紹介の時に「Eddiより深く表現するよ」と言ったところに少しプライドが覗きました。Eddiのコンサートでも定番になっている59ydsはもちろん、Jokeでも椅子に座りながらもロックするBooの姿が見られました。Jokeの後半なんかBooはほんとにノっており、とても気持ちの入った演奏を聞かせてくれました。久し振りに聞いたWings on My Heelsも良かったですが、Booの歌声でも聞いてみたいと思っていたI Felt A Soul Move Through Me(Booもこの曲を"favorite song"と言ってました ← 私も同じ、、)が、Eddiとはまた違った繊細な表現で良かったです。こういう静かな中にも深い感情表現を必要とする曲は、ハイトーンでデリケートなBooの声で歌われるととっても魅力的です。
2日目はBooのセットが始まる前にはRicky Rossと共演したのですが、「Songwriter's nightだから自分達で書いた曲を演奏すべきだと思った」というRickyの言葉に続いて演奏された曲は日本に来てから書いた新曲(と言ってた)で、BooとRickyのボーカルがそれぞれ味わい深かったです。BooのセットはいきなりWorld's Endで始まったときから良くなることを予感させましたが、今回の公演の直前に店頭に並んだ新作(私は前日に買いました)からの曲を1日目より多く、また1日目は演奏しなかった曲も演奏され、この日がバランス的にもBooの演奏自体も一番良かったです。World's EndでのBooの歌声にはいつも聞き込んでしまいますが、頭の中でEddiの歌声を勝手に補いながら聞いてしまうのはどうしようもないですね。。。新作からの曲もどれも良かったですが、特にApple Treeのコンパクトな演奏が印象的でした。
3日目はBooは最初に登場。ちょっと疲れてるのかな、とも感じましたが(あるいは自分が疲れてた、、)、歌声は相変わらず澄んだままで、この日は40分弱とちょっと短かったものの新作からの別の曲も聞けて十分満足できる内容でした。この日はサプライズの演出もあって、中盤に演奏されたWorld's Endでは「イングランドからわざわざこのためにやって来てくれた」と言って、ゲストボーカルを紹介しました。一瞬あるはずないと思いつつEddiが出て来ないかな、とは当然思いましたが、出て来たのはGary Clarkの奥さんである(というのは後で気づいた)Allison Clarkでした。Garyと同じような体型ではありましたが、その歌声はBoo同様ハイトーンで澄んだ声で、バックボーカルに徹してはいたものの、なかなかいい感じだったです。この日は演奏順が次のGary Clarkとも2曲共演しました。2曲目はほとんどGary Clarkのソロで、Booがたまにギターを合わせてるだけでしたが。。。そしてさらにこの日は最後に出て来たRicky Rossと2日目に続きOh Chinaを共演しました。
1日目)
1. Bell, Book and Candle
2. Footsteps Fall
3. Please Don't Ask Me to Dance
4. Peacetime
5. Joke (I'm Laughing)
6. Wings on My Heels
7. Patience of Angels
8. 59yds
9. Murder in the Dark
10. I Felt A Soul Move Through Me
2日目)
1. Oh China (with Ricky Ross)
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2. World's End
3. Anon
4. Patience of Angels
5. Birds Are Leaving
6. I Felt A Soul Move Through Me
7. Apple Tree
8. Footsteps Fall
9. A Cloud No Bigger Than Your Hand
10. Bell, Book and Candle
3日目)
1. Dream Baby
2. Peacetime
3. Mapping the Human Heart
4. Footsteps Fall
5. Bell, Book and Candle
6. World's End *with Allison Clark
7. Patience of Angels
8. Joke (I'm Laughing)
9. Anon
(with Gary Clark)
10. Last Cigarette
11. Who Loves You
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(Ricky Rossのセットで)
Oh China
3人それぞれのセットが終わった後はアンコールで3人の共演が見られたわけですが、1日目は3回のアンコールで6曲、2日目は2回のアンコールで6曲、3日目は2回のアンコールで7曲も演奏してくれました。初日はまだ共演に慣れていなかったせいかほとんどソロで演奏するような曲や、3人のうち2人だけで演奏してしまう曲もあったのだけど、日を追う毎に3人による演奏も自然になって、3人のボーカルが混じりあった瞬間とか最高でした。特に良かった曲としては、まずなんといっても初日にほとんどGary一人でアコースティックで演奏されたMary's Prayer。今回演奏された全ての曲の中で最も一般的知名度が高いと思われるこの名曲(映画「メリーに首ったけ」で印象的に使われてた曲です)を、感情を込めて丁寧に歌い込むGaryの姿は、見ててとても感動的でした。2日目、3日目のドラムマシーンを入れてのこの曲の演奏にはさすがにちょっと驚きましたが(笑)、どんな風にしても、また何回聞いても良い曲は良いです。
*3人によるアンコール
1日目)
(Encore 1)
1. Abraham, Martin and John *Gary, Boo & Ricky
2. I'll Fly Away ~ We Sail on the Stormy Waters ~ Graceland
*Gary & Boo
3. ? *Ricky Ross
(Encore 2)
4. Mary's Prayer *Gary Clark with Boo & Ricky
(Encore 3)
5. ? *Ricky Ross
6. Last Cigarette *Boo & Gary
2日目)
(Encore 1)
1. This is the Life *Ricky Ross with Boo & Gary
2. Honey Be Good *Boo Hewerdine with Gary & Ricky
3. He Looks Like Spencer Tracy Now *Ricky Ross with Boo & Gary
4. Mary's Prayer *Gary Clark with Boo & Ricky
(Encore 2)
5. Abraham, Martin and John *Gary, Boo & Ricky
6. I'll Fly Away ~ We Sail on the Stormy Waters ~ Graceland
~ When Will You (Make My Telephone Ring) *Gary, Boo & Ricky
3日目)
(Encore 1)
1. This is the Life *Ricky Ross with Boo & Gary
2. Honey Be Good *Boo Hewerdine with Gary & Ricky
3. He Looks Like Spencer Tracy Now *Ricky Ross with Boo & Gary
4. Mary's Prayer *Gary Clark with Boo & Ricky
(Encore 2)
5. Abraham, Martin and John *Gary, Boo & Ricky
6. I'll Fly Away ~ We Sail on the Stormy Waters ~ Graceland
~ When Will You (Make My Telephone Ring) *Gary, Boo & Ricky
3人で交互にボーカルを取った2曲(I'll Fly Awayは初日のみBoo & Garyの二人で歌った)は、初日からそのアンサンブルを楽しむことができましたが、日を追う毎に完成度が上がっていき、最終日には3人ともとても自然に楽しそうに、歌い演奏していました。I'll Fly Awayでは同曲をベースにしつつも、Gary Clarkを中心にWe Sail on the Stormy Waters(Garyのソロ作収録曲), Graceland(Bibleの曲), そして二日目以降はWhen Will You (Make My Telephone Ring) (Deacon Blueの曲)がミックスして歌われたのですが、3人のボーカルパートがなんら違和感なく繋がっていくところがとても良かったです。この曲に限らず3人での演奏では、Gary Clarkが中心的な役割を担っていました。
そして初日の最後に演奏されたBoo & GaryによるLast Cigaretteは、何をやろうか顔を見合わせて相談している二人の姿を見て、二人で演奏するならこれだろうと思っていたこともありリクエストしようかと思っていたのですが、実際に演奏されてとても嬉しかったです。Garyが「俺たち違うキーでやるんだ」なんて言って笑わせた(GaryはKing L時代にこの曲をカバーしている)後に始まったこの曲は、BooとGaryが交互にボーカルを取って歌われ、特にBooの歌声は他の曲と比べても一段と美しく、最後を閉めるにふさわしいすばらしい演奏でした。
最終日こそ少し短かめではあったものの(といっても2時間40分はあった)、演奏だけで3時間に迫ろうか(2日目終わった時間は11時を10分以上超えてました)という濃密な内容の、最後まで目が離せない素晴らしいコンサートでした。私は最終日さすがに疲れて最後の方は気力だけで聞いていましたが、最後まで残っていて本当に良かったと思います。3人の仲の良さを感じられたのも良かったです。