Eddi Reader: "Angels & Electricty"
”宿命としてのメランコリー”


 永遠にメランコリーを歌い続ける女、エディ・リーダーのソロ4作目である。前作からは2年ぶり。あのロン・セクスミスが初めて他人に楽曲を提供しているという嬉しい話題もあったりするのだけど、基本的にはここ数年エディの音楽を聴いてきた人なら自然と体になじむような作品に仕上がっている。1曲目。イントロも何もなく、いきなり彼女の歌が耳に入ってくる。ぱっと反射的に頭に浮かぶのは、あのいかにも頼りなげなエディの表情。まったく、この人というのはたぶん死ぬまでこんな感じなのだろう。彼女の声が抱えこむ”憂い”や”ネガティヴィティ”は、いつまでも彼女の人生と分かち難く存在している。

 ただ一つだけ言えることは、彼女がそんなメランコリーにもはや流されてはいないということ。人間関係のもつれからバンド解散を余儀なくされ、別れた男と二人の子供を争う、そんな泥沼人生を、彼女は前々作で「わたしは今正しい場所に居る」と歌った瞬間に過去のものとしたのである。実際、「シングルマザーとしての多忙な日常と、クリエイティヴなことをして自分を表現したいという欲求、その二つのバランスの取り方がわかってきた」という最近の彼女の発言からは、表現生活者としての自信めいたものさえ伝わってくるではないか。そんな地に足の付いたスタンスから、人生の不条理や悲しみを歌ってしまうところに、エディ・リーダーのシンガーとしての凄みを感じてしまうのだ。


評者: 大橋敏彦

from rockin' on '98/8号

 

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