刑法

勉強法
 刑法の勉強方法も基本的には、憲法と同じである。刑法は以前得意科目だったのに、かなり苦戦したことがある。というのは、以前受験したときは刑法は大塚仁先生のテキストを読み込んでいるとなんとかなったのだが、大塚先生が試験委員を辞められた上、結果無価値が通説化し、行為無価値の教科書で基本書になりそうなのは大谷先生くらいになった。ただ、この大谷先生の学説も一部受け入れられない部分があるという受験生もいて、前田先生の教科書を使う受験生が多いということで私も、基本書選びには困ってしまった。これについては、次に書くことにする。

 それと、今ひとつは択一刑法である。パズルとも言われることもある本試験問題には悩まされた。

迷走の記録
(これは、過去記事なのだけれど、ここに掲載することにした。)

 私は、急遽司法試験を受ける事にしたが、プランクは10年以上ある。刑法は以前は得意科目で予備校の答練では、全国ベスト10の常連だったので自信はあった。
 しかし、10年のブランクは大きくて、答案の進め方自体、とまどってしまった。
 私が迷走したのは、基本書だった。以前、受験した時は、刑法の基本書といえば、大塚仁先生の本が定番だったし、私も大塚刑法は表紙がボロボロになるくらい読み込んで、本自体は使い込んだ辞書のように真っ黒になっていた。
 大塚+デバイスというのが以前のスタイルだった。昔のデバイスは、今のようなものではなく、どちらかというと論点集に近いものだった。

 しかし、ネツトや予備校の情報などに触れると、今では大塚説の受験生は少数派であるといわれている。そこで、前田雅英先生の本を購入した。
 大塚説と前田説では、結論が逆という部分があり、この二つの本を比較するのは面白かったけれど、勉強時間は、あまりとれないので、どちらの本も未消化で終わった気がした。
 ちょっと行き詰まりというか、基礎力不足を感じた私は、書研の刑法総論講議案を購入して、しばらくこれを読んでみる事にした。講議案を読むと、いままで分かっていたようで、実際は分かっていなかった基本概念が多いのを痛感した。
 一つ一つの言葉の意味自体や、基本的な事を飛ばして来たような気がした。

 基礎を身に付けるのに、講議案は役に立った、しかも判例に沿った理解というのは、学力的には飛躍的進歩ができる本だと思った。
 しかし、ベースにする基本書としては、内容が足りない。しかし、大塚説は、独自のものが多く、共犯理論は記述も少ないし、共謀共同正犯否定説を前提に書かれているし、違法性の錯誤での厳格故意説とかは、賛成しかねるとおもった。各論でも、やはり、納得できないところもある。理論的には一貫した態度がいいとおもうけれど、議論が現代的でないとも感じたので、大塚説を基本書とするのは躊躇する。
 しかし、前田説は判例への信頼からか判例に沿っていて、確かに受験に向いているとおもう。しかし、この本は前田先生の主張がわかりにくいとおもう。それゆえ、この本は択一ではいいけれど、自説として論文で戦うには説得力ある論証が作れるか不安だった。
 実際、答練では前田説で書くつもりで勉強しても、実際に問題文を見ると、大塚説で書いてしまう事が殆んどだった。
 前田説の勉強をしていても、私は、やっぱり大塚説で書く方が力が発揮できるような気がする。
 しかし、刑法の基本書では迷いに迷った。講議案をベースにしたなら、各論は何にするか。斉藤先生の本は同じ行為無価値だけれど、結果無価値からの批判を踏まえた記述で、いい本だという評判だったけれど、本屋で何回立ち読みしても、結局買わなかった。

 司法試験で、論証を作る場合を考えると、少し、つらいかなと思った。というか、これなら大塚説で書いても変わらないと思えたからだ。もちろん、立ち読みで、合計でも、2〜3時間くらいしか読んでいないので、私の評価は誤っているとおもうけれど買う気にならなかった。
 大谷先生の本は、前田先生と受験生の間で人気を二分する本だけれど、読んでみて、少しアレルギー反応を起こした。理論的にどうこうというより、文体とかの相性かもしれない。

 山口先生の本は、立ち読みした時、思わず「なるほど!」と声をあげてしまった。
 即、購入となったけれど、いざ自宅でじっくり読んでみると、私にはレベルが高すぎる本であった。
 しかし、細かく書きすぎと思うけれど、これは納得という本に出会った。林先生の本である。
 しかし、行為無価値の講議案総論と、結果無価値の林説でいいのかという気がするし、総論も林先生の本を読まないと分からないとも感じた。そこで、後日、林先生の総論を購入した。
 何冊本を買ったか、何回本屋に通ったか、まあ、迷走というべきだろう。
 本当は、基本書なんてどれでも良くて、とにかく、じっくり取り組んで基礎を固める事が大切で、基本書くらいでふらふらしていてはいけない。
 後日、判例や、他の本で自説を修正したりするのだし。学者でも、改説という事はあるしね。
 全ては、ひとつの基本書に取り組んで足場を固める事だし、今の私は、そうするべき段階にいるのだから。
 迷走というのは、有用なようで無駄な時間を使ったものだ。
 迷走の末に決まった教材。

 刑法総論 林幹人 著 (東京大学出版会)
 刑法各論 林幹人 著 (東京大学出版会)
 最新重要判例250刑法 前田雅英 著 (弘文堂)
 判例セレクト(86’〜00’) (有斐閣)
 短答過去問詳解刑法1.2 (辰巳法律研究所)
 新・プラクティス刑法T、U ((早稲田経営出版)


結局のところ
 現在私が使用している基本書は大谷先生のものである。どうして大谷先生のものにしたかというと、行為無価値で他に適当な本がないこと、それと基本書なんてどれでも同じで、とりあえず一冊きっちりマスターしたら刑法自体の理解はできると思ったからだ。
 中途半端な学力で、いろいろな本をしても混乱するだけであるし、刑法の理解が深まれば他説でも対応できると思ったからだ。

 もちろん、問題によっては結果無価値で答案を書くこともあるが、これは一冊とにかく理解できたからできるのである。

 択一に関しては、基本書を読み込んだというのが大きいが、過去問を回すのが時間的に苦痛であったので、古い過去問の知識を入れる意味でP&Cの択一問題集をした。
 P&Cの択一問題というのは賛否両論あるのだけれど、これをじっくり読むと最近の問題に対応できるようになった。結局、今の問題でも古い過去問の知識がしっかりしていないと解けないし、最初はパズル的な問題で混乱するが、結局正確な知識が定着していないといけないということだった。

 択一の問題集は、私はセミナーのものを使用している。理由は穴埋め問題の完成文が載っているからだ。憲法などでもそうなのだが、穴埋め問題や、文書並べ替え問題は完成前文があるとわかりやすいのだ。

答練、講義など
 答練は、論文講座(セミナー)、ローラー答練(辰巳)。
 セミナーの択一答練、短答オープン
 講座は論文合格体系(辰巳)、P&C、論文合格特訓講座(辰巳、柳澤講師)
 この科目は、どれがいいのか私にもわからないが、あまり迷っても仕方ないと思う。

 結局、私はセミナーと辰巳を利用し、それぞれ論文と択一の答練のパックを申し込んでいるのであり、論文特訓講座は、その割引対象になっているので申し込んでいるという状態だ。

 答練については、答案検討で、大谷先生の本をメインとしているが、前田先生の本もよく参照している。

使用している本
 
刑法概説(総論)、刑法概説(各論) 大塚仁
 この本は古くから司法試験の受験生の必須アイテムとなっていた。しかし、大塚先生が試験委員を辞められてから、あまりこれを基本書とする受験生は少なくなった。私は人格行為論には賛成で、大塚説は私の刑法のベースである。
 今でも根強く大塚先生の本を使用する人がいるのは、やっぱり文章が美しいということと、論証に使いやすい表現が多いからであろう。それと、今の試験委員で大塚説を知らない先生はおられないので、まだまだ使える本ではある。
 しかし、多くの受験生に支持されない理由としては、論点が古くなっていることと、共犯論の分量が少ないので他書で補充する必要がある点であろう。

刑法総論講義、刑法各論講義  前田雅英
 司法試験試験委員を務められた前田先生の本で、一時期、司法試験の指定教科書と一部で言われた本。
 今でも多数の受験生が使用していて、知識的にも択一試験にも対応できる情報量をもつ。前田先生の本は記述がわかりにくいという意見もあるが、一般人の感覚や実務を意識していて支持を得ている。
 
刑法講講義(総論)、刑法講義(各論) 大谷實
 上でも書いたが大谷先生の本以外に適当な行為無価値の本がないということと、この本は比較的、知識や学説が整理されているという点で優れていると思う。