基本書について

基本書って何?
 私は法学部の出身ではないし、教養でも法学はとらなかった。司法試験の勉強を始めるにしても、やみくもに法学のテキストを勉強しても仕方ないので、とりあえず合格体験記などを読んでみた。

 すると、いろいろな受験誌や司法試験のノウハウ本で「基本書」という単語を目にしたのだけれど、私の中で基本書というものの概念がなかったので、どのようなものを基本書というのかわからず、単に基本的な本としか思わなかった。

 私のいた薬学部では、そもそも基本書などという言葉は使わないし、そういう概念すらない。国家試験に際しても、教授陣でさえ、基本書を読めという人はいなかった。むしろ予備校本を薦めていた。

 基本書とは、定義や概念など、自説の基礎となる本ということらしい。

基本書主義
 基本書主義という考え方があることも、首をかしげなくてはいけないことだ。少なくとも理系ではありえない。
 理系の本の場合は学者の書いたものであろうが、予備校の本であろうが、知識がつくなら何でもよかったし、おそらく大学教授ですら、予備校本を批判するなんてことは考えられなかった。

 予備校本は間違いが多いという理由なら理解できるが、なぜ基本書にこだわるのか理解できない。

基本書選び
 基本書をどれにするかというのは、実は初心者には、難しい選択だ。最初はどれでも、やさしい本でいいと思う。受験界の通説といわれるようなものが効率よさそうだけれど、その本との相性もあるし、難易度から言っても、ある程度の学力がないと読めないと思う。

 いろいろな学説を書いている本もあるが、それを理解するのは大変で、法の概念をまず形成させるためには、ひとつかふたつくらいの説までの本を何でもいいから理解して、後でいろいろな説を検討して知識を増やしていった方がいいと思う。

 どれでもいいから、一冊理解して、問題演習や学説が整理されている予備校本などを読んでみて、自分の説の基礎となる基本書を決めてゆくといいと思う。
 もっとも、その段階になると、基本書なんかどれでもいいと思うかもしれない。一冊マスターしてしまえば、違う本を読んでも、新たに学ぶ部分は少ないからである。

 この点で刑法の場合は、結果無価値、行為無価値のテキストがあり、あれこれ読むと混乱すると言われるが、これもどちら片方の理論をしっかり覚えることが先決であると思う。