ぼくの話を聞いてください.
ぼくにはかけがえのない友達がいました.まつぼっくりです.
彼は,地底人なんです.彼はものしりで,勉強家なんですけど,ここ一番に弱いという特徴が
ありました.確かにものしりです.話しをしていても,すぐに講釈が始まります.あらゆる事
柄についてうんちくを持っています.時にはそれがにがにがしく思えることがあって,腕組
みをして目を閉じながら講釈しているときに,ぼくは隠れて困らせたりしました.でも,どう
いうわけか,ぼくたちはいつも仲良しでした.
そんなにものしりなのに,彼はぼくと同じ学校なんです.ぼくの学校は,ご存知のとおり日
本で2番目にレベルが低い学校です.当然彼はもっと上位の学校を受けたのですが,ことごと
く落ちました.彼は相当気が小さいのでしょうか.それとも,やっぱり口先だけで本当はバカ
なのでしょうか.でも,ぼくにはそんなことはあまり関係ありません.どうでもいいことなん
です.本当に仲良しでした.
ところが,ある言い争いが元で喧嘩になって,それっきりになってしまいました.
どんな言い争いかというと,うにの色はオレンジか黄色かということでした.ぼくはオレンジ
を主張していました.まつぼっくりは黄色を主張していました.ぼくの心の中に,なんだまつ
ぼっくりの分際で,という気持ちがあったと思います.まつぼっくりも,数千年生きていると
のことで,おまえなんかより経験豊富だぞという自負があったようです.
そのうちに,オレンジ色でなければならない理由とか黄色でなければ大変なことになるなど
と怒鳴り合いになりました.
ぼくの意見は,黄色になるということはやわらかくなるということで,へたをするとその身
を維持できなくなる.だから南へ行って余生をのんびりとすごすしかないのだが,うににとっ
てそれは不本意だという説です.
一方のまつぼっくりは,もしうにがオレンジ色になったら,そのとき海の中では戦いが起こ
る.なぜなら,それは昔から怒っている証拠なのだというのです.
お互いに相手を否定し,理屈で責めるのですが,とうとう収まらなくなり戦いになりました.
まつぼっくりは巨大化して,種をブーメランのように飛ばしてきました.ぼくの戦法は,ま
つぼっくりを窪みに固定しててっぺんに水を掛ける(地底人は水が苦手)というものです.最
終的にはこの戦法が功を奏して,ぼくが勝ちました.
が,後味が悪く,なんべんもまつぼっくりに誤りました.
でも,口をきいてくれませんでした.