寝た方がいいよ、寝れば転ぶ心配なし
 
     

片時雨

 

父は七年前に言葉を失った
表現の自由を失った
拘束されたのだ
母は七十四になる
ちょうど誕日に手術が施された
顔を覆うように酸素吸入器
別人のように思えた
小さくなった

年の瀬
恵比寿ガーデンタワー地下
寒さを凌ぎ人目を避けて
バナナにかぶりつく
三越からさささと
しつこく追っ駆けるように見送る
今風の背広にぎらぎら頭の男
その先に
逃げるようにエスカレーターを駆け上がる
亜門先生とその取り巻きか三、四人
バナナかじってる場合か俺
来年本厄だぜ俺

一作日散々悪口叩き
昨日その天誅が下った
顔面から転倒
眼鏡,時計共に無惨に破壊
唇は膨張し鼻糞もほじれない

情報ばかりを追い求め
忘れてしまった思考
テレビを消して静かに事を始めよう


愛し由美香さま


気弱になっている
優しくなれる
謙虚さを忘れていた
親孝行しようと思う
皆に 少々気に入らない奴も皆に 優しくしようと思った
鼻水が垂れる
罪悪感に襲われる

トイレ行くたび 『うんこしたでしょ』
そのたび    『切れが悪いから長いんだよ』
動悸がする、息苦しい
俺もこのまま死ぬんじゃないかと不安に襲われる
もっと生きたいと思う
なんの恐怖心か

隣家の扉開閉音に怯え
窓越しから聞こえる道行く他人の声に怯える
また写真が見られなくなった
犬を見ると思いだし
新宿行ってはどきどきし
ミシェルファイファーがあなたにダブった
ラーメンうどんスパゲティに蕎麦
左利きのあなたは麺類ばかり食べていた
舞台初日。
いくらがたっぷり盛られたお弁当箱の中に
『がんばってね。一万円ご祝儀』 

ずっと憎んでた
後悔させてやるって思って
いつか俺のところに戻って来い馬鹿女と願って
がんばらなきゃと思った

実家近くの大規模公園
長靴履いたゴルファー
起き掛けにコップ一杯水で割った黒酢
そして走る約30分。
芝をつまむ烏は逃げようともせず
俺を馬鹿にする
辛くなると顎が上がって体が反り
辛いと言う顔を作る
しゃきっとしろ
姿勢を正しへそに気を込め
足を前に運ぶ
余計な力みは不要である


PG編集部から林由美香追悼号 追悼文寄稿のお願いなどと言われ、
改めて本当にいなくなってしまったのかと曖昧模糊とし不思議に思う。
甲州街道沿いのバルチックカレーの前を通るときみが歩いていそうで、その都度、
お通夜お葬式のきみの写真を思いだし、やっぱり死んでしまったのかと
実感のないまま自分を納得させる。
あなたの33歳の誕日以来ちょうど2年あなたの顔を見ることさえなかった。
逢いたくなかった。
2年前の夏は冷夏で雨がよく降った。
私もそんな天気と同じような心境だった。
あれからなんだかんだやっと750日以上が過ぎた。

「どこやったかなあ」。いつも探す、何か探している、一年中探している。
本年も富士登山。ザックカバーがない、確か昨年購入したはずで、必ずその辺にあるはずで、いつかそのうち廃品回収に出そうと放り出された旧いデスクトップ、キイボード、弾かないフォークギターやらの隙間、テレビの棚、汗だくで引っ掻き回していると二年少し前のあなたの写真が出てきた。
と言うといかにもたまたま出てきたみたい書いてしまったが、、いや偶然じゃない、この2年努めて触ろうとしなかった棚の一角に目を留めた。もう何年にも渡り山積みされたネガ群のどこかにあるのではと、恐る恐る探ったのだ。
顔をかしげたあなたの得意のポーズ。確か一枚だけ残し全部捨てたつもりだったが5枚も6枚も出てきた。こんなのもとっとといたのかと改めて自分の未練がましさを感じずにはいられなかったが、記憶を打ち消すようにすぐにまた雑然としたネガ群の間に押し込んだ。
探し物ザックカバーは見当たらなかった。そしてあきらめた。

真冬1月。家の前で夜9時から夜中3時まであなたを待ったことがありました。
あなたわ私を苦しめた。あなたと出逢って馬鹿男と知った。よく嫉妬した。私にわエポックメイキングなあなた、そんな貴方に感謝します。

『たまもの』まだ観ていない。ずっと観られそうにない。

ほしがる前に捨てようか  


5月20日

僕は社会の窓を開けて歩いているような人間です
僕は次男坊です
僕はやきもち焼きです
僕はなんとなく中村橋之助が嫌いです
僕は本を読み始めるとすぐに眠くなります
僕は松田聖子を真剣に愛したことがあります
僕はうつむいて歩いているので大衆が桜に注目している頃
じめじめした日陰に苔と一緒に踏まれそうな紫色の花が咲いているのを知っています
僕はでべそです
僕はニラレバ炒めが嫌いです
僕を裏切った女を殺してやりたいと思ったことがあります
僕は使ったラップを何度も使用するため取っておいたりします
僕は空港でフランス人の言っていることが判らず二度三度聞き直すと
けんもほろろに片手で犬を追い払うように扱われました
僕はその日重い腰を上げやっとの思いで
銀行へ行くと僕目掛けて夕立が降ってきました
僕はクリスマスイブに喫茶店でトマトジュースを
彼女から引っ掛けられ一人取り残されたことがあります
僕はなぜ生きているのかわかりません
僕は信頼をよせていた人に250万円取られたことがあります
僕は浜松祭りで自信をもって吹いていた笛がはずれていると後で聞かされました
僕はクラクションを鳴らされて何度か追っかけて行ったことがあります
僕がラーメン屋などに入ると急に混雑してくるように思います
僕は電車の網棚に荷を置いていると席を取られたりします
僕は誘われるとなかなか断れません
僕は左手でもお尻が拭けます
僕には一人息子がいました
僕はスネおです
僕はやっぱり社会の窓を開けて歩いているような人間です



斎 戒 沐 浴

昨夜も呑んだ
ゴールデン街で呑んだ
呑んでレモンちゃんに電話した
らおちゃんに電話した
さおりちゃんに電話した
呼び出し音が鳴るばかり
歌舞伎町をわぉわぉと吠えていた

秋も暮れた冬間近
やさしい陽射しが春をにおわす

イラクで拉致殺害された日本人
香田さんが首を切られていたとき
俺は何をしていたのだろう
ネットで流れるその映像
これが現実か…。
決して他人事とは思わないが
自分にそして家族に置き換えて
想像できない

月末払いの22万のバイト代
未だ 振り込まれていない
もう半月過ぎる
俺は自分のそんなことのほうが
大切なのだろうか。

俺は忘れている
明日死ぬかも知れないことを


《やっと富士山 もっか八月》

助監督の堀君は言う。
「飲んでばかりじゃだめですよ。明日は少し役者のこととか
人生のこととか考えて下さい。頭を使って下さい。」
諭される。
今夏、富士に登ると決めた。

九年程前の冬、軽井沢を半年程赴任予定で訪れたとき
目の前に雄大な浅間山が迫ってきた。
とても生々しく生き物のようで大きく大きく見えた。
何に心が触れたのか涙があふれ、運転している車の中で
独り涙を拭った。
ちょうどその頃近場の千メートル級の山へふらっと
一人出かけた。ある程度の所までは登ったが、
断崖へは踏み込めなかった。危険区域では署名箱が
置かれている。
「これより先へは名前を書いて登って下さい。」
名前は書いたが怖かった。
訪れる人もなく不気味だった。

いつの間にか一年以上過ごしたそこに恋人といえる
よりどころが出来た。平仮名でちはるちゃん。
料理が上手で手先が器用でハンカチなんかも真四角に
ビシッとアイロンをかけてくれた。
夜の仕事もしており帰りが遅かったが、
睡眠時間を削って毎日弁当を作ってくれた。
私が朝寝坊すると、車の中で食べてと
おにぎりまで持たせてくれた。
しかし、いろんな不安を抱えていた。
四歳になる男の子の事、知らない地での生活。
飲んで泣きわめいたこともあった。
その彼女と二年程でやむなく別れた。
彼女の箪笥も道具も匂いもなくなった
畳六枚すっかり見える部屋に
仕事から戻ると、
「これでいいのか?」「いやこれでいいのだ」と
自問自答を繰り返した。
私は東京彼女は小諸。
しかしそんなに強くはない。たまらず電話した。
「死にたい。死んでやる。」と彼女は迫った。
私が泣いているどころではなく必死になだめた。
それから一月余り、とにかく会いたくて再び電話した。
すると彼女は少しにやけた様子で
「えっ来る?だって今・・・一緒にいるの。」
防御体制から即実践へと行動に出たのだ。忘れるより
新しい存在を作った方が遙かに効率的である。
仕事に追われ人間関係に疲れ、
独りの時もそうでないときも酒ばかり呷った。
そんなとき登山でもしたらどうだったか。

なぜ登るのか。
あのきつさがいい。幸せなときもそうでないときも
あのきつい苦しい中に自分を発見する。
弱き自分と出会う。
「もうやめよう。もう休もう。」
「あと一歩。もう一歩。」
目の前だけを見つめていると、遙か先に見えた
八合目に着く。九号目に辿り着く。
吸水、ブドウ糖などなめ携帯濃縮酸素を吸う。
十分程休むと再び「よし行くぞ」気分も変わる。
遠い先を見ては一歩や十歩、何ら変わりもしない。
ただ、一歩一歩目先だけを見つめ、
どの岩に足を運ぶか瞬時の選択、その繰り返しである。
私は登っている途中、ふと、下を見るのが好きだ。
「ああ、こんな所まで来たのか」
下を見下ろすと、新五合目が微かに見える。
僅かばかりの充実感。
思い直してまた登り始める。頂上を制して達成感に浸り
絶景を眺めるのもいいが、この登っている
途中が好きなのだ。
やめたくなったり、休んだり、景色を眺め、
登ったり、滑ったり、躓いたり、
挨拶にシカトの人もいれば、知り合いかのように喜び
声を掛け合うこともある。結局、皆、しんどいんだ。
しんどいと人間性が現れる。

私は今、猛烈な空回りをし続ける。
つんのめってやっと気がつく。
二年前、彼女の仲間内に手を出し皆にばれていることも
知らず、ちょっとお洒落にアイボリーのコートに身を包み
待ち合わせの茶店に行くと、なにやら形相が違う。
問いつめられそれでも惚けているとトマトジュースが頭に。
忍者のように彼女はすっと去っていった。
クリスマスイブの午後三時。
一瞬無音の店内。
ぴたりと止まったお客の手足口手手口手目目目目目。
のような気もした。
白いボタンダウンがグジャッと染まった。動けない
自分に暫くすると店長っぽいベストを着たおじさんが、
おしぼりを持ってきて僕を拭いてくれた。
しかしほとんど無意味だった。
花火も浴衣も由美香も大嫌い。あぁ、忘れそうで思い出す。
三十年あっという間と言えば、一年を長かったとも言う。
今夏、富士と出会う。泣ける夏。泣ける人生。

『出会いは別れた女の贈り物』

 


冷ややかな美しさ スミダノハナビ【紫陽花の一種】

ついこの間まで中学生だった。
ような気がする。

芝居が終わり、
浜松祭りが終わった。

稽古で肋骨を骨折。
普通にできぬ歯がゆさ
満たされぬ苦しい公演だった。

新しい風にのりたい。
東海道新幹線浜松駅下車
白っぽい街並み

地元民の中に部外者の俺
荷物を運ぶ
酒を呑む
テントを建てる
酒を呑む
太鼓をたたく
はずれるリズム

隊列の中にいて
孤独を叫ぶ「おいしょっ!」
大凧よ空に立て
走って引いた重い凧糸
ぜえぜえはあはあ
笑う膝
もういらぬもう呑めぬ

呑んで叫んだ四日間も終わった。

品川駅には自衛隊行進のような
黒っぽいスーツの群れ
たったったったっと押しよせる

寝不足 呑みすぎ 寂寞 空虚

人と会いたい
あなたにあいたい。

冷蔵庫の一升瓶。
アルミの封をキリッと引き裂く。
泣いたあの日が脳裏をよぎる。

運動会も期末テストもない
三十九歳の中学生。
頭を垂れてまた今朝も便所で反省。

いつまでたっても今の俺


小春日和の哀歌

とにかく不安なのです
怯えているのです
怖いのです
どう仕様もないのです
独りなのです

私を襲ってくるのです
家でただじっとしているのです
時々わっーと襲ってくるのです
ベランダの屋根が今にも吹っ飛びそうなのです
不定期に襲うその風に
怯えているのです

テレビをつけても
電気をつけても
酒に酔っても
やはり独りなのです

ただ 無性に 無性に
甘えたいのです
あなたの所へいきたいのです

夏の日射しが あの日
更に 俺を泣かせたのです


暗闇に見る俺

 

思い出なんか捨てろ
思い出なんか捨てろ
思い出なんか捨てろ
思い出なんか捨てろ

忘れたくても 忘れられないこともある
悲劇のヒロインのように
傷ついたそぶりで
裏切っていったあいつ

夏冬冬秋
冬春秋冬
春夏秋冬
小さなおしり 大きな目
顔をかしげ 何想う。

やだなやだな こんな仕事
糞の流れる下水管
暗闇 悪臭 うんこ水
はねかえり 躰にあびる
避けるほど 奴らは襲う
よし!今日は闘う
口をぎゅっと閉じ
飛び込んでいく
生あったかい じめっとしたマンホール
ぬるっと滑る足元
ぽたっぽたっ落ちる水滴
俺は穴の中 頬をつたう

何かやれそう できそう
腰をかがめ 管の中を
ずんずん 前進す。


ん? 未だ1/12月 ・・・!

 

ときめいた新宿は 今や暗黒となり
妖艶な妓女は いつか妖怪となり
真っ黒い闇に包む
弱い獲物を食らう

酸味ずいた胃を和らげる蕎麦屋も
見当たらぬ
京王線各駅停車橋本行
朝露 ・・・。
膝と膝をしっかりくっつけ
寒苦に
辛抱我慢 ・・・
辛抱我慢 ・・・ 辛抱我慢 ・・・
『明けの駅人肌恋し消える雪』

一月。
近所のボロ市 人混み
多勢にいて 孤独を呑み
我の誕日に 両親の老いを数え
レニー・ゼルウィガーのような女性(ひと)に
巡り逢いたい。
と夢見るのです。
まだ始まったばかり ・・・ 一月。


「耳おおい 前途遼遠 雪しんしん」



過ぎし日は
悪魔のごとき 貶める

絶望に死するもよし
切望に死するもよし
惑うにあらず

刺す己を起たす
人は変えられぬ
巧言令色すくなし仁
隠れていた冷淡
魔女の囁き

欲情に満ちて
魂は死んでいく
幸せは心のひだを鈍らせる

今夜も
命をかけた酒仙
ゴールデン街を呻吟う

夢語る友はなし


 『朝食を 電車の中で 十二月』 

 

俺を叱るように 叩く雨

メガネは曇り 

作業着からシャツへと しみこんでいく

自然相手の 肉体労働

冬の雨は 俺を弱気にさせる。

 

「老いては子に従え」

母にもの申す 俺

・ ・ ・ ・ でいいのか。

 

うちに秘めた闘志

ダイナミズム

勝って喜び 負けてうなだれ

勝っても 負けても

素直な仕草に 目も和む

“ ヨッ、高見盛 ”

中年男のくすんだ心

我に見る。

 

喧噪、混沌、世はせわし

何かとクラクション、自己主張、嘘まみれ

静かに、時には静かに

落ち着いて 全てを捨てると

捨てようと、、、

何かある、何か見える。

 

俺、多少寒いくらい、少し寂しいくらいが

ちょうどいい ・ ・ ・ 。 

 


「馬鹿男 俺のことだと知ったのは 

           君がキライと言ったから」

 

人は未知の別れを求めて恋をする。

  愛するとは憎むこと

  きれい汚い

  こんな現実 あんな理想

  迷いがあるから 悟りがあり

  死ぬことこそ 生きる道

 

今、俺は君を憎む

否、俺の弱さ情けなさに

曇る空を見つめる。

 

秋のにおいのする夕暮れ

「ほら、この秋のにおい、わかるでしょ?」

近所の家には

あったかそうな明かりが灯る。

 

支払いは滞り

約束をすっぽかし

仕事もなく

着替えの下着もない

 

今日も呑むか。

宿題山積み、全部後まわし!

しばられてたまるか!

とにかく、呑んで、益々馬鹿になって

ものすごく愚かな俺を

明日の朝、萎えさせてやる。

そして、俺を俺自身をぶっ潰してやる。

コ・ロ・シ・テ・ヤ・ル。



ほしがる前に 捨てようか

この夏のとある日、近所のおばさんが、茄子の味噌漬けをくれた。 
奈良漬けのようで、あまり好みではないが食べてみた。
ところが、これがものすごくおいしかった。
後日,そのことを話したら、また、どっさりくれた。
ぼくは、おかえしにと、ささいな、本当にささいなおまんじゅうをあげた。
すると、おばさんは、涙がでるほどうれしいと感激してくれた。
かえって恐縮した。
ささいなことを喜べる感激する苦労人。
あのおばさんの笑顔に重みを感じた。 
                
また、9万4千円、クロスのネックレスに「ありがとう」と、うかぬ顔した女。

また、北朝鮮拉致被害者、家族の再会、涙。

「こころ非ずも ありがとう」
「こころなくして 涙なし」
みえみえの言葉より こみあげる涙。
能書きより、心を動かしたい。

大好きなあの人とはめぐり会えず
会いたくないあいつとよく出会う。

幸せは黙って過ぎてゆく。
そして、苦しくなったとき、やっと、幸せだったことに気がつく。

最近、顔の形が変わったと鏡を見て思う。
何か求めてばかりいた。物、金、女、知識教養。 
その前にいらないもの捨てないと入らない。



コントラスト


桜の花を見て
花の美しさを知ったのは22の頃

浅間山の雄大さに涙した30の冬

人を憎み恨み
自分のずるさに気が付いた。

恋の残酷さに死を思う。 

苦しいと弱さを知り
弱さを知ると優しくなれる


いつからか
背中のかゆみに
手が届かなくなった

醤油にこだわり、ファッションには縁もなく

70をこえた母には
今も子供の俺

ひなたぼっこの猫になりたい



もう遅い、いや、これからか?
選ぶのは今ここにいる俺。

今、惜しくとも 何が幸いするか
わからない。

今日の苦しみこそ 浪漫なのだ。



 うつけ

空虚 夏 暑さ忘れて 天も泣く


僕は新宿が嫌いです。
過ぎた時間が蘇る
新宿は嫌いです。
無期質な人混み
あの通り あのネオン
にぎやかさの向こうの
暗い冷笑
抱き合う男女
酔っぱらい
今、瞬間に逆らう新宿が嫌いです。
星も見えない。 

信じるって何?
嘘つく相手
信じることができますか?
わかっていながら
笑顔ができますか?
許すとか 見守るとか 我慢するとか…
それが信じることですか?
信じることは苦しいことですか?

傷つき 苦しく うずくまる

相手に望み、求める。
「信じてたのに…」
期待してたのでしょう、
見返りを求めたのでしょう。

夜の静寂に花ひらく 月見草
ああ、白し はかなし 美し!
孤独をもやす。




あの帽子、あれから


女らしさをさりげなく
自らも控えめに
あくまでも引き立て役に徹する大人らしさ。
まっすぐな気持ちそのまま見せる
いつまでも少女のような素直な髪を
やさしく包み込む。
照れて白黒させる
人なつっこそうな輝き見せるその目を
ときどきいたずらに隠す。

夏の日照り
熱風、光線
がき大将

そんなのから
透きとおるようでいて
そして、なめらかな柔らかい肌をもつ
みかこを守りもする。
君に欠かせないその帽子。
みかこにお似合いのそれ。

しかし、すぐそこにあったその目、唇は
今どこへ?今誰と?
君の横には黒い影。
おびえるような目で遠ざかり
そして、影を認めた。

くだらぬ想像、妄想
今頃、あの部屋で…
切り刻みたいこの躰、苦しみにむせぶ。

あれからどのくらいたったのだろう。
僕は無理に鼻歌をならしながら
耐えきれず、目はうるむ。

人の心は変わるもの

今朝もくもり空。





俺は自分を棚にあげ



仕事にあぶれ
家族は去り
金もなく
自信もなく

腹のつきでたたぬき
偉そうに見おろす

せまい 暗い 穴の中
ひたすら掘る
掘る 掘る 掘る
噴き出す汗
めがねに落ちるそれ
ぼやける手元

つかの間。昼。

遠くから合奏の音
ミッキーマウス〓ミッキーマウス〓ミッキィ・マ・ウ・ス〓
何度も何度もくり返す
まばらな奏で

赤い頬
汗のにおい

もう時間。
ゆっくりと思い腰をあげ…




紫苑



日本には季節がある
暑くもあり寒くもあり
過ごしやすいこともあれば
蒸し暑いこともある

病院のベットの上でも
それは感じる

窓からしか見えない景色からなのか
テレビなどの情報からなのか
空気からなのか
想像だけがわきたつ

あなたが
冷たくしてくれるおかげで
優しくしてくれないおかげで
誰かと出かけているおかげで


セックス
酒・クスリ

映画のように
もやのかかったワンシーン

知らないことを知る
見えないものを見る

雨の月曜
ゆっくりとぽとぽと響く雨音が
とうふのような躰を
少しずつ
壊していくように落ちる

初夏だというのに秋のにおい

 


    
つくねんと



人も車も途絶えた深夜
見上げれば 東京タワー
しっかりと そして そびえ
俺を見下ろす
俺の小ささ 情けなさ
星も見えない

引き出しに眠るフィルム
捨てられず 現像もできない

後悔ばかりの人生
だが 元には戻れない

日に日に陽は高く夜は短く
カラスが俺の背中に食らいつく

大企業には救いの手
中小には死の宣告

狭い路地
ミサイルのように突っ走る
人を人と思わぬ鉄のかたまり
ここにこそ戦争が・・・。





レゾンデートル


 
来し方行く末・・・・
憂鬱 怠惰 空虚
菜の花畑 桜道・・・・
孤独 官能 悲嘆
 
便器の黄ばみ
俺の影
ブラシに洗剤
へのかっぱ
奥の手 この手に 紙ヤスリ
人さし指と親指で
シコシコ シュッシュッ
手をかばい
固いかたまり擦れていく
濁る灰色 底の水
それも 束の間 手がすべり
こぶしがどっぷりすべりこむ
爪の中まで しみていく
 
覚悟はできた やってやる
きれい 汚い 関係ない
五本の指に 精を込め
こおばりついた 我が敵は
海の香りか 潮風か  
黒みに溶けて 手に迫る
これでどうだと 水流し
輝く白い笑顔出る
 
桜花 春
何かやってみようか
駄目でもともと
愚かを謳歌
 
桜並木を行き交う車
今日も何かに急いている