北海道グランドツーリング
■北海道グランドツーリング
僕と彼女の夏休み恒例の一大イベント、旅。去年は東京から南へ船で約1000km、東洋のガラパゴス、小笠原諸島へ。今年はどこへ行こうかと考えていたが、思い切っての完全逆張り。北へ1100kmの日本最北端の地、北海道は宗谷岬へ行くことに決めた。もちろん自分のロードスターで。
○ドライブガイド
8月16日の朝6時30分に成田を出発。東関道から首都高を経て東北自動車道に乗り、一路青森へ。途中何度かSAで休憩を取りながら、約10時間をかけて青森港に到着。しかし、寒い・・・。津軽は夏でもこんなに厳しいものかと思っていたら、東北地方に低温注意報が発令されていたらしい。「北海道は大丈夫だろうか・・・」。ほんの少しの不安と大きな期待とは裏腹に、即熟睡(しかも雑魚寝)の僕らとロードスターを乗せた室蘭行きのフェリーは、9時45分に青森港を離れ本州を後にした。
明けて17日午前4時30分、僕ら2人とロードスターは生まれて初めて(約1名は再訪)の北の大地に降り立った。やはり、寒い・・・。でもとりあえず幌は全開。で、ヒーターも全開。さらにGMで仕入れた風防を張り、長袖の上着を着込んで完全武装。準備万端整ったところで、足下の感覚を一歩一歩確かめるようにして、最初の目的地支笏湖へと向かっていった。
R36から登別、カルルスの温泉郷を抜け、オロフレ峠でロードスターを止める。ここは洞爺湖や羊蹄山の展望が実に雄大だ・・・・と、ドライブガイドには書いてあった。しかし、霧で何も見えん・・・。おまけに山の上はさらに寒い。WCを済ませ、早々に走り去る。
美笛峠を越え、支笏湖を眺めながら山道を下っていく。曇りがちの天気なので湖畔に下りずにそのまま支笏国道を抜け千歳方面へ。この辺りは、見通しのいいまっすぐな道になっていて「ここは北海道なんだ」という実感がじわじわと湧いてくる。ロードスターも各部がだんだんと暖まっていき、軽快な排気音を奏でる。
道央国道からR274を東に進んで日高を過れば、いよいよ北海道初日のメインルート「石勝樹海ロード」に入る。原生林の深い森を進み、日勝峠で日高山脈を貫く道だ。いくつものトンネルをくぐりながら、道はどんどんと高度を上げていく。が、それにともない、まただんだんと霧は深くなってくる。そして峠の長いトンネルを抜けると・・・、そこは前方視界3メートルの白い世界!しかも出口がカーブになっているところに渋滞が・・・。危うく前を行くランクルの下にもぐり込むところ。フー。「夏は峠を挟んで霧が多い」と、こちらはドライブガイドに書いてある通りだった・・・。
○もーたまらん!
18日。宿泊地の上士幌高原「ヌプカの里」を出発した僕らは、朝イチですぐ近くのナイタイ高原牧場へ向かう。ここはバイク誌「OutRider」の北海道特集(別冊)の表紙を飾っていたところだ。長い、まっすぐな道を走っていくと、果たしてそこには牧場の入り口があった。ここからは「牛横断注意」や「農耕車注意」といった標識が立つ周遊路に入る。 高原のうねりに沿ってゆっくりと進んでいくと、のどかな風景が広がる。朝のすがすがしい風が心地いい。見渡せば、瑞々しい緑をたたえる牧草地。散在する枝を広げた広葉樹。その先の空に浮かぶ白い雲の下には、雄大な広がりを見せる十勝平野――。丘を越えた瞬間、一気に視界が開けたときには、もーたまらん!という感じでホントに気持ち良かった。
天気もだんだんと回復に向かい、僕らの気分も盛り上がってきたところで、次に向かうは大雪山。まずは三国峠を目指しR273を駆け上がる。カーブを抜けると、目の前には長い長いストレート。4速5000回転で駆け上がり、3速にギアを落としてカーブを曲がる。するとまた前方に果てしないストレートが・・・。この峠、何がすごいといって、コーナーからコーナーまでの直線距離が異様に長い。500〜800Mくらいはあったろうか?まさに豪快の一言につきる。本州では決して味わうことのできない、大味だが贅沢な峠越えを堪能。そこから先は、樹海の中をゆく大雪国道をひた走り宿泊地の比布(エレキバンの原産地)へと到る。
○最北端の地
19日。宗谷岬へと到る日。今回の旅のクライマックスだ。R40とR275を交互に走りながら美深へ。途中ロードサイドの野菜屋でメロンを買い、自宅と会社に発送。みやげに片を付けたところで、さらに北へ向かってひた走る。中頓別を過ぎ、クッチャロ湖の看板の前で記念撮影を済ませる。と、いよいよ最北端の地へ僕らを誘う道、R238その名も宗谷国道が現れる。宗谷岬までもう100kmを切っている。まっすぐに延びる国道を挟む大草原を左右に見渡せば、点々と転がる大きな干し草の束。そんな「いかにも」の北海道チックなアイテムが旅心を大いに刺激する。思わずロードスターを止め、お約束の「干し草ショット」をカメラに納めた。
やがて現れるオホーツク海。初めて見る海。北の海がこんなに青く澄んでいるとは思わなかった。「せっかくだから触ってみよう」と波打ち際まで降りていって、さざ波に手を差し延べたら、直後に大きな波がきて靴が水浸しになった。
左に見えていた青々とした丘に道が重なっていく。この丘陵を越えれば宗谷岬だ。はやる気持ちを抑えつつも、スピードは抑えない。前をゆくバイクに続いてワインディングを駆け上がる。アクセルペダルを踏み込む足に、エンジンの鼓動がやけに響く・・・。そう、さっき波で靴が濡れたから、裸足で運転していたんだっけ。それはともかく、海からの爽やかな風を受けながら、小高い草原の道を走ると「オープンカーに乗っていて本当に良かった」と心から思えてしまった。まさにクライマックスに相応しい盛り上がりを迎えたのだった。
例にもれず三角の「最北端の碑」の前で写真に収まった僕らは、その夜稚内の町に繰り出し、海老だ、カニだ、ウニだと新鮮な海産物を食べまくった(「気らく亭」という居酒屋さんです)。ツーリングも良かったけど、あの味も忘れられない思い出だ。
で、20日は稚内からオロロンラインで一気に小樽へ。21日は羊蹄山や洞爺湖周辺をめぐって中山峠を経て札幌へ戻る。22日の札幌市内観光を最後に、苫小牧発11時45分のフェリーで北海道に別れを告げた。
本州での行程も含めて総走行距離2700kmに及ぶ、まさにグランドツーリングとよぶにふさわしい旅だった。小さなオープンカーだからこそ味わえた、大きな感動。また来年も、同じ2人と一台ですばらしい旅をしたい。
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