![]() あれから一ヶ月が経った。でもまだレディになれない。血エレだけじゃなくて、アイスダンジョンにいる青閣下や シェイムダンジョンのエルダーゲイザーまで狩りに行ったのに。 なんとか「Glorious」まで辿り着いたけど。そこから先にちっとも進まない。次が念願のレディだというのに。 式は明日なんだよね、実は・・・。あのプロポーズからあっという間だったな〜。 ウェディングドレスとお色直し用のドレスは、一週間前に友人のGM裁縫師いねちゃんことイネ・ド・オムから受取ったし。 ぴょんのギルド「天国騎士団」が全面サポートしてくれることになってるから、なんの憂いもない。 LBからも親しい友人達ゆうちゃん、ボビン、ベクチン、うらん、さなちゃんが自ら手伝いを買って出てくれた。 介添はお師匠さまに頼んだし。明日はわたしのそばにはしょうこっちと愛鈴さんがずっとついててくれるらしいし。 結婚前夜って、どうすごせばいいんだろう。 気持ちが高ぶって眠れない。 そういえば。なんだかんだと招待客は200人を越えちゃったな。実際都合とかあるから全員が来られるとは思ってないけれど。 それでも何人来るんだろう。 来てくれた人にぴょんと二人で引き出物を用意したけど、足りるかなぁ。 わたしとぴょんの結婚をこんなに沢山の人がお祝いしてくれるなんて、思ってなかった。 天国騎士団の人達は「全員式にはロードまたはレディで参列」なんてとっても気合を入ってた。 LBを抜けた元メンバ達は式の日だけはLBに復帰したいって言ってくれた。 2銀'sや今まで出会ったさまざまな人達が祝ってくれる。 ありがと。みんな。ホントにとっても嬉しくて。胸がいっぱい。 ![]() もう一度眠る気にはなれなかった。窓をほんの少し開けた。潮風が頬をくすぐる。保養所に潮騒の音が響く。 寄せては返す波の音が耳に心地良い。 とうとうこの日がやってきた。プロポーズされてから約二ヶ月。 今夜、わたしは結婚する。ブリタニアの大地に降り立ったあの日出逢った青年と。 すべてはあの日から始まったんだね。 それにしても。あの頃のわたしは想像もしてないだろうな。わたしと同じ日にヘイブンの街に到着した、地元の魔法学校を 卒業したばかりだったぴょんと結婚するなんて、ね。 二人で隊長のうしろをくっついて、隊長の行動に憧れて、ヘイブンを走りまわったあの頃。隊長は最初からわたし達には「隊長」だったね。 ヘイブンの街を離れてからは、首都ブリテンを拠点に東の森や沼地でよく狩りをした。 まだまだ貧乏でぴょんの秘薬や魔法の巻物を拾いながらダンジョンを歩いたこともあった。拾うのに夢中になってしまって 迷子になったわたしを探しに来てくれたのはいつもぴょんだった。 ダンジョンだけじゃなくて、帰り道でも迷子になって森の中まで迎えにきてくれたこともあったっけ。 大滝や動物園を見に行ったり。デパートでお買い物したり。 ドラゴンをダンジョンに見物に行ってヒドい目に遭ったこともあったな〜。しかもドレイクしかいなかったんだっけ? ケンカして、怒って、泣いて。絶交したり。お互いに違う誰かと恋をしたこともあったね。スレ違う心に胸が痛んで。 気持ちが通じなくて、泣き喚いたことも。 だけど。最後までわたしのそばにいてくれる。 一番わたしがほっとする人。恋しい人。 わたし。今日。ぴょんのお嫁さんになります。 ![]() ![]() ところで。式開始まで3人でおしゃべりしててもいいんだろうか。花婿のぴょんですら忙しそうなのに。 わたしだけがなぜか何もしないでこうしてるんだけど。 しょうこっちと愛鈴さんはおしゃべりしてるけど、一応「花嫁の付添」担当だからお仕事とも言えるよね? 今日の式はぴょんの所属ギルド「天国騎士団」が全面的に取り仕切っている。ギルマスターナさんの指示のもと、 ギルドメンバ全員が式場のあちこちで働いているんだと思う。もちろんLB有志もゆうちゃんをリーダーに、今日の参列客を ブリテン2銀側の噴水でゲート輸送しているはず。 今日の式にいったい何人来てくれるんだろ・・・。挨拶してる余裕あるかな。 こうして井戸端会議に花を咲かせて過ごしていると、ぴょんがわたしを呼びに来た。わたしの介添をつとめるお師匠さまも一緒だ。 「ぺこ、牧師さまが来たよ」 「うん。わかった」 式を司る牧師さまは女性だった。青いローブをまとい、白いカバーの書物を持っている。 「今日の進行を務めますル・レクアと申します。本日はおめでとうございます」 「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」 ![]() 「では式の説明をさせて頂きます」 牧師さまは、式の手順について式場内を歩きながら説明してくれた。 「以上なにか質問はありますか?」 「いえ」 「ところで服装ですが・・・」 そう言って牧師さまはじっと介添役のお師匠さまを見つめた。 「その格好は少々・・・・」 「やっぱり・・・」 ガクッと肩を落とすわたし達とは裏腹に、はて〜さんは熱り立った。 「なにぃっ!?」 「新郎新婦が承諾されるのでしたらかまいませんけど・・・・」 間髪いれずぴょんが言った。 「服着てくださいっ!!」 「なにぃっ!!!」 裸戦隊ギルド所属で、ご自分の結婚式でも裸で参列したヒトなんだもん。わたしが言ってもきいてくれなかったんだよねぇぇ。 だけど。牧師さまとぴょんの二人から強く言われ、しぶしぶ服を着始めた。って持ってきてるなら素直に最初から着て下さいっ!! どうしてこんなヒトが師匠なんだろ・・・。運命ってわかんないわ。はぁ。 ![]() 牧師さまの許可が出た。式場前で受付担当のコカムさんに連絡が行き、やがて式場へ続く鉄扉の開く音が聞こえた。 扉一枚隔てた向こう側がざわめき始めた。参列者が入ってきたんだ。覗きたい。思わず壁にへばりついて聞耳をたてた。 扉を少し開けて、様子をうかがった。うわ、結構ヒトいっぱい・・・。 一通り式場を見まわしていると、ちょうどわたしから右斜めに立っている人影が見えた。あ・・・う〜たんさんだ。 来てくれたんだ。うれしい・・・。約束守ってくれたんだ。わたしが気づいたように師匠も気づいたようだった。 思わず二人でう〜たんさんの話で盛り上がる。だってあこがれなんだもん♪今でも。えへへ。 天国騎士団とLoveBitesが座る席に一般客が座ったりと、座席で騒動が起きているようだ。 牧師さまとの打合せに思いのほか時間がかかってしまったのに、更に開始時間が遅れてしまうかも。 あ。静かになった。 「どうやら収まったようですね。では始めましょう。まずわたしが行きますので、続いて新郎が入場して下さい。 みなさん、リラックスしてがんばりましょう」 いよいよ。式開始だ。 って、まだ着替えてなかった。うわぁぁぁ。 ![]() ずっとこの日が来るのを待ってた。4月桜の木の下でプロポーズされたときから。ううん。花嫁さんに憧れていた少女の頃から。 ねぇ。どきどき高鳴る心臓の音がみんなに聴こえてたらどうしよう? 祭壇に立つぴょんがじっとこちらを見つめている。そんなに見つめられると緊張してるのに足がもつれて転んじゃうよ。 わたし、ちゃんと歩けてる? 祭壇のそばまで来ると、お師匠さまはわたしの元を離れ、介添席に向かい着席した。わたしはそのまま祭壇に上がり、 ぴょんの左側に立った。一瞬ぴょんを見つめてから、正面に立つル・レクア牧師さまのほうを向いた。 牧師さまが御言葉を述べ始めた。パレスに牧師さまの声が響く。 ![]() 御言葉が途切れ、牧師さまがぴょんに聴いた。 「まさひで、汝、この女子を娶り、神の定めに従いて夫婦とならんとす。健やかなるときも病めるときもこれを愛し、 これを敬い、これを慰め、これを助け、その命の限り固く節操を守らんことを誓いますか?」 「誓います」 ぴょんの言葉に牧師さまが頷き、わたしのほうを見た。 ![]() 「誓います」 声かすれてなかった?上ずってなかった?大丈夫だったかな。 再び牧師さまが言った。 「お二人の誓いの印として指輪の交換を行います」 その言葉を受けて、お互いの左薬指に結婚指輪をはめた。式の始まる前に牧師さまが下さった金のリング。 「では誓いのキスを」 ![]() 「まさひでとぺこは夫婦たるの誓約をなせり」 今、この瞬間わたし達は夫婦になったんだね。 「ロードブリティッシュの祝福がありますように・・・」 最後の言葉が紡ぎ出され、式は終わった。牧師さまが立ち去ったあと、わたしとぴょんも控室に戻った。 緊張が一瞬にして解けた。カラダの力がふにゃっと抜けた。手は汗をかいてたし、ずっと立ったままの足は緊張で固まってた。 「はぁ〜、こんなに緊張したのはじめてだよ」 「わたしも〜。足つっちゃた」 「指輪がなかなかとれなくてあせったし・・」 「でも失敗せずに終わって良かったね♪」 「そうだね」 はじめて二人の間に笑みがこぼれた。 「さ、みんなが待ってる。行こう?」 「うん♪」 会場外には参列してくれたみんながアーチを作って待っていてくれた。 ブレス魔法や解毒魔法がライスシャワー代わり。ブリタニア式の祝福。おめでとうの言葉と光輝く魔法の中をぴょんと並んで歩く。 見知った顔、知らない顔、様々な人達が今日忙しい中来てくれた。とっても嬉しい。HKとLBのみんなが手伝ってくれた。 ![]() 今日結婚式を無事終えることができたのは、みんなのおかげです。ありがとう。素晴らしい友人達に囲まれて、わたし達幸せです。 これから二人で生きていきます。 死が二人を別つまで・・・。って、すぐに生きかえっちゃうんだけど、ね(笑)。 |