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平成21年6月17日
警察庁長官
吉村 博人 殿

関係各省(内閣府、法務省、国交省、厚労省)大臣殿

北海道交通事故被害者の会   
代表 前田 敏章

   交通犯罪被害者の尊厳と権利、交通犯罪・事故撲滅のための要望書
 

憲法は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」(憲法13条)と謳っています。しかし、交通犯罪・事故の犠牲者は、近年減少傾向にあるとは言え、死者が年間5374人(2008年、警察庁交通局統計30日以内死者)に達し、負傷者も年間百万人に近く、国民のおよそ100人に1人が被害に遭うという深刻な事態に変わりはありません。北海道においても、200人を超える死者、25千人の負傷者(2008年)という被害が続いています。

他の事件に比べ、道路上での車両による事件や事故については、交通犯罪という認識は薄く「事故だから仕方ない」「運が悪かった」と軽視され、原因究明と抜本対策が不十分です。結果として多数の被害が続き、本来社会で保護すべき子どもやお年寄りの犠牲も後を絶たないという、人命軽視の異常な「クルマ優先社会」となっているのです。

交通犯罪によってかけがえのない家族を失う、あるいは後遺障害などにより人生をも変えられるなど、深く傷つけられた私たち被害者のせめてもの願いは、尊い犠牲が生かされ、真に命と人権が大切にされる社会がつくられることです。交通犯罪被害者の尊厳と権利擁護を実現し、現代の最大の人権侵害ともいうべき交通犯罪と交通事故被害を絶滅するため、以下の事項について、抜本的で具体的な改善を要請致します。

                                        記
1 人身にかかわる交通事故が発生した場合の救命救急体制を万全にすること
1-1  医療活動のできる高規格の救急車(ドクターカー)および医療専用ヘリコプター(ドクターヘリ)を整備・配備して、人身にかかわる事故に対し、地域格差なく全ての人に迅速、適切な医療が施される体制を確立すること。
1-2 そのためにも、救急救命士の医療的権限の明確化や、救急指定病院の拡大、指定外病院でも迅速な医療が施されるシステムの確立、さらに遠隔地医療の充実などをはかること。

2 「死人に口なし」のような不公正を正し、公正な裁きと原因究明、再発防止のために科学的捜査を確立すること
2-1 加害者供述に依存した「死人に口なし」の不公正捜査を生まないよう、「事故処理」ではなく「事件捜査」として、物証に基づいた捜査をを徹底すること。事故原因を徹底究明すること。科学的捜査に基づき公正な裁判を行うこと。
2-2 被害者の知る権利と、捜査の公正さを保障するため、実況見分調書など交通事故調書や鑑定報告書を、当事者の求めに応じ、送検以前の捜査過程の早期(実況見分調書は事件後1〜2週間以内)に開示すること。
2-3 科学的捜査と原因究明のために、検視検案に際しては、CTなど画像検査や薬毒物検査を義務化し、医師が的確に死亡診断し、解剖の必要性を判断する仕組みをつくること。遺族等へ配慮し必要な情報提供や相談ができる体制を作ること。死因究明を専門的に行う機関を一元化して設置すること。生体鑑定についても同様に万全にすること。
2-4 
科学的捜査と原因究明のために、航空機のフライトレコーダーに相当するドライブレコーダー(事故やそれに近い事態が起きた際、急ブレーキなどに反応し事故前後の映像等が記録され、分析によって速度や衝撃の大きさなど詳細が再現できる)の全車装着義務を法制化すること。交通事故自動記録装置を増設すること。

3 被害者や遺族に対しては、@知る権利 A司法手続きに参加する権利 B被害回復する権利 C二次被害を受けない権利の四つ権利が厳格に擁護されるよう、必要な制度や行政上の措置を行うこと。
3-1 事故原因、加害者の処遇、刑事裁判の予定など、被害者の知る権利を保障する通知制度を徹底すること。
3-2 被害者や遺族の供述調書については、事故原因が知らされた後、冷静に加害者の事などを考えられるようにその時期等を配慮すること。
3-3 新設された被害者参加制度の制度趣旨を徹底し,被害者のために柔軟に運用すること。犯罪被害者等基本法前文および第18条の趣旨並びに被害者参加制度の実施を受けて、公判前整理手続に被害者ないし被害者参加人弁護士が出席できるようにすること。 さらにすすめて、捜査,公訴提起,刑事裁判手続に被害者が直接関与できる制度を整備するとともに,かかる権利の実現に資する制度,例えば,捜査情報の提供を受け捜査に参加する権利の確立や検察審査会の機能と権限の強化等をはかること。また,新設された損害賠償命令制度の適用対象を,過失により人を死傷させた犯罪にまで拡大すること。
3-4  被害者に対する損害賠償が適正に措置されるように、保険賠償制度は国が管理する自賠責保険に一本化し、対人無制限など充実させること。自賠責保険の支払限度額や給付水準を抜本的に改善するとともに、公正な認定がされるように機構の改善をはかること。また、後遺障害認定基準を脳や神経の機能障害に着目したものに見直すこと、事故による流産もしくは帝王切開術に対する保障、およびその結果発生する後遺障害に対する保障について早急に整備するなど、労災保険の認定基準に準拠している現行の認定基準を抜本改定して十全な損害賠償を実現すること。経済的支援と合わせ、PTSDに対する支援制度など精神的な支援を含めた被害回復の補償制度を確立すること。
3-5 脳外傷による高次脳機能障害を重大な後遺障害として認定し、これらを含む後遺障害者の治療と生活保障を万全にすること。介護料の支給対象を診断書による判断として拡大すること。遷延性意識障害の当事者を介護する療護センターの充実をはかること。高次脳機能障害者の作業所、生活・就労支援センター等の設立および運営への支援を拡大すること。
3-6 交通犯罪・事故の被害に遭った胎児の人権を認め、人として扱うこと。加害者の刑事罰、損害賠償および保険制度においても胎児の人権認め、保障を万全にすること。
3-7 交通犯罪被害者など犯罪被害者が、被害直後から恒常的に支援を受けられる公設の「犯罪被害者支援センター」(仮称)を設置すること。当会のような自助グループの活動に財政的支援が受けられる制度を整備すること。

4 自動車運転が危険な行為であるという社会的共通認識があるというべきであるから、交通犯罪の場合は、過失犯であっても、その結果の重大性に見合う処罰を科すことが、交通犯罪抑止のために不可欠である。交通犯罪については、特別の犯罪類型として厳罰化をすること。
4-1 危険運転致死傷罪が全ての危険運転行為の抑止となるように、適用要件を大幅に緩和する法改正を行い、結果責任として厳しく裁くこと。前方不注意のような安全確認義務違反など、違法な運転行為に因って傷害を与えた場合は「未必の故意」による危険運転として裁くこと。交通犯罪のもたらす結果の重大性からも、新設された「自動車運転過失致死傷罪」の最高刑をさらに上げることや、飲酒ひき逃げの「逃げ得」という矛盾を生まない厳罰化など、法体系を整備すること。
4-2 交通犯罪に対する起訴便宜主義の濫用を避け、起訴率を上げること。刑法211条2項に新設された「傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除できる」という「刑の裁量的免除」規定は廃止すること。
4-3 危険で悪質極まりない飲酒運転での死傷事件を撲滅するために、運転者への厳罰の適用とともに、運転者への酒類提供者に対する罰則規定を設けること。また、事故の際の飲酒検査を徹底すること。飲酒の違反者には「インターロック」(アルコールを検知すると発進できない装置)装着を義務化するなど、再犯防止を徹底すること。
4-4 交通死について、24時間以内という扱いをせず、事故がもとで亡くなった方すべてを交通死とすること。

5 交通犯罪を撲滅し、交通事故被害をゼロにするために、国民皆免許主義ではなく、安全運転のための専門的な技能をもった者に限るために、免許付与条件を厳格にすること。
5-1 運転免許取得可能年齢の繰り上げ(バイクも18歳へ)や教習課程の抜本的見直しなど、免許付与条件を厳格にすること
5-2 免許者の違反行為はすべて重大な人身事故の原因や要因となる。累犯と事故の未然防止のために安全確認違反など悪質な道交法違反は全て免許取り消しとし、その他の違反にも欠格期間を長期にする、重い罰金を科すなど免許付与後の資格管理を適切に行うこと。また、免許再取得の制限を厳しくし、重大な違反で死傷事故を起こした場合などは永久に免許取得資格を与えないこと。

6 交通犯罪、交通事故被害ゼロをめざし、命と安全が最優先される社会を実現すること。
6-1 交通安全運動の目標を「被害ゼロ」とし、事故原因と原因にいたる要因を完全に絶つ施策を講じること。運転者の「マナー」に依拠するのでなく、運転行為の社会的責任が自覚され、歩行者等への「安全確認」が最優先される運転者教育を徹底すること。
6-2 歩行者や自転車通行者、とりわけ子どもやお年寄りが安全・快適に通行できる道路環境をつくること。幹線及び準幹線道路での完全歩車分離と住宅地や商店街など生活道路でのクルマ通行の規制による歩行者優先を徹底し、歩行者や自転車利用者の被害をゼロにすること。交差点での歩行者、自転車事故を防ぐために、歩車分離信号をスタンダードな信号と位置づけ普及すること。通学路をはじめ全ての道路について安全を最優先した点検と見直しを行い、信号や歩道の改善、防護柵の設置など二重三重の安全策を講じること。高速道路などでの野生生物のロードキル対策を万全にして、これによる交通事故被害を根絶すること。
6-3 速度超過による犠牲を無くすため、全てのクルマに安全な速度に設定した速度抑制装置(リミッター)装着を義務づけること。
6-4 運輸業者の安全に対する社会的責任を明確にし、悪質違反や重大人身事故を惹き起こした運輸業者に対する監査を徹底するとともに、罰則を強化するなど行政指導を強化すること。
6-5 事故原因解明と再発防止のため、行政指導に必要な情報開示を徹底すること。
6-6 公共交通機関を整備し、クルマ(とりわけ自家用車)に依存しない安全で快適な生活を実現すること。
                                                              以上

 

以上

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