交通事故絶滅をめざし、交通犯罪を告発し、クルマ社会を問い直す

     活動交流と情報のコーナー

2010/04/27 北海道新聞
<発信2010 輪禍を追う 交通死減少の陰で>上

24時間基準
統計の外で消える命

旅立ちの日を喜び合う同級生の中に、娘の笑顔はなかった。
 3月1日、札幌新川高校。札幌市北区の会社員寿崎(すざき)真さん(45)は校長室で、17歳で他界した長女の卒業証書を受け取った。「寿崎里奈 高等学校の課程を卒業したことを証する」−。一文字一文字に、娘の成長の記憶が重なった。「どうして里奈だけがいないんだろう」。妻美江さん(47)と2人、泣いた。

17歳の犠牲者
 里奈さんは2009年6月22日、自転車で登校中に市道交差点で軽乗用車にはねられ、意識不明になった。「もって2週間。覚悟してほしい」。医師の宣告は非情だった。
 2人は、病院のベッドに横たわる里奈さんの手を握り、枕元にラジオを置いて新川高校の野球中継を聴かせた。次第に冷たくなっていく右足を必死にさすった。「覚悟なんてできなかった」。事故から12日後の7月4日、里奈さんは一度も目覚めないまま、脳挫傷で亡くなった。
 昨年の道内の交通事故死者数は、前年比10人減の218人。5年連続で全国ワーストも回避した。ただ、統計上、この数字は事故から24時間以内に死亡した人だけで、12日後に亡くなった里奈さんは含まれていない。
 「数字はただの記号かもしれない。だけど、12日間も苦しんだ里奈は、交通事故の犠牲者ではないのか…」。事故後、統計の仕組みを知った美江さんは複雑な思いを抱いている。
 道警によると、道内で昨年、里奈さんと同じように事故から2〜30日以内に死亡した人は前年比10人増の31人。こうした「30日死者」は、過去5年間では計168人にも上る。30日を超えて亡くなった人たちもいる。真さんは「報道される数字以上に、交通事故で消えた命があることを知ってほしい」と言った。

刑の軽さに涙
 卒業式翌日の3月2日。里奈さんをはね、自動車運転過失致死罪で起訴された男性(35)に禁固2年、執行猶予4年の判決が言い渡された。「里奈の命はこんなに軽いのか」。2人は法廷で人目をはばからず、泣いた。
 高校卒業という節目は過ぎ、判決も確定した。でも里奈さんが好きなハンバーグを作る時、お気に入りの歌手の曲を聴いた時、美江さんは知らぬ間に涙が流れる。真さんは、職場で事故以前の仕事の話が出ると、「まだ里奈が生きていた時だ」と無意識に確認する。
 今、2人は交通事故のどんな小さな新聞記事にも目を通す。人生を突然奪われた被害者と、残された家族たち−。苦しむ人の多さを想像し、願う。「私たちと同じ思いは、誰にもしてほしくない」と。(報道本部の田中瑠衣子が担当します)

◇道内の交通事故死者数◇
 道警が統計を取り始めた1948年以降、年間死者数(24時間死者)は増加の一途をたどり、71年に過去最悪の889人を記録。2001年からは減少に転じたが、92年から04年まで13年連続で全国ワーストだった。09年は157人だった49年以来、60年ぶりに220人を下回ったが、93年に公表が始まった「30日死者」との合計は249人で08年と同数だった。
【写真説明】寿崎里奈さん
【写真説明】里奈さんの卒業アルバムを見つめる寿崎真さんと美江さん(右)。同級生たちとほほ笑む里奈さんがいる

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2010/04/29, 北海道新聞
<発信2010 輪禍を追う 交通死減少の陰で>中

見えない傷
脳障害7年判明せず


「仕事に就きたい。ただ、それだけなんです」。札幌市東区の佐藤隆樹さん(36)は丁寧な口調で話した。白いワイシャツに黒のズボン。働き盛りの普通の30代の男性に見える。でも、佐藤さんの脳には、15年前の交通事故で負った傷が今も残っている。「私は『普通』ではないんです。ただ、周りの人たちには伝わらないんです」

記憶力が低下
 交通事故や転倒により大脳などが損傷したことで記憶力や注意力が低下し、日常生活に支障をきたす「高次脳機能障害」。佐藤さんの後遺症だ。厚生労働省によると、全国の患者は推計6万8千人。外見では症状が分かりにくく、「見えない障害」とも言われる。
 佐藤さんは大学生だった1995年5月、札幌市内でバイクを運転中にマイクロバスと衝突。昏睡(こんすい)状態となり、右目の視力は失ったが、1カ月半後には意識は戻った。
 「異変」に気づいたのは、退院から約3カ月後。アルバイト先の同僚の名前が、何回聞いても覚えられず、買い物先で何を買いに来たか思い出せない−。「人と話すのが面倒になり、雑談でもイライラした」。神経科でもらった薬では、症状は改善しなかった。
 高次脳機能障害と診断され、3級の精神障害者手帳が交付されたのは、2002年4月。事故から7年間も異常の原因が分からなかった。
 その間、コンビニエンスストアの店員や地下鉄の車内清掃などのアルバイトを転々とした。障害が原因で、同時に複数の仕事を頼まれるとパニックになってしまう。次第に厳しくなる周囲の視線に耐えきれず、どこも1年以内で辞めた。
 道が高次脳機能障害の「拠点医療機関」に指定している北大病院リハビリテーション科の生駒一憲(かつのり)教授は「事故直後に運ばれた病院で、障害の可能性についての説明がなく、原因が分からないまま何年も苦しむ患者は少なくない」と話す。
 道は、高次脳機能障害者の家族会が運営するNPO法人「コロポックル さっぽろ」に相談や就労支援などの業務を委託するなど、患者や家族を支える体制整備を進めている。ただ、札幌など都市部と地方との格差解消が課題となっている。

「普通」を望む
 佐藤さんは今、コロポックルの支援を受け、障害を隠さずに働ける新しい職場を探している。「また同じ失敗をするのでは」という不安はぬぐえないが、「今度こそ、いい仕事をして、長く勤めたい」と強く思う。働き、稼ぎ、自分の力で暮らす「普通」の生活を始めたいから。
【写真説明】「コロポックル さっぽろ」でパソコンを学ぶ佐藤隆樹さん(手前)。「新しい職場では、少しでも役に立ちたい」

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2010/05/01, 北海道新聞
〈発信2010 輪禍を追う 交通死減少の陰で〉下

家族の苦悩
息子の介護 将来誰が


 稚内市の米内隆輔君(13)は7年前に乗用車にはねられ、今も同市内の病院のベッドで眠り続けている。111センチだった身長は33センチ伸び、体重も17キロ増えて35キロになった。「ひげが生えてきたよね」。母裕美さん(45)が、隆輔君の顔を優しくなでた。父隆俊さん(52)が「声変わりもしたかも。どんな声だろう」と続けた。体は成長していくのに、一度も声を聞かせてはくれない。

毎日付き添い
 隆輔君が事故に遭ったのは小学1年生だった2003年6月。登校途中、横断歩道上を歩いていた。稚内市内の病院に搬送された時点で意識はなかったが、外傷はほとんどなく、医師は「退院まで1カ月」と言った。ところが、3週間後に首の脱臼が判明。脳に酸素が届かない「低酸素脳症」と診断され、意識は戻らずに寝たきりになった。
 「りゅう、熱は下がったかな」。裕美さんは毎日、面会時間ぎりぎりの午前11時から午後8時まで、隆輔君に付き添う。床ずれができないよう、2時間ごとに体を抱えて位置を変え、顔の汗をふき、人工呼吸器の作動を確認する。事故後、稚内を離れたことはない。隆俊さんも出張のない部署に移り、仕事帰りや週末は病室で過ごす。
 「命が助かっただけでも幸運だった」。死亡交通事故のニュースを見るたび、裕美さんは思う。でも「寝たきりの隆輔と向き合っていることが、どうしようもなくつらくなる時がある」。事故の直後、札幌の大きな病院に搬送していたら、結果は違ったかもしれない。もっと早く検査していたら。学校まで付き添っていたら…。答えの出ない「もし」を繰り返す。

実情伝えたい
 隆俊さんは1年に2回だけ、札幌へ出掛ける。交通事故被害者の遺族や家族らでつくる「北海道交通事故被害者の会」の会合に出席するためだ。
 「私や妻が年をとったら、誰が隆輔を介護するのか」。同じように後遺障害に苦しむ子供のいる会員に不安を打ち明け、互いに励まし合う。少しだけ気持ちが救われる。
 隆俊さんは昨年11月、同会が札幌市内で開いたフォーラムで講演した。人前で話すのは得意ではない。緊張で言葉に詰まった。でも、どうしても伝えたいことがあった。
 隆輔君の事故の日のこと。容体は変わらず、ずっと介護が必要なこと。隆俊さんと裕美さんの声は、きっと聞こえていると思っていること。そして、こう結んだ。
 「事故が起きたことは新聞で紹介されます。でも、その後の経過は知らない人が多い。交通事故はその時だけでなく、後々まで多くの人を巻き込み続けているのです」
【写真説明】眠り続ける隆輔君を見つめる隆俊さん(右)と裕美さん。事故後も家族の苦悩は続く


毎日新聞 2010年1月13日・・・PDF

語り継ぐ
 車優先社会、変えるため行動
   前田敏章さん(60)=北海道交通事故被害者の会代表

 娘の誕生日が一番つらい。「北海道交通事故被害者の会」の代表を務める前田敏章さん(60)=写真=は、95年に交通事故で亡くなった長女の千尋さん(当時17歳)の誕生日には毎年、泣きながらケーキを買いに行く。「傷はずっと癒えないですよ。つらくてアルバムも開けない。未来だけじゃなく、過去も失う」

 千尋さんは下校中、ワゴン車に後ろから約5メートルもはね飛ばされて即死した。ワゴン車の運転手はカーラジオを操作中で、ブレーキ痕はなかった。だが、加害者は禁固1年・執行猶予3年の「軽い判決」(前田さん)。現場は広い道路だったが、歩道はなかった。

 「娘が亡くなった原因は、加害者だけじゃなく、危険な運転に寛容で歩行者の安全は後回しという車優先社会にある。このままでは娘の死が無駄になる」。99年に仲間と会を設立。会員は約110家族に増えた。

 前田さんは、交通事故を「交通犯罪」と呼ぶ。「事故だから仕方がない」「運が悪かった」の言葉で片付けられる問題ではないと思うからだ。道内の学校や少年院などで講演し、歩行者優先の道路環境の整備や加害者の厳罰化を訴える。「娘の分まで生きよう。娘を生かそう」。強い思いが前田さんの行動を支える。【中川紗矢子】


2009/12/05, 北海道新聞

重度障害者に逸失利益
死亡事故賠償訴訟
札幌地裁案で和解


 生きていれば得られたはずの収入「逸失利益」を加害者側の保険会社がゼロ円としたのは不当だとして、交通事故で死亡した自閉症の長男=当時(17)=の札幌市在住の両親が、加害者の運転手らを相手取り、逸失利益約4千万円を含む約7300万円の損害賠償を求めた訴訟は4日、札幌地裁(中山幾次郎裁判長)で和解が成立した。約1563万円を逸失利益とみなし、加害者側が計約4013万円を支払う内容。(関連記事33面)
 弁護団によると、損害賠償訴訟で、軽・中度の障害者の逸失利益が認められた判決や和解はあるが、重度障害者で逸失利益が事実上認められたのは全国でも初めて。札幌地裁は、和解案の算定根拠として、当時の道内の最低賃金(時給641円)を基に、週休2日で1日8時間労働できたものと見込み、生活費等を除いた約1131万円を提示。さらに20歳から65歳までの障害年金計約431万円を加え、逸失利益とみなした。これに慰謝料などを合わせて約4013万円とした。
 支払いについては、すでに原告は自賠責保険で3千万円を受け取り済みのため、加害者と事故当時付き添っていたヘルパーが計約1千万円を支払う。
 訴状によると、重度の自閉症だった長男は2005年8月、ヘルパーとともに路線バスを利用して札幌市内の公園へ出かけた際、乗用車にはねられ死亡した。加害者側の損害保険会社は、長男が受け取るはずの障害年金も将来の収入と認めず、逸失利益をゼロ円と算定した。
 原告代理人の児玉勇二弁護士は「最低賃金を算定根拠に逸失利益を認めたもので、極めて画期的な内容」と評価した。

〈 同 33面 〉

重度障害者に逸失利益
生きる価値 認められた
全国初 両親「画期的な判断」


 「画期的な和解だ」。交通事故で死亡した自閉症の長男=当時(17)=の逸失利益をめぐり、札幌市内の両親が札幌地裁に起こした損害賠償訴訟。事実上逸失利益が認められ、和解が成立した4日、両親は同市内で記者会見し、「重度障害者の可能性が認められた」と喜びを語った。(1面参照)
 「なぜ人の命を『働いて残すお金』で価値判断するのか、ずっと納得いかなかった」。母親(49)は両手でハンカチを握りしめながら「『生きている』ということ自体に価値がある。その思いを裁判所はくんでくれた」と話した。
 息子「たっちゃん」を亡くして4年、裁判を闘い始めて2年半。両親は、たっちゃんが描いた色鮮やかな絵や友達と笑い合う写真、通信簿など100点近くの思い出の品を裁判所に提出した。「たっちゃんは一生懸命、生きていた」と何とか伝えたかった。
 結果、最低賃金と障害年金などを逸失利益とみなし、和解が成立。弁護団によると、重度障害者で認められたのは全国初だ。「障害児を持つ多くの親や家族の礎になれたらと頑張った」。会見で母親は繰り返した。
 母親は昨年末、ヘルパー2級の資格を取り、今年1月から市内の高齢者施設で働いている。人の命を預かる仕事の「重み」を知りたかったからだ。「障害者も健常者も高齢者も若者も、命の『価値』や重さは変わらない。裁判をきっかけに、多くの人に分かってほしい」
 自宅では今も家族4人の晩ご飯が並ぶ。両親と娘は食卓、たっちゃんの分は仏壇の遺影の前に置く。「お父さん、お母さん頑張ったね」。写真のたっちゃんは、きっと笑顔でそう言ってくれると、母親は思っている。

<解説>
賠償額算定に最低賃金

 <解説>4日和解が成立した重度障害者の死亡事故をめぐる損害賠償訴訟は、札幌地裁が最低賃金などを算定根拠に事実上、重度障害者の逸失利益を認めた点で画期的な内容となった。労働の能力を重視した従来の賠償額の算定のあり方に一石を投じたといえる。
 逸失利益の算定は判例に沿って各保険会社が判断しているが、就労機会が限られる障害者の場合、著しく低く算定されるのが通例だ。神奈川県の養護学校のプール死亡事故で最低賃金を参考に賠償が命じられた判決などがあるが、軽・中度の障害者に限られていた。
 これに対し、今回の訴訟で原告側は「重度障害者でも発達の可能性があり、著しく差をつけるのは不合理」と主張。少なくとも最低賃金を基に算定するべきだと訴えてきた。
 札幌地裁の和解内容は、原告の主張を相当くみ取ったもので、損害賠償論に詳しい立命館大法科大学院の吉村良一教授(民法)は「命の対価に差はない。人を働くモノとみなした賠償額の算定方法を見直す機会とするべきだ」と指摘している。(田中祥彦)

 たっちゃんのお母さんから(当サイト管理者に)届いた支援者あてのメッセージ
長い間、応援ありがとうございました。
12月4日に、和解というかたちで裁判が終了しました。
被告に過失があっても、今まで、重度障害児に逸失利益が認められた前例がないだけに、子供も親も傷つきながらの長い長い2年間半の闘いでした。
重度障害者に、逸失利益が認められたのは、全国初だそうで「たっちゃん、やったね!かっこいいよ。」と、報告しました。
命を奪われた上に、屈辱的な数字をあびせられ、裁判すらできなかった障害者。不法行為は不法行為で、ちゃんと責任を果たしてもらいたいと思います。
その第一歩になれた事を、誇らしく思います。
ありがとうございました。

                                           2009年12月5日 豊岡淑子

2009/11/18, 北海道新聞夕刊

「飲酒運転 厳罰を」
被害者の会がフォーラム


 国連が提唱する15日の「世界道路交通犠牲者の日」に合わせ、道交通事故被害者の会(前田敏章代表)が事故防止策を考えるフォーラムを札幌市中央区のかでる2・7で開いた。
 13日に開かれ、交通事故被害者の遺族らが市民ら80人を前に講演した。2003年に飲酒運転によるひき逃げ事故で、当時16歳の次男を亡くした江別市の高石洋子さん(47)は「遺族は子供を失った恐怖を抱え続ける」と、飲酒運転とひき逃げの厳罰化を訴えた。
 千葉商科大の小栗幸夫教授も「脱・スピード社会を」をテーマに講演し、「設定以上の速度が出せない車の普及も必要ではないか」と提言した。
(田中瑠衣子)
【写真説明】フォーラムで飲酒運転とひき逃げの厳罰化を訴える高石さん


2009/10/29 北海道新聞

車優先社会は再考を
事故被害者の遺族講演
北翔大


 【江別】犯罪被害者支援に理解を深めてもらおうと、道警は28日、市内の北翔大で、1年生約100人を対象に講演会を開いた。
 講師は「北海道交通事故被害者の会」の前田敏章代表。1995年10月に、長女の千尋さん(当時17歳)を交通事故で失った前田さんは、事故当時の体験を涙ながらに振り返り、「加害者の刑罰があまりに軽すぎる。人命を軽視した車優先社会を再考する必要がある」と指摘。被害者の視点に立った法整備や国などの支援の必要性を訴えた。
 学生たちは真剣な表情で耳を傾けた。講演会は同大を含め道内5大学で開かれる。
(阿部里子)
【写真説明】長女を交通事故で失った時の体験を語る前田敏章さん


2009/10/29 NHKローカルニュース

交通事故の遺族 悲惨さ訴える

交通事故を少しでも減らそうと、交通事故で高校生の娘を亡くした男性が28日、江別市内の大学で講演し、事故の悲惨さを訴えました。

江別市の北翔大学で講演をしたのは、北海道交通事故被害者の会の代表を務める前田敏章さんです。前田さんは14年前、当時、高校2年生だった長女を交通事故で亡くし、その後、被害者の会を設立して事故防止の活動や被害者の支援を続けています。
前田さんは講演で「娘は学校からの帰り道、前方不注意の車にはねられました。事故から14年がたつが、娘のことを忘れた日は一日もありません」と話しました。
そして「車の利便性だけを追い求める『車優先社会』を変える必要があるのではないでしょうか。人身事故の刑罰を厳しくしたり、免許の取得も厳格にしたりするなどの見直しが必要だと思います」と訴えました。
講演を聴いた大学生は、「初めて交通事故の被害者から話を聞き、車を運転する責任の重さを痛感しました。これまで以上に慎重に車を運転したいと思います」と話していました。


2009/10/16, 北海道新聞夕刊地方

加害者生まぬ社会を
道被害者の会の前田代表
苫西高で交通安全講話


 北海道交通事故被害者の会代表で千歳高定時制教諭の前田敏章さん(60)を招いた交通安全講話が15日、苫小牧西高で行われた。3年生150人を前に前田さんは「加害者を生まない社会をつくってほしい」と訴えた。(大井一平)
 講話は、卒業前に運転免許を取得する生徒に安全意識を高めてもらおうと、同校が前田さんに依頼して4年前から行っている。
 前田さんは14年前に長女(当時17歳)を交通事故で亡くした経験を語り、今もなお続く悲しみや、命の尊さを涙ながらに訴えた。また、車を運転する心構えとして、「車で素早く目的地に到着できるという考えを捨ててほしい」と強調、低速走行や安全確認の徹底を呼び掛けた。
 秋まで交通安全委員長だった遠山大義君(3年)は「この講話を忘れず、交通安全に努めます」と話した。
【写真説明】交通事故撲滅を訴えた前田さん


2009/06/14 北海道新聞

【連載】命のリレーは今、臓器移植法改正を問う(中)

「提供」より みとりたい
脳死 家族の葛藤


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2009/06/07, 朝日新聞

[ 裁判員時代 @北海道]
交通事故で長女失った白倉裕美子さんに聞く
 短縮化する審理
 真相究明可能か

裁判員裁判では、裁判が長期に及ぶのを避けるため、事前に証拠や争点を絞り込む公判前整理手続きが行われる。
03年に長女(当時14)を交通事故で亡くし、業務上過失致死罪に問われた被告の裁判で公判前整理手続きを経験した空知支庁南幌町の自倉裕美子さん(
39)に、被害者の立場で語ってもらった。
―― 裁判では公判前整理手続きが採用されました。
「手続きでは検察官と弁護人が証拠を出し合い、争点を絞り込む。裁判で最も重要なことを決めるのに、被害者や遺族は出席できない。知る権利が奪われたと感じました。手続きの内容は従来、法延で公開されていたのだから、全面的に可視化するべきです」
―― 手続きの内容を知らされなかったのですか。
「はい。初公判でいきなり事故現場の写真が法廷に映し出されたが、私たちは知らされていなかった。血だまりの写真で、私は頭が真っ白になり審議内容も覚えていない」

―― 裁判員も写真を見ることになります。
「裁判員は判決にかかわるのだから、残酷な映像もしっかり見るべきです。しかし、遺族としては、法廷で公開し、傍聴人にまで見せる必要はないと思います」
―― 公判前整理手続きで裁判は短くなるのでは?
「遺族が求めているのは真相究明であって、短縮化ではありません。人を死なせたり傷つけたりした重大事件を裁くのですから、時間がかかって当然。裁判はだいたい3日間で終わると言われていますが、十分な審理ができるか不安です」
―― 危険運転致死罪も裁判員裁判の対象になります。
「交通犯罪は『事故』と軽視されがち。(殺人や放火など)他の事件に比べ、裁判員は自分も加害者になる可能性が高いので、重い量刑に消極的になることを懸念します」
―― 刑事裁判への被害者参加制度も始まり、厳罰化を心配する声があります。
「被害者感情に惑わされるな、という論調が気になります。私は裁判を報復の場と考えたことはありません。裁判なら真実が分かると期待しました。裁判員制度の目的の一つは民意の反映。仮に厳罰化が進んでも、それも民意。厳罰化の原因を被害者に押しつけるのは間違いです。


2009/05/19, 北海道新聞

飲酒ひき逃げで息子失った江別・高石さん夫婦
「逃げ得」署名で変えたい
厳罰化 法改正へ45万筆


 ひき逃げで次男を失った江別市の高石弘さん(47)、洋子さん(47)夫婦が二〇〇三年から取り組んできた飲酒・ひき逃げに厳罰化を求める署名が十七日までに、四十五万筆を超えた。十六、十七の両日には、十五日に福岡高裁で判決が言い渡されたばかりの福岡市三幼児死亡事故の両親とともに、鹿児島市内で署名活動を行い、九千二百三筆を集めた。
 高石さん夫婦は、遺族らでつくる「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」の共同代表。福岡の三児の両親大上哲央さん(36)、かおりさん(32)夫婦も裁判の過程で協議会に入り、一緒に活動してきた。
 洋子さんは十五日の高裁判決を傍聴。危険運転致死傷罪の成立を認め、懲役二十年を被告に言い渡した後、大上さん夫婦と「裁判所が一般の国民も遺族も納得できる判断を示してくれた」「後は飲酒ひき逃げに関する法律の改正を」と語り合った。鹿児島での署名活動では街頭で「頑張ってね」という激励を数多く受けたという。
 危険運転致死傷罪の罰則は最高で懲役二十年だが、ひき逃げの方が最高刑が軽く、飲酒の事実を隠すために現場から運転手が逃げるケースが相次いでいる。福岡の事故でも飲酒していた被告は逃げ、水を飲んでから現場に戻ったとされる。
 高石さんの次男、拓那さん=当時(16)=は〇三年、新聞配達のアルバイトに向かう途中、ひき逃げされ死亡した。半日後に逮捕された運転手は飲酒を認めたが、酒酔い運転は立証できず、危険運転罪は適用されなかった。
 高石さん夫婦と拓那さんの同級生たちは法改正を求める署名を展開。江別で始まった活動は〇五年、同協議会に発展して全国に広がった。これまでに四十万筆超の署名を法務相に提出し、ひき逃げの罰則強化を柱とする道交法改正につなげた。
 ただ、改正後も飲酒ひき逃げの最高刑は十五年。協議会は来春までにさらに署名を募り法務相に届ける方針だ。高石さん夫婦は「事故を起こして被害者を見捨てた人が『逃げ得』となる法律は絶対に変える。拓那のために、応援してくれるみんなのために運動を続ける」と力を込める。
【写真説明】「逃げ得となる法律は絶対に変える」と話す高石弘さん、洋子さん夫婦


2009/05/17 北海道新聞

輪禍の悲惨、苦しみ訴え
被害者の会 札幌で交流会


 北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)の総会と会員交流会が十六日、札幌市のかでる2・7で開かれ、被害者や遺族らが事故後も続く苦しみや、現在の捜査や司法が抱える問題点を訴えた。
 同会は、交通事故の被害者や遺族が一九九九年に結成。会員の交流や事故撲滅に向けた運動を展開している。
 交流会では、二〇〇三年に長女美紗さん=当時十四歳=がトラックにはねられ亡くなった、空知管内南幌町の白倉裕美子さん(39)らが体験を語った。白倉さんは「民事裁判では、五年半にわたり集めた物証や主張がほぼ認められたが、車の速度超過を予測しなかった娘にも過失があるとした司法判断はおかしい」と指摘。「車優先社会を変え、被害を食い止めないといけない」と訴えた。
 このほか、総会では《1》救命救急体制の充実《2》公正な裁判と科学的捜査の確立《3》交通犯罪の厳罰化−などを柱とする国への要望書を承認した。(堂本晴美)
【写真説明】交通事故撲滅を願い、被害者や遺族らが体験を語り合った交流会


2009/05/11, 北海道新聞

<私の発言>  本田信一郎 (ノンフィクションライター)

犯罪被害者の「復讐」は誤解

 裁判員制度に反対や懸念を示す専門家は、理由の一つに「法廷が被害者の応報感情に支配される恐れ」をあげる。被害者の在廷そのものを否定しかねないが、ともかく情緒的に応報感情を被害者に押しつけ、あたかも法廷が復讐(ふくしゅう)の場になるかのように言うのは誤解を招く。少なくとも被害者は法廷を感情で支配しようとはしていない。
 かつて被害者は「証拠品」として扱われ、予断と偏見にさらされる哀れみの存在だった。それを振り払うようにして実情を訴え、ようやく権利の主体になった。もしも応報感情や復讐心をあらわにして怨嗟(えんさ)の言葉を発し続けていただけなら、社会の理解や法整備は進まなかったはずだ。被害者は感情に期待せず、同情を求めない。求めるのは「なぜ、どうして」を知ること、そして正しい罰だ。
 ある遺族は「判決が軽いから怒るのではなく、自分の正義が満たされないから怒るのです」と言った。正確な事実認定を前提に、正義を実現しようとするからこそ冷静に対応するのだ。後に続くであろう新しい被害者の労苦を思いやってのことでもある。
 むしろ、傷害事件の被告が証人の被害者を脅したように、「逆恨みによる被告の応報感情」こそ、法廷を混乱させ厳罰化につながる。そして、社会の「集団的応報感情」が増幅するのは、犯した罪に被告を向き合わせようとしない姿勢が明らかな場合であって、単に被告を守るために被害者の応報感情を持ち出すのは疑問だ。(札幌)


2009年3月6日「北海道新聞」

南幌中3死亡事故
運転手ら5800万円賠償
札幌地裁判決「重大な速度違反」


空知管内南幌町で二〇〇三年九月、同町の中学三年生白倉美紗さん=当時(14)=がトラックにはねられ死亡した事故で、業務上過失致死罪で禁固三年執行猶予五年の判決が確定した北広島市の運転手(48)と運転手が勤めていた運輸会社に対し、遺族が約七千五百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が五日、札幌地裁であった。橋本修裁判官は「重大な運転操作の誤りがあった」として、約五千八
百万円の支払いを命じた。

この事故は当初、美紗さんの飛び出しが疑われたが、両親が独自に調査して検察に働きかけ、札幌地検岩見沢支部は〇五年十二月、運転手を起訴した。検察は時速九十五キロ以上の速度と主張したが、一、二審判決は、時速約八十キロ前後で「暴走とまではいえない」として猶予判決を言い渡した。

橋本裁判官は判決で、加害車のブレーキ痕などから車両速度を時速約九十キロと認定。運転手側が主張した約八十三キロを上回る「重大な速度違反」と判断した。

一方で、判決は「加害車両の動静に十分注意すべきだった」として美紗さんの過失も認め、過失割合を5%と認定した。

五日記者会見した母親の裕美子さん(39)は、この日の判決の速度認定を評価しながらも、「美紗にも一部過失があるとされるなど、納得できない面もある。初動捜査の不備が今も影響している」と話した。


2009/1/13 (夕) 朝日新聞

ビッグ3救済 安全重視を
日英交通事故遺族 オバマ氏にメール


 米自動車大手「ビッグ3」の救済にあたり、安全な車の開発を指導してほしい−。日英の交通事故犠牲者遺族らが12日にオバマ次期大統領に向けてそんな内容の手紙を送った。自動車産業再生の鍵として環境に配慮した車の開発などがあがるが、そこに「安全」を盛り込むべきだと提案している。

 発案者は、千葉商科大学の小栗幸夫教授(62)。道路環境に合わせて安全な速度に制御する「ソフトカー」の開発を続ける一方で、多くの遺族と交流してきた。自身も姉を事故で亡くしている。

 昨年11月の「世界道路交通犠牲者の日」の前、犠牲者の日の提唱者で英国の被害者団体ロードピース会長ブリジット・チョードリーさんと連絡を取った。

 経営危機のビッグ3救済が叫ばれ、緊急融資が決まれば米国政府が再建に乗り出す。小栗さんは「人を殺さない車に変えることを条件にすべきではないか」と相談した。チョードリーさんから「その通りだ」と返事が届いた。オバマ氏、次期副大統領のバイデン氏も交通事故遺族である事を指摘し、働きかけてみようということになった。

 大阪市で開かれた犠牲者の日の会合で参加者に提案し、ブログで送る予定の内容を発表した。「ビッグ3に対して効果のある安全性能を持った車を開発し、パワーと速度を制御するメカニズムを組み込むよう指導することを強く提言します」などの内容。速度制御は安価で燃費のよい車の製造という新たな需要と雇用創出につながるとしている。

 チョードリーさん、スウェーデンの速度制御研究者との共同署名で、遺族ら11人から届いたメッセージも添えた。12日夜にオバマ氏の意見聴取サイトに送った。小栗さんは「痛みを知っている2人は、経済と弱い立場の人間を守ることの両方を考えた政策が採用できるはず」と話す。チョードリーさんも「米国政府がリーダーシップを発揮すれば、各国への影響も大きい」と期待する。

 埼玉県熊谷市で起きた9人死傷事故で両親を亡くし、小栗さんにメッセージを寄せた小沢克則さん(32)、樹里さん(28)夫妻は「速度を出せない車なんて非現実的と思われるかもしれない。でも、悲しみを知るとわかる。米国から変わるきっかけになってほしい」と話している。 (井上恵一郎)

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手紙の内容は→World Voice for Peace on Roads

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2009/1/7 毎日新聞 大阪版

オバマ氏へ手紙
ビッグ3救済するなら車の性能抑制して
事故撲滅を目指し日英の遺族が連携

 「米自動車大手3社(ビッグ3)を救済するなら安全策を充実するよう指導して」。日英の交通事故被害者の遺族が協力して、オバマ次期米大統領へ近く手紙を送る。オバマ氏の父も交通事故で他界しており、遺族らは、「車の加速能力や破壊力を政策で抑えれば多くの犠牲を減らせる」と訴えている。

 計画しているのは、安全な速度に自動制御される「ソフトカー」を研究する、千葉商科大教授(都市計画)の小栗幸夫さん(62)=東京都豊島区=。97年に姉渡辺妙子さん(当時59歳)が事故死している。事故撲滅のため他の遺族らと連携する中、07年12月、英国の被害者団体「ロードピース」のブリジット・チョードリー会長(69)とインターネットを通じて知り合った。

 チョードリーさんは90年、一人息子マンスールさん(当時26歳)を信号無視の車にはねられ亡くした。92年にロードピースを作り、11月の第3日曜を「道路交通犠牲者の日」とするよう提唱。05年には国連が、世界共通の追悼の日と決議した。

 ビッグ3のうち2社へ約1兆5000億円分の緊急融資が決まっているが、実質的な解決はオバマ次期政権に託されている。手紙は、「米国で始まった自動車の大量製造は各地で経済発展の礎を築いた半面、全世界で毎年約120万人が交通事故の犠牲になっている」と指摘。「安全に配慮した車を作るよう指導して。新技術開発は雇用創出にもつながる」と呼びかける。

 スウェーデンの速度制御研究者の署名や遺族らのメッセージも添え、今月20日の就任前に送る。「ビッグ3は現代の自動車社会を代表してきた。経営破綻(はたん)を機に、自動車中心の世の中を見直して」と小栗さん。チョードリーさんも「メーカーは交通事故の責任を問われず多くの利益を得てきた。オバマ氏が動けば、他国も厳しい安全基準を課すようになる」と期待する。

 小栗さんは6日、ブログ(http://blog.livedoor.jp/oguriyukio/)に手紙の全文を掲載した。【林田七恵、写真も】

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2008年12月18日 北海道新聞

ひき逃げに厳罰を
法相に4万人の署名

 飲酒死亡ひき逃げ事件の犠牲者の遺族らが17日、法務省に森英介法相を訪ね、厳罰化を求める4万1837人分の署名を提出した。
 同省を訪れたのは、高校生だった次男=当時(16)=を亡くした江別市の高石洋子さん(46)が共同代表を務める「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」のメンバーら19人。署名提出は6回目で、累計で44万人分余りとなった。
 森法相に署名を提出した後、佐藤悦子共同代表は、現場から逃走した加害者が結果的に危険運転致死傷罪を逸れている現状について「逃げ得を許してはならない。早急な法改正を」と、訴えた。法相は「悲痛な体験をされたみなさんの切実な要請。重く受け止め対応する」と答えた。


2008/11/17 北海道新聞夕刊

交通事故 撲滅を願って
被害者側が報告
札幌でフォーラム


 世界各国で一斉に交通事故の撲滅を考える「世界道路交通犠牲者の日」の十六日、「交通死ゼロへの提言」をテーマに掲げた札幌フォーラムが、札幌市中央区のかでる2・7で開かれた。(堂本晴美)
 交通事故調書の開示を求める会(事務局・横浜)の主催で、約五十人が参加。ジャーナリストや研究者、道内の被害者らが「運輸業界の規制緩和」「交通事故調書の早期開示」などをテーマに報告や講演を行ったほか、パネル討論で意見を交わした。
 被害者による報告では、二〇〇三年に長女がトラックにはねられ亡くなった空知管内南幌町の白倉裕美子さんが「公判が始まるまで被害者は警察の調書を見ることができず、警察は加害者の説明に頼った事故処理を行った」と指摘。起訴前に被害者に調書を開示するよう制度改正の必要性を訴えた。
【写真説明】交通事故撲滅に向けた課題が報告された札幌フォーラム

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2008/10/19 北海道新聞

近づく裁判員制度
公判前整理手続き「被害者側の参加を」
交通死遺族らが訴え
札幌でフォーラム


 十二月に始まる被害者の刑事裁判参加と、来年五月からの裁判員制度について、交通事故被害者の視点で考える「公開フォーラム・交通事故2008」が十八日、札幌市中央区のかでる2・7で開かれた。裁判員制度に先立ち〇五年に導入された「公判前整理手続き」に被害者側の参加を求めるなど、死亡事故被害者の遺族から、捜査と裁判の透明性向上を願う切実な訴えが相次いだ。(平畑功一)
 北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)の主催。約七十人が参加した。
 公判前整理手続きは、裁判を迅速化させ、裁判員制度による国民の負担を軽減する目的で導入された。初公判前に検察側、弁護側、裁判所が証拠や争点を非公開で整理する。被告は参加する場合があるが、被害者の参加は認められていない。
 フォーラムでは事故被害者や遺族、弁護士の五人が登壇。このうち〇三年に当時十四歳だった長女がトラックにはねられて亡くなった空知管内南幌町の白倉裕美子さんは、同手続きが適用された裁判を振り返りながら「知らないところで裁判の流れが決められる密室裁判だった。被告に有利な制度であり、公判前整理手続きに被害者の参加を認めるべきだ」と訴えた。さらに、起訴前の段階で調書などの捜査資料を被害者に開示し、事故当時の状況を被害者側が詳しく把握できるような制度改善を求めた。
 青野渉弁護士は、刑事裁判への被害者参加を生かすためには、被害者への情報開示が必要と強調。「海外では事故後一、二週間で実況見分調書を開示する例もある。日本でも問題はほとんどないはずだ」と指摘した。
【写真説明】交通事故被害者と家族から、捜査と裁判の透明性向上を訴える声が相次いだフォーラム

「北海道新聞 2008年10月19日pdf

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朝日新聞 2008/10/19

交通事故被害者が司法の課題を報告
  札幌でフォーラム


交通事故被害者や遺族らでつくる「北海道交通事故被害者の会」(前田敏章代表)が18日、札幌市中央区で「公開フォーラム・交通事故2008」を開いた。5月の裁判員制度実施を前に、公判前整理手続きや捜査記録開示をめぐり、被害者から見た司法制度の課題を報告した。
 長女を交通事故で亡くした空知管内南幌町の白倉裕美子さんは、裁判の争点や立証方法を絞り込む公判前整理手続きについて問題点を指摘。被告が出席できる一方、被害者は出席できないため「密室の協議で不公正だ。裁判員制度で公判が短縮されれば、その分被害者が得られる情報量が減る。出席を求めるべきだ」と訴えた。
 札幌弁護士会所属の青野渉弁護士は、交通事故の実況見分調書など捜査記録の開示について問題点を報告。現在は捜査段階では記録の開示が一切認められておらず、「記録を見て捜査の疑問点が見つかっても、すでに裁判が始まり手遅れのケースが多い」と指摘。「交通犯罪に関しては、捜査段階で開示しても捜査への支障は少ない。むしろ警察の捜査に対するチェックという利点がある」と述べた。

  


北海道新聞 7月24日

交通事故の調書、捜査中も開示を
  法相に要望書


 「北海道交通事故被害者の会」(札幌、前田敏章代表)など道内外四団体が二三日、法務省を訪れ、捜査段階で事故調書などを被害者や遺族に開示するよう求める要望書を鳩山邦夫法相に手渡した。
 鳩山法相が五月の衆院法務委員会で開示に前向きな発言をしたのを受け、各団体が申し入れた。前田代表ら道内関係者三人を含む九人が大臣室で法相と約三十分間面談。要望書を受け取った鳩山法相は「開示に近づけるよう努力したい」と述べた。
 面談後、空知管内南幌町の農業白倉博幸さん(37)、裕美子さん(38)夫妻は十四歳の長女を亡くした五年前の事故を振り返り、「最初は倒れていた場所さえ捜査上の秘密として教えてもらえなかった。加害者の証言だけで事件が組み立てられるのはおかしい」と話した。


毎日新聞 7月24日

<交通事故>捜査書類を捜査段階で開示を
 遺族らの4団体


 交通事故遺族らでつくる4団体の代表が23日、鳩山邦夫法相と面談し、実況見分調書などの捜査書類を捜査段階で開示するよう要望した。交通事故の捜査書類は、容疑者が起訴された場合は初公判後に、不起訴の場合は不起訴決定後に一部が開示される。このため、不起訴後に実況見分調書の開示を受けた遺族らが「加害者の一方的な言い分だけで不起訴にされた」と訴えるケースが多い。

 この日は、「交通事故被害者遺族の声を届ける会」(川崎市)や「TAV交通死被害者の会」(大阪市)などが「遺族が捜査を検証できるようにするため、早期に実況見分調書を開示してほしい」と訴えた。鳩山法相は「できる限り事実関係をお知らせして、被害者遺族のご意見を少しでも反映するようにしたい。被害者が亡くなって『死人に口なし』とされ、加害者が適当な言い逃れをするようなことがあってはならない」と述べた。


※上記記事に関する 「北海道交通事故被害者の会」の要望書    「交通事故調書の早期開示を求める会」の要望書



2008/6/4 北海道新聞

「生命は宝物」
亡くした子への思い 遺品、オブジェに込め
6日から「メッセージ展」 札幌で6年ぶり

 
札幌市北区の札幌エルプラザで六日から開かれる「生命(いのち)のメッセージ展」。交通事故や事件でわが子を亡くした市内や近郊の親たちが、開催の準備を進めている。「命はたった一つしかない宝物。どうか大切にしてほしい」。親たちは、展示する子どもの等身大オブジェや遺品に、そんなメッセージを込めている。(本庄彩芳)
 同展が札幌で開かれるのは六年ぶり。初めて参加する江別市の高石弘さん(47)、洋子さん(46)夫妻は二〇〇三年、長男で野幌高校一年だった拓那(たくな)さん=当時(16)=を飲酒運転によるひき逃げ事件で亡くした。
 拓那さんは、新聞配達のアルバイトの途中だった。
 夫妻は飲酒運転の厳罰化を求める署名運動に取り組むなど、拓那さんの死を無駄にしない活動に積極的に取り組んできた。しかし、メッセージ展には、なかなか参加できずにいた。
 「息子を、発泡スチロールのオブジェにしてしまうことに、抵抗があって…」
 事件から五年がたち、気持ちの整理がついたことから、今回の参加を決意した。
 オブジェは高さ百八十センチある。拓那さんは中学、高校とバレーボール部に所属。亡くなる一カ月ほど前、洋子さんが「背が伸びたんじゃない?」と話しかけると、「一八〇センチを超えたよ!」とうれしそうに答えた。
 洋子さんは初めてオブジェを前にした時、「拓那はこんなに身長が高かったんだなぁ」と、あらためて生前の姿を思い出し、涙が止まらなかった。
 洋子さんは言った。「拓那は、もうこの世にいません。でもメッセージ展では、メッセンジャーとして、新たな命を吹き込まれるんです」
 札幌市北区の松尾剛史さん(57)は〇一年、札幌西高一年だった長男の翔平さん=当時(15)=を、別の高校一年の少年による暴行事件で亡くした。
 加害少年は交際していた女性が翔平さんと親しくなったと邪推し、翔平さんの顔を殴り、死なせた。「うまくいかないことがあったら、暴力で解決しようとする考えは許せないし、なくしたい」。剛史さんの静かな口調に、強い決意がにじむ。
 メッセージ展では、亡くなった当日、履いていたスニーカーとオブジェを並べる。
 同展は六日午後四時に開幕。八日まで、全国百三十二人のオブジェや遺品を展示する。
 道内の出品者はこのうち十一人。だれもが「相手は誰でもよかった」と起こる殺人事件や自殺など、命を粗末にする風潮に「どうして」と心を痛めている。「命はかけがえのないものだと、一人でも多くの人に伝えたい」

【写真説明】わが子の「生命のメッセージ」を伝えたい−。高石洋子さん(前列右から2人目)や松尾剛史さん(後列右から3人目)ら、開催準備を進める遺族ら


2008/05/20, 北海道新聞

事故や犯罪犠牲者遺族
  命の重さ 見てほしい
     札幌で来月メッセージ展


 交通事故や犯罪などで命を落とした犠牲者や遺族の悲しみを伝える「生命(いのち)のメッセージ展in札幌」(実行委員会主催)が六月六日午後四時から、札幌エルプラザ(北区北八西三)で開かれる。札幌では二〇〇二年に続いて二回目の開催。実行委は「傷つけ合わない社会を実現する一歩になれば」と話している。
 メッセージ展は、無免許運転で十九歳の息子を奪われた神奈川県の鈴木共子さんが、ほかの交通事故などの犠牲者の遺族に呼びかけ、二〇〇一年から始めた。展示するのは、人の形をした犠牲者の等身大オブジェと、靴などの遺品。オブジェには、犠牲者が生前に残した家族への言葉などがメッセージとして書かれている。
 今回は全国から寄せられたオブジェ百三十二体が並ぶ。そのうち道内からは十一体で、実行委員長の前田敏章さん(58)=西区=も交通事故のため十七歳で亡くなった長女のオブジェを展示する。
 前田さんは「命の重さとともに、生きる意味を問い直してほしい」と話す。
 八日までの期間中、鈴木さんをモデルにした映画「0(ゼロ)からの風」の上映会が計五回、エルプラザで開かれる。チケットは前売り、当日とも千円で、市内のプレイガイドなどで販売している。また、七日午後一時から、鈴木さんが同会場で講演し、道内で活動する女性デュオ「ウオームス」が、交通事故のため十五歳で亡くなった後輩への思いを込めた歌を披露する。
 映画を除き入場無料。問い合わせは前田さん(電)090・6871・6757へ。(能正明)
【写真説明】3月に埼玉県で開かれた「生命のメッセージ展」。多くの来場者が人の形をしたオブジェとメッセージを見つめ、命の大切さをかみしめた


2008年1月8日 HBCニュースより  

「危険運転」認定せずに異論も

福岡で3人の子どもが死亡した飲酒運転の事故。
危険運転致死傷罪を認めなかった判決に、道内の交通事故で家族を失った遺族からも、不満の声が上がっています。
おととし8月、福岡で飲酒運転により3人の子どもが死亡した事故。
求刑25年に対し8日下された判決は、危険運転致死傷罪の成立を認めず、懲役7年6か月でした。
(被害者の会・前田さん)「7年6か月はあまりにも軽い。
本当にもう悔しくて、無念の思い、情けない思いがしてます」北海道交通事故被害者の会代表・前田敏章(まえだ・としあき)さん。
前田さんは13年前、当時高校2年生の娘、千尋(ちひろ)さんを交通事故で亡くしました。
その後、人の命が尊重されないクルマ優先の社会を変えたいと「交通事故被害者の会」を設立。
交通犯罪の厳罰化を求める運動を続けてきた前田さんですが、今回の福岡のケースのように適用が難しい危険運転致死傷罪は問題の多い法律だといいます。
(前田さん)「飲酒の上の大幅な速度違反ですから、これが危険運転でなければ何が危険運転なのか。
危険運転致死傷罪ができたときから、適用要件を緩和しなさいと、ハードルが高いと指摘してきましたから、早くその矛盾をこれを機会に改めていただきたい」被害者の会では今後、今回の事件での危険運転致死傷罪の適用を訴えるとともに、交通犯罪に対する厳罰化を求めて行く方針です。


11月19日 読売新聞

交通事故調書の開示を、被害者団体がシンポジウム開催

 交通事故・事件の被害者遺族らで作る「交通事故調書の開示を求める会」(事務局・東京)が18日、東京都港区でシンポジウムを開き、参加者らは、被害者が真実を知ることができるよう、捜査記録の早期開示を可能にする制度の整備を求めた。

 同会は2004年、捜査の経緯が分からない状況に疑問を持った遺族らで設立。この日は、05年に国連が「世界交通事故犠牲者の日」として決議した11月の第3日曜日にあたり、これにちなんだ初のシンポジウムを開催した。参加者は、「目撃者が証言していない内容まで調書に書き込まれていたことが後に判明した」などと述べ、捜査中は調書が開示されない現行制度に疑問を投げかけた。

 04年にダンプカーとの衝突事故で長男(23)を亡くした埼玉県宮代町の真砂佳典さん(58)は、「調書の非開示が前提だからずさんな捜査がまかり通る。被害者への公開を念頭に置けば、手抜きはできないはず」と訴えた。交通事故・事件の捜査に詳しい青野渉弁護士も、「捜査情報は公益にあたるとして調書を開示する米国やドイツと比べ、日本の制度は被害者側の視点が欠けている」と指摘した。

 シンポジウムの最後に、被害者らを追悼し、献花も行われた。

2007/11/18  産経ニュース

交通事故調書の早期開示を 遺族らがシンポで訴え

 刑事裁判が始まるまで見ることができない交通事故調書の早期開示を求める被害者遺族らのシンポジウムが18日、東京都港区で開かれた。危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪など加害者の厳罰化が進む一方で、加害者の言い分に沿った調書が作成されることも多いとされ、遺族らは警察や検察のずさんな捜査で苦しめられた“二次被害”の実態を訴えた。

 シンポでは、被害者遺族や弁護士が、目撃証言や車両の状況と矛盾する調書で不起訴となった事例などを紹介。ジャーナリストの柳原三佳さんが「見せないことを前提とした調書が独り歩きしてしまう。一般公道で起きる事故を秘密裏に捜査する意味があるのか」と非開示に疑問を呈した。

 平成16年10月、息子の晃さん=当時(23)=を交通事故で亡くした埼玉県宮代町の真砂佳典さんは「航空機や電車のように、車両事故でも専門の調査委員会を作ってほしい」と要望。交通事故問題に詳しい青野渉弁護士は「情報開示がないと、真実が分からなくなる。被害者にも加害者にもマイナスだ」と、調書の早期開示が真相解明につながると強調した。


2007/10/17, 北海道新聞

加害者は直接の謝罪を」
被害の家族 体験談語る
札幌でフォーラム


 事故被害者の救済や事故防止策をテーマに、北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)によるフォーラムが十六日、札幌市中央区のかでる2・7で開かれた。
 家族が事故に遭った経験を持つ会員二人が、市民ら約七十人を前に自身の体験を語った。二○○三年八月、速度超過の車にはねられ、娘=当時(20)=を亡くした旭川市の教員米沢透さん(58)は、事故を起こした男性や家族から裁判後は直接の謝罪がないとし、「一生償うと言いながら対応がおかしい」と話した。
 また、同年六月、車にはねられ、意識不明のまま今も入院している息子(10)がいる稚内市の会社員米内隆俊さん(49)は「事故後に(法的な)知識がないと何もできない。相談できる場所が必要」と訴えた。このほか、常磐大大学院の諸沢英道教授(被害者学)が講演し、事故被害者への法的支援制度が整いつつある現状に触れ、「事故後の救急活動と同じで、被害者対策にも迅速に応じられる機関が必要」と強調した。
【写真説明】フォーラムで事故の悲惨さを訴える米内さん


2007/7/15 読売新聞(速報版)

現行5%の法定利率、引き下げへ…逸失利益算出などに影響
7月15日11時13分配信 読売新聞

 法務省は民法で定める法定利率を、現行の年5%から引き下げる方針を固めた。

 低金利時代を踏まえ、市中金利との乖離(かいり)を是正するのが狙い。引き下げ幅や変動型か固定型かなどについて検討を進め、早ければ2009年の通常国会で法改正したい考えだ。

 法定利率は、民法404条で、「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする」と規定され、金銭貸借などの契約で、利息をつけることになっているのに、具体的な利率が決まっていない場合に適用している。損害賠償金など法律上発生した債権に加算される遅延損害金、不正利得を悪意で得た受益者がその利得を返還する場合につける利息にも適用される。


※ この項の事件については、7月12日から7月20までの一連の道新記事をまとめて掲載します

2007/07/12, 北海道新聞

道央道にキツネ、死亡事故
管理責任どう判断
 札幌地裁、明日判決

 苫小牧市内の道央自動車道で、飛び出したキツネが元で死亡事故が起きたとして、野生動物をめぐる高速道路の安全管理が問われた損害賠償請求訴訟の判決が十三日、札幌地裁で言い渡される。付近では、車と動物の衝突が多数確認されており、道路管理者の責任をどうみるか注目される。
 訴えているのは室蘭市白鳥台四、無職高橋雅志さん(67)、利子さん(62)夫妻。道路を管理する東日本高速道路(旧日本道路公団)と、高橋さんの長女真理子さん(当時三十四歳)の乗用車に追突した札幌市東区(当時)の男性会社員(38)を相手取り、合わせて九千五百万円の賠償を求めている。
 訴状などによると、真理子さんは二○○一年十月八日夜、苫小牧市糸井の道央道で、路上を横切ったキツネに驚き、中央分離帯に衝突して停車。そこへ、二台後ろの会社員の乗用車が追突し、頭の骨を折るなどして亡くなった。
 高橋さん夫妻は、現場付近では、通行車両とキツネの衝突事故が続発していたなどと指摘し、動物侵入に伴う事故を予想できたのに、必要な侵入防止策を取らなかったと主張。これに対し、東日本高速道路は道内の高速道路の総延長は約五百四十キロあり、動物が侵入する場所、時間を予測できないと反論。真理子さんにも、減速するなど安全措置を取らなかった過失があると強調している。
 動物の侵入と高速道路の管理をめぐっては、札幌高裁が一九九九年、小樽市内の札樽自動車道で起きたエゾシカとタクシーの衝突事故について「道路の設置管理に落ち度があったとは認められない」との判断を示した。事故前、現場周辺では、エゾシカと車の接触の報告が皆無だったという。
 東日本高速道路道支社によると、動物と車の衝突は全国の高速道路で年平均三万四千件、道内では同千八百件(二○○○−○四年)を数える。道外では、シカ、イノシシ、タヌキなどとの接触や避けようとしてハンドル操作を誤る事故が後を絶たず、車内の人が死傷するケースも少なくない。
【写真説明】故高橋真理子さん

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2007/07/14 北海道新聞

旧公団に責任なし
札幌地裁が賠償請求棄却
キツネ避け道央道事故死


 道央自動車道に飛び出したキツネを避けようとして事故死した女性の両親が、道路を管理する旧日本道路公団(現東日本高速道路)などを相手取り、総額八千九百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が十三日、札幌地裁であり、坂本宗一裁判官は旧道路公団の責任を認めず、訴えを退けた。
 坂本裁判官は「中小動物の侵入防止用の柵を設置したり改修したりしなかったからといって、道路の安全性を欠いているとはいえない」と旧公団の過失を否定。
 旧公団が事故の十年以上前に動物侵入対策の研究成果をまとめながら、それを事故現場付近で実施していなかった−との原告の主張に対しては、「標準的なものとして、普及しているとは認められない」と指摘した。
 女性の乗用車に追突し業務上過失致死罪が確定している札幌市内の会社員(38)については、千九百万円の賠償を命じた。

 判決後、原告の室蘭市白鳥台四、無職高橋雅志さん(67)、利子さん(62)夫妻は地裁内で会見し、控訴する意向を明らかにした。
 雅志さんは「旧公団に何も責任がないと、どうして言えるのか。まったく不当な判決」と憤りをあらわにし、利子さんは「このままでは、娘の死が無駄になってしまう。旧公団は動物の侵入防止策を取ってほしい」と涙を浮かべて訴えた。

 一方、東日本高速道路道支社は「私どもの主張が認められたものと考えております」などとのコメントを発表した。

 判決などによると、高橋さん夫妻の長女真理子さん=当時(34)=は二○○一年十月、苫小牧市糸井の道央道で、路上に出てきたキツネを避けて、中央分離帯に衝突。二台後ろを走っていた会社員の乗用車に追突され、頭の骨を折るなどして亡くなった。

【写真説明】悲しみと憤りの表情で会見する原告の高橋さん夫妻

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2007/07/19, 北海道新聞

娘の声を聞きながら ある交通死の裁判

高速道への動物侵入
「旧公団は対策怠った」


 小さな遺影をハンカチにくるんで胸に抱いた。手首には、あの子が海外旅行の土産に買ってくれた腕時計をしていた。これまで二十回の裁判もずっと、そうやって一緒に見つめてきたのだ−。
 十三日午後、室蘭市の無職高橋雅志さん(67)と妻利子さん(62)は札幌地裁七階の法廷にいた。
*最期見てやれず
 裁判官が判決主文を早口で読みあげる。「原告らのその余の請求を棄却する」。二人が飲み込めないと思ったのか、裁判官は「旧公団の責任は否定しました」と念を押すように言った。
 二人の長女真理子さん=当時(34)=の車に追突した会社員には賠償を命じるが、道路を管理する旧日本道路公団(現東日本高速道路)の責任は認めないという意味だった。
 事故が起きたのは、二○○一年十月八日夜。判決によると、午後七時五十一分ごろのことだ。真理子さんは実家から、看護師として働いていた札幌に戻るため、道央自動車道を乗用車で走っていた。
 苫小牧市糸井にさしかかったとき、突然、前方にキツネが飛び出してくる。避けようとして、急ハンドルを切る。車は横滑りして中央分離帯にぶつかり、車体を横にして追い越し車線に止まった。
 二分後、そこへ、二台後ろを走っていた会社員の車が突っ込んできた。
 「娘はたった一人で逝きました。私も看護師をしていましたから、患者さんが亡くなる時はたいてい、家族に見守られて旅立つのを知っています。でも、私たちは最期を見てやれなかった」
 「あの子はなぜ、命を奪われなければならなかったのか。いつも考えています。せめて、娘のためにできることをしよう、その死を無駄にすまいと思いました」
 雅志さんと利子さんが旧道路公団を提訴したのは、事故からおよそ三年後、二○○四年九月だった。
 その訴えはこうだ。
 時速百キロ前後で車が行き交う高速道路にキツネが入り込めば、事故が起きることは予想できたのに、十分な対策を取らなかった。安全管理を怠った。
 これは、「動物が出てくる高速道路は危険だ」という当たり前の感覚が出発点になっている。
*有識者委も提言
 訴訟代理人を任された青野渉弁護士(36)=札幌市中央区=は精力的に証拠を集めた。
 旧公団に情報公開請求したところ、真理子さんが亡くなった道央道の苫小牧東−同西インターチェンジ間では、車とキツネの衝突が多発していた。
 旧公団が死体を回収した分だけで、一九九九年二十五件、二○○○年三十四件、事故があった○一年に六十九件、○二年には五十三件と、月平均二件以上を数える。
 なにより、旧公団は真理子さんの事故のずっと以前に、有識者六人による特別委員会を設けて、六年がかりで高速道路への動物の侵入防止策を検討し、八九年に「高速道路と動物」という冊子にまとめていた。
 そこでは、キツネのような土を掘る小動物に対して、目の細かい金網型の柵を、地面とのすき間なしに設置したり、地面をコンクリートで固めたりする方法を示している。
 しかし、事故の翌年、現場付近で行われた対策工事には、真理子さんの犠牲がありながら、それらが一切生かされなかった。
 雅志さんと利子さんは旧公団の考え方が理解できなかった。
           ◇  ◇
 高速道路で娘を失った両親の裁判の軌跡を追った。
(編集委員 村山健)
【写真説明】旧日本道路公団に対する賠償請求が棄却され、無念の表情で会見する高橋さん夫婦と青野渉弁護士(右)=13日、札幌地裁弁護士控室で

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2007/07/20 北海道新聞

娘の声を聞きながら ある交通死の裁判 下

旧道路公団の反論
人間味ない姿勢に憤り


 亡くなった娘のことを繰り返し言い立てられ、そのたびに、親としての後悔と悲しみがよみがえり、しかも、裁判はいつ終わるか知れない−。
 室蘭市の高橋雅志さん(67)と妻利子さん(62)はこの民事訴訟を起こすとき、そうした理由で「つらい思いをしますよ」と弁護士に言われたことを覚えている。
 二人は三年前、旧日本道路公団(現東日本高速道路)の管理責任を問う裁判を始めた。
*過失責任を指摘
 長女真理子さん=当時(34)=が二○○一年十月、道央自動車道でキツネを避けようとして事故死したのは、旧道路公団がキツネの頻繁な侵入も、その防止策も知りながら、放置していたからだと訴えた。
 旧公団は初めから、まったく責任がないと反論してきた。
 高橋さん夫婦を苦しめたのは、真理子さんにこそ、過失があるという旧公団側の言い分だった。それは表現を変えて、何度も指摘された。彼らの最終準備書面には、こうある。
 「減速など基本的措置をしなかったのは、危機回避の判断と行動に過失があったといわざるを得ない」
 「安全運転義務を怠る者までも、完全な道路施設の整備によって救済しなければ、管理瑕疵(かし)(欠陥)が問われるようなことがあってはならない」
 真理子さんをとがめる、そんな文章を読むたびに、二人は「あの晩、娘を引きとめればよかった、もっと話を聞いてあげればよかった」と次々にわき起こる悔恨で胸が張り裂けそうになった。
 そして、真理子さんは二度と戻らないという事実に打ちのめされた。
 旧公団はそれでも、「反撃」の手を緩めない。準備書面で、こんな主張を繰り返した。
 道内の高速道路は延長約五百四十キロ、上下線で千キロを超え、地形や動物なども多種多様だから、どんな動物がいつ、どこに出てくるかを予測するのは不可能だ。それを防げというのは過大な要求だ。もし、侵入防止策を道内全線で行えば、三十九億五千万円かかり、全国に広げると、「極めて莫大(ばくだい)な額に上る」。
*札幌高裁に控訴
 さらに、「本件事故の損害賠償責任を負うとの判例が確立されたならば、膨大な類似の訴訟が提起されることは必至であり、賠償金額も莫大なものとなるであろう」とまで言い切った。
 旧公団の人間味のない姿勢を、高橋さん夫妻は事故直後から感じていた。
 彼らは四十九日が明ける前に、真理子さんがキツネを避けて切ったワイヤの修理代を電話で請求してきたし、夫妻が事故の目撃者を探すため、パーキングエリアにポスターを張らせてほしいと頼んでも、「前例がない」と三カ月も認めなかった。
 二人は、そんな旧道路公団に変わってほしいと願う。
 「私たちはいつも、亡き娘の『声』を聞きながら、裁判をやってきました。人間の命も野生動物の命も守って、という声です。札幌地裁は聞き入れてくれませんでしたが、真実の訴えです。命のための高速道路ができるまで、私たちの裁判は終わりません」
 夫妻は来週にも、札幌高裁に控訴する。
(編集委員 村山健)

【写真説明】刑事裁判から数えて4年余り。山のように集まった資料を読み返す高橋雅志さんと妻の利子さん


2007/07/09 北海道新聞夕刊

妊娠中に交通事故 帝王切開で数時間生きたが…
「胎児は人か」揺れる司法
加害者の過失 札幌立件できず、静岡では有罪判決


 妊婦が交通事故に遭い、帝王切開で生まれた後に赤ちゃんが亡くなった場合、事故の加害者に対し胎児への過失致死罪は問えるか。四年前に札幌市東区で起きた事故では「胎児」は「人」と認められず、昨年三月に起きた静岡県内での事故では、赤ちゃんへの過失致死罪が認められた。刑事裁判に国民が参加する裁判員制度の導入を控えて、司法判断が注目されている。
 「これが人ではないと言えますか」。陳述書に添付された写真は、医療機器に囲まれているものの、小さな赤ちゃんが眠っているようにみえる。「亡くなった桜子です」。札幌市内に住むファイナンシャルプランナー細野雅弘さん(33)は、二○○三年十二月、妊娠八カ月の妻(32)と買い物帰りに事故に遭った。対向車が雪でスリップし、細野さんの車と衝突した。
 車は大破し、助手席の妻の腹部にシートベルトが食い込んだ。妻が搬送された病院で緊急の帝王切開手術が行われ、桜子ちゃんが生まれた。重症仮死状態だった。
 「最後に抱っこしてあげてください」。医師に言われたが、妻は手を骨折して抱くことができず、細野さんがそっと抱き上げる中で呼吸器が止められた。体重一四○○グラム。温かかった体がさーっと冷たくなっていき、「命がこぼれていくように感じた」。急いで妻のおなかに桜子ちゃんをのせた。「いい子ね、ごめんね」。妻が動く右手でわが子を抱きしめた。桜子ちゃんが亡くなったのは生後十一時間後だった。
*夫婦のみ傷害罪
 細野さん夫妻は業務上過失致死での立件を訴え続けたが、札幌地検は夫婦への業務上過失傷害罪だけで起訴。細野さんは桜子ちゃんの写真を添付した陳述書を提出、法廷でも「子ども一人が死んだのに夫婦だけの傷害罪だけでいいのか」と訴えたが、○五年十一月、加害者に業務上過失傷害罪で有罪判決が出された。
 細野さんは「事故に遭わなければ今、桜子と暮らしていた。せめて業務上過失致死で立件し、人として生きた証明をしてあげたかった」と話す。
 細野さんの刑事裁判の判決から約三カ月後。静岡県袋井市で居眠り運転の乗用車が、三日後に予定日の杉山真寿美さんの車に正面衝突。杉山さんは胎盤剥離(はくり)を起こしていたため、帝王切開で男児を出産したが約三十時間後に死亡。母親への業務上過失傷害容疑で加害者は逮捕されたが、地検が罪状を切り替え、昨年六月、静岡地裁浜松支部は、胎児への業務上過失致死罪を認定する画期的な有罪判決を言い渡した。
*水俣判決と同じ
 当時、静岡地検浜松支部の支部長だった検事は「男児は生まれた後に事故が原因で死亡しており、母親への傷害だけではおかしいと検討した。決め手は医者が『(死産ではなく)生産(せいざん)です』と言ったことだった」と振り返る。
 これに先立ち、一九八八年に熊本の水俣病刑事訴訟で胎児性水俣病患者に業務上過失致死罪を認めた最高裁判決があったことも理由に挙げる。検事は「胎児の時に受けた影響で水俣病になり、生まれた後にその影響で死亡したということを認めた水俣判決とまったく同じ構図。生まれたからには人だという普通の判断をした」と話した。
 道内では○四年十二月、室蘭市で夫婦の車がワゴン車に衝突され妊娠中の妻が重傷を負い、胎児が死亡する事故が起きた。この事故をめぐり、札幌地裁室蘭支部は○六年一月、胎児は「人」ではなく「母親の体の一部」とする判決を下している。
 刑法が適用される人の定義は何か。元最高検検事の土本武司・白鴎大法科大学院長は「長年、胎児への傷害罪は適用できないとされてきた。水俣訴訟で流れが変わったとはいえ、胎児への傷害罪や過失致死罪をどうするかという議論が進まないまま現在に至る」と説明する。ただ「現在の発達した医療のもとでは帝王切開で臨月前に人工的に出産した低体重児でも生存の可能性が高い。胎児でも一定時期以降は母体から独立した『人』として法律上認める方向も模索しつつ議論するべきだ」と指摘する。

*胎児が出生後に死亡(傷害含む)した事故と判決例
 2002年9月 鹿児島県内で乗用車が妊娠中女性の車と衝突。生まれた女児に後遺症。03年9月、胎児への業務上過失傷害罪で有罪
   03年6月 三重県内で妊娠8カ月の女性の車にトラックが追突。帝王切開で女児が生まれたが5時間後に死亡。同年9月、胎児含む業務上過失致死傷罪で加害者を起訴、その後、有罪
  03年12月 札幌市で妊娠31週の女性の乗った車とトラックが衝突。女児は11時間後に死亡。05年11月、夫婦への業務上過失傷害罪で有罪
  04年12月 室蘭市で2週間後に出産予定の妊婦の車が追突される。胎児は生後15時間後に死亡。06年1月、母親への業務上過失致傷罪で有罪
   06年3月 静岡県内妊婦の乗用車が衝突。生まれた男児は約30時間後に死亡。同年6月、胎児含む業務上過失致死傷罪で有罪
   06年8月 長崎県内で妊娠中の女性の車に対向車が衝突。生まれた男児は7日後に死亡。07年2月、胎児への業務上過失致死傷罪で有罪

【写真説明】事故現場に立ち、「せめて、業務上過失致死で立件し、桜子の人として生きた証しを残したかった」と話す細野雅弘さん=6月、札幌市


2007/6/20/ 読売新聞

「被害者参加制度」関連法成立、
被害者の会が喜び語る


 犯罪被害者が刑事裁判で被告人質問や求刑を行える「被害者参加制度」の関連法が20日午後、参院本会議で可決、成立した。
 この制度の基礎となった試案を作成した全国犯罪被害者の会(あすの会)のメンバーが成立を受けて記者会見し、喜びを語った。
 「これまで、被害者は裁判の『証拠品』として扱われ、苦しんできたが、これで苦しみは相当軽減される」。2000年の同会設立以来、代表幹事として運動の先頭に立ってきた岡村勲さん(78)は、感極まったように話した。
 かつては日本弁護士連合会の副会長まで務めたが、1997年に妻を殺害されたことで、被害者の地位向上に取り組み始めた。「冷たい弁護士だった。ただただ恥じ入るばかり」。事件前は、被告の権利擁護しか頭になかったという自分を、そう振り返る。
 「妻のために、何か一つ、大きなものを残してやりたい」と考え、自ら提唱した今回の制度。「重罰化につながりかねない」などとして反対する日弁連を“敵”に回すことになったが、国会では圧倒的多数の賛成で成立した。
 「『今日は泣くかもしれないから会見には出たくない』と岡村さんは言っていた」。会見でメンバーの一人が明かすと、上を向き、あふれそうになる涙をじっとこらえていた。

: 刑事裁判に被害者参加、改正刑訴法が成立

 刑事裁判で、犯罪被害者・遺族が被告や証人に質問したり、求刑の意見を述べたりすることを可能にする「被害者参加制度」の新設を柱とした刑事訴訟法改正案などの関連法案が20日午後、参院本会議で可決、成立した。
 来年12月までに施行され、被害者は、被告や検察官と同じ当事者に近い立場で公判に参加できるようになる。翌2009年5月までには裁判員制度も実施され、刑事裁判の在り方は大きく転換する。

 被害者参加制度では、被害者が裁判官の許可を得て、審理に出席し検察官の横に座ることができ、被告人質問のほか、情状に関する証人尋問、事実関係に関する意見陳述、求刑などを行える。殺人や強姦(ごうかん)、業務上過失致死傷などの重大事件が対象となる。
 また、同制度では、被害者が自分の弁護士と一緒に参加することもできる。この場合、資力のない被害者に公費で弁護士を付ける制度を導入するかどうかについて、政府は年内に方針を決める見通しだ。

 民主党は、裁判員制度で一般市民が判断に加わることを念頭に、「被害者の求刑が裁判員らの感情に訴え、量刑が過度に重くなる恐れがある」として、求刑の規定を除外した修正案を参院法務委員会に提出したが、19日の同委で否決された。
 一方、この日成立する関連法案により、〈1〉刑事裁判を担当した裁判官が被害者の賠償請求に対する決定も出す「付帯私訴制度」の導入〈2〉被害者による刑事裁判記録のコピーの制限緩和――などが実現する。


2007/06/14  北海道新聞夕刊

酒類提供者に罰則
同乗者も
改正道交法成立へ


 飲酒運転の厳罰化などを柱とした改正道交法が十四日午後、衆院本会議で可決、成立する。酒類や車両の提供者とともに、同乗者に対する罰則を新設し、ひき逃げの罰則も強化した。九月にも施行される。
 同法は、酒酔い運転の罰則上限を現行の「懲役三年または罰金五十万円」から「五年、百万円」とし、酒気帯び運転は「一年、三十万円」を「三年、五十万円」に引き上げる。
 飲酒運転者への車両提供は、運転者と同等の罰則とし、酒類提供は運転者が酒酔い運転をした場合は「三年、五十万円」、酒気帯びは「二年、三十万円」。同乗者は、運転者に同乗を要求、依頼した場合に、酒類提供者と同様の罰則とする。
 ひき逃げは「五年、五十万円」を「十年、百万円」に引き上げ。飲酒検知拒否は「三カ月、五十万円」で、懲役刑を新設する。
 このほか、七十五歳以上の高齢者に認知機能検査と高齢者標章「もみじマーク」の表示を義務付け。聴覚障害者には車両へのワイドミラー装着を条件に、普通免許取得を認め、障害者用の標識表示を義務付ける。
 後部座席のシートベルト着用も義務化し、子供などの歩道での自転車通行を認める。
 飲酒運転などの厳罰化は二○○一年六月の同法改正(○二年六月施行)以来、六年ぶり。今国会では、自動車運転過失致死傷罪を新設した改正刑法も成立している。

   ◇<表>道交法の飲酒運転の罰則(省略)


2007/6/6 「読売新聞」社説

運転致死傷罪
悲劇をなくすための「厳罰化」だ


 重大な事故を起こして、「うっかりしていた」では済まされない。相応の刑事責任を負うのは当然だろう。
 自動車運転過失致死傷罪を新たに設ける改正刑法が成立、今月12日に施行される。

 厳罰化やシートベルト着用の効果などもあって、交通事故の死者は年間6000人台まで減ってきた。だが、歩行者と自転車の死者が全体の45%を占める。
 こうした交通弱者の犠牲を減らす基本は、ハンドルを握る人のモラルと注意力にある。法改正を機に、一人一人が安全運転への自覚を新たにすべきだ。
 交通人身事故を起こした人には、普通は鉄道事故や労働災害、医療事故の場合と同様に、刑法の業務上過失致死傷罪が適用されてきた。最高懲役は5年だった。今後は自動車運転過失致死傷罪に問われ、最高懲役も7年と重くなる。
 2001年には、刑法に危険運転致死傷罪が設けられた。これに続く交通事故に対する厳罰化だ。
 故意に危険な運転をした者に対する危険運転致死傷罪と違い、前方不注意などが原因で、年間約90万件も起きている人身事故のほとんどに適用される。

 改正のきっかけは、埼玉県川口市で昨年9月、保育園児の列に車が突っ込み、園児4人が死亡、17人が重軽傷を負った事故だ。カセットプレーヤーのテープを替えようとしての脇見運転だった。
 これほど痛ましい事故だったにもかかわらず、地裁判決は業務上過失致死傷罪の上限の懲役5年にとどまった。
 遺族らは最高で懲役20年の危険運転致死傷罪の適用を求めた。しかし、この罪の適用要件は、正常運転が困難なほど飲酒していたとか殊更に赤信号を無視したなど、極めて限定されている。その壁を超えることができなかった。

 裁判長も「危険性や悪質性は際立っているが、法定刑の上限に張り付くほかはない」として、業務上過失致死傷罪の刑が軽すぎることに言及していた。
 遺族などには、懲役を2年引き上げる程度の改正では不十分だとする意見がある。危険運転ではなく不注意運転が原因だとしても、失ったものの大きさを考えれば当然の思いでもあるだろう。

 政府は今国会に道路交通法の改正案も提出している。成立すれば酒酔い運転の懲役は最高3年から5年に、酒気帯び運転も1年から3年になる。改正刑法と併せ、酒気帯び人身事故では懲役が最高6年から10年へ格段に厳しくなる。
 道交法は2002年改正に続く厳罰化だ。今度こそ飲酒運転による悲劇を絶つ契機としなければならない。


2007/05/18, 北海道新聞

「運転致死傷罪」を新設
最高懲役7年に引き上げ
改正刑法成立


 悪質な運転行為による交通事故の罰則を強化するため「自動車運転過失致死傷罪」の新設を柱とする改正刑法が十七日午後の衆院本会議で可決、成立した。
 改正刑法は、現行の業務上過失致死傷罪から交通事故に関する規定を独立させ、最高刑を懲役五年から同七年に引き上げた。二輪車による事故も対象。施行は公布から二十日後となっており、六月中旬からになる。
 悪質な事故をめぐっては、二○○一年の刑法改正で危険運転致死傷罪(最高刑は致死懲役二十年、致傷同十五年)が新設され、罰則強化された。しかし、飲酒や薬物で正常な運転が困難な状態だったことや赤信号を故意に無視したことが立証されなければならず、適用のハードルが高い。このため適用例が少なく、業務上過失致死傷罪との開きを埋める立法措置を被害者らが要望していた。
 今回の法改正では、自動車の運転に限られていた危険運転致死傷罪の適用対象に二輪車を加えることも盛り込んだ。
 今国会では、飲酒運転の罰則を引き上げる道交法改正案も成立する見通し。両法の改正で、酒酔い運転中の過失致死傷の最高刑は懲役七年六カ月から同十年六カ月に、酒気帯び運転中は懲役六年から同十年に強化され、厳罰化が進むことになる。


「北海道新聞」2007/03/26 (夕刊)

<今日の話題>スロードライブ


 十二年前、十七歳の長女千尋さんを交通事故で失った千歳高校の前田敏章教諭が「スローライフ交通教育」を実践している。
 長女をはねた運転者は銀行に午後六時までに着けば振込手数料を節約できる、などと急いでいた。時刻を確かめるのにカーラジオの操作に気をとられたという。風雨の中、歩道のない道を赤い傘をさして歩いていた千尋さんは、五メートルも跳ね飛ばされた。
 「急いでいた」せいで起きる交通事故が多い。私も、冬道の下り坂で追い越して、対向車線のわだちにはまり、あわや正面衝突の体験をした。
  スローライフ交通教育は、主に総合学習の時間に、交通死の具体例から遺族らの気持ちを伝え、車の停止距離や免許制度を考えさせる。命の尊厳の観点から「車優先社会」を問い直す。
 前田さんはこの七年間に、道内の高校などで百十一回講演した。車の有用性に対する考えを変えることを訴えている。
 車は「速く格好よく走る物」という認識から「ゆっくりだが、雨風をしのぎ、荷物も積んで、ドアからドアへ移動できる便利な物。子供や高齢者、病人、障害者に特に必要な物」への転換だ。
 車に限らず、先を急ぐ風潮が日本に広がっていないだろうか。
 注意深く相手の意向を探り合い、互いに受け入れられるまで何度も確認して、新しい方法や取り決めを考え出す。そんな「間」をとることを大事にする文化が失われていないか。 被害者や遺族の声は車社会、ひいては急ぎすぎる社会への警告かもしれない。(上村英生)


「北海道新聞」2007/03/15

札幌で輪禍死障害者の両親
「逸失利益ゼロは不当」
加害者らを提訴へ


 
交通事故で死亡した自閉症の長男=当時(17)=の逸失利益を「ゼロ円」と算定したのは不当だとして、札幌市内の両親が、加害者の運転手と事故当時、長男を介護していたヘルパーらを相手取り、同年代の健常者と同じ逸失利益約四千二百万円を含む約七千三百万円の損害賠償を求め四月上旬、札幌地裁に提訴することが十四日、分かった。これまで、重度の障害者に健常者並みの逸失利益を認めた判決はなく、逸失利益の見直しを求める訴訟は全国でも異例だ。

 両親らによると、重度の自閉症だった長男は二○○五年八月、ヘルパーに付き添われ、初めて路線バスを利用して札幌市内の公園へ行った。バスが公園内の停留所で停車し、ヘルパーが運賃を支払っている間に、長男は道路へ飛び出し、乗用車にはねられ死亡した。
 事故の数カ月後、加害者の代理の損害保険会社が、男性の両親に賠償額の見積もりを提示。長男が受け取るはずの障害者年金を将来の収入と認めず、逸失利益をゼロと算定し、賠償額の総額は慰謝料など千六百万円とした。
 逸失利益は、被害者が生きていれば将来得られたはずの収入で、同じ年代の健常者でも、職種などによって数千万円の差が生ずることもある。一般的に、障害者は仕事に就きにくいため、収入予想額を低く算定され、障害が重度になるほど逸失利益は低くなる。
 両親は「障害者だからといって、命の対価と考えられる逸失利益がゼロ円なのは明らかな差別で、人権を無視している」と訴える。
 両親の代理人を務める児玉勇二弁護士(東京)は「重度の障害者でも発達の可能性はあり、逸失利益に差をつけるのは不合理。少なくとも、法律で定められた最低賃金をベースに算定するべきだ」と話している。道内関係では、旧上磯町(現北斗市)の知的障害児施設で入浴中に死亡し、逸失利益を「ゼロ円」と算定された男性=当時(16)=の青森県に住む両親も、近く同様の訴訟を青森地裁に起こす。

(同37面)
逸失利益ゼロ訴訟
同じ命 なぜ格差
「障害者だから…無念」
遺族*賠償額算定を疑問視


 「息子には、生きている価値がなかったということでしょうか」。重度の自閉症だった長男=当時(17)=を交通事故で失い、逸失利益を「ゼロ」と算定された札幌市の両親は、就労による将来の収入を基本とした、損害賠償額算定の考え方を疑問視する。道内では、この両親のほかにも事故で死亡した障害者の親が、賠償額見直しを求めて提訴するケースが増えており、遺族の訴えは「『命の対価』に差はあるのか」という根源的な問題も投げかけている。
 札幌の両親は、損害保険会社から「逸失利益はゼロ円」と言われた後、複数の弁護士に相談した。弁護士は保険会社から算定の根拠を聞いた上で、両親に「逸失利益がゼロでも仕方ないですね」と言ったという。
 それでも、両親は「愛する子供を失った上に、『息子の命はゼロ円』と言われて納得する親がいるでしょうか」。
 障害者の逸失利益は低いため、裁判になれば通常の慰謝料に三百万円程度を上乗せして、健常者との差をわずかに縮めるのが一般的だ。
 損害賠償論に詳しい吉村良一・立命館大法学部教授(民法)は「子供を失った親の悲しみに差はない。賠償額は逸失利益ではなく、親に対する慰謝料を中心に考えるべきだ」と指摘する。
 札幌地裁小樽支部で二月、車にはねられ死亡した吉川博記さん=当時(26)=の両親が加害者の運転手に損害賠償を求めた訴訟の判決があった。同年代の大卒男性なら一億円をゆうに超えるはずの逸失利益は、判決では五百六十万円しか認めなかった。博記さんが受け取っていた障害基礎年金を収入とみなし、将来の予想額から生活費などを控除して算出した金額だ。
 母親(59)は月に一度、博記さんが戻ってくる夢を見る。知的障害で言葉が話せず、服を着るにも介助が必要だった。「赤ん坊と同じで、人の世話にならないと生きていけない。親が死んでも、人にかわいがられる子になるよう、愛情を込めて育てたのに」とくやしさをにじませる。父親(63)も「障害者ということで金額が低いとなったら、あの子はさぞ無念だろう」と、唇をかみしめた。
 逸失利益の算定について、日本損害保険協会は「健常者の場合、算定方法を定めた法律に従って支払いをしている」とした上で、「障害者には明確な基準はなく、保険会社各社が判断している」と話している。
【写真説明】小樽市内の自宅で博記さんの仏壇を見つめる母親。「あの子が寂しくないように、夜も豆電球をつけておくの」


2007/03/02, 北海道新聞夕刊

飲酒、ひき逃げ厳罰化
道交法改正案を閣議決定


 飲酒運転の刑罰引き上げを柱に、車両、酒類の提供者や同乗者の罰則を新設した道交法改正案が二日、閣議決定された。飲酒運転に絡む道交法改正は二○○一年以来。ほかに自転車の歩道走行の一部解禁や後部座席シートベルトの着用義務化、高齢ドライバーを対象にした認知機能検査の導入なども盛り込んだ。
 政府は今国会に改正案を提出し、飲酒運転に関する規定は公布から三カ月以内の今年秋までに、そのほかは公布一−二年後の施行を目指す。
 改正案は、酒酔い運転の刑罰を現行法の「三年以下の懲役または五十万円以下の罰金」から「五年、百万円」に引き上げ、酒気帯び運転も「一年、三十万円」を「三年、五十万円」とした。
 飲酒運転のドライバーに車や酒を提供した場合の罰則を新設。車両提供はドライバーと同じ刑罰に、酒類提供は酒酔い運転の場合「三年、五十万円」、酒気帯びは「二年、三十万円」とした。
 飲酒運転の容認につながるため「同乗罪」も新設。同乗者が車に乗せるよう要求、依頼していれば摘発対象で、酒酔い運転の同乗は「三年、五十万円」、酒気帯びは「二年、三十万円」。
 ひき逃げも「五年、五十万円」から「十年、百万円」に厳罰化。飲酒ひき逃げの場合、併合罪の上限は現行の懲役七年六カ月が同十五年となる。

*道交法改正案の骨子
・酒酔い運転の刑罰は「5年以下の懲役、100万円以下の罰金」に、酒気帯びは「3年、50万円」に引き上げ
・飲酒運転への車両提供はドライバーと同じ刑罰に。酒類提供は酒酔い「3年、50万円」、酒気帯び「2年、30万」
・飲酒運転の車に要求、依頼して乗せてもらう「同乗罪」を新設
・ひき逃げの刑罰を「10年、100万円」に引き上げ
・後部座席シートベルト着用を義務付け
・子供が運転する場合など自転車の歩道走行を一部容認

2007年3月1日 「朝日新聞」夕刊

「自動車運転過失致死傷罪」創設
法制審部会が要綱案
法案提出へ

 法制審議会の刑事法部会は「自動車運転過失致死傷罪」を創設する要綱案をまとめた。 5日の総会で答申されれば、法務省は関連法案を国会に提出する。交通事故の刑事責任は従来、業務上過失致死傷罪(業過)罪で問われてきた。新たな罪の創設は、「だれでも加害者になりうる」という過失犯への刑のあり方の模索と、遺族や被害者側の「なぜこんなに罪が軽いのか」という声の高まりとのせめぎ合いの着地点だ。
 最高刑は懲役・禁錮7年。業過致死傷罪の上限を2年上回る。業過罪の対象は医療過誤や機械の操作ミスなど幅広いが、最近は上限の5年に近い判決のほとんどは自動車事故だった。「危険運転致死傷罪」(死亡時懲役20年以下)が創設されたものの適用範囲は狭く、遺族側から業過罪の上限の引き上げを求める声が強かった。
 刑法は故意犯の処罰が原則。本来は例外の過失犯をどう厳罰化するのかをめぐり、浮上したのが業過罪から切り離す方法だった。法務省は「自動車自体の危険性や、事故は本人の行為に多分に負うという特性から、切り離すのは合理的だ」と判断。遺族側には10年以上の上限を求める声も強かったが「過失犯の枠組みの中で業過と2倍の開きを作るのは難しい」(法務省)。業過全体の位置づけを考え直す時間はなく、「緊急立法的な措置」として踏み切った。(市川美亜子)


2007/1/18 毎日新聞 ←pdf

交通事故全般の厳罰化を
「北海道交通事故被害者の会」副代表で弁護士
内藤裕次さん
  



2007/1/18 毎日新聞夕刊(大阪)

「交通死軽視の風潮変えたい」
 業禍致死傷罪の最高刑、遺族「10年以上に」要望へ
 法務省も面会受け入れ


 交通事故で家族を亡くした遺族でつくる3団体が29日、法務省を訪ね、業務上過失致死傷罪の最高刑(5年)を10年以上に引き上げるよう要望する。警察庁が昨年12月、飲酒運転やひき逃げの厳罰化を柱とする道路交通法改正試案を発表したが、遺族らは「飲酒やひき逃げは重大事故のごく一部。交通死を軽視する風潮自体を変えなければ事故は減らない」と主張。被害者支援のあり方が模索される中、遺族会が連携して求めた面会を法務省側が受け入れた。
 3団体は▽「交通事故被害者遺族の声を届ける会」(事務局・川崎市、15家族)▽「TAV交通死被害者の会」(同・大阪市、156家族)▽「北海道交通事故被害者の会」(同・札幌市、107家族)。
 68年、業務上過失致死傷罪の最高刑が3年から5年に引き上げられ、交通事故死傷者数は一時半減したが、その後再び増加。各団体に呼び掛けた「声を届ける会」の森本祐二さん(52)=兵庫県川西市=は「10年以上に引き上げれば、多くの命が救える」と主張する。
 TAVは交通事故の起訴率向上なども求める。法定刑引き上げを長年訴えてきた遺族らは、同じような悲しい思いをする人が増えないようにと約1時間、訴える。【林田七恵】

【 関連続報 】

2007/01/30
北海道新聞朝刊

交通事故厳罰化求め 法務省に要望書提出
道被害者の会など


 北海道交通事故被害者の会(札幌市、前田敏章代表)など、交通事故で家族を失った人たちでつくる全国三団体が二十九日、業務上過失致死傷罪の法定刑の最高を現行の懲役五年から同十年以上に引き上げるよう求める要望書を法務省に提出した。
 同会と、川崎市、大阪市にそれぞれ事務局を置く二団体の計十二人が、同省刑事局の法制担当職員と面談。同省は、同罪の法定刑の最高を懲役七年に引き上げることを検討しているが、三団体は「七年では、最高で懲役二十年の危険運転致死傷罪に比べて軽い」と、さらなる厳罰化を求めた。
 要望書提出後、前田代表は「法体系上、急激な引き上げは難しいとのことだったが、被害者をなくすために、さらに厳罰化に踏み込んでほしい」と話した。


2006年12月31日 日本経済新聞

人身事故に重い罰・刑法に新規定
法務省方針


 「危険運転致死傷罪」(死亡時懲役20年以下、負傷時15年以下)が適用できない交通事故について、法務省は刑法に新たな規定を設ける方針を固めた。「業務上過失致死傷罪」(懲役・禁固5年以下または罰金50万円以下)を適用していた脇見運転、速度超過などドライバーに重い過失がある人身事故を対象とし、罰則も引き上げる。2月に法制審議会に諮問し、2007年通常国会への刑法改正案の提出を目指す。

 飲酒運転、ひき逃げについては、警察庁が今月28日、罰則を引き上げる道路交通法改正試案をまとめたばかり。刑法の危険運転致死傷罪の構成要件が厳しく立件が難しいとされるため、法務省は新たな規定が必要と判断した。

※記事全文はPDF→2006/12/31日経新聞


2006/12/28, 北海道新聞夕刊

道交法改正試案
「逃げ得対策強化を」
飲酒運転事故の遺族
予防の重要性も強調

 
「厳罰化は一歩前進だが、飲酒運転の根絶にはアルコール依存症や『逃げ得』させないための対策が必要」。交通事故の遺族らは、道交法改正での罰則強化を評価する一方、批判が高まる中でも飲酒運転をやめない悪質ドライバーらの対策強化を訴えている。
 二○○三年二月に当時十六歳の二男を飲酒運転によるひき逃げで失った江別市の高石洋子さん(44)は、厳罰化を求め続けても鈍かった国の対応を思い出した。「それを思えば、よくここまで引き上げたと思う。でも、もっと早ければ(幼児三人が死んだ)今年八月の福岡の追突事故も起きなかったかもしれない」と語る。
 事故後の○三年八月に始めた、飲酒・ひき逃げの厳罰化を求める署名活動は三十万人が集まった。「飲酒を隠すために逃げたり、酒や水を飲んだりの逃げ得を許さないためにも、道交法の改正だけではなく新たな法律の制定を急ぐべきだ」と法整備の拡充を求めた。
 一九九五年に千歳市内で前方不注意のワゴン車にはねられ、当時十七歳の長女千尋(ちひろ)さんを失った北海道交通事故被害者の会代表の前田敏章さん(57)=札幌市西区=も「福岡県で起きた飲酒運転による死亡交通事故を受け、比較的早い対応だった」と評価する。一方で、「最高懲役が二十年の危険運転致死罪との格差は残る。飲酒運転事故の『逃げ得』をなくすため、罰則は上限だけでなく、下限も引き上げるべきだ」と話す。また、前田さんは「飲酒運転を続ける人は確信犯。一度摘発された人の車には、アルコールを検知すると車が発進できない装置を搭載させるなどの対策が必要」と事故の予防策の重要性を強調する。
 九月に埼玉県で保育園児らの列にライトバンが突っ込み四人が死亡、十七人が重軽傷を負った事故で、運転手が業務上過失致死傷罪(最高懲役五年)で起訴されたことに触れ、「危険運転致死傷罪の適用上の不備についても見直しを進めるべきだ」と話した。
*シートベルト後部座席も義務
 警察庁は二十八日公表した道交法改正試案に、自動車の後部座席のシートベルト着用を義務付けることも盛り込んだ。高速道路で違反した場合、ドライバーに行政処分の点数一点を付加する。
 昨年一年間に起きた交通事故で、後部座席のシートベルトを着用していなかった人の致死率は着用していた人の約四倍に上っている。
 しかし現行法では、着用は努力義務にとどまっており着用率は低い。警察庁と日本自動車連盟が十月に実施した調査では、一般道での着用率は運転席が93・8%、助手席が83・4%だったのに対し、後部座席はわずか7・5%だった。
 警察庁は二○一○年までに後部座席の着用率を50%以上にするとの目標を掲げており、義務化に踏み切った。違反点数の付加は、当面は被害軽減効果が大きい高速道路を対象にし、効果を見ながら一般道への適用拡大も検討する。


2006/12/28, 北海道新聞朝刊

交通事故で植物状態の患者治療
道内に専門病床
国交省行政法人来年度開設
運営は民間委託


 国土交通省所管の独立行政法人「自動車事故対策機構」(東京)は来年度、交通事故で植物状態になった被害者の治療、介護にあたる専門病床を道内に新設する。治療設備や人員が整った民間病院に運営委託し、ベッド数は十−二十床程度の見込み。委託先は未定。
 同機構は全国四カ所に交通事故の後遺障害者専用病院を開設しているが、道内は空白地域だった。
 国交省によると救命医療の発達で交通事故の死者は減少傾向にある一方、重い後遺症が残る人は増えている。被害者対策を進める同機構が介護料を支給している重度障害者は三月末現在、全国で約四千人(道内百三十七人)。このうち、脳損傷で植物状態になった人は約七百人(同三十六人)に及ぶ。
 これらの患者は、人手や病院収入などの関係から一般病院では敬遠されがち。同機構は一九八四年から順次、専門の「療護センター」を仙台市と千葉市、岐阜県美濃加茂市、岡山市に計二百三十床建設してきた。いずれも北海道からは遠く、道内の患者は、入所を断念するケースがほとんど。在宅介護を強いられ、家族の精神的、肉体的負担も大きかった。
 療護センターには患者の脳の状態を把握する高度な医療機器をそろえており、意識回復の兆しを正確にとらえるため、同じ看護師が一人の患者を継続的に受け持つなどのシステムも採用している。
 同機構は今回、財政上の問題から新規のセンター建設は断念した。委託先にもできる限り、既存センター並みの設備やシステムを求める方針。来年夏までに条件を決めた上で、公募などで委託先を決定する。開業は秋以降の予定だ。
 同機構は道内同様空白地帯の九州にも来年度、同様の病床を新設する。


2006/12/29 北海道新聞

ひき逃げ犯よ 謝って
真狩から 本紙連載「輪禍死」に寄せて
28年前、夫が被害 重い脳障害残る
苦しみ、時効後も


 【真狩】「私たち家族にとって、つらい気持ちが消えない限り、時効なんてないんです」。十二月中旬、北海道新聞で連載した「輪禍死 消えぬ悲しみ」を読んだ後志管内真狩村の女性から一通の手紙が寄せられた。二十八年前、夫がひき逃げに遭い、脳に重い障害が残り、その後の人生が一変。犯人が捕まらず時効となったことによる、やり場のない苦悩を便せん九枚にしたためていた。家族の夢まで奪った事件は、長い年月を経ても、一家の記憶から消えることはない。(報道本部 近藤憲治)
 年の瀬も迫った二十六日、二○−三○センチの積雪に覆われた真狩村の住宅に、娘に付き添われた初老の男性が帰ってきた。「じいちゃん、元気だった?」。小学五年生の孫が笑って出迎えた。
 男性は北広島市の障害者授産施設に入所している気田幹雄さん(64)。妻光子さん(58)が待つ、長女直子さん(36)夫婦宅で正月を過ごすため、四カ月ぶりに真狩に戻った。
 幹雄さんは一九七九年一月、三十六歳の時、同僚と飲食し、歩いて自宅に帰る途中、車にはねられた。車はそのまま逃走した。搬送された札幌の病院で、医師から「助かっても植物状態だろう」と告げられた。
 ある日、介護に疲れた光子さんが、小学二年生だった直子さんに「死にたい」と漏らした。直子さんは目に涙をためて言った。「何でも我慢するから。私、死にたくない」。その後、幹雄さんは奇跡的に意識を戻し、三年半かかって、つえをついて歩き、簡単な会話ができるまでに回復した。
 退院して自宅に戻っても、地獄のような日々が続いた。左半身と言語に重い障害が残り、二十年近く勤めた農協のでんぷん工場を辞めた。ひき逃げ被害者に対する政府保障金も、治療費と生活費に消え、中古住宅を買う夢もかなわなかった。
 幹雄さんは、感情を自制できず家族に手をあげるようになった。「お父さんが生きながらえたのが本当によかったのか、悩んだこともあった」。直子さんは打ち明ける。
 犯人も分からず、八四年に時効を迎えた。もう捕まることのない犯人への憎しみで、家族は絶望していた。そんな一家を見かね、担当医が幹雄さんを諭した。「このままだと、子供たちの心が離れてしまう。別れて暮らし、父親が自立して頑張る姿を見せてはどうか」
 八六年に幹雄さんは、障害者授産施設に入り、今は施設内で洗濯物を整理する仕事をしている。光子さんも真狩村の高齢者生活支援施設で働く。
 間もなく事件から二十八年になる。幹雄さんは今も、寝る前に悔しさが込み上げてくるという。施設に入ってから、家族がそろうのは年に数回だけだ。それでも、光子さんは「離れて暮らすようになって、『お父さん、今、何しているかな』と思えるようにもなった」とほほ笑む。
 「犯人も事件のことを忘れたことはないと思う。だから、一言でいい。名乗らなくてもいいから、お父さんに謝罪の手紙を送ってほしい」。直子さんの言葉は、今年も全国で相次いだ、ひき逃げや飲酒運転の被害者や家族の思いを伝えているようだった。
 道警によると、今年、道内で二十七日現在、死亡、重傷ひき逃げ事件は二十一件発生し、このうち十八件で容疑者が逮捕された。摘発率は八割を超えている。
<事件の概要>
 1979年1月17日未明、後志管内真狩村の道道で、気田幹雄さんが倒れているのをタクシーの運転手が発見。気田さんは頭部をひかれていた。気田さんの着衣に、油や土が付着していたことから、警察は大型トラックによるひき逃げ事件として捜査したが、犯人を逮捕できず、5年後の84年に時効となった。
【写真説明】正月を家族と過ごすため長女宅に戻った幹雄さん。この日、初めて28年前の事件のことを孫を前にして話した=26日、後志管内真狩村


2006/10/13 北海道新聞

亡き妻の願い 弁護士に
挑戦6度 交通事故被害者の会・内藤さん
「同じ立場で悩む人、助けたい」


 八年前に交通事故で妻を亡くした札幌市中央区の行政書士内藤裕次さん(44)が、「弁護士になって事故で苦しむ人々を助けたい」と六度目の挑戦で司法試験に合格し十二日、活動を始めた。北海道交通事故被害者の会副代表も務める内藤さんは「妻の死で私の人生は一回終わった。その死を無駄にしないためにも、仕事に全力投球したい」と誓いを新たにしている。
 内藤さんの妻志津子さん=当時(36)=は一九九八年二月、家族で住んでいた千葉県柏市内で道路を横断中、トラックにはねられた。内藤さんが病院に駆けつけた時は脳死状態だった。結婚前、看護師をしていた志津子さんは二人の子供に手がかからなくなったため、復帰を決め、張り切っていた時だった。
 息を引き取るまでの一週間、内藤さんは付きっきりで寄り添った。妻の顔を見つめていると、声を感じた。「あなたにはやるべきことがある。交通事故で困っている人を助けてあげて」
 トラックを運転していた三十代の男が過去に人身事故を起こしていたことは、悔しさを倍増させた。それなのに簡裁の判決は罰金約五十万円。「実刑ではないのか」。内藤さんは疑問を感じた。
 内藤さんは「被害者という同じ立場で、苦しみ悩む人を助けたい」と弁護士を目指すことを決意したという。勤めていた機械メーカーを辞め、子供を連れて札幌の実家へ戻り、三十六歳で司法試験への挑戦を始めた。貯金を取り崩しながら暮らし、二○○一年に行政書士の資格を取得し事務所を開いた。○四年、ついに司法試験の合格証書を手にした。志津子さんの仏前に供え、「受かったよ」と報告した。
 今月初め、司法修習を終え、札幌の弁護士事務所に就職した。
 死亡交通事故をめぐり、遺族には「裁判では加害者の供述が中心となり公正さに疑問がある」「自賠責保険の限度額が低くて十分な損害賠償を得られない」などの不満が強い。内藤さんは「運が悪かったからと被害者は軽視されている。社会の意識改革が必要」と訴える。
 道交通事故被害者の会は十四日午後一時半から札幌市中央区の「かでる2・7」でフォーラム「交通事故被害者の尊厳と権利をめざして」を開く。内藤さんはそこで法律家の立場から意見を述べる。入場無料。問い合わせは同会事務局(電)011・233・5130へ。
【写真説明】志津子さんの遺影の前で「交通事故を人ごとと思わないで」と話す内藤裕次さん


2006/10/16 北海道新聞夕刊

交通事故被害者の心くんで
公正な裁判を求め札幌でフォーラム


 交通事故被害者の権利や尊厳を考える「フォーラム・交通事故」が十四日、札幌市中央区の「かでる2・7」で開かれた。
 北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)の主催で約百人が参加。遺族ら四人が、公正な裁判の実施などを訴えた。
 このうち、三年前に事故で十四歳の長女を亡くした白倉博幸さん(35)=空知管内南幌町=は、「公判前整理手続き」で行われた刑事裁判を振り返り、「非公開で、手続きに参加できない被害者側の犠牲で成り立っている」と批判。同会副代表で弁護士の内藤裕次さん(44)=中央区=は「事故の原因究明などのため、被害者側を捜査に参加させるべきだ」と指摘した。
 また、三年半前、RVにひき逃げされ、十六歳の二男を亡くした高石洋子さん(44)=江別市=は、飲酒ひき逃げの厳罰化を呼び掛けた。
【写真説明】交通事故被害者が裁判のあり方などについて訴えたフォーラム


2006/09/12 北海道新聞、社説より

飲酒運転
法が追いつかない現実
(9月12日)

 福岡市でRVが飲酒運転の車に追突されて海に転落し幼児三人が水死した。この事故を受けて、警察がきょうから全国で、異例の飲酒運転取り締まり強化週間を実施する。
 交通事故死者が減っているのに、飲酒死亡事故の発生件数は増えている。福岡の事故後も飲酒運転の事故が後を絶たない。
 危険運転致死傷罪の新設などで厳罰化したにもかかわらず、効果が薄れているとの指摘がある。取り締まりを強化するだけではなく、法律の問題点を洗い直すべきだ。
 一九九九年、東名高速道路で飲酒運転の車に追突されて幼女二人が死ぬ事故が起きた。これを機に厳罰化を求める声が広がり、二○○一年十二月に新設されたのが危険運転致死傷罪だ。
 翌年六月の道交法改正では、酒酔い運転が二年以下の懲役などから三年以下の懲役などに厳罰化された。酒気帯び運転の基準も厳しくなった。
 その後、飲酒運転事故が急減したが、ここ一、二年は横ばいだ。厳罰化の限界が見えたという声もある。
 危険運転致死傷罪は「故意の危険な運転の結果、人を死傷させた」ことを対象とするため、立証が難しい。実際の適用は、人身事故の0・03%にとどまっている。
 江別市で○三年に高校生が朝、ひき逃げされ死亡した事件では、夕方拘束された容疑者は酔いがさめていた。飲酒は立証されず、業務上過失致死と道交法違反で立件された。
 危険運転致死傷罪は最高で懲役二十年だが、従来の業務上過失致死傷罪は道交法違反(ひき逃げ)を合わせても懲役七年半。飲酒運転で事故を起こした場合、被害者を救助せずに逃げた方が罪が軽くなる可能性がある。
 飲酒ひき逃げが後を絶たないのは、危険運転致死傷罪の抑止力が働かない結果とも言えるのではないか。
 ひき逃げの検挙率は近年は二割台と、十年前の七割から大幅に低下している。昨年のひき逃げ事件数は約二万件と十年前の三倍に増えているためで、捜査が追いついていない。
 警察庁は、ひき逃げの厳罰化を検討している。だが事故にかかわる他の法定刑とのバランスをとる必要がある。抜け穴がないようにしないと危険運転致死傷罪の二の舞になりかねない。
 警察がしっかり捜査し、ひき逃げの検挙率を上げることが先決だろう。六月から駐車違反取り締まりの民間委託が始まり、来年度まで三カ年かけて全国で警察官一万人を増員中である。人手不足を言い訳にはできない。
 飲酒運転の常習者も多いだろう。意識を変えるため違反者全員に酒害教育を受けさせるのも一案ではないか。
 モラル向上にも社会全体で取り組み、飲酒事故の犠牲者を減らしたい。


2006/05/14 北海道新聞

交通犯罪 厳罰化を
事故被害者の会が総会


 交通事故の被害者や遺族への待遇改善を訴える「道交通事故被害者の会」(前田敏章代表)は十三日、本年度定期総会を札幌市内で開き、交通犯罪の厳罰化や母体内の胎児への補償などを国や警察に要請していくことを盛り込んだ本年度活動計画を承認した。
 総会後の交流会では、実況見分調書など事故記録の開示について青野渉弁護士は「加害車両やスリップ痕の写真など当たり前の証拠すら保全されていないケースがある」と指摘して、「ずさんな捜査を監視するためにも、早期に開示させる特別法が必要だ」と話した。
 参加者からは法制度の不備を指摘する声が相次ぎ、二○○三年に二男を交通事故で失った江別市の高石洋子さん(44)は、ひき逃げの厳罰化を求めた十五万人を超える署名を歴代法相に提出したことを報告。「卑劣な犯罪をなくすためには法改正しかない」と訴えた。


2006年1月1日「北海道新聞」

道内交通死ワースト返上
娘失った前田敏章さん
願いは一つ「事故ゼロ」
調書開示、厳罰化求める


 十四年ぶりの全国ワーストを返上した二○○五年の道内交通死。北海道交通事故被害者の会代表の前田敏章さん(56)=札幌市西区=は「ワースト返上が終着点ではない。悲惨な事故がなくなるまで、活動を続ける」と、あらためて長女の遺影に誓う。悪夢の日から十年余り。「娘の死を無駄にしたくない」との思いが、事故ゼロへの活動に駆り立てる。
 「娘のことを『思い出す』ということはないんです。この十年、一瞬たりとも忘れたことなどありませんから」
 前田さんの長女千尋(ちひろ)さんは一九九五年十月二十五日、帰宅途中に前方不注意のワゴン車に後ろからはねられ、亡くなった。十七歳、高校二年だった。
 千尋さんをはねたのは当時三十代の女性だった。業務上過失致死罪で、禁固一年、執行猶予三年の刑を受けたが、「バイクを盗んだより軽い刑」と知り、納得できない思いが残った。苦しみ、悩んだ末、「事故をなくすことが供養になるのでは」と思うようになった。
 九九年に交通事故遺族らによる「被害者の会」の結成に参加。二○○○年から代表を務め、会員らと交代で免停処分者講習や高校、矯正施設などに年五十回ほど出向き、約五万人に交通事故の悲惨さを訴えてきた。「残された親」の思いを伝える地道な活動だが、死者減に少しでも役立ったのなら、うれしいと思う。
 ただ、「事故件数や負傷者数がもっと減らなくては、もろ手を挙げて喜べない」と話す。
 近年、死には至らないものの、脳外傷が原因で記憶力や思考力が落ちる高次脳機能障害などの後遺障害者が増えている。児童・生徒の交通事故負傷者数も九七年以降、年間二千人台(道内)から減っていない。「道路を歩き、自転車に乗るという普通の生活が危険にさらされている」
 被害者の会は○二年、道と道警に、交通安全運動の目標を「被害ゼロ」とする要望書を提出した。「遺族にとって、交通事故は通り魔殺人と同じ。『車社会だから、死者がいても仕方がない』との風潮を改め、事故をゼロにするための対策を考えるべきだ」と語る。
 昨年は「犯罪被害者等基本法」が施行され、事故被害者や家族の尊厳の保障が権利として認められた。法の趣旨を生かすためにも、被害者の会として、事故調書の送検前の開示や、原因特定に向けた衝撃記録装置の車への装着義務化、加害者の刑罰や免許制度の一層の厳格化などを望んでいる。
 千尋さんが生きていたら、今年で二十八歳になる。「結婚していれば、孫と一緒に正月を迎えていたかもしれない。交通事故はそうした夢を奪った」。月命日のクリスマスから年末年始のにぎわいがつらく、年賀状に「おめでとう」とは書けなくなった。
 ○五年の道内交通死は三百二人。全員に未来があり、夢があった。それぞれの遺族が前田さんと同じような気持ちで新年を迎えた。
【写真説明】事故前年に千尋さんがボーイフレンドから譲り受けた愛犬「サム」と前田さん。散歩に出るたび、千尋さんを思う


2005年11月28日「北海道新聞」

「犯罪被害者週間を」
基本法成立1年、東京で大会
札幌の団体代表が講演


 犯罪被害者等基本法が昨年十二月に成立して一年になるのを機に、制定記念全国大会が二十七日、東京・丸ノ内の丸ビルホールで開かれた。被害者同士が支え合う活動などに取り組むグループが集まり、北海道交通事故被害者の会(札幌)の前田敏章代表も講演を通して被害者の人権保護などを訴えた。

 被害者支援の国や地方自治体の責務を定めた同法は四月に施行され、政府の検討会が二十一日、同法に基づいて支援策の基本計画案をまとめた。
 大会は犯罪被害者自助グループネットワークなどが主催し、全国から十七グループが参加。被害者同士の交流会や、医師や弁護士を招いた勉強会といった活動内容を紹介した。また、殺人や飲酒運転事故などで突然子供や配偶者を奪われた苦しみを訴え、同法に基づく被害者への物心両面の支援や警察の捜査情報開示などを求めた。
 前田代表は講演で、被害者が権利を主張することに対し「自分本位だ」「賠償さえされれば済む」といった偏見が一部にあることを指摘。「(啓発活動に取り組む)『被害者週間』を創設すべきだ。誤解や偏見をただすためにも自助グループの活動は重要」と訴えた。
【写真説明】講演で「犯罪被害者に理解を」と訴える北海道交通事故被害者の会の前田代表

2005年11月27日 (日) 「朝日新聞」

犯罪被害者ら全国大会

 全国17の犯罪被害者自助グループと、全国被害者支援ネットワークが27日東京・丸の内で、「犯罪被害者等基本法制定記念全国大会」を開いた。「北海道交通事故被害者の会」の前田敏章さんが「会で初めて、心おきなく話せる仲間ができた」と、自助グループの大切さを講演。犯罪被害者等基本計画に関しては、被害者の知る権利をさらに求める意見や、警察発表についての意見も出た。
 交通遺児だった東京・日野市議の菅原直志さんは「自分がもしこの世を離れなければならなくなったとき、その理由を家族に伝えてもらうのは、人間の最後の人権だ」。また、被害者の実名・匿名問題について、大阪教育大付属池田小事件の遺族・酒井肇さんは「警察が判断するのは好ましくない。被害者の意向を踏まえてほしい」と話した。「被害者も一人の人間として尊厳があり、名前はその象徴の一つ。匿名はその価値や意味を奪う。私たちの娘も小2女児でなく、愛情を込めた名前がある。実名で報道されてもその尊厳が尊重される社会になるべきだ」という。


2005年11月13日「毎日新聞」北海道版

妊娠9カ月 交通事故被害
赤ちゃん死んだのに・・・

「致死」適用に法の壁
札幌地検 苦渋の立件断念


 妊娠9カ月で交通事故の被害に遭った女性(30)が事故の影響で胎児を失った。加害者を業務上過失致死罪に問えるか否か−−。札幌地検は検討を重ねた結果、致死罪での立件を断念し、けがをした女性と夫(31)に対する業務上過失傷害罪で加害者を起訴した。胎児は帝王切開で生まれ、11時間の命だった。「胎児に人権はないのか」。夫妻は釈然としない思いを抱き続けている。【真野森作】

◇ 帝王切開 わずか11時間の命
 胎児は女の子。仮死状態で取り出され、人工呼吸で息を吹き返したが、翌朝、夫妻の目の前で息を引き取った。「手の中でどんどん冷たくなっていった。それが子供に触れた最初で最後。何もしてあげられなかった」。夫は無念の思いを口にする。妻は意見陳述書に「苦しい思いだけさせて死なせてしまい、涙を流して娘に謝りました」とつづった。2人の初めての子供。春に生まれるからと名前を「桜子」と決め、ベビーベッドや服も用意していた。
 事故は03年12月、札幌市東区で起きた。年末の買い出しに出かけた帰り道、凍結路面でハンドル操作を誤った対向車が中央線を越え、夫妻の車に衝突。運転席の夫は鼻骨骨折、妻は左手骨折の上、下腹部を強く圧迫された。
 事件を自ら担当した札幌地検の依田隆文交通部長にとっても初のケースだった。法務省刑事局にも照会したが、致死罪での立件は困難との結論に達した。「刑法上、『人』として扱われるのは母体から胎児の一部が露出した時点から。今回のケースは母体内で危害を受け、生後11時間で死亡したため、『人』として扱えない。過失規定のない堕胎罪とのバランスも考えた」と説明する。
 「私たちは法の範囲でしか動けず、感情で押し切れない。しかし、医学の進歩に法律がついていっていないのかもしれない……」。依田部長は胸の内を語った。
 加害者の男(35)を今年9月、起訴した。論告に「十分人間と呼ぶに足りる状態だった胎児を死に至らせた結果は極めて重大」と記載し、禁固2年を求刑した。判決は11月末に言い渡される。
 夫は地検の配慮に感謝しつつも、「今の刑法は胎児の人権を担保していない」と悔しさをにじませる。事故後、精神的に不安定になった妻を支えるため仕事を辞めた。現在は小児医療に携わろうと大学に通う。
 交通事故の影響で早産で生まれた女児が36時間後に死亡したケースで、秋田地裁は79年の判決で「刑法上、女児は『人』になったと言えず、胎児の延長上にある」として業務上過失致死罪を適用しない判断を示した。

◇ 幅広い視点が必要
 北海道大大学院法学研究科の小名木明宏教授(刑法)の話
 胎児は生物学的には「ヒト」だが、刑法上の「人」として扱うのは難しい。現行刑法を変えるとすれば、全体のバランスをとるために大手術が必要だ。「ヒト」はいつから「人」として扱われるか、どのように扱われるべきかを幅広い視点で考えるべき時期に来ているのは確かだ。

◇ 【ことば】胎児への加害行為
 第三者による胎児への加害行為に対しては、妊婦の同意を得ずに自然な出産の前に胎児を母体から分離する行為を罰する「不同意堕胎罪」(懲役6月〜7年)が刑法にあるが、一定の条件下で人工妊娠中絶を認める母体保護法との関係もあり、事実上死文化している。適用は故意犯に限られ、過失規定はない。

2005/11/28, 北海道新聞朝刊

胎内時に事故
赤ちゃんは11時間生きた
過失致傷で起訴 父母は「なぜ」
札幌地裁きょう判決
地検 求刑に重大性反映


 
二年前の冬、交通事故が原因で、一人の「赤ちゃん」が命を落とした。事故を起こした男性会社員はこの秋、在宅起訴された。罪名は業務上過失致傷。赤ちゃんは妊娠九カ月目の胎児だったため、母親の体の一部とみなされ、死亡事故とならなかったのだ。「なぜ、致死罪ではないのか。胎児は一人の人格ではないのか」。赤ちゃんの父母である札幌市内の夫妻は釈然としない思いを抱えたまま、二十八日、札幌地裁で男性の判決を迎える。
 事故は二〇○三年十二月二十七日、札幌市東区で、夫妻が年越し準備のために出かけた帰り道で起きた。凍結路面でハンドル操作を誤った石狩市内の会社員(35)の乗用車が対向車線から飛び出し、夫妻の車に正面衝突。運転していた夫は鼻骨骨折、妊娠中の妻は左手や肋骨(ろっこつ)を折り、胎盤剥離(はくり)も。
 搬送先の病院で、緊急帝王切開により出産した。女の子だった。体重は千四百グラムで仮死状態。懸命の治療もむなしく十一時間後に亡くなった。「桜子」。既に決めていた名前を出生届と死亡届に書き込み、同時に提出した。
 刑法では、胎児は体が一部母体の外に出るまでは人ではなく母親の体の一部とされる。夫は札幌地検に訴えた。「業務上過失致死で立件してほしい」。地検も検討したが断念した。一九七九年の秋田地裁判決が事故による早産の後、三十六時間生存した子に対する「致死」の成立を否定、母親への「致傷」と認定していた。
 札幌地検の依田隆文交通部長は「夫妻の感情は理解できるが、法的判断は厳格にせざるを得なかった」と話す。同地検は出産後十一時間生きた子供を「人」ではなく「胎児の延長」と判断した。
 ただ、刑法は業務上過失致傷罪と同致死罪を条文中では区別せず「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は五年以下の懲役もしくは禁固または五十万円以下の罰金に処する」と定めている。依田部長は「事案の内容に応じた適正な求刑は可能だ」とする。
 地検は論告で「十分人間と呼ぶに足りる状態の胎児を死に至らせた結果は極めて重大」と指摘し、禁固二年を求刑した。
 夫は「人一人を死なせたという認識を持たせたい。そのためにも罪名にこだわりたかった」と語る。事故後、精神的に参ってしまった妻を支えるため、勤務先の会社を退社。事故などで障害を被った人たちのケアをしたいと、昨春から大学に通う。

*期間での区別議論を
 首都大学東京の木村光江教授(刑法)の話 今回のケースで致死の立件は難しい。地検は起訴事実などでかなり踏み込んだのではないか。母体から生まれ出た後の生きた期間によって胎児が「人」かどうかを区別してもよいのか、議論があってもいいと思う。

2005/11/28, 北海道新聞夕刊

交通事故直後に生まれ死亡
胎児 人と認めず

札幌地裁判決 被告の会社員有罪


 
二○○三年十二月、札幌市東区で乗用車の夫婦が負傷、結果的に妊娠九カ月の胎児が死亡した交通事故で業務上過失致傷の罪に問われた石狩市内の男性会社員(35)の判決公判が二十八日、札幌地裁であった。川田宏一裁判官は被告男性に禁固二年、執行猶予四年(求刑・禁固二年)を言い渡した。
 判決理由で川田裁判官は「必要な注意義務を怠った事故で、酌量の余地はなく、新たな命の誕生を待ちわびていた夫妻の心痛は筆舌に尽くしがたい」と指摘。胎児については起訴状通り、人ではなく母親の体の一部と認定した。執行猶予の理由については「あまり無謀な運転ではなかった」などと述べた。
 判決によると、被告男性は同年十二月二十七日、札幌市東区東雁来町の道路でハンドル操作を誤り、札幌市内の男性(31)の乗用車と衝突。男性と同乗していた妊娠九カ月の妻(30)に骨折などのけがを負わせ、妻の胎盤剥離(はくり)を誘発。搬送先の病院で出産した女児は十一時間後に死亡した。
 検察側はこの事件で、胎児の死亡についての責任を問う業務上過失致死罪での立件はしなかったが、起訴状に「妻の体の一部である胎児に胎盤早期剥離に起因する傷害を負わせた」との一文を加えていた。判決後、被害者の男性は「判決は子供の死亡についても配慮してくれたとは思うが、執行猶予にする理由は(納得できる部分が)なかった」と語った。


2005/10/23 「北海道新聞」

交通事故被害者どう守る
札幌でフォーラム


 今年四月に施行された、犯罪被害者やその家族を支援する犯罪被害者等基本法について考えるフォーラム「交通事故被害者の尊厳は守られているか」が二十二日、札幌市中央区のかでる2・7で開かれた。
 北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)の主催で、約六十人が参加した。
 同法の意義や内容の説明に続き、交通事故で家族を失った遺族や事故に遭った被害者三人が体験談を交えて、同法の問題点などを指摘した。
 このうち、二年半前に交通事故で長男=当時(19)=を亡くした山下芳正さん(旭川)は「警察の事故説明は簡単で、こちらの疑問に対する答えはあいまい。被害者である息子が悪いような言い方もされ、ストレスで心身ともに疲れ切った」と振り返った。
 これを踏まえ、国が同法施行に伴う具体的な基本計画を策定する上で、供述調書の開示や行政による遺族への精神的ケアなどを重視すべきだと訴えた。
(嶋田直純)
【写真説明】交通事故の被害者の立場から犯罪被害者等基本法を考えたフォーラム


2005/10/19 「北海道新聞」夕刊

犯罪被害者に「知る権利」を
22日に札幌でフォーラム
市民団体 法廷質問制度を要求


 犯罪被害者や家族を支援する「犯罪被害者等基本法」の施行に伴う具体的な基本計画策定に、道内の関係団体から注文が出ている。同法が犯罪被害者らに「個人の尊厳が尊重・保障される権利がある」と明記した点は評価する一方、「知る権利」の位置づけが不十分だとして、「北海道交通事故被害者の会」(前田敏章代表)は「実効性のある支援策を」と国に要望している。
 基本法は四月に施行された。同法を基に、内閣府の犯罪被害者等施策推進会議が八月に発表した基本計画の骨子案は、《1》損害回復と経済的支援《2》心身両面の被害回復《3》刑事手続きへの関与拡充《4》支援の体制整備《5》国民の理解増進−を重点課題とした。計画は年内に閣議決定される見通しだ。
 十年前に交通事故で長女=当時(17)=を亡くした前田代表(56)は、「被害回復の権利や二次被害を受けない権利を正面から『権利』ととらえ、被害者の視点に立った施策の必要性を指摘した点は画期的だ」と指摘。半面、「知る権利や刑事手続きに参加する権利などについて踏み込んだ内容になっていない」と不満を述べる。
 九月上旬に札幌で内閣府が開いた意見募集会で、同会は十一項目の意見書を提出。被害者の求めに応じ、交通事故調書や鑑定報告書などを送検前でも速やかに開示することや、刑事裁判で自ら加害者に質問し証拠提出できる制度の実現を明確に位置付けるよう求めた。
 十月二十二日には札幌でフォーラムを開催する。「交通事故被害者の尊厳は守られているか」をテーマに、社会的支援について市民と意見交換し、その内容は十一月二十七日に東京で開かれる犯罪被害者の全国大会で前田代表が報告し、国への働き掛けを強める。
 フォーラムで提言する札幌弁護士会「犯罪被害者支援委員会」の山田暁子弁護士は「被害者には突然の悲しみに加え、さまざまな法的問題が降りかかる。被疑者や刑事被告人に対する国選弁護人制度のように、刑事事件の被害者に対しても弁護士が国費で法的に支援する制度が必要だと思う」と話している。
 フォーラムは午後一時半から、札幌市中央区北二西七の「かでる2・7」で。無料。問い合わせは、同会(電)011・233・5130へ。


2005/7/14 「毎日新聞」

交通事故撲滅求め道に要望書

「北海道交通事故被害者の会」(前田敏章代表)は13日、被害者支援と事故撲滅を求める知事あての要望書を道に提出した。国だけでなく道独自でも対策を進めるよう訴えた。
 同会は「私たち被害者のせめてもの願いは、命と人権が大切にされる社会が作られること」と強調。事故撲滅の具体策として、▽ドクターヘリの普及など救命態勢の充実▽交通犯罪の厳罰化▽歩車分離信号の普及などを提案した。被害者遺族のケアに関しては、「犯罪被害者支援センター」の設置や被害者団体への財政支援などを要望した。
 要望書を受け取った前田晃・環境生活部長は「安全と安心は道政の重要な課題なので、しっかり対応したい」と述べた。
 同会は02年に知事あてに、先月は漆間巌警察庁長官あてに同様の要望書を提出している。【丸山博】


2005/06/14
「北海道新聞」夕刊 <ひと語り もの語り>

「いのちのパネル」を前にする小野茂さん(手前)と前田敏章さん。その後ろの内山孝子さんは輪禍で夫を失った























車に未来奪われたわが子よ−
16のパネル 命の叫び
「交通犯罪」ただす遺族


 心からの声がある。
 「たくさんの未来があったのに、二十一歳と五カ月で、その生命を絶たれてしまった。娘の笑顔が見たい、声が聞きたい」
 「たまには、私たちのところにも、ひょうきんな顔を見せに来てほしいなあ。とっても寂しいんだから。お願い」
 「車は凶器です。お願い誰も殺さないで!誰にもこんな思いをしてほしくないのです」
 写真が添えられている。車に命を奪われた人たち。こちらを見て、ほほ笑んでいる。
 「いのちのパネル」という。縦五九・四センチ、横四二センチ。北海道交通事故被害者の会((電)011・233・5130)の実行委員会が作った。
 会の副代表を務める小野茂さん(56)=札幌市白石区=が提案した。
 小野さんは六年前の夏の朝、長男善◆(よしのり)さんを亡くした。居眠り運転の乗用車にはねられた。二十六歳だった。
 「息子と顔を合わせる時間を増やそうと思っていました。あの朝も、同じ六時に起きて、見送ったんです。でも、八時に警察から電話で事故を知らされた。後はもう、悲しみと怒りと苦しみの記憶しかありません」
 小野さんは二十九歳のとき、屋根から転落して脊髄(せきずい)を損傷し、車いす利用者になった。「なにくそ」という気持ちで、車いすマラソンを始めた。善◆さんは、そんな父親の練習に付き添い、傍らから励まし続けた。
 小野さんは言う。
 「私たち遺族はいつも自問しています。愛する者の死はなんだったのか、自分は彼らの死を無駄にしていないかと。『いのちのパネル』は、その一つの答えです」

 被害者の会は会員百二十人。パネルは、そのうち十六人分。かけがえのない人から引き裂かれた悲嘆に、ある程度整理がついた人たちだ。
 代表の前田敏章さん(55)=札幌市西区=も、失った人の「声」に突き動かされている。
 一九九五年の十月、長女千尋さんを十七歳で亡くした。前方不注意のワゴン車が「通り魔」のように命を奪った。
 五年後、前田さんはホームページ「交通死−遺(のこ)された親の叫び」を開く。遺族の裁判を支援する。事故の現場に出かけて、遺族らに助言する。いのちのパネルにも、千尋さんの写真とメッセージを寄せた。
 「娘は何の落ち度もないのに、一方的にすべてを奪われました。その無念を担えるのは、親しかいない。そう思って活動しています。でも、娘は喜んでくれているだろうか、と問いつづけています。心の中の娘とともに生きるのが、使命だと思い定めています」

 パネルには、そうした人たちの願いがこめられている。
 初めてのパネル展は二年前、札幌市内の地下鉄駅コンコースで開き、十三枚を披露した。そのうちの六枚は、札幌市手稲区の札幌運転免許試験場にある。
 被害者の会は、輪禍の多くを「交通犯罪」と呼ぶ。速度超過、飲酒・居眠り運転、前方不注意。人をはねれば命にかかわることを知りながら、そうした違反を犯したのではないか−。
 宮城県多賀城市では五月末、飲酒運転の車が高校生の列に突っ込み、三人が死亡、二十四人が重軽傷を負う事故があったばかりだ。
 「こんなに人命が軽視され、人権無視がまかり通る世の中は、おかしくないですか。異常な『クルマ優先社会』といえないでしょうか」
 そう問いたくて、小野さんたちはパネルの常設をめざす。五月には、A4判の大きさにして、二十ページの冊子を作った。(編集委員 村山健)

(注)◆は「徳」の基本字


2005/05/15
「北海道新聞」

厳罰化など要望へ
交通事故被害者の会


 道交通事故被害者の会(前田敏章代表)は十四日、本年度定期総会を札幌市中央区内のホテルで開いた。約三十人が出席し、事故加害者の刑事罰の厳罰化や被害者の権利拡大などを国や警察に要請していくことを盛り込んだ本年度活動計画を承認した。
 要請事項では《1》実況見分調書など事故記録の被害者側への早期開示《2》被害者側が刑事裁判に当事者として参加できる制度の新設《3》危険運転致死傷罪の適用要件の拡大など刑事罰の厳罰化−などを盛り込んだ。
 このあと「民事・刑事裁判」「被害者のメンタルケア」など四テーマに分かれ、交流会を開いた。参加者は家族を事故で失った体験を披露したほか、「真相を知りたくて民事裁判を起こした」「検察には被害者としての意向をはっきり伝えた方がいい」などの声が出た。


2005/2/15
「朝日新聞」

「科学的捜査を」
交通事故被害者の会高検などに要請
透明性求める


 交通事故で家族を失った悲しみだけでなく、捜査段階でもつらい思いを強いられている遺族らの声を捜査や司法に反映させようと「北海道交通事故被害者の会」は14日、遺族への捜査記録開示や科学的捜査手法の導入などを求める要請書を札幌高検などに提出した。

 同会は99年9月に発足、交通事故被害者や遺族ら約110人からなる。02年7月に札幌市西区の小学6年真下綾香さん(当時11)がトラックにひかれ死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた男性は、走行速度について「時速30キロ」と供述した。しかし、遺族らの上申などを受け検察側は鑑定を実施。その結果、判決は「時速50キロ」と認定し禁固2年の実刑判決となった。
判決でも事故の詳細は明らかにならなかったという。他にも、署名活動の結果、危険運転致死罪が適用された例や、刑事と民事の判決で事故状況が異なった例などもある。

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2005/2/15
「北海道新聞」

科学的捜査徹底を
輪禍遺族らが要請文−札幌高検などに
  

 道内の交通事故被害者や遺族でつくる北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)は十四日、札幌高検と札幌弁護士会に対し、交通事故の科学的捜査の徹底や情報開示などを求める要請文を提出した。また、法相と国土交通相に対し、ドライブレコーダー設置義務化などを求める要請文を同日、送付した。

 高検への要請は《1》遺族や被害者に対し、調書などを捜査段階で開示する《2》事故原因の科学的捜査の徹底−の二項目。同弁護士会への要請は、加害者の供述主導で進められる一方的な交通事故調査の是正などに支援を求める内容となっている。

 要請後、記者会見した前田代表は「事故の真実が明かされず、加害者の供述を基に司法判断が下された例は多い。過ちを繰り返さないためには、捜査資料の情報開示と科学的捜査の徹底しかない」などと訴えた。同会は二○○二年にも道と道警に対し、交通事故の科学的捜査の確立などを要請している。

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2005/02/15
「北海道新聞」

捜査、遺族に開示を
娘事故死 南幌の白倉さん

真実求め運動
検事長にも手紙


 北海道交通事故被害者の会が十四日、札幌高検などに提出した要請文は「当事者でありながら、真実を知ることができず、二重三重の苦しみを余儀なくされる」と指摘している。二○○一−○三年に発生した事故で、同会が交通事故捜査のあり方に問題があるなどとした例は十四件ある。○三年に空知管内南幌町であった白倉美紗さん=当時(14)=の死亡事故もその一つだ。遺族は、捜査の不手際をなかなか認めようとしない捜査機関に苦しみ続けた。
 ○三年九月一日午前七時すぎ。犬の散歩に出かけた美紗さんは、自宅近くの道道交差点を自転車で横断した。道路の制限速度は五十キロで、数キロ先も見通せる直線。そこで、運転手男性(44)のトラックと衝突した。即死だった。
 男性は両親に「美紗さんが飛び出し、ブレーキをかけたが間に合わなかった」と説明。両親と栗山署とのやりとりを記録したテープなどによると、同署もこの主張に沿った形で調べを進めた。
 しかし、トラックは約三十五メートルのブレーキ痕を残し、対向車線の歩道を越えて交差点から路外に逸脱。さらに勢い余って約十二メートル畑を突っ切り、電柱を折って停止していた。両親は本当に美紗さんの飛び出しだったのか疑問を持ち、客観的で科学的な捜査を求め続けた。
 事故から二カ月後、両親の強い要望で行われた再実況見分では、同署がトラックのブレーキ痕の一部を「無関係」と判断していたことや、現場写真が十分に撮られていないことなどが分かった。
 調書や証拠などは遺族にもほとんど開示されず、捜査の行方に不安を持った両親は、複数の専門家や医師らを頼り、独自の鑑定を進めた。
 その結果、トラックが事故直前に前を走る乗用車を追い越し、時速九十キロ前後で走行中、車両挙動が不安定になったことなどにより対向車線に進入、交差点を渡りきったか渡りきる寸前の美紗さんをはねた−と推測された。
 また美紗さんとトラックの衝突の仕方も、飛び出しや横断中ではあり得ないものだった。関係者は「初動の不手際がその後の捜査をゆがめたのではないか」と指摘する。
 男性は○三年十二月、業務上過失致死の罪で書類送致され、近く起訴されるという。しかし、事故がなぜ起き、誰にどんな過失があるとみているのか、詳細は両親も、分からない。
 十四日、両親は札幌高検検事長あての手紙をしたためた。「私たちにとって一番重要なのは、真実を明らかにしていただきたいということなのです」。両親は「美紗に何が起き、どういう最期だったのか知りたい」と願い続けている。
 
【写真説明】白倉美紗さん。事故の2日前、自宅でのスナップ


2004/8/17
毎日新聞

新聞時評:
遅過ぎる交通禍裁判開始も問題に=弁護士・青野渉

 本紙の夕刊社会面には前日の交通事故死者数が毎日掲載されている。今年の死者累計は4369人(15日現在)。死者数は減少傾向にあるとはいえ、昨年も年間で7702人の方が亡くなられた。他方、負傷者は118万人と増加の一途。最近5年間は毎年100万人以上の国民が交通事故で死傷している。今年上半期の事故発生件数も過去最悪のペースという(7月22日夕刊社会面)。

 ◇相次ぐ重大事故
 最近の大きな事故だけをみても、岐阜県の東海北陸道の事故(7月27日夕刊1面)、福島県の磐越道の事故(7月28日朝刊社会面)、兵庫県の山陽道の事故(8月7日夕刊1面)があり、あわせて16人が亡くなられている。いずれも夏休み中の子供が犠牲になっており、痛ましいかぎりだ。
 7月23日夕刊1面によると、裁判の迅速化が進み、1審で2年以上かかっている刑事裁判は、ピークだった1973年の5030件から昨年は185件にまで激減したという。また、刑事裁判の第1審の平均審理期間も約3・2カ月にまで短縮された。
 しかし、最高裁の発表するこのデータには、裁判が始まるまでの時間は含まれていない。私の経験でいえば、死亡事故の場合、裁判が始まるまで1年以上かかることはむしろ普通だ。自分の子供をひき殺した加害者が逮捕もされずに普通に生活をしている。
 「何でこんなに時間がかかるんですか」。交通事故の被害者から何度も聞いた言葉である。昨年の交通事故関係の検挙者は約90万人である。交通事故捜査は専門知識が必要で真相解明は簡単ではない。件数が膨大で手間がかかる一方、捜査担当者の数は少ないから、長期化するのは当然である。
 改善のために、捜査員を増強すべきことはもちろんだが、他に、事故の真相解明や捜査の迅速化を実現する手立てはないものか。
 一つの方法として、フライトレコーダーの自動車版が考えられる。人間の記憶は不確かだから供述を頼りに真相を解明することは困難である。交通事故の死者数は、航空機事故の比ではないから、こういった機器の導入はむしろ当然ではないだろうか。
 すでに大型貨物自動車は運行中の速度などを記録するタコグラフの搭載が義務づけられているし、技術的にはドライブレコーダー自体も既に実用化されている。もちろん、データがむやみに利用されない措置(1分間サイクルで自動消去されて、事故の衝撃があった場合のみデータが保存されるシステム等)は必要だ。

 ◇根本をえぐって
 交通事故は人災である。知恵を絞れば、事故を減らす方策は他にもいろいろあるはずだ。
 クルマで利益をあげる自動車メーカーには、率先して事故撲滅を推進する重大な責任がある。ところが、三菱自動車の元社長が欠陥隠しを理由に業務上過失致死容疑で逮捕された(6月11日朝刊)。事故撲滅ではなく欠陥隠しに知恵を絞ったわけである。
 新聞時評の担当になって4カ月、本紙の記事を普段よりも丁寧に読んできたが、警察発表に基づく事故報道や若干の啓発記事はあったが、クルマ優先社会の問題性をえぐるような記事は残念ながらなかった。事故発生の一報を報道するだけでなく、その後の捜査の問題や、事故の抜本的な防止策についての鋭い報道を期待したい。

 この論評は北海道支社発行の紙面をもとにしました。


2004/07/16
北海道新聞夕刊全道


月命日払いを控訴審も認定
北広島の交通事故


 北広島市で二○○一年に小学四年生の男児四人が乗用車にはねられ一人が死亡、三人が重軽傷を負った事故で、亡くなった土場俊彦君=当時(9つ)=の両親が、乗用車を運転していた同市内の女性(52)=業務上過失致死傷罪で禁固二年六カ月が確定=に約七千六百万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が十六日、札幌高裁であった。末永進裁判長は、一審の札幌地裁判決を一部変更し、慰謝料を除く損害賠償額を約三千三百万円に増額する判決を言い渡した。慰謝料の「月命日払い」は一審通り認めた。
 一審判決は、原告が求めた慰謝料の分割払い(金利を加えた額)を認め、被告に三十年間、土場君の月命日(十八日)に六万円を支払うよう命じた。さらに慰謝料を除く損害賠償金として、被告に約三千二百万円の支払いも命じた。
 一審判決によると、女性は二○○一年八月十八日、北広島市内の市道を乗用車で走行中、アクセルとブレーキを踏み間違えるなどして歩道に乗り上げたまま約五十メートル走行し、自転車に乗っていた男児四人を次々はねた。土場君はこの事故で出血性ショックで死亡。両親は事故で尊い命が失われた事実を忘れてほしくないと、月命日払いなどを求めて提訴した。

関連記事と経過


2004/02/02
「読売新聞」夕刊

恵庭の居眠り運転死亡事故
「軽い判決」覆し実刑
札幌高裁「本人無念、遺族感情厳しい」

 死亡交通事故で業務上過失致死の罪に問われた札幌市○○、無職○○被告(34)の控訴審判決が2日、札幌高裁であった。長島孝太郎裁判長は「執行猶予とする案件と認められない」と述べ、執行猶予付きの一審・札幌地裁判決を破棄し、禁固1年8月の実刑を言い渡した。
 判決によると、○○被告は2002年9月25日午後11時ごろ、大型トレーラーを運転中、北海道恵庭市西島松の道道で居眠りし、停車中の穂別町、消防士橘敏幸さん(当時23歳)の乗用車に追突、橘さんを死なせた
 この公判では、橘さんの母親橘恵子さん(49)ら遺族が「一審判決は軽すぎる」と実刑を求める署名21,272人分を集め、札幌高検に提出していた。
 長島裁判長は、判決で、反省の態度をくんだ一審の判断は誤りと指摘し、「一方的過失で、本人の無念さはもとより、遺族の被害感情も厳しい」と判決理由を述べた。
 恵子さんは判決後、「不当な判決を覆せて意味ある判決だった。署名に協力してくれた皆さんのおかげ」と涙を流した。

2004/02/02
「北海道新聞」夕刊

一審破棄、実刑に
恵庭の交通死で札幌高裁判決、
居眠り運転手に


 二○○二年九月、恵庭市内の道道で居眠り運転の末、トレーラーを乗用車に追突させ、胆振管内穂別町の消防士橘敏幸さん=当時(23)=を死亡させたとして業務上過失致死罪に問われ、一審で禁固二年六カ月、執行猶予四年(求刑・禁固二年六カ月)の判決を受けた札幌市○○、○○被告(34)の控訴審判決が二日、札幌高裁であった。長島孝太郎裁判長は一審判決を破棄、禁固一年八カ月を言い渡した。

 判決理由で長島裁判長は「何ら落ち度のない被害者の命を一方的に奪った過失は重い」と指摘。○○被告が事故直前、十九時間・九百キロに及ぶ長距離運転を強いられていた点は「会社の労務管理上の責任を指摘せざるを得ない」と述べた。

 一審の猶予判決に対し、検察側は量刑不当で控訴。遺族が実刑を求めて集めた二万千二百七十二人分の署名を証拠申請したが、被告側が同意せず、採用されなかった。

 判決後、橘さんの母恵子さん(49)は「元の生活に戻れるわけではないが、息子が『お母さん、もういいよ。頑張ってくれてありがとう』と言ってくれる気がする」と涙ながらに語った。


2004年1月22日
「釧路新聞」

無謀運転に厳罰、懲役5年6月の実刑

 昨年10月、飲酒運転で猛スピードを出し、軽自動車と衝突して2人を死亡、1人に重傷を負わせ、道交法違反と業務上過失致死傷の罪に問われた白糠町○○、会社員○○被告(20)の判決公判が21日、釧路地裁で開かれ、河原俊也裁判官は「無謀運転は厳しく責められる」と懲役5年6月(求刑・同6年)の実刑判決を言い渡した。
 判決によると、○○被告は、飲酒して乗用車を運転。10月19日午前6時55分ごろ、釧路市大楽毛3の国道38号で時速140キロ(50キロ制限)の猛スピードで対向車線にはみ出し、直進してきた同市大楽毛西1、無職奥山文夫さん=当時(71)=の軽自動車と正面衝突。奥山さんと同乗していた清掃員で妻の慶子さん=同(62)=の2人を脳挫傷で死亡、同市大楽毛2、清掃員成田テルコさん=同(57)=に重傷を負わせた。同被告は、前夜から一睡もせず飲酒で眠気があるのに乗用車を運転した。
 河原裁判長は「飲酒運転に厳罰を求める世論があり、法改正されている中、無謀運転は」厳しく責められる。事件の結果は重大」と厳しい態度を示した。
 道交法の改正以降、懲役5年6月の実刑判決は全国でも最高の量刑となった。


2004/01/19
「毎日新聞」夕刊

高裁、猶予判決を支持
恵庭中2死亡事故 
両親「納得いかない」

 中学生を乗用車ではねて死亡させた業務上過失致死の罪に問われた恵庭市柏木町、会社員○○被告(30)の控訴審で、札幌高裁は19日、禁固2年、執行猶予4年の1審・札幌地裁判決(昨年6月)を支持し、検察側の控訴を棄却した。長島孝太郎裁判長は「被告に過失があるが、無免許や酒気帯びなどの無謀運転ではなかった」と述べた。
 判決によると、○○被告は02年10月4日午後5時45分ごろ、恵庭市柏木町の市道で乗用車を運転中、市立恵庭中2年、白石乃郁さん(当時13歳)をはねて死亡させた。
 乃郁さんの両親が実刑を求める9363人分の署名を検察に出していた。父義満さん(44)は「納得のいかない判決で悔しい。刑を厳しくしないと事故はなくならない」と話した。【立松敏幸】


2004/01/16
「北海道新聞」

実刑求める署名、証拠採用されず 
恵庭死亡事故で高裁

  
 二〇〇二年九月、恵庭市内の道道で、乗用車にトレーラーを追突させ、胆振管内穂別町の消防士橘敏幸さん=当時(23)=を死亡させたとして業務上過失致死罪に問われ、一審で禁固二年六カ月、執行猶予四年(求刑・禁固二年六カ月)の判決を受けた札幌市○○運転手○○被告(34)の控訴審初公判が十五日、札幌高裁(長島孝太郎裁判長)であった。

 一審判決によると、○○被告は事故当時、過労と飲酒で居眠り運転していた。量刑不当で控訴した検察側は、橘さんの遺族が実刑を求めて集めた二万千二百七十二人分の署名を証拠申請したが、被告側は同意せず、証拠採用されなかった。

 意見陳述で、橘さんの母恵子さん(49)は「交通事故の刑が『過失』と軽く扱われていることに多くの人々が納得できないと賛同している」と実刑を求めた。控訴審は同日結審し、判決は二月二日。

「毎日新聞」
2004/01/16

来月2日に判決
居眠り事故 控訴審初公判


トレーラーを居眠り運転して追突事故を起こし、1人を死亡させた業務上過失致死罪で禁固2年6月、執行猶予4年の判決を札幌地裁で受けた元運転手、○○被告(34)の控訴審初公判が15日、札幌高裁(長島孝太郎裁判長)であった。控訴した検察側は「執行猶予は軽すぎて不当」と主張。弁護側は控訴棄却求め、結審した。判決は2月2日。
 事故は恵庭市で02年9月にあり、胆振管内穂別町の消防署員、橘敏幸さん(23)が死亡した。橘さんの母恵子さん(49)と妹の高校3年、美香さん(18)が控訴審で実刑判決を求める署名活動に取り組み、2万1272人分を集めた。恵子さんが意見陳述し「1審判決は被告が日常的に飲酒運転していた運転態度の危険性に全く触れなかった。悲しい事故を繰り返さないためにも悪質さを重く判断してほしい」と訴えた。【立松敏幸】



2003/12/24
北海道新聞朝刊地方<札幌圏この1年 8>

2男子の交通死
悲劇伝え事故根絶を
痛む胸仏前に誓い


 いすの下にしまった黒色のランドセル、小さな上履き。学習机には「四年」という自筆の丁寧な文字が残るノート。子供部屋には、そこで勉強し、サッカーが大好きで、同級生の真ん中にいた元気いっぱいの少年の息づかいがあった。
 部屋の持ち主は二○○一年八月、北広島市の市道の歩道を自転車で走行中に乗用車にはねられて死亡した小学四年の土場俊彦君=当時(9つ)=。
 十二月上旬、父の自営業一彦さん(45)、母の久美子さん(38)を訪ねた。事故をめぐる民事訴訟の札幌地裁判決が、乗用車を運転していた同市内の女性=業務上過失致死傷の罪で禁固二年六カ月確定=に対し、三十年間、土場君の月命日(十八日)に六万円支払うよう命じた直後だった。
 部屋にあった上履きは事故直前のヨサコイ踊りの練習で履いていたものだという。一彦さんは「今もいつも息子を感じている」と話した。本来なら土場君は来春、小学校の卒業式を迎える。失われた尊い命と癒えぬ悲しみ。耳の奥がじーんと熱くなった。
 札幌市白石区の音喜多一さん(50)には、経営するレストランの休み時間に話を聞かせてもらった。昨年七月、長男で中学二年の康伸君=当時(13)=が市道の横断歩道を自転車で横断中、トラックにはねられて死亡した事故で、トラックを運転していた男性の禁固一年六カ月の実刑判決がこのほど確定した。
 事故は、一さん念願のその店が開店して一年足らずで起きた。康伸君は閉店後に店の仕事を進んで手伝う少年だった。土場君の両親をはじめ、取材で出会った遺族が強調するのが、交通事故は「家族を失う悲しみ、そしてその後、真相を知らされないことで二重に苦しめられる」ということだ。最愛の家族の尊厳にかけて、事故の状況を知りたい。でも、警察が作成する実況見分調書などは捜査段階では見ることができない。
 音喜多さんは「交通事故で、なぜ死ななきゃいけなかったのか。息子の名誉と尊厳にかけて真実は何かを知りたいと思ったら、声を上げてこなければならなかった」と振り返る。だから、遺族は調書の早期開示を求める活動を続ける。
 交通事故は絶えることなく新たな悲劇を生んでいる。遺族の悲痛な思いに胸が締め付けられるとともに、記者をはじめとするドライバーは被害者にも、加害者にも、なり得ることを痛感する。
 交通事故の悲惨さを伝えて事故をなくしたい。記者がそう誓った土場君の仏前には、今も遊びに来る同級生が供えたおもちゃがあふれていた。
(藤田香織里)

2003/12/19
「毎日新聞」札幌圏版

検察側一審判決破棄を求め結審
  恵庭の死亡事故控訴審初公判

 恵庭市の市道で昨年10月、恵庭中2年の白石乃郁(のりか)さん(当時13歳)が前方不注意の乗用車にはねられ死亡した事故で業務上過失致死罪に問われ、札幌地裁で禁固2年、執行猶予4年の有罪判決を受けた同市○○、会社員、○○被告(30)の初公判が18日、札幌高裁(長島孝太郎裁判長)であった。量刑不当で控訴した検察側は「過失は極めて悪質で重大」と一審判決の破棄を求め、結審した。判決は来年1月19日。
 公判で乃郁さんの父、義満さん(44)は「無謀運転ではないと執行猶予にした一審判決は不当。人の命がこんなに軽くていいのでしょうか」と訴えた。乃郁さんの両親は6月の一審判決後、高裁での実刑判決を求める署名活動を展開。これまでに9363人分を集めた。【立松敏幸】

2003/11/20
北海道新聞夕刊全道

「運転手に実刑を」地検に2万人署名
事故被害者の家族提出


 昨年九月、恵庭市の道道で乗用車を停車中にトレーラーに追突されて死亡した胆振管内穂別町の消防士橘敏幸さん=当時(23)=の家族が二十日、「一審の執行猶予判決は不当」として実刑を求める二万六百八十九人分の署名を札幌地検に提出した。
 トレーラーの運転手(34)は業務上過失致死罪に問われ、一審の札幌地裁は禁固二年六カ月、執行猶予四年(求刑・禁固二年六カ月)を言い渡した。橘さんの母恵子さん(49)は「過労と飲酒による居眠りで起こした事故で悪質。判決後も加害者の誠意は感じられない」として、控訴審で証拠申請するよう検察に求めた。

2003/11/20
朝日新聞夕刊全道

交通事故の遺族、実刑を求め署名
一審で執行猶予


 道内で起きた2件の交通事故で死亡した被害者遺族が20日までに、控訴審を審理する札幌高裁あての実刑を求める署名を、それぞれ検察側に提出した。
 署名を出したのは、昨年9月に恵庭市で停車中、大型トレーラーに追突され死亡した胆振支庁穂別町、消防士橘敏幸さん(当時23)と、恵庭市で昨年10月、車にはねられて死亡した同市柏木町の中学2年白石乃郁さん(当時13)の遺族。橘さんの遺族は2万689通を、白石さんの遺族は8882通を提出した。
 いずれも運転者は業務上過失致死の罪に問われ、札幌地裁で執行猶予付きの有罪判決が言い渡され、検察側が量刑不当を理由に控訴した。
 橘さんの遺族は署名に添えた要請書で「交通犯罪抑止の意味からも命の重みに見合う公正な判決をお願いします」と記している。

2003/11/13
北海道新聞夕刊全道

危険運転致死罪適用せずに起訴
少女事故死で札幌地検


 青信号で横断中にトラックにひかれて死亡した少女の両親が、「悪質な運転だった」としてより罪の重い危険運転致死罪の適用を求めていた交通事故で、札幌地検は十三日までに、札幌市○○、食品製造作業員○○容疑者(47)を業務上過失致死罪で札幌地裁に起訴した。
 起訴状によると、○○被告は昨年七月、西区発寒の国道交差点で、青信号の横断歩道を自転車で渡っていた同区発寒の真下綾香さん=当時(11)=をはねて死亡させた。
 道警が業務上過失致死の疑いで書類送検したのに対し、両親は昨年十二月、札幌地検に危険運転致死罪で告訴。さらに危険運転致死罪の適用を求める署名約一万三千人分を地検に提出した。
 綾香さんの母登志子さん(40)は「危険運転致死罪が適用されず悔しい。交通ルールを守っていた娘が事故に遭ったのは、まさに危険運転に当たる。厳罰を求め、これからも署名活動などを続けていく」と話している。

2003/11/4
毎日新聞北海道版夕刊

中2死亡事故で被告側控訴棄却

 札幌市白石区で昨年7月、自転車の中学2年生をトラックではねて死亡させた業務上過失致死罪に問われた、江別市○○、無職、○○被告(47)の控訴審で、札幌高裁は4日、禁固1年6月とした1審・札幌地裁の実刑判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。長島孝太郎裁判長は「安全確認を怠った過失は重大」と述べた。○○被告は量刑不当で控訴していた。
 この事故を巡っては、死亡した音喜多康伸君(当時13歳)の両親が危険運転致死罪の適用を求め署名運動を展開したが、同罪では起訴されなかった。判決後、康伸君の父一さん(50)は「交通事故は(起きても)仕方がないという考えがなくなるよう、今後も事故の悲惨さを伝えていきたい」と話した。【立松敏幸】


2003/10/13北海道新聞朝刊全道
交通犯罪厳罰化を
2遺族、札幌で署名活動


 札幌市と恵庭市で昨年、無謀運転のトラックやトレーラーによる交通事故で家族を奪われた二組の遺族らが十二日、JR札幌駅前で、「交通犯罪」の厳罰化を求める署名活動を行った。
 署名活動を行ったのは、トラックにはねられて死亡した札幌市西区の小学校六年生真下(まっか)綾香さん=当時(11)=と、乗用車を停車中、トレーラーに追突され、死亡した恵庭市の消防職員橘敏幸さん=当時(23)=の家族と支援者約三十人。家族らは、それぞれの加害者に実刑や危険運転致死罪の適用を求めている。
 綾香さんの父清一さん(42)は「大事な娘は殺されたのと同じ。加害者には厳罰を」と通行中の市民らに呼びかけた。橘さんの妹の美香さん(17)は「自慢のお兄ちゃんを奪った人を許すことは絶対できない」と訴えていた。
 集めた約千人分の署名は札幌地検などに提出する予定。



2003/08/13 北海道新聞朝刊地方
白石の小1交通事故死 情報提供呼びかけ*無念晴らす目撃証言を
*速度、信号、ブレーキ…*両親「加害者の話に疑問」


 札幌市白石区の北郷小学校の校門前の市道で七月、会社員竹田佳文さん(30)の長男響ちゃん(6つ)=同校一年=が死亡した交通事故で、竹田さんと妻の彩さんが「加害者の証言に疑問がある」とし、目撃情報を募っている。十二日には事故現場に看板を立て、情報提供を呼び掛けた。
 「どうして犯人は逮捕されないの」。夫妻の長女麗ちゃん(7つ)が弟の遺影に目をやりながら問い掛けた時、佳文さんは言葉が見つからなかった。
 「車であれば人を殺しても罪にならないのか。響が悪かったかのように言われるのは納得できない」。佳文さんは振り絞るような声で訴える。
 事故が起きたのは七月十七日午後一時ごろ。父母懇談会で授業が午前中に終わったため、事故当時、校門前は父母や下校する子供たちが多数行き交っていた。
 響ちゃんは市道を挟んで向かい側の北郷こども公園で姉と待ち合わせていた。札幌白石署などによると、響ちゃんは校門前の丁字路を渡ったところ、白石区内の主婦の乗用車と衝突し、数メートル引きずられたうえ、前輪に体をひかれ、間もなく死亡した。現場にブレーキ痕はなかった。
 丁字路の南東側に押しボタン式信号機がある。主婦は警察の調べに対し、信号で停止し、青信号になって発進した後に響ちゃんをはねたとした。
 「このままでは加害者の証言通りに事故を組み立てられてしまう」と危機感を持った竹田さん夫妻は目撃者を探しだして話を聞き、主婦にも当時の状況をただした。
 現場はスクールゾーンで制限時速三十キロ。複数の目撃者が「乗用車はかなりの速度だった」と証言した。夫妻によると、主婦は夫妻と会った際、「青信号を確認して信号を通過しましたが、対向車の陰にいた響ちゃんに気付かなかった」と当初と違う言い方をした。
 竹田さん夫妻には「響が道路を横断した時、歩行者側の信号は本当に赤だったのか」「脇見運転はなかったのか」との疑問がぬぐえない。目撃情報を募るビラを父母らに配ろうとしたが、学校側は「子供たちのショックが大きいので、事故のことは蒸し返さないでほしい」と拒否した。
 警察からは「目撃者がいないと、これ以上捜査できない」と言われ、看板を立てることにした。
 竹田さん夫婦は「どんなささいなことでもいいから教えてください」と呼び掛けている。目撃情報は竹田さん(電)090・6214・3100へ。
 
【写真説明】事故の起きた北郷小の校門前に看板を立てる竹田佳文さん。その向こうで妻の彩さんが事故現場に花を添える

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【事件の第1報です】
2003/07/18 北海道新聞朝刊全道

小1下校途中はねられ死亡*札幌市白石区

 十七日午後一時ごろ、札幌市白石区北郷三ノ五の市道を渡っていた同区北郷三ノ六、市立北郷小一年の竹田響君(6つ)が、同区○○、主婦○○さん(31)の乗用車にはねられ、頭などを強く打ち、間もなく死亡した。
 札幌白石署の調べによると、現場は同校正門近くの横断歩道のない片側一車線の直線道路で、○○さんは信号待ちをしていた交差点を発進後、約二十メートル先で竹田君をはねた。同署は、○○さんが、道路右側から渡ろうとした竹田君に気付くのが遅れたとみて調べている。
 この日は父母懇談があったため、通常より早く午前中で授業が終了。竹田君は給食を食べた後、下校中だった。


2003/08/31北海道新聞朝刊全道
ひき逃げ罰則強化求め街頭署名活動
高石さん家族ら

 
江別で二月、野幌高一年の高石拓那さん=当時(16)=がひき逃げされ死亡した事件で、拓那さんの両親と友人たち五十人が三十日、JR札幌駅前で道交法のひき逃げの罰則強化を求める街頭署名活動を行った。
 拓那さんは二月十二日早朝、自転車で新聞配達のアルバイトに向かう途中、乗用車にひき逃げされ亡くなった。札幌地裁が五月、業務上過失致死と道交法違反(ひき逃げ)の罪で加害者に懲役二年十カ月を言い渡し、刑が確定している。
 父弘さん(42)は「むごいひき逃げをなくすには、罰を重くし、重罪であることを多くの人々に知ってもらうことが必要」と協力を呼び掛けた。
 署名は全国に呼び掛けており、十月末までに寄せられた分をまとめ、法務省に提出する。

※ 関連報道はまとめて《ひき逃げ署名関連記事》


2003/7/4 朝日新聞

車で中2はね、執行猶予
札幌地検が控訴 「一審の刑軽い」


 恵庭市内で昨年10月、同市柏木町の中学2年白石乃郁(のりか)さん(当時13)が車にはねられて死亡した事故で、業務上過失致死の罪に問われた近くの○○被告(30)に禁固2年執行猶予4年(求刑禁固2年)を言い渡した一審の札幌地裁判決について札幌地検は3日「刑が軽い」として控訴した。
判決によると、○○被告は乗用車を運転し、02年10月4日5時45分ごろ、恵庭市柏木町の市道を直進中に前方の注意を怠り、道路左端を歩いていた白石さんをはねて死亡させた。
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2003/7/23 朝日新聞

執行猶予判決に札幌地検が控訴
 恵庭の死亡事故巡り


 
恵庭市の路上で昨年9月25日、大型トレーラーを運転して仮眠状態になり、停車中の乗用車に追突して男性(当時23)を死亡させたとして業務上過失致死の罪に問われた札幌市○○無職まる○被告(34)に禁固2年6カ月執行猶予4年(求刑2年6カ月)を言い渡した札幌地裁判決について、札幌地検は22日、「刑が軽い」と控訴した。


2003/07/01 北海道新聞朝刊全道

危険運転致死で告訴
深川の事故
助手席19歳の遺族


 【深川、旭川】深川市内の道道で今年四月、乗用車が街路灯に衝突、助手席の同市文光町一八、短大生山下博之さん=当時(19)=が死亡した事故で、山下さんの遺族が三十日までに危険運転致死容疑で乗用車を運転していた同市内の短大生(19)を旭川地検に告訴した。
 告訴したのは父親の公務員山下芳正さん(50)=旭川市東七ノ六=。告訴状によると、短大生は四月二十三日夜、深川市音江町の制限速度四十キロの道道で、雨が降っているにもかかわらず、百キロ以上の速度で走行。このため、車両が制御不能となり、カーブを曲がり切れずに路外に逸脱、街路灯に衝突し、山下さんを死亡させたとしている。
 この事故で、短大生も軽傷を負った。深川署は業務上過失致死容疑で短大生を書類送検したが、芳正さんは「事故の状況などからすると、危険運転致死罪が妥当だ」として告訴に踏み切った。北海道交通事故被害者の会によると、道内で交通事故被害者の遺族が危険運転致死容疑で運転者を告訴したのは三件目。


2003.06.15 毎日新聞北海道地方版

適用が進まない危険運転致死罪
 異議を訴える遺族たち

 
◇「犠牲者の命に比べて刑が軽い」
 交通事故で子供を亡くした両親らが、加害者を厳罰に処すよう求めるケースが増えている。危険運転致死罪の適用を求め、署名活動に取り組む遺族もある。検察側にとって、過去の事件に比べて極端に重い求刑をすることは現実には難しい。事故抑制のため設けられた同罪は、適用範囲が限定的で、起訴された件数は少ない。遺族は「刑が軽過ぎる。突然、家族をなくす悲しみは、私たちだけでたくさん」と訴えている。【立松敏幸】

 ◇過去の判例より重い禁固1年6月
 「命の重さから考えると、1年6月はあまりに軽い」。札幌市白石区の音喜多一さん(49)は、長男康伸君(当時13歳)の命を奪った元トラック運転手(47)に対する札幌地裁判決に、無念さをにじませた。
 康伸君は昨年7月、横断歩道を自転車で横断中にはねられた。音喜多さんは妻真理子さん(45)とともに昨年10月、元運転手を危険運転致死容疑で札幌地検に告訴した。今年2月からは、康伸君と同じような事故で亡くなった札幌市西区の真下綾香さん(当時11歳)の父清一さん(41)、母登志子さん(40)らとともに、危険運転致死罪で起訴するよう求める署名活動を始めた。署名は1万1000通を超えている。
 元運転手は今年3月、業務上過失致死罪で起訴された。危険運転致死罪の適用に必要な「故意責任が問えない」が理由だった。音喜多さんは訴因変更を求めたが、検察側は業務上過失致死罪で禁固1年6月を求刑した。
 森島聡裁判官は判決で、被告が遺族に謝罪していないことや慰謝の措置を講じていないことを理由に「まじめに反省しているとは言えない」と、求刑通りの判決を下した。「まじめな反省」があれば執行猶予がついた可能性の高い事件だった。過去の同種の事件に照らせば、重い判決だった。

 ◇「『加害者天国』の現実、変わらない」
 危険運転致死傷罪は刑法改正(01年12月施行)で新設された。東京都の東名高速道路で飲酒運転のトラックが乗用車に追突し、幼児2人が亡くなった事故などをきっかけに、悪質で危険な運転を罰するためにできた。泥酔に近い飲酒運転や著しい速度違反などで死亡事故を起こした場合、「1年以上15年以下の懲役」に処せられる。業務上過失致死傷罪は「5年以下の懲役か禁固、または50万円以下の罰金」だ。
 単なる過失ではなく「アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態」や「進行を制御するのが困難な高速度」で運転して人を死傷させたり、「赤信号をことさらに無視する」運転などが処罰の対象となる。業務上過失致死傷罪に比べて適用範囲が限定的で、検察内には「適用が難しい」という声もある。
 遺族側の処罰感情の強さとは裏腹に、危険運転致死傷罪での起訴件数は少ない。法務省刑事局のまとめでは、法施行から今年6月初めまでの間に、同罪で起訴された人の数は414人。道内では、昨年1年間で13人が起訴された。
 「北海道交通事故被害者の会」の前田敏章代表は「限られた事件だけが危険運転となり、それ以外は刑の軽い業務上過失致死傷罪で裁かれるという『加害者天国』の現実は変わらない」と言う。「検察は危険運転致死罪の適用をためらっている。踏み込んだ判断をしてほしい」と注文する。
 業務上過失致死傷罪を重くしてほしいという声もある。音喜多さんは「業務上過失致死傷罪は刑が軽すぎるし、そもそも交通事故を裁くための罪ではない。もう少し重くしないと人の命に見合った刑にならないと思う」と主張する。

 ◇「厳罰で臨まねば、事故なくならぬ」
 「加害者の運転は危険運転致死罪にあたると思ってます」。真下登志子さんは力を込める。
 市立発寒小6年だった綾香さんは昨年7月、青信号の交差点を自転車で横断中、トラックにはねられ死亡した。その日から4人になった真下さんの食卓には、今も5人分の食事が並ぶ。「綾香を一人ぼっちにはできない」。納骨は済ませていない。まっ暗な部屋では寝つけなかった綾香さんを気遣い、遺影のある居間の明かりをつけたまま、家族一緒に就寝する。
 昨年のクリスマス、綾香さんが修学旅行先の函館市から自分にあてた配達日指定のはがきが届いた。「来年は中学だ。これからもがんばろう」と記されていた。頑張りやだった綾香さんらしい文面だった。
 卒業式では、クラスの仲間が代わりに返事をしてくれた。やさしい性格で、友人の相談に応じていた綾香さんのもとには、今も毎日のように友だちがやって来る。
 だが、加害者は一度も謝罪に来ていない。登志子さんは、交通事故では被害者や遺族が軽く扱われていると感じている。加害者には厳罰をもって臨まないと、事故はなくならない、という。
 綾香さんの事故では、加害者の処分はまだ決まっていない。近く地検の判断が出る見通しだ。

■写真説明 亡くなった綾香さんの遺影を持つ真下登志子さん=札幌市西区の真下さん宅で


2003/06/14
北海道新聞朝刊全道

<ひと>
松本誠さん

交通事故処理の改善を訴える弁護士
「被害者軽視」に警鐘


 「日本の交通戦争は、もはや被害者と司法システムとの戦いだ」
 五月中旬に開かれた札幌での講演会。加害者に甘く、被害者に冷たい交通事故処理の現状を舌ぽう鋭く批判した。
 「検察は業務上過失致死傷罪の起訴率を低下させ、それに伴い捜査現場の士気は喪失している」と指摘。さらに「たやすく示談に走る弁護士」「容易に和解を勧める裁判官」など、数々の実例を挙げながら病理の根深さを浮き彫りにした。
 大阪市内に法律事務所を持つ。山口県で起きた交通事故をめぐる損害賠償訴訟の控訴審を七年前に偶然担当。事故処理の不条理に気付いた。調書は加害者の言い分を連ねただけ。「死人に口無しか」。現場で独自調査を重ね、カーブとされた道路が直線だった新事実を示し、被害者側を逆転勝訴に導いた。
 その後、交通死被害者の会(奈良)に参加。遺族に対し「死に損もある」と発言した副検事を担当から外させ、悪質な事故では加害者に厳罰を求める。「被害者第一」の活動に迷いはない。
 年間約五百人が交通事故の犠牲になる北海道。「被害者だけの問題ではない。道民全体が、現状を改善していくために声を上げることが必要」との思いから、北海道交通事故被害者の会(札幌、(電)011・233・5130)と交流も続ける。神戸市在住、五十一歳。
(報道本部 大川由佳)



2003/06/09
北海道新聞夕刊全道

運転手に実刑判決  札幌・中2死亡事故

 札幌市白石区で昨年七月、同区内の中学二年生音喜多康伸君=当時(13)=がトラックにはねられ死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われたトラックを運転していた男(47)=江別市=の判決公判が九日、札幌地裁であり、森島聡裁判官は「誠意ある謝罪も認められず、音喜多君と遺族の無念は察するに余りある」として求刑通り禁固一年六カ月を言い渡した。
 判決によると、男は昨年七月二十五日午後三時ごろ、同区中央三ノ三の市道で、自転車で横断歩道を渡っていた音喜多君をトラックではね、失血死させた。男は時速約五十キロで運転し、約十メートル手前で音喜多君に気付き急ブレーキをかけたが間に合わなかった。
 法廷で判決を聞いた、父親の一さん(49)は「求刑通りの判決には満足しているが、人間の命の重さと比較すれば、求刑が短かすぎる」と話した。
 両親らはより重い刑罰を求め、道内で初めて危険運転致死容疑で男を告訴したほか、同罪適用を求め一万人を超す署名を集めるなどしてきた。


2003/05/26 北海道新聞夕刊全道

中2死亡事故 
トラック運転手に禁固1年6カ月求刑
札幌地裁で公判


 札幌市白石区で昨年七月、同区内の中学二年生音喜多康伸君=当時(13)=がトラックにはねられ死亡した事故で、業務上過失致死の罪に問われたトラックを運転していた男(47)=江別市=の公判が二十六日、札幌地裁(森島聡裁判官)であり、康伸君の両親が遺族の悲しみを切々と訴え厳罰を求めた。続く論告求刑で検察側は禁固一年六カ月を求刑し、結審した。判決は六月九日に言い渡される。
 両親らは、より重い刑罰を求め、道内で初めて危険運転致死容疑で男を告訴したほか、同罪適用を求め一万人を超す署名を集めるなどしてきた。
 意見陳述で、母の真理子さん(45)は「被告には反省が全くない。人の命の重さと遺族の死ぬまで続く悲しみを心から受け止められるよう厳罰に処してほしい」と述べた。父の一さん(49)は「業務上過失致死罪の刑罰があまりに軽いから、車を凶器とする事件が後を絶たない。交通事件の抑止力、被告の反省を促す意味からも長期の実刑判決を」などと訴えた。


2003/05/18 北海道新聞朝刊全道

「交通事故捜査は手抜き」
被害者の会が問題点を指摘


 現在の交通事故捜査の問題点を指摘する講演会「加害者天国ニッポン−なぜ交通事故は軽く扱われているか」が十七日、札幌市中央区のホテルで開かれた。
 悪質な交通事故加害者の厳罰化を求めて運動している道交通事故被害者の会(前田敏章代表)の主催。被害者の支援活動で活躍する大阪の松本誠弁護士が、約百人を前に講演した。
 松本さんは、交通事故関係の業務上過失致傷の起訴率が一九八五年の73%をピークに、年々減少し続けていることを指摘。
 そのうえで「国が『交通事故は初犯から実刑』から、『交通事故は犯罪ではない』へと政策転換したため、検察を中心とする捜査現場に手抜きが広がった」と国の姿勢を批判した。
 また、「遺族や生き残った被害者は一生を狂わされるのに、加害者がすぐに普通の暮らしに戻るのはおかしい」と話し、被害者保護の重要性を訴えた。
 
【写真説明】「日本は交通事故の加害者に甘過ぎる」と強調する松本弁護士


2003/05/02  北海道新聞朝刊全道

「危険運転致死罪に」計1万人の署名提出
遺族の両親ら


 札幌市内で昨年七月、相次ぎ横断歩道上でトラックに子供の命を奪われた二組の両親らが一日、加害者に危険運転致死罪適用を求める署名四千百九十二人分を札幌地検に提出した。三月二十四日に続き二回目で、二月の活動開始から計一万八百三十二人分に上った。
 提出したのは、西区でひかれ、死亡した真下綾香さん=当時(11)=の両親と、白石区ではねられ、死亡した音喜多康伸君=同(13)=の両親らでつくる「交通犯罪から子どもを守る会」。同会は「全国から一万人を超す署名が集まり、交通犯罪に対する意識の高まりを感じた」としている。
 いずれの事故も加害者は業務上過失致死容疑で送検され、音喜多君のケースは同容疑で起訴された。同会は今後も署名活動を続ける。同会の連絡先は前田さん(電)090・6871・6757。


2003/04/15 北海道新聞朝刊地方(札幌圏)

雑誌「宝島」
道内事故被害者を特集
「厳罰化」要望などを紹介


 札幌と近郊で起きた交通事故の遺族や、北海道交通事故被害者の会(本部・札幌、前田敏章代表)が展開している、交通犯罪者の厳罰化を求める活動が、今月発売の雑誌「別冊宝島Real」最新号「『交通事故』で泣き寝入りしない」(宝島社)で特集された。
 特集のテーマは「事故か犯罪か? 危険運転致死罪の適用範囲はどこまで拡大されるべきなのか」。遺族と同会世話人による座談会を、ジャーナリストの柳原三佳さんが二十七ページにわたって構成・執筆した。
 二〇〇一年に北広島市の土場俊彦君=当時(9つ)=が歩道上を暴走してきた乗用車にはねられて死亡した事件、〇二年に札幌市西区の真下綾香さん=当時(11)=が交差点でトラックにひかれて死亡した事件、同年に同市白石区の音喜多康伸君=当時(13)=が横断歩道でトラックにはねられ死亡した事件などが取り上げられ、遺族が危険運転致死容疑で加害者を告訴した経緯、警察に対する要望が紹介された。
 また、同会が道などに提出している「交通犯罪撲滅、交通事故被害者ゼロ、被害者支援のための要望書」も掲載された。「別冊宝島」はA6判、二百二十三ページ。千二百三十八円(税別)。道内主要書店で発売している。
 
【写真説明】道内の交通事故遺族の取り組みが特集された「別冊宝島Real」


2003/04/01 北海道新聞朝刊全道
札幌の中2死亡事故
運転手を業過で起訴

地検「故意責任問えず」


 札幌市白石区で昨年七月、同区内の中学二年生音喜多康伸君=当時(13)=がトラックにはねられ死亡した事故で、札幌地検は三十一日、業務上過失致死の罪で、トラックを運転していた男(47)=江別市=を札幌地裁に起訴した。遺族は危険運転致死容疑で男を告訴し、より重い刑罰の適用を求めていたが、同地検は「故意責任を問えない」と判断した。
 起訴状によると、男は昨年七月二十五日午後三時ごろ、同区中央三ノ三の市道で、自転車で横断歩道を渡っていた音喜多君をトラックではね、失血死させた。男は時速約五十キロで運転し、約十メートル手前で音喜多君に気付いて急ブレーキをかけたが間に合わなかった。
 業務上過失致死罪での起訴について、音喜多君の父・一さん(49)は「厳罰を求める六千人分以上の署名が集まったのに残念。遺族より加害者を向いた処分だ」と話した。


2003/03/25 毎日新聞 札幌地方版
「運転悪質過ぎる」
危険運転致死罪適用を

交通事故で子供亡くした両親ら

札幌地検に6640人署名


交通事故で子供を亡くした両親らが24日、子供をはねた運転手への危険運転致死罪適用を求める署名を札幌地検に提出した。
 提出したのは、札幌市西区の真下清一さん(41)同市白石区の音喜多真理子さん(45)らで作る「交通犯罪から子どもを守る会」のメンバー。真下さんの長女綾香さん(当時11歳、市立発寒小6年)は昨年7月に西区の国道交差点で、音喜多さんの長男康伸君(当時13歳、市立米里中2年)も同月、白石区内の市道でトラックにはねられ死亡した。
 運転手はともに業務上過失致死容疑で書類送検されたが、処分は未定。2人の両親らは運転が悪質すぎるとし、罰則が「5年以下の懲役、禁固、50万円以下の罰金」にとどまる業務上過失致死罪でなく、「1年以上15年以下の懲役刑」となる危険運転致死罪の適用を求めている。今回、全国から集まった6640人分を提出した。問い合わせは守る会の前田敏章さん(090・6871・6757)。【立松敏幸】


2003/02/12 北海道新聞朝刊
交通死2人の同級生ら*「厳罰適用を」署名呼びかけ
[札幌]

 昨年七月、札幌市西区と白石区の横断歩道上でそれぞれトラックにひかれて亡くなった音喜多康伸君=当時(13)=と真下綾香さん=同(11)=の遺族らでつくる「交通犯罪から子どもを守る会」は十一日、同市中央区の大通西四付近で、加害者のドライバーに「危険運転致死罪」適用を札幌地検に求める署名活動を行った。二人の同級生五十人も集まり、雪まつり見物に訪れた観光客らにも呼びかけた。
 同会は「二人に落ち度はなく加害者に業務上過失致死罪でなく、より重い危険運転致死罪を適用すべきだ」としている。両遺族はドライバーを同罪で札幌地検に告訴済み。同会は集めた署名を二月末と三月末の二回に分けて同地検に提出する。
 同級生たちは「亡くなった友達のために署名を」と街頭で声を張り上げた。音喜多君の母親真理子さん(45)は「同級生たちの気持ちがうれしい」。
 真下さんの母親登志子さん(39)は「犠牲になる子どもたちがこれ以上出ないために無謀なドライバーには厳罰を求めたい」と話していた。
 署名協力の連絡は前田さん(電)090・6871・6757へ。
 
【写真説明】署名集めをする同級生たち

関連記事 その1
2003/02/20「北海道新聞」朝刊全道
危険運転致死傷罪、昨年の道内13人起訴
一審判決の全9人有罪

 飲酒運転など悪質な運転で死傷事故を起こし、危険運転致死傷罪で起訴された道内のドライバーは昨年一年間で十三人に上った。一審判決が出た九人はいずれも有罪で、被害者が死亡した三件は実刑が言い渡された。危険運転致死傷罪の新設で厳罰化が進んでいるが、被害者からはなお「適用ケースが少ない」という声も出ている。
 札幌高検のまとめによると、一審判決のあった九人のうち、危険運転致死罪の三人と同致傷罪の二人が実刑となった。
 最も量刑が重かったのは、昨年九月に函館地裁が言い渡した懲役三年六月(控訴審判決は懲役三年)。三十代の男性被告が、飲酒後に函館市内の国道で時速四十キロ制限のところを百キロ以上で運転し、カーブを曲がりきれずに街路灯に激突。同乗者が死亡した。
 法務省刑事局によると、全国では昨年一年間で二百八十六人が危険運転致死傷罪で起訴された。このうち危険運転致死は四十八人で、一審判決を受けた二十四人のうち二十三人が実刑だった。
 危険運転致死傷罪は二〇〇一年十二月に設けられ、被害者死亡の場合は懲役一−十五年、けがの場合は十年以下が科せられる。業務上過失致死傷罪の上限は懲役五年なので、格段に重い。
 しかし、泥酔状態での運転や故意の信号無視など適用は限定的で、危険運転致死傷で送検されたものの、業務上過失致死傷に変更して起訴された事例が道内で三件ある。
 北海道交通事故被害者の会の前田敏章代表は「危険運転致死傷罪は悪質とみられる事故でも適用されない場合がある。適用範囲が極めて狭いままでは事故抑止効果は上がらない」と話している。

関連記事 その2 (この事件が危険運転でなければ、法改正の意味はあるのでしょうか。適用拡大の世論が求められます。 BY前田)
2003/03/06 北海道新聞朝刊全道
十勝の4人死亡交通事故
法定刑上限の判決 懲役5年


 【帯広】十勝管内足寄町で昨年六月、乗用車が軽ワゴン車に衝突し、ワゴン車の男性四人が死亡した事故で、乗用車を運転し業務上過失致死罪に問われた同町上螺湾三二、無職大塚純被告(23)に対する判決公判が五日、釧路地裁帯広支部であり、忠鉢孝史裁判官は、求刑通り同罪の上限の懲役五年を言い渡した。
 判決理由で、忠鉢裁判官は「極めて悪質。掛け金が払えないとの理由で、任意保険も未加入」と指摘。「無謀運転による四人死亡の事実は比類なく重大だが、法定刑の上限を加重する規定がないため、この量刑とするのはやむを得ない」と述べた。
 大塚被告は、重大な事故を起こす恐れのある高速度で運転した疑いが強いとみて、危険運転致死容疑で逮捕、送検されたが、釧路地検帯広支部は、被告の危険についての認識を明らかにできず、罪名を業務上過失致死罪に切り替えて起訴した。
 判決によると、大塚被告は昨年六月四日朝、同町螺湾の国道を制限速度を七十キロ上回る百三十キロで運転。カーブを曲がり切れず対向車線にはみ出し、軽ワゴン車に衝突して四人全員を死亡させた。


2003/02/08
北海道新聞朝刊全道

無謀ドライバーに危険運転致死罪を
被害者の親が署名活動


 札幌市西区と白石区で昨年七月、横断歩道上で無謀運転のトラックに子どもを奪われた二組の両親らが七日、それぞれの加害者に危険運転致死罪の適用を求める共同署名活動を始めた。十一日には同市中央区大通西四で子どもの同級生と一緒に街頭署名も展開する。
 署名活動を始めたのは西区発寒の国道交差点の横断歩道上でトラックにひかれて死亡した小学六年真下(まっか)綾香さん=当時(11)=の両親と、白石区中央のこ線橋横の横断歩道でトラックにはねられ死亡した中学二年音喜多康伸君=当時(13)=の両親が、「北海道交通事故被害者の会」代表の前田敏章さんらとつくった「交通犯罪から子どもを守る会」。三月末までに数万通を目標に全国から署名を募り、札幌地検に提出する予定だ。
 いずれのケースも加害者は業務上過失致死容疑で送検されているが、音喜多さん夫婦は昨年十月、真下さん夫婦は同十二月にそれぞれ加害者を危険運転致死容疑で札幌地検に告訴した。七日、道庁で記者会見した前田さんらは「二つの事件に適用されないのであれば、危険運転致死罪の意義そのものが失われる」と訴えた。
 同会の連絡先は前田さん(電)090・6871・6757。
 
【写真説明】会見した右から前田敏章さん、音喜多真理子さん、真下登志子さん

北海道新聞朝刊 掲載日:2002/12/20

遺族が危険運転で運転手を告訴 
  札幌・西区の自転車小6死亡事故 
 
 今年七月、札幌市西区で、小学六年の真下(まっか)綾香さん=当時(11)=がトラックにひかれて死亡した事故で、児童の両親が十九日、危険運転致死容疑で、トラック運転手(46)=同区=を札幌地検に告訴した。

 告訴状によると、運転手は七月十九日夕、トラックで国道を右折した際、青信号で横断歩道を自転車で渡っていた綾香さんに気付きながら、時速約四十キロで交差点に進入。トラックは綾香さんをひいた後、自転車ごと約二十メートル引きずり、全身打撲で死亡させた。

 両親は「危険な速度で右折したうえ、自転車の通行を妨害したのは危険運転致死に当たる」と主張。「運転手には(未必の)故意があったとしか考えられず、厳罰に処してほしい」としている。

 運転手は業務上過失致死容疑で送検されている。


北海道交通事故被害者の会主催
フォーラム交通事故V
〜〜 裁かれるのか 交通犯罪 〜〜

11月15日、約100名の参加で無事終了。
意義あるフォーラムになりました。ご協力に感謝します。

(詳細は順次UPします 下記および詳細新聞報道をご覧下さい)


遺族と弁護士9名が報告と提起

「かでる2・7」には約100名の参加者が 右はお披露目となった北海道版「生命のメッセージパネル」

当日の内容(詳細は新聞報道参照)

主催者挨拶:内山孝子(遺族 副代表)
司会: 前田敏章(遺族 代表)

《 被害遺族の訴え 》
 
@ 音喜多 真理子「私たちはなぜ告訴したのか」 
02/7/25 横断歩道上で中2の康伸君が犠牲に 危険運転致死罪で自ら告訴

A 眞下 清一 「報われぬ生命」
02/7/19 青信号の交差点で小6の綾香さんが犠牲に 検察庁へ上申 自ら告訴を検討中)

B 佐川 昭彦「『死人に口なし』の捜査と裁判」
98/9/17 親族ご夫妻が車対車の事故で犠牲に 真実を求め検察審査会に申立て中

C 高橋 利子「なぜ娘の被害の真相が明らかにされないのか」
01/10/8 高速道路で34歳の娘さんが犠牲に

D 土場 一彦 「真相究明に対する被害者の関わり方」
01/8/18 歩道上で小4の俊彦君が犠牲に 捜査、処罰について検察庁へ上申
刑事裁判2回目の予定・・・12月5日(木)11:00〜12:00 札幌地裁8階5号法廷
刑事裁判3回目の予定・・・12月12日(木)13:30〜札幌地裁8階6号法廷

《 弁護士からの提起 》 交通犯罪を絶滅するために

E 中村 誠也(弁護士)  
 「土場さんの事件にかかわって」

F 青野 渉(弁護士)
 「初動捜査の徹底と科学化の必要性、加害者・被害者不在の裁判に関する疑問」ほか

G 田中 貴文(弁護士)
(補充的に)「どう活かす危険運転致死傷罪」など

H 小野 茂 (遺族 副代表) 「『被害者の会』の要望書の取り組み」

フロアー発言
司会のまとめ


北海道新聞朝刊地方 掲載日:2002/11/16

「交通犯罪に甘い」
被害者らフォーラムで訴え


 【中央区】交通事故撲滅を被害者の立場から考えるフォーラムが十五日、中央区のかでる2・7で開かれた。加害者の厳罰化や事故の真相を求めて活動中の遺族や弁護士が「現在の社会は交通犯罪に寛容すぎる」などと訴えた。 
 北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)の主催。被害者遺族を代表して、札幌市白石区の音喜多真理子さん(45)、同市西区の真下(まっか)清一さん(41)、室蘭市の高橋利子さん(57)、北広島市の土場一彦さん(44)らが報告。遺族から「警察の死亡事故捜査は、加害者の証言だけによっている」「被害者が加害者にされることもある」など事故捜査への疑問が相次いだ。
 今年七月、札幌市西区の国道交差点の横断歩道上で長女綾香さん=当時(11)がトラックにひかれて死亡した真下さんは「昨年十一月の刑法改正で新設された『危険運転致死傷罪』は、適用されなければ飾りだ。娘の犠牲を無駄にしないためにも私たちが立ち上がって法律や社会を変えていきたい」と話した。
 会場には約百人が訪れ、議論に熱心に聞き入っていた。
 
【写真説明】遺族らが交通犯罪について思いを述べたフォーラム

詳細は02/11/20の記事を


北海道新聞朝刊地方 掲載日:2002/11/16

交通犯罪に厳罰を要望
道などに被害者の会

 北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)は十五日、道と道警に対し、交通犯罪の厳罰化などを求める要望書を提出した。一九九九年に同会が発足して以来、行政機関に具体的な要望書を出したのは初めて。
 要望書は《1》救命救急体制の整備《2》事故の科学的捜査の確立《3》被害者支援体制の充実《4》交通犯罪の厳罰化−など七章二十三項目からなる。
 このうち、道では前田代表が小笠原紘一環境生活部長に対し、犯罪被害者支援センターの設立や、高次脳機能障害者支援などを熱っぽく訴えるとともに、堀達也知事と被害者との懇談の機会を設けるよう求めた。 
【写真説明】小笠原・道環境生活部長に要望書の内容を説明する交通事故被害者の会の前田代表(中央)


北海道新聞朝刊 掲載日2002/10/29  

危険運転致死容疑で運転手告訴 交通事故死少年の両親−札幌 

 札幌市白石区の市道の横断歩道で今年七月、トラックにはねられて死亡した中学生の両親が二十八日、危険運転致死容疑で、トラックの運転手(46)を札幌地検に告訴した。北海道交通事故被害者の会(事務局・札幌)によると、交通事故被害者の家族が、加害者を同容疑で告訴するのは道内で初めてという。

 危険運転致死傷罪は昨年十一月の刑法改正で新設された。業務上過失致死傷罪が五年以下の懲役・禁固か五十万円以下の罰金なのに対し、危険運転致死傷罪は、死亡事故の場合は十五年―一年の懲役、負傷事故は十年以下の懲役。飲酒、暴走など悪質運転で事故を起こした場合に適用される。

 告訴したのは、同市白石区在住のレストラン経営音喜多(おときた)一さん(48)と妻の真理子さん(45)。七月二十五日午後二時五十五分ごろ、長男で中学二年生の康伸君=当時(13)=が白石区中央三ノ三のこ線橋脇の横断歩道を自転車で横断中、二トントラックにはねられ、全身を強く打ち間もなく死亡した。告訴状は、トラックの運転手は、康伸君の姿を視認しながら、通行を妨害する目的で、左折ウインカーを点滅させたまま時速五○キロで横断歩道に進入し、康伸君を死亡させたとしている。

 音喜多さんは事故後、運転手の厳罰を求める運動を展開してきたが、札幌白石署は九月、業務上過失致死の疑いで運転手を送検したため、告訴に踏み切った。

 音喜多さんの代理人、田中貴文弁護士は「死亡事故の発生状況を加害者の供述に頼る捜査手法が、多くの被害者遺族を苦しめている。客観的な科学捜査で真相を究明するため告訴した」と説明。同被害者の会の前田敏章代表は「告訴は、危険運転致死傷罪の本来の意義を問い直す第一歩となる」としている。


北海道新聞朝刊地方 掲載日:2002/09/25

悲劇防げ!厳罰訴え
 脇見運転が康伸君の命奪った
 「なぜ過失で済む」
 危険運転致死傷罪 適用拡大求め運動
 地検に要望 2700通超す


 「命の重さに見合う刑罰を−」。今年七月、札幌市内で脇見運転のトラックに中学生の長男の命を奪われた両親と北海道交通事故被害者の会(本部・札幌、前田敏章代表)が、運転手に厳罰化を求めて運動している。昨年十二月施行の改正刑法に新設された危険運転致死傷罪を、交差点での脇見運転など悪質な運転にも適用するよう求める内容だ。この刑法改正後、道内で起きた事故で運転手の厳罰化を求める運動が展開されるのは初めて。(札幌圏部 大倉玄嗣)
 夏休み初日の七月二十五日、札幌は久々に青空が広がった。午後二時五十五分ごろ、白石区の米里中二年、音喜多(おときた)康伸君=当時(13)=は自転車用ヘルメットと蛍光色のジャージーに身を包み、マウンテンバイクで市道米里行啓通のJR函館線こ線橋を南に下り、同区中央三ノ三の側道の横断歩道に入った。そこへ市道本線から進入してきた二トントラックが激突。身長一七二センチ、体重七二キロの康伸君は十三メートルもはねとばされ、全身を強く打ち、間もなく死亡した。札幌白石署の調べでは、運転手は進行方向左側の道路に気を取られ、前を見ずに横断歩道にトラックを走らせたという。
■夢はエンジニア
 康伸君の名を記憶している人がいるかもしれない。千歳市信濃小二年の時、鹿児島県南種子町の第一期宇宙留学生に選ばれた。
 一九九六年五月十三日の北海道新聞朝刊「ひと96」に登場、「宇宙センターのスタッフになりたい」と夢を語った。小学高学年になって夢はエンジニアに変わり、札幌に引っ越して米里中入学後は自転車にも熱中した。すべての夢は脇見運転が一瞬にして奪った。
 同署は今月二十日までに、この運転手を業務上過失致死の疑いで書類送検したが、康伸君の父、音喜多一さん(48)=レストラン経営=は憤る。「交通ルールを守った息子が死に、運転手はけが一つ負っていない。これは車という凶器を使った犯罪だ。なぜ単なる『過失』で済まされるのか」
■賛同者道外にも
 音喜多さんの手元には札幌地検に提出する要望書の束。「悪質な交通事犯に厳罰処分がなければ、悲惨な交通事故は抑止できない」として、康伸君をはねた加害者に危険運転致死傷罪の適用を求める内容だ。すでに二千七百通を超えた。要望書は音喜多さん夫婦が知人を通じて募った。「被害者の会」もインターネットのホームページに事故の概要と要望書のフォーマットを掲載。道外からも要望書が集まった。
 業務上過失致死罪は懲役五年以下。実刑にならないケースも多い。一方、危険運転致死傷罪で被害者を死亡させた場合は懲役一年以上十五年以下。だが、適用されるのは飲酒運転、暴走、信号無視などに限られる。康伸君のケースで加害者が危険運転致死傷罪で裁かれるには、適用範囲の拡大が必要だ。
 昨年の刑法改正は、飲酒運転のトラックに娘二人を奪われた千葉県の会社員が悪質運転厳罰化を訴えて運動した結果だった。「被害者の会」の前田代表は「危険運転致死傷罪を康伸君のようなケースに適用しなければ、厳罰化の意義は薄らぐ」と訴える。
■目撃情報求める
 今月二十一日、音喜多さんの依頼で、道自動車短大の茄子川捷久教授のチームによる事故鑑定が現場で行われた。トラックの速度などを調べたもので、十月半ばに鑑定結果が出る。音喜多さんは、事故の目撃者も探している。事故当時、現場近くの北海道中央バス停留所「中央3条4」にはバス待ち客が数人いたという。目撃した人は洋食店ヴィサージュの音喜多さん(電)871・5520へ。
 秋の交通安全運動が二十一日から三十日まで展開されている。道内の今年の交通事故死者は二十三日までで三百二十人。全国最悪が続いている。
 
【写真説明】事故現場で行われた事故鑑定。康伸君と仲の良かった同級生の中西健太君が康伸君役を演じた=9月21日午前9時30分

 ←【写真説明】音喜多康伸君が命を奪われた現場=7月25日午後3時10分ごろ、白石区中央3の3
















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「生命のメッセージ展」in札幌
 講演会「理不尽に生命を奪われし者からのメッセージ」
2002/5/19 於:「かでる2・7」(札幌市)
の様子を地元紙が紹介

井上保孝、郁美ご夫妻の講演「いのちの重さを伝えるために」2002/5/18 於:ガーデンパレス(札幌市、北海道交通事故被害者の会主催)はコラムに

北海道新聞夕刊 2002/5/21
札幌「生命のメッセージ展」から
  癒えぬ悲しみ 遺族の思いは

 交通事故、凶悪犯罪、いじめ。十七日から十九日まで、札幌市中央区のかでる2・7で開かれた「生命(いのち)のメッセージ展」(実行委主催)は、理不尽に命を奪われた犠牲者七十七人(うち道内六人)の等身大パネルや遺品などを展示し、訪れた人に命の重さを訴えた。十九日には、道内外の遺族が天国の本人に代わって無念の思いを語る集いも開催。その一部を紹介する。
【写真説明】「生命のメッセージ展」会場。白いパネルは、命を奪われる直前の犠牲者の身長と同じ高さ。その「足元」には靴が添えられている

土場俊彦君(当時9歳、北広島市)
事故ではなく交通殺人
 二〇〇一年八月十八日午後一時半、北広島市内の歩道を自転車で走行中、歩道上を約五十メートル暴走してきた軽自動車にはねられ、死亡した。一緒にいた友達三人も重軽傷。運転していた女性会社員はハンドル操作を誤って歩道に乗り上げ、さらにブレーキと間違えてアクセルを踏んだという。俊彦君は地元のサッカー少年団のレギュラーで、コンサドーレの選手になるのが夢だった。
 父一彦さんのメッセージ。「俊彦は安全なはずの歩道上で命を奪われました。事故ではなく交通殺人です。それが業務上過失致傷とされ、加害者は今も同じ町内で暮らしています。俊彦の友人たちによく『何で事故を起こした人は刑務所に入らないの?』と聞かれます。車なら人を殺しても罪にならない、という考えが子供に浸透するのが怖い。加害者の人権という言葉を耳にしますが、被害者や遺族の権利はどこにいってしまうのでしょう。加害者が厳正に処罰され、悪質な交通犯罪が撲滅されることを願います」
【写真説明】北広島市の故・土場俊彦君のサッカーシューズ。サッカーの練習は1日も欠かしたことがなかった

青木悠さん(当時16歳、滋賀県大津市)
なぜ加害者が守られる
 二〇〇一年三月三十一日、少年五人に計画的に呼び出され、暴行を受け、六日後に死亡した。
 悠さんは九九年、交通事故にあい、左半身不随に。リハビリを続けて歩けるようになり、念願の高校合格通知を受け取った矢先だった。加害者の少年は「障害者のくせに生意気」と罵りながら、悠さんを数十発殴り、プロレス技で地面に頭からたたきつけたという。事件発生は、少年犯罪厳罰化を盛り込んだ改正少年法の施行前日。大津家裁は、旧法を適用し、直接手を下した少年二人を中等少年院送致にした。
 母和代さんのメッセージ。「悠は、弱音をはかない努力家でした。血のにじむようなつらいリハビリを乗り越え、大学を目指すため、一からやり直そうとしていました。あんなに行きたかった高校の入学式がお葬式になりました。少年法を知らない私でも、未成年の犯罪者は新聞に名前が出ないことは知っていましたが、自分の子が被害に遭って初めて、加害者だけが守られる理不尽さが全身で分かりました。少年院の二人は今夏には出てきます。見張り役だった三人は普通に高校に通学しています。どうして残忍な加害者が少年法で守られ、彼らだけに将来があるのでしょう」

鈴木零さん(当時19歳、神奈川県座間市)
君の夢 代わりに挑戦
 二〇〇〇年四月九日、友人と二人で歩道を歩いていたところを、背後から無免許、飲酒運転の暴走車に激突され、二人とも死亡した。零さんは中三の時に父親を病気で亡くし、造形作家の母共子さん=写真=と二人暮らし。早稲田大に入学したばかりだった。
 共子さんは、同じ境遇の仲間と一緒に〇一年三月、JR東京駅で開かれた被害者支援都民センターのキャンペーンで、零さんをはじめとする十六人の事件・事故犠牲者の等身大パネルを展示。これをベースに、同年七月、静岡県浜松市の遺族たちが実行委を組織し「生命のメッセージ展」
を開催、各地での巡回展に成長した。札幌は九会場目。次は八月に栃木県で開かれる。
 各会場を回り、命の重みを訴えてきた共子さんのメッセージ。「メッセージ展の主役は犠牲者。彼らが全国を旅して、事件・事故、犯罪の記憶を風化させないよう呼びかけるのです。私たち遺族は、それになぐさめられる一方、今一度家族を失った痛みと向き合わなくてはなりませんでした。私は、被害者の遺族となったことでさまざまな理不尽さに直面しました。加害者のあまりに軽い量刑を何とかしようと運動しました。昨年十一月の交通事故の厳罰化を盛り込んだ刑法改正は、被害者の声が国に届いた結果です。法律をつくるのは、役所や学者だけでなく、私たちでもあると実感しました」
 「零君へ。そんな私を最近、『強い人間だ』と言う人がいるそうです。けれど、この一年七カ月、私は君を守れなかった自分を責め続けています。生きるのが辛い。いつも君の気配を感じ、君の母親であることを支えにしています。君の断ち切られた夢を、私が代わりに挑戦してやるんだ。だから、見守っていてね」
【写真説明】会場を訪れた人は一人ずつ、10センチほどの赤い毛糸を結び付ける。第1回浜松開催の時は握りこぶし大だった毛糸玉は札幌で、バスケットボールよりも大きくなった

斎藤良夫さん(当時76歳、札幌市豊平区)
父の分まで闘っていく
 一九九九年十月二十九日午後三時二十分ごろ、青信号の横断歩道を渡っていた時に、右折してきた運送会社のトラックにはねられ、死亡した。長年、豊平地区交通安全運動推進委員会長を務め、地元で「黄色い旗のおじちゃん」と慕われた人だった。はねられたのは毎春、ボランティアで黄色い旗を振っていた豊平小前の横断歩道だった。
 娘の斎藤千穂さんのメッセージ。「父の死について、警察に『運が悪かった』と言われました。検察の対応も当初、冷淡なものでした。さまざまな場面で、警察と司法への不信が募りました。父の死後、緊張と不安の連続で、正直言って悲しむということがよく分かりません。けれど、遺族が声を上げなくては、交通犯罪加害者に寛大な、現在の状況は変わりません。もし、あの現場で別の人がはねられたら、父は黙っていなかったはずです。父の分まで闘っていきたいと思います」
 
【写真説明】「黄色い旗のおじちゃん」と慕われた故・斎藤良夫さんのパネル。愛用の帽子をかぶり、たすきをかけている

<卓上四季>飲酒運転をなくす運動

2002/05/21北海道新聞朝刊

「厳罰化で終わりではない。運転者一人ひとりの意識を変えなければダメなんです」。三年前交通事故で娘二人を亡くした千葉県在住の井上保孝さん・郁美さん夫妻は話す。道交通事故被害者の会が主催した講演会での発言痛ましい事故だった。東名高速で泥酔運転のトラックに追突され三歳と一歳の女児が焼死した。が、判決は懲役四年。刑の軽さに驚いた。飲酒運転の常習者による事故が「過失」扱いであることも納得いかなかった悪質交通犯罪の厳罰化を求め、全国の遺族と立ち上がった。三十七万人の署名を提出。世論の後押しもあり昨年十一月に改正刑法が成立。法定刑上限を十五年とする危険運転致死傷罪も新設された「でも、それでメデタシにはならない」と語る。飲酒運転が一向に減らないからだ。夫妻は最近子どもたちを対象に「命の教室」を開いている。体験談を中心に事故の悲惨さを語り「この話を両親にも伝えて」と訴えている保孝さんは講演でこんなアイデアを披露した。パーティーでは全員がワッペンをつけることにする。「車なのでお酒は飲めません」「電車なので飲酒OK」の二種類。こうすれば<うっかり>の飲酒運転はなくなる事故を一件でも減らしたい。これが夫妻の願い。郁美さんはいう。「子どもたちを、交通規則を守らない人々の犠牲にしない社会をつくることは、大人の責任です」

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「北海道新聞」2002/3/6

スクランブル交差点

歩車分離式信号 道内で本格導入


道警は今年から、歩行者が横断歩道を渡る際、交差点内への車の進入をすべてストップする「
歩車分離式信号
」を全道各地で本格導入する。歩行者の交通事故を防ぐのが狙い。三月中に札幌市中心部の交差点などに十基設置するのをはじめ、年内に五十基を整備。来年以降も順次、全道各地の市街地などに導入する。
 「歩車分離式」は、交差点内の歩行者用信号が「青」の場合、すべての車用信号が「赤」。逆に車用が「青」なら、歩行者用がすべて「赤」になる。車と歩行者が接触しないので事故抑止になるほか、車の右左折時に横断歩道を渡る歩行者を待たなくてよいため、交通の円滑化にもつながる。
 道内では現在、札幌市中心部の三越デパート前や北見市北二西一の北見日専連前交差点など二十九カ所に歩車分離式信号が設置され、事故を減らす効果が表れている。道警交通規制課が行った歩行者とドライバーに対する聞き取り調査でも「事故の心配がないので安心」とおおむね好評という。
 同課によると、三月中に設置するのは札幌市中心部の丸井今井デパート前交差点など十カ所。年内に函館市美原二の
イトーヨーカドー前交差点など全道各地の駅前や商店街、通学路に導入する。
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  危険運転致死傷罪等の新設について(2001年12月5日)
            
内藤裕次「北海道交通事故被害者の会」世話人
 危険運転致死傷罪を新設する刑法改正案が、平成13年11月28日参議院で可決され成立した。従来、交通事故により人を死傷させた場合、業務上過失致死傷罪(刑法211条)が適用されてきたが、最高でも懲役5年であり、悪質な犯罪については特に被害者感情が反映された処断ができなかった。今回の改正は、一歩前に進めるものであるが、問題点も抱えている。

 まず、業務上過失致傷罪における刑の裁量的免除が、設けられたことである。
 これは、自動車事故が業務上過失致傷罪となる場合において、「傷害が軽い場合」に「情状を考慮して」刑の免除をするものである。
 犯罪一般については、犯罪が成立しても、検察官は起訴しないことができる(起訴便宜主義)が、交通事犯の場合、この起訴便宜主義のもとで、88%が不起訴処分となっている。
 刑の免除規定が加わると、免除に該当しそうな場合、検察官はあえて起訴しないだろうから、不起訴処分という裁量行為について、刑法が追認をするという効果をもたらすであろうし、不起訴の拡大のおそれも生じよう。。
 また、これにより、一般の業務上過失致傷罪と異なり、自動車運転業務についてのみ免除が設けられることになる。これは、自動車運転は社会的に有益な行為だから、通常の注意義務を払っていてもなお生じた結果については犯罪とするべきではない、あるいは刑は軽くてもよい、とする過失犯理論からくるものである。しかし、運転者のモラルが日に日に低下する今日においては、そろそろこの考え方を改めるべきであろう。 
 
 次に、危険運転致死傷罪については、その成立要件が厳格で、検察官の立証にハードルをかけるものが多い。
 例えば、「人又は車の通行を妨害する目的で、通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」については、「目的」という内心的要素を立証しなければならない。内心は目に見えないものである以上、他の表面に現れた事実から立証するしかない。また、「赤色信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」については、「殊更に」という他の刑法の犯罪に無い要件を立証しなければならない。これも内心的要素であるから、立証は難しいのではないか。
 立証は難しいと書いたが、仮にそれ自体の立証は難しくないとしても、立証すべき事柄が増えれば、裏付けるための証拠がそれだけ多く必要になる。証拠がなければ公判維持できないから、起訴は控えられる(より軽い業務上過失致死傷罪で立件ということになる)。

 以上から、今回の法改正は、一歩進めたものであるが、適用はごく一部の犯罪でかつ証拠が明らかな場合に限定されること、また、免除規定を設けた点に問題がある。

   会員 内藤 裕次

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2001年10月25日(木) 北海道新聞 「卓上四季」
分離信号の勧め 
交通事故をなくすにはどうするか。いろいろ方策はあるが、歩行者を事故から守るには、人と車を<分ける>のが基本だろう
▼が、ほとんどの交差点はそうなっていない。青信号を渡った歩行者が、右左折の車両に巻き込まれる事故が後を絶たない。「あまりに車優先で人命がないがしろにされている」。青信号を横断中、車にひかれて亡くなった子どもの親たちが立ち上がった
▼歩行者が交差点の横断歩道を渡っている時は、車すべてをとめる<歩車分離>式にすればいい。そう訴えた。信号の管理責任を問う裁判を起こした。活動を本にまとめた
▼警察の対応は鈍かった。渋滞を招く。そもそも事故は運転者の不注意による。それが理由だった。全国の信号で分離式はわずか1%にすぎない。道内も札幌・三越前のようなスクランブル方式を含め、たった二十七カ所
▼その警察がやっと重い腰をあげた。ことし全国百カ所に分離式信号をモデル運用する。車の円滑な走行より、歩行者の安全を優先して−という声が、交通行政を動かした
▼十年間この運動に取り組んできた、東京在住の長谷智喜さんは今春、札幌での講演会でこう話している。「歩行者の安全が、運転者の手の中にあるという構造を、みんなの力で、少しずつでも変えていきませんか」。近く道内でも札幌・北五西三と北見・北二西一で<変化への試み>がスタートする。 

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2001年3月10日(土) 北海道新聞(夕刊)
「交通安全白書」について官房長官に意見書
 
道交通事故被害者の会
 北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表、七十人)は十日、福田康夫官房長官あてに、二○○○年度版「交通安全白書」の記述への疑問などを指摘する意見書を郵送した。同会は白書の中に「車社会は便利なので交通事故発生は仕方がない」と受け取れる表現があるとし、一月下旬に札幌で開いたフォーラムで異議を唱えていた。

 同会が疑問視するのは、白書の第二章「『交通事故における弱者及び被害者』の視点に立った交通安全対策と今後の方向」の序文にある「自動車交通社会の便益の裏返しとしての社会的費用である交通事故の被害」との記述など数カ所。

 意見書の中では「クルマ優先社会の人命軽視の考え方が語られており、大きな衝撃を受けた」と前置きし、文章表現に対して抗議するとともに、「政府がクルマ優先の考え方を改め、交通弱者、被害者の視点に立つことを求める」としている。

 前田代表は「多くの賛同者の思いを政府に受け止めてもらいたい。誠意ある回答を期待している」と話している。

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2001年1月25日(木) 北海道新聞(夕刊)
交通事故死は「社会的費用?」交通安全白書に遺族ら反発

 「車社会は便利なので、交通事故発生は仕方がない」とも受け取れる表現が「交通安全白書」(2000年度版)の中にあると、交通事故で肉親を亡くした人たちから疑問の声が出ている。北海道交通事故被害者の会(前田敏章代表)は、26日に開くフォーラムで「車優先社会を容認する人命軽視の考え方で、怒りを覚える」と訴える。指摘を受けた内閣府も、記述の見直しを検討している。

 問題視されているのは、白書の第二章「『交通事故における弱者及び被害者』の視点に立った交通安全対策と今後の方向」の序文にある「自動車交通社会の便益の裏返しとしての社会的費用である交通事故の被害」という記述。  1995年に高校2年の長女を失った前田代表は「便利な車を使っているのだから、死亡事故も仕方ないという姿勢でいるかぎり、私たちが目指す交通事故根絶はほど遠い」と憤る。

 白書の「(交通事故被害の)負担を個人の苦しみとしては可能な限り軽減するため、社会全体がバランスよく負担していく」という表現にも批判がある。夫を事故で亡くした同会の内山孝子副代表は「夫の事故死は社会全体がバランスよく被害を負担した結果だから我慢しなさい、という意味なのですか」と唇をかむ。

 クルマ社会を問い直す会前代表の杉田聡・帯広畜産大教授は「重大な被害者が出る交通事故を、政府が『社会的費用』と経済学用語で語る感覚は異常。犠牲はやむを得ないという発想で、事故をなくす努力を放棄している」と指摘する。
 前田代表は昨年暮れ、自ら運営する「交通死―遺された親の叫び」というインターネットのホームページに、白書への疑問を書いたコラムを掲載。さらにフォーラムでの討論などを踏まえ、関係省庁への抗議文提出なども検討している。
 こうした指摘について、交通安全白書を編集する内閣府の交通安全対策担当は、「意図と違った形で受け止められるのであれば、今後はそのような表現は避けたい」と話している。
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2000年7月13日(木) 朝日新聞「論壇」より

悪質な交通犯罪は殺人に相当
高木 光徳   元検察官
悪質な交通犯罪についての判決が相次いでいる。いずれも、刑法211条の業務上過失致死罪を適用したが、被害者の遺族のみならず広く国民の間で量刑が軽すぎるとの批判が高まっている。私は1962年に検察事務官から副検事となり、86年に定年退職するまでの間、大半を東京や横浜の地方・区検察庁で交通事犯を担当した。その経験から、この問題について意見を述べたい。

東京都世田谷区の東名高速道路で酒酔い運転の大型トラックが乗用車に追突、幼児二人が死亡した事件では、東京地裁が6月8日、求刑の懲役5年に対して被告に懲役4年の判決を言い渡した。検察側は量刑不当として控訴した。

また、神奈川県座間市で無免許、酒気帯びで一般道路を時速100キロで暴走した乗用車に大学生二人がはねられて死亡した事件については、7月4日に横浜地裁相模原支部が、求刑通り懲役5年6ヶ月(業務上過失致死と無免許運転の罪の最高刑を合わせた)の判決を下した。

俗に交通三悪といわれる無免許、酒酔い、法外な速度違反に起因する事故について、わが国の法実務の取り扱い、量刑は極めて寛大である。被害者、遺族の受けた苦痛を考えると胸が痛む。検察庁、裁判所は「現行法上やむを得ない。」というが、果たしてそうであろうか。

業務上過失犯に適用される刑法211条の科刑の上限は確かに懲役5年である。しかし、これは過失犯に対するものである。事故発生前にすでに危険の発生が予測される交通三悪に起因する事犯を単純に過失犯として認知していいものか、真剣に検討すべき時期にきている。

そもそも、現行刑法が制定された明治40年ごろは、自動車など一般の手にとどかないものであり、自動車事故は全く予測されていなかった。211条は、医療行為などの危険業務や新興の重工業などにかかわる災害に対応して規定されたという歴史的背景を認識する必要がある。

どだい現在のような自動車事犯、とくに、交通三悪にみられる故意犯的な無謀で悪質な犯罪に適用するには無理がある。こうした事犯に対しては、「死刑または無期もしくは3年以上の懲役」と定めた刑法199条の殺人罪を適用するべきである。

検察庁、裁判所がそれをためらう理由として、犯罪構成要件の基本である犯意の立証が困難であることが挙げられる。しかし、自動車による悪質事件の場合は、交通事故の発生ではなく、無免許や酒酔い運転の開始を行為着手時点と認識すれば、犯意(故意もしくは未必の故意)の存在は十分に立証が可能であると考える

その重要な根拠として運転免許制度の存在を指摘することができる。自動車の運転は人的物的に重大な被害を及ぼす可能性がある。だからこそ、運転資格を厳格に規定した免許制度になっている。適正な操縦を担保するため、運転技能の習得、車輌構造や法規の学科の習得を義務づけ、その上で運転技術の能力を確認して仮免許を与える。学科、実技試験を行い、基準点に合格したもに対して、はじめて運転免許を与える。

さらに免許交付、免許更新のさいには、とくに交通三悪について厳重に注意し、三悪を犯すような運転は絶対にしないことを周知徹底させている。これらの悪質運転をすれば、事故の発生につながる具体的な危険が存在するからである。

このような事情を考慮に入れても、なお悪質な交通事犯に対して刑法199条の適用をためらうということであれば、立法府において法改正もくしは新しい特別立法の措置をとるべきであろう。

この種の悪質交通事犯は依然としてあとをたたず、かえって増加の傾向にある。加害者の経済的理由で被害者が十分な賠償をうけられない例や、満足な教育をはばまれている交通遺児の問題など、交通事故をとりまく状況は逼迫しており、一刻もゆるがせにはできない。

関係当局の英断をのぞむ。
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北海道交通事故被害者の会
 2000年 定期総会開かる

1999年9月17日に産声をあげた「北海道交通事故被害者の会」は、
2000年5月20日、初めての定期総会を開催し、
これまで8か月間の活動をまとめ、今後の活動の方向を確認しました。
以下は、総会で確認された文書です
これまでの活動と今後の活動について
                              2000年5月20日
                        北海道交通事故被害者の会

北海道交通事故被害者の会」(以下「被害者の会」)は、昨年9月17日の設立総 会以来8か月を経て、初めての定期総会を迎えることになりました。 この間「被害者の会」では、設立の主旨から会の行うべき活動を、時間をかけて相 談し、模索しながら会員相互の支援交流を中心に初期の活動を進めてきました。主な 活動は、毎月一回世話人会を兼ねた例会開催、電話相談、各種会合での訴え、研修会 参加、会報の発行、会のホームページ開設などですが、一歩一歩活動するなかで、「被 害者の会」結成の意義と、今後の活動の方向性が見えてきました。

私たちが「被害者の会」に集まって何よりも救われたことは、それまでの孤立無援 の状況から、理解し互いに支援し合える仲間と場が初めて得られたことです。私たち の、かけがえのない肉親を失ったことによる、あるいは心身ともに深く傷つけられた ことによる悲嘆や腹の底からの怒りに変わりはありません。しかし私たちは、何度か の例会を重ねる中、悲しみや憤りをもたらした直接的な加害者をはじめ、二次的被害 をもたらした捜査や裁判の過程、保険会社の対応、そしてこれらの背景にある交通犯 罪にあまりに寛容な人権無視の「クルマ社会」などに対する思いが、全ての被害者に 共通のものであり、そしてこれを変えたいという願いが正当なものであることを理解 し確信することができました。

悲しみ、怒りを個々の胸の内に押し込めておく事はできません。それでは同様事故 の再発が避けられず、同じ悲しみ、怒り、恨みを生み、何より交通犯罪で命を奪われ た故人や、深い傷を負った被害者の方の尊い犠牲が報われないからです。「被害者の 会」には、会の発足後の事故によって最愛の家族を失った会員の方もおられますが、 やはり「死人に口無し」の不当な捜査や扱いは変わっておらず、かけがえのない肉親 を失った悲嘆に加えての二次的被害の悲惨さに、このままでは仏も遺族も浮かばれな いという思いを新たにしています。そして、全道、全国で一向に減る兆しもみせない 悲惨な交通事故、悪質な交通犯罪、これらを見聞きする度に胸が痛みます。

私たちは、発足時に定めた会則の目的にあるように、交通事故の被害にあった者が 不公正を受けることのないように、そして新たな被害者を生み出さないための抜本対 策を求めて、活動を発展させたいと思います。 私たちは、交通事故被害者のおかれている実態と願いを具体的に把握するために、 この4月、会員アンケートを実施しました。詳細な分析はこれからですが、会員の 63%から寄せられた回答には無念さや憤りとともに、会の今後の活動についての期待 も述べられています。

「被害者の会」では、これらをもとに一つひとつの事例が教訓として生かされ、二 度と起されることがないという万全な対策が講じられるよう、関係機関に要請してい きたいと思います。 飛行機や列車の事故であれば、事故原因が徹底的に究明され、再発防止の抜本対策 がはかられるのは至極当たり前のことです。ところが道路上の一般車両事故について は、科学的な原因究明が不十分で、したがってその対策もおざなりです。結果として 同様事故が毎年一定の割合で発生し続け、本来社会で保護すべき子どもやお年寄りな ど交通弱者の犠牲が年間5000人以上にものぼるという人命軽視の異常な社会が形成 されているのです。

私たちは、真に命が尊重される社会の実現を望みます。現代の最大の人権侵害とも いうべき交通犯罪を絶滅するため、被害者の立場から具体的に次のことを実践し、あ るいは要請していきたいと思います。
(1)交通事故被害の悲惨さ、かけがえのない命の大切さを訴える、啓蒙活動。
(2)捜査段階や裁判の過程で、「死人に口無し」のような不公正をなくすため、 被害者がおかれている不当に弱い立場を改善すること。
(3)事故の再発をさせないための原因究明と抜本対策を求めること。そのために、 科学的な事故捜査を確立すること。
(4)他の犯罪に比べ、交通犯罪の起訴率は低く、刑事罰は軽すぎます。罪に見合 った正当な量刑とすること。
(5)自賠責保険の後遺障害認定基準を見直し、適切な損害賠償を実現するなど、 精神的、経済的な支援を含めた補償制度を確立すること。
(6)免許賦与条件を厳格にすること。分離信号設置や歩車分離の道路整備、生活 道路での車の速度や通行の制限など、歩行者保護が貫かれた安全な道路環境を つくること。公共交通機関を整備すること。

最後に、これまで声をあげたくてもあげられなかったであろう多くの被害者、遺族 の方に呼びかけます。不公正を許さず、尊い犠牲を無にしないため、そして同様の事故や交通犯罪を絶滅するために「被害者の会」でその思いを束ねて力にしましょう。 入会を心から呼びかけます。

                                         以上

入会申し込み・連絡先 011-233-5130
事務局 札幌市中央区北1条西9丁目 ノースキャピタルビル4階
会則など詳細は、会のホームページをご覧下さい
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