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日曜インタビュー 2002.6.9 北海道新聞より |
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広島県廿日市市出身。広島大学で醗酵工学を専攻し、地元の酒造会社に就職。1986年秋、北海道ワインへ転職する。ワインづくりを8年間学んだ後、ブドウ栽培に適した土地を求め、蘭越町へ移り住んだ。妻の展与(のぶよ)さん(45)、一女静さん(19)、二女萌さん(16)、三女咲さん(13)、犬1匹、ヤギ2頭と暮らす。 |
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「理想のワインをつくるため、自分の手で個性あふれるブドウを育てたい」。北海道ワイン(本社・小樽)を退職した1994年春、ニセコ連峰に抱かれた蘭越町上里で栽培を始めた。8年前からは毎年、中口の白「松原農園ワイン」を生産。ほとんどが道外へ出荷され、全国にファンも多いという。コメどころとして知られる蘭越町の新たな特産品を目指し奮闘を続けている。(倶知安支局 川口 浩平) |
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−なぜプドウを自分で育てようと思ったのですか。
「ワインメーカーで働くうちに『ワインづくりは引算』と考えるようになりました。いいブドウを収獲し、いかにその個性を残すか。鮮度の低下など、製造過程でさまざまな減点はあるのですが、何かを加えてブドウ以上のワインにすることはできない。80点のプドウから最上のワインは決して生まれないんです。それなら、百点満点のブドウを自分でつくるしかないと思いました」
−蘭越を選んだ理由は。
「僕が栽培したかったのはドイツ原産の『ミュラー・トゥルガウ』という白ブドウ。この品種はマスカットに似た芳純な香りが特徴ですが、収穫前の気温が高すぎると酸や香りが抜けて大味になりやすい。夏から秋にかけてぐっと冷え込む蘭越のような土地は、条件にぴったりなんです」
−理想のブドウはできていますか。
「満点とは言えませんが、だんだん理想に近づいてきました。収穫まで機械を使わず、ほとんどが家族の手作業。効率は悪くても、『栄養は足りているか』『病気はないか』など一本一本に目を配ることができます。そして今は、蘭越の自然を最大限に生かしたプドウをつくるのが目標。そのため、除草剤はまかず、殺虫剤も最低限に抑えており、畑は雑草と虫だらけです。でも、害虫をやっつける天敵もたくさんいて、プドウを中心にした小宇宙ができあがっているんです」
−醸造は、北海道ワインに委託しているんですね。
「ええ。古巣に醸造をお願いし、うちのラベルを張って売り出しています。会社を辞めてからも良いお付き合いをさせてもらい、人に恵まれてここまで来られたんだなぁと実感しますね。自前のワイナリー(醸造所)も視野に入れていますが、もう少し経営が安定してから考えたいと思っています」
−2001年産ワインが今月発売されました。出来はどうですか。
「1ヘクタールほどの畑で、毎年七、八トンのブドウが収獲できるのですが、昨年は6.5トンほどしか採れませんでした。ワインにして6,500本ぐらいです。でも『豊作の年に良いビンテージワインはできない』との格言があるくらいで、ブドウの糖度は高く、香りも豊か。すっきりと飲みやすく、満足できる仕上がりです」
「ワインの印象を語るのを、高尚なことのように扱う風潮は大嫌い」と話すように、気取らない人柄が魅力。「松原農園ワイン」は、口当たりがとても柔らかく、松原さんの情熱と実直な仕事ぶりが伝わってくる。道内では蘭越町内の酒屋さんだけで販売し、価格は1本1500円(税別)。テーブルワインにおすすめです。