2004年 早春号(32号)

春になりました。

 つい先週まであたり一面雪景色だった松原農園ですが、暖かい風が何度か吹き、あっという間に雪はほとんど消え失せ今は白も緑も無い、初冬のような風景になりました。
 でも、ちょっと足を伸ばせばもうあちこちに季節の便りが顔を出しています。春は日差しからやってきて、風にも感じるようになり、雪解けにあわせて香りと、足の裏の柔らかな感触がやってきます。
 でも一番春を感じるのはやはり花からかな?
 北海道ではほとんど振り向かれる事も無いフキノトウですが、やはり雪解け直後に顔を出すその姿は新しい年への期待を感じさせます。
  豪雪地帯のニセコ山麓の中でも「山の中」と言っていい我が家。最初の春らしい原色はやはり「クロッカス」。どこにでもあるこの花が、そこだけ早く雪が溶けた我が家の花壇で咲いているのはやはり格別の感があります。侮るなかれ、クロッカス、君は美しい…。
 そんな時期に私たちの小さな町内会では「春祭り」という催しを行います。小さな社にみんなで集まり、お供え、お祓いをし、杉の小枝を捧げて今年の豊作を祈るのです。ここの土地は小樽の孤児院が開拓を始めたと聞いています。その農場に設けられた古い神社で営々と続けられてきた春の行事です。
 農業に生活を預けている私たちは、正直「天気次第」の生活です。それだけに、「今年はいい天気に恵まれますように…」というのはみんなの気持ちです。私は、そんな天に祈らざるをえない生活が、結構気に入っています。

娘たちの卒業

 我が家には3年ずつ年が離れて3人の娘たちがいます。と、言うことは…今年は卒業の年でした!現在日本にいない長女をのぞいて、中学生と小学生はめでたく卒業いたしました。特に末娘の小学校の卒業は、私たちにとって大きな大きな出来事でした。だって、もう小学校へは行けなくなったのです。
 10年前、小樽からこの土地へ引っ越してきた私たちに、この土地の人たちはとても優しかった。それからだんだん気楽に大きな顔をして、楽しく過ごしてきたのです。こちらが飛び込んで行きさえすればすぐに親しい付き合いが始められる、あっけらかんとした親しみやすさがありました。
 それ以来、学校へは入り浸りでした。広島や小樽ではどれだけ学校へ出入りしていたでしょうか。大きな行事は必ず顔を出して、先生方といっしょにやってきました。あんまり図書室が貧相だったので妻が音頭をとって始めた読書活動は、多くの母親に支えられて今は蘭越町内に広がる活動になっています。「子どもにいいことならやればいいっしょ。で、私は何やればいい?」という腰の軽さもこの土地の身上。夢中に過ごしているうちにいつのまにか若い親たちに見送られる立場になっていました。
 卒業式は、とにかく嬉しく、ありがたく、そして寂しい思いでいっぱいでした。たった5人の同級生ですが、仲良く、笑い合って卒業できたこと、どの子も立派に成長したと心から思えてそれが嬉しくてたまらない事。
 学校はサービス業だと思っていますので、親として不満もたくさんあれば、逆に自らが至らないところも思い起こせば限りがありません。でもここには、語り合う時間がゆっくりと流れています。それも地域全体、お年寄りまでみんな含めて子どもたちの世界を見守り包み込む何かがあったのです。それは、学校を去るこのときになって改めて強く実感しています。
 そのために犠牲にしている物もたくさんあることを承知で言えば、毎日学校へ行くことが楽しい、と確信を持って言えた毎日を過ごさせてもらえて、ここにこんな素晴らしい学校があるんだよ、と日本中のみんなに知ってもらいたいと思えた卒業式でした。(卒業式の様子はホームページの「季節の gallery(写真館)」 からも見ることができます。ぜひどうぞ。)