楽観構想

週末に流れる、とある艦内放送。

シタン　　「はい、皆様こんにちは。今週もまた『シタンのよろず相談室』のお時間がやってまいりました。
　　　　　　こちらの番組は、皆様から寄せられる様々なお悩みに対して、カウンセラーであるわたくし、
　　　　　　シタン・ウヅキがお答えさせていただく形をとっております。ますます混迷していく世の中、
　　　　　　希望を持って皆様には新世紀の第一歩を踏み出していただきたいものです。
　　　　　　そのお手伝いが少しでもできることを願ってやみません。では、さっそく相談に移りたいと思います。
　　　　　　本日の相談者と電話が繋がっているようですね。もしもし？」
相談者　「はい」
シタン　　「えーと、お名前は何とお呼びすればよろしいでしょうか？　イニシャルでもなんでも結構ですので」
相談者　「えーと、じゃあ……Ｂとでも」
シタン　　「はい、Ｂさんですね。本日はよろしくお願い致します。
　　　　　　ではＢさん、さっそくなんですが、あなたのお悩みというのは？」
相談者　「はあ、えーと。……ちょっと言いにくいんだけど。その、恋人のことで」
シタン　　「恋人ですか。ふむ、恋の悩みですね。ちなみにＢさんとその彼はおいくつなんですか？」
相談者　「俺が１８で、奴が２９なんだけど」
シタン　　「一回り近く離れているんですね。では、具体的にどんなことで悩んでおられるのでしょう？」
相談者　「その、あー……。なんというか、アレだ」
シタン　　「は？　アレとは？」
相談者　「だから、アレっていうのはアレなんだよ」
シタン　　「はっきりおっしゃってください。こちらも放送時間が限られているんです。
　　　　　　さくさく進めていかねばならない事情も察してください。要点は短く明瞭にお願いします」
相談者　「だーっ、もうわかったよっ！　だから、夜の生活のことで、ちょっと」
シタン　　「ちょっと？」
相談者　「う、いや、……かなり。……かーっ！　いいや、もう。　この際だ、はっきり言っちまえ！
　　　　　　要するにアレが激しすぎるっちゅーか、休みなしっていうか。これじゃこっちの身が
　　　　　　保たないという危機が感じられてきたんで、相談にのってもらおうかと思ったんだよ！
　　　　　　どうにかして奴の性欲を、別の方向に向けさせる方法はないものかと」
シタン　「ははあ、なるほど。聞いている方にしてみれば、贅沢な悩みという気もしますが。うーん、そうですねえ……。
　　　　　人間の三大欲求、食欲、性欲、睡眠欲のうち、一番後回しになるのが性欲なんだそうです。
　　　　　つまりは食欲と睡眠欲が満たされていなければ、性欲が優先されることはないんで、
　　　　　その辺りのことを利用してみてはいかがでしょうか？」
相談者　「というと？」
シタン　　「つまり、あなたの彼を満腹にさせずに睡眠不足にさせればいいわけです。
　　　　　　食べさせない、眠らせないってことですね」
相談者　「眠らせないってのはともかく、食べさせないってのはできねえな。確か奴は低血糖で、
　　　　　　糖分摂取しないと倒れっちまうはずだから。となると眠らせないでおけばいいってことか？」
シタン　　「そうですね。睡眠が最も優先される欲求ですから、それが一番いいかもしれません。
　　　　　　そうすればスケベ心もおきないでしょう――と、思ったんですが。
　　　　　　すみません。これもダメです。人間寝ないと発狂してしまうんだった」
相談者　「だった……って、あんた。じゃあ、どうしたらいいんだよ？」
シタン　　「うーん、困りましたねえ。どうしたものか……。Ｂさん、彼が発狂するのも嫌ですよね？」
相談者　「当たり前だろうがっ！　何か他に方法はねえのかよ！？」
シタン　　「そうですよねえ、うーん、うーん……。すみません。さすがに私にも解決策が見つかりません。
　　　　　　Ｂさん、ここはあきらめて、発想の転換をはかってみてはいかがでしょうか？
　　　　　　彼との甘い生活を楽しんでみるのも一つの手ですよ」
相談者　「はいそうですか――って、そんな簡単に割りきれるかーっ！！」
シタン　　「Ｂさんには心を強く持って生きていってほしいですね。人間時には諦めが必要です。
　　　　　　相談者には、柔軟な思考の切り替えを果たしてもらうというという結果に落ちつきました。
　　　　　　残念ですが、終わりの時間が迫ってまいりました。『シタンのよろず相談室』、
　　　　　　次回は再来週の放送になります。番組提供は、高速情報をお届けする
　　　　　　『ユグドラ放送協会』、パーソナリティはカウンセラー、シタン・ウヅキがお送りしました。
　　　　　　では、また来週。皆様、よい週末をお迎え下さい」
相談者　「こら、待て！　勝手に電話を切るなぁー！！」