放射線とは何か?
Step5 自然放射線と天然放射性核種
(1)自然放射線
- 我々は誕生以来環境からの放射線にさらされ続けてきました。自然の放射線が人類の発展に有害であったか、それとも役立ってきたのかは今のところ不明とされています。細胞の突然変異が、生物の進化に寄与してきたのであるから有用であるにはちがいありません。一方、大部分の突然変異は遺伝的欠陥と遺伝的死を生じてきたので害を与えたともいえます。これら二つの効果のバランスが、人類の進化に役立ってきたものと推定されます。
- 自然の放射線の線源は、宇宙線、大地からの放射線、体内の放射性物質によるものがあります。これらの値は一定ではなく、特に大地からの放射線には地域によって大きく変化します。
- 自然放射線による被ばくは、年間約2.4mSvで、その大部分は宇宙線、大地放射線、220Rn、222Rn、体内40Kの寄与によると考えられています。
(2)地球起源の放射性同位元素
- 地球の誕生以来、地核を構成する岩石・土壌の中には、放射性同位元素が存在しています。ウラン系列、トリウム系列、アクチニウム系列の3つの壊変系列をつくる放射性同位元素と、40Kのように壊変して安定な元素に変わってしまう系列を作らない放射性同位元素とに分けられます。
- ウラン系列 : 238Uに始まり206Pbで終わる壊変系列
- トリウム系列 : 232Thに始まり208Pbで終わる壊変系列
- アクチニウム系列 : 235Uに始まり207Pbで終わる壊変系列
- 3つの壊変系列のうち、ウランとトリウム系列の放射性同位元素が放出する放射線(γ線)と40Kが放出する放射線(γ線)が人に被ばくをもたらす大地放射線を構成しています。
(3)天然放射性核種
・ウラン238 uranium238
- 238U。半減期は4.468×109年(約45億年)、α壊変する。そのエネルギーは約4.1MeV。γ線放射のエネルギーは非常に低く0.046MeV。同位体存在度は99.275%。天然に存在するウラン系列の最初の核種。速中性子で核分裂を起こし、熱中性子では核分裂を起こさない。また、自発核分裂し、半減期は6.5×1015年。1gあたりの放射能は12.4kBq。
・ラジウム226 radium226
- 226Ra。半減期1.60×103年のα放出体でγ線も放出する。天然に存在するウラン系列に属し、222Rn(ラドン)の親核種。すべてのウラン鉱物に含まれ、例えばビッチブレンド(瀝青ウラン)1tには約200mg含まれている。1gあたり36.6GBq。
・ラドン222 radon222
- 222Rn。半減期3.8235日のα放出体(5.49MeV)。天然に存在するウラン系列に属し、222Rnは226Raの娘核種。222Rnの娘核種は218Po(ポロニウム)(α、3.05分)。0℃、1気圧の水に対する溶解度は0.51cm3/cm3で、鉱泉、温泉、地下水などに多量に溶けている。
・トリウム232 thorium232
- 半減期は1.41×1010、α壊変し、その娘核種は228Ra。α線のエネルギーは約4MeV。γ線のエネルギーは極めて低く0.059MeV。天然に存在するトリウム系列の最初の放射性核種。232Thは中性子を吸収して核分裂性の233Uに変わるので、潜在核燃料物質である。なお、トリウムという元素は232Thしか含まない単核種元素である。1gあたり4.06kBq。
・カリウム40 potassium40
- 40K。半減期は1.28×109年。カリウムの中に0.0117%存在する。β−(89%)、EC(11%)の分岐崩壊を行い、40Ca(カルシウム)(安定)と40Ar(アルゴン)(安定)にそれぞれ変換する。
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