基本構想 1.S301A、S402A S−82型に比較して車体、エンジン共に全面設計変更して、125cc 2サイクル ユニットスイング エンジン、3段ギアミッション、17" タイヤを採用し、斬新なスタイルを持った実用車となった。 S−402Aは、輸出専用車としてエンジンを 150cc にボアアップした車。 2.S301AT、S402AT S301A,S402Aに対してツーリングムードを持たせた車。 3.S301B エンジンをウエブタイプ ロータリーバルブに変更し性能向上を図った。 4.S301BH S301Bのトルコン車。 5.S302BT、S402BT S302BTは、S301Bを4速ハンドルクラッチにして、スポーティーな感じを強調した ツーリング車。 S402BTは、150cc にボアアップして主として輸出をねらった。 主な特徴 1.性能 A型は、3段ギアミッションの採用により、従来の車よりも最高速度、登坂限度共に大幅に向上した。 B型では、ロータリーバルブ エンジンの採用により性能は更にアップした。 2.密閉オイルバス・ユニットスイング方式の採用 S601で好評であった密閉オイルバス式チェーンケースを採用して、チェーンの耐久性、騒音を 著しく向上させた。 3.3.50−10 タイヤの採用 従来より一回り大きい 17" タイヤの採用により繰安性、乗り心地共著しく向上させた。 4.定容量型自動切断式クラッチの採用 自動クラッチの特徴を持ちながらハーフクラッチ操作が出来るのでオートバイ並の出足を味わうこと が出来た 5.ハンドクラッチ4段ギアミッションの採用(S302BT、S402BT) ハンドクラッチ 4GM の採用により走行性能を向上させてスポーテイーにした。 6.トルコンの採用(S301BH) 流体トルクコンバーターを採用してさらに乗りやすいスクーターにした。 7.サイドカバーの採用 従来の開閉式に比べ構造簡素にして重量軽減をはかった。 試作経過の概要 S-301 昭和33年4月〜 構想及び予備検討 S−82次期車として 33K型が試作された。これは、モノコックフレーム、流体トルク コンバーター、オイルバス式チェーンケース、ユニットスイング方式空気バネ、3.50−10 タイヤ等、数々の新設計が施されていたが重量、コスト、生産設備等の理由により生産されなかった。 昭和35年3月〜 計画 当時、125cc 系は、二輪車の主流製品となっていたので次期車の開発が急務とされ、軽量、低価格 に徹した実用車を目的として 35Bが計画された。これは、バックボーンフレーム、オイルバス ユニットスイング エンジン、3.50−10タイヤを採用し、トルコン 及び 3GM ギアの 2型式とされた。このほかに、カバーの回転ヒンジ方式の廃止、ポリエチレン等の新材料仕様が 計画された。 昭和35年4月〜 一時試作 3GM(35BGX) 2台、トルコン(35BT2)1台の試作が昭和35年8月に完成。 トルコン+2GM(35BT1)は、エンジンを換装してテストした。 重量についてもっとも留意され、軽量化に成功したが整備、機能面で不満足な点があった。 1.性能 トルコンは性能面で商品性に問題が残ったので 3GMを優先させることになった。 2.チェーン 二次チェーンが切損したためにダブルにして対策した。 3.クラッチ 焼け対策として、湿式にしたが攪拌抵抗が大きいため内部に壁や仕切をつけて対策した。 昭和35年7月〜 二次試作 開発番号 35BGY として4台の試作車が昭和35年11月に完成。 製品のデザインは、佐々木達三氏に依頼した。カバーは、サイドカバーの着脱方式に変更され 整備上の問題点が改善された。 エンジンは、他社との競合上低速シリンダーを高速シリンダーに変更して 3GMですすめられた。 1.乗り心地 前輪に対してテンションラバー、片持ちオイルクッションユニット空気バネ+オイルダンパー、 空気バネのみ、エリゴ+オイルダンパー、エリゴのみが試作され、乗り心地試験が行われた。 その結果、テンションラバーは乗り心地不良、エリゴ+オイルダンパーは、乗り心地は良好 だったがコストの点で問題があり最終的には前後とも、オイルクッションユニットに決まった。 2.冷却 サイドカバー、オイルクッショニュニット、気化器の加熱を防止するため、ファンカバーの形状を 変更した。 昭和36年1月〜 三次試作 製品番号S301A として昭和36年3月末2台の試作車を完成。 二次試作の確認を生産仕様に近い姿で行った。試験の過程で下記の問題があったので改善した。 タイヤパターンは、繰安性改善のため、前後輪それぞれ別のパターンにした。 性能は、夏期の低速部の出力低下が大きかったので、再び低速シリンダーに変更することとなった。 1.取り扱い センタースタンドだけでは重くて不便だったのでサイドスタンドを装着した。 2.キック バッテリー上がりが、生産車に多発したのでキックをつけて対策。 昭和36年6月〜 増加試作(S301A、S301E) 生産図で確認のため、昭和36年7〜8月に11台の試作車を完成した。 この段階で、再度、トルコン車を試作したが性能的に物足りなかったので生産には至らなかった。 S-402A 昭和36年8月〜 計画 S85Gの次期車としてS301Aを 150cc にボアアップし性能向上さ輸出車を目標として 3GM とトルコンの2車種を計画した。 昭和36年9月〜 試作 3GM車3台、トルコン車3台の試作が昭和36年12月に完成。 試作当初はエンジンが低速型である上に高速時のマフラー損失が比較的大きく、トルコン車は 性能不足で生産に至らなかった。3GM車は減速比を下げることによって計画を満足出来た。 S-301B 昭和37年10月〜 計画 ウエブタイプ ロータリーバルブ及び新型マフラーの採用により性能向上をはかった。 昭和38年3月に5台の試作車を完成。 1.性能 ロータリーバルブの採用及び排気の脈動を利用することにより、中高速性能が大幅に向上した。 初期には低速性能がS301Aを下回ったが、低速シリンダーの採用、クラッチイン回転数の 増加により解決した。 2.振動 ロータリーバルブになったためエンジンのバランスファクターが従来通りとれなくなったが クランクウエブに鉛を入れて解決した。 S-302BT、402BT 昭和37年12月〜 計画 次の基本構想のもとに計画された。 1.高速道路の走行に適した高性能車で、輸出でベスパ、ランブレッタに対抗できる車。 2.車体はS301をベースにしたツーリングタイプでエンジンはES36Bを母体とした 125cc または 150cc のハンドクラッチ 4GM とする。 昭和38年6月〜 試作 昭和38年7月 150cc 2台、125cc 2台の試作車が完成。 1.高速耐久性確認のため米国で試験を行った。 2.ミッションチェンジの節度不良をバネ特性の変更で解決した。 3.タイヤの高速振動はバランスウエイトをつけると解決する事を確認した。 S-301BH 昭和40年3月〜 計画/試作 S301B型でトルコン車に必要な中低速の出力が大幅に向上したために、性能的に満足出来る 見通しが得られ再度計画された。 昭和40年4月先行試作車4台完成、7月に増加試作車15台が完成。 1.性能は満足された。 2.振動 測定値ではS301Bと同じであったが 3500rpm 付近に振動の山があるために体感ではトルコン車 の方が多く感ずるのでバランスファクターを変えることにより気にならない程度まで改善した。 3.騒音 常用回転数が比較的高いためにマフラー音がうるさく感じられたので、第1室、第2室へ グラスマットを追加して対策した。また、惰行時のチェーン音の高いものが数台発生したが、 中間軸とベアリングとの間にスペーサーを入れて改善した。 S301BK 昭和38年12月〜 計画 S301Bを母体として軌道上も道路も走れるスクーターを目標とした。 軌道を走るときは補助車輪を4個使用し、道路を走るときはそれを格納する構造とした。 昭和39年7月〜 試作 8月31日、4台の試作車が完成。 サイドローラーのせり上がりによる脱線を以下の対策により解決した。 1.ハンドルを2゜左に切って固定した 2.サイドローラーの材質をFC製に変更して分布加重を増加させた。 ローラーの摩耗対策として材質をパーライトマリアブルに変更した。 3.このほか種々の改良の結果、最終的には 500Km 耐久走行を実施して問題は無かった。 生産車は、テストセール車として、門司鉄道管理局に1台、名古屋に2台、岡山に2台、 合計5台が納入された。