基本構想 50cc級の純スクータータイプとして、ロータリーバルブ、自動遠心クラッチ、セルスターターを 装備したエンジンを搭載し、小径タイヤでカバーに硬質ポリエチレンを、また、懸架緩衝にS201 方式を採用した軽量安価車とする。 主な特徴 1.ロータリーバルブエンジンの採用 低速から高速までトルクが高く、三段変速と相まって優れた性能を示した。 2.カバーに硬質ポリエチレンを採用 これにより車体重量が約5kgも軽減された。 3.小径タイヤの採用 3.00−10 タイヤの採用により繰安性、乗り心地が良好であった。 4.取扱、操作が容易 軽量化と自動遠心クラッチ、スターターダイナモの装備により取扱い、操作が容易で婦女子でも 手軽に乗ることができた。 5.純スクタータイプで自然空冷 ダクト部の構造を生かして、エンジンを自然空冷にし出力損失を少なくすることができた。 試作経過の概要 昭和33年2月〜 S−201の姉妹車が計画され次の様な概要で検討された。 1) 50cc2サイクル、自動遠心クラッチ、3段ミッション 2) 大径車輪 3) S−201方式の懸架、緩衝装置 4) スタイルはセミスクータータイプ 5) 販売価格は5.5万円を目標 各種資料の収集や他社調査および主要計算を行ったが検討段階で次の計画へ移行することとなった。 昭和35年2月〜 以下の計画が提出され、業界情勢などから急拠社長より指示があり、 本格的に50ccへ乗り出すことになった。 1) 50cc、2サイクル、自動遠心クラッチ、3段ミッション。 2) 吸入、始動方式は、ロータリーバルブ形式、セルスターター始動。 3) 小径タイヤ(3.00−10)。 4) 純スクータースタイル。 5) 懸架緩衝はS−201方式。 6) カバーに硬質ポリエチレンを採用。 昭和35年3月〜試作開始 35年7月に試作10台完成 1) 性能 マフラーの容量不足等から計画性能に対して不満足な結果であった。 このため、諸対策を実施して計画性能を得ることに努力が払われた。 2) 振動 バランスファクターを 0.78 から 0.42 にして対策した。 3) 乗り心地 前輪はストローク不足で密着が多く、後輪はバネ定数が高すぎ、前後不釣合いであった。 その上、シートが金属バネ製のため減衰不足で座り心地も不安定であったので、ストローク に余裕をもたせ、バネ定数を変更し、シートをフォームラバー製にするなどして対策した。 4) 強度 硬質ポリエチレン製カバーの剛性は厚さ3mmで充分であった。スイングアームの ブリッジパイプが強度不足であることが判明し、肉厚を 1.6mm から 2.5mm へと 1.5 倍に して対策した。 5) マフラー 計画性能が得られなかった大きな原因として、マフラーの容量不足であることが判り、 拡張型のまま 1.5 倍の 1500cc に変更し、出力低下率が 15〜20% であったのを約 10% に とどめることができた。 6) エンジン冷却 ピストンの焼付やオーバーヒートが度々発生したため、ダクト部の幅を 20mm 広げ、風量を 増加させ、バッフルを装備し対策した。 7) 対候性 後輪巻き込みの塵のためエアークリーナーの汚れがひどいので、ダクト下部に整流板を設け て対策した。