DATE:  5月 4日(月)23時31分49秒
TITLE: 601レストア雑記(上)
NAME: 東中野4丁目  MAIL: 

S601C2のレストアがほぼ完了致しましたので、気付点など備忘録的に纏めてみま
した。トーシローが独力で呻吟した奮闘記ですので、既出次項ばかりの冗長な駄
文かと存じますが、これから手掛けられる方の一助になれば幸いです。

◎整備時に

メインスタンド片足の下に電話帳を入れると前輪を、両足の下に入れると後輪を
浮かすことができる(=要支え)。横着して、エンジン等の積み降しは車を横倒
しにして行なったが、車体後部を鴨居からロープで吊る等の設備があれば楽にで
きるだろう。取り置けるスペースがあれば、予めボンネットを外して車を軽くし
ておいた方が簡単、安全。

◎ハンドル

埃まみれの上下ベアリングを分解洗浄、再給脂。マウントゴムさえ新しければ、
ぐにゃぐにゃしない。自作可能。他にハブベアリング更新、サス各部点検清掃。
永年走り込まれてグリップが坊主なので、運転には滑り止めイボ付きの軍手を常
用。ポジションが非人間工学的な印象も否定できず。

◎スロットルケーブル

アクセルグリップの面倒を見た後、ベンジンで希釈したオイル(ミシン油でも可)
をシース端部から注射器で大量に注入して洗浄潤滑したら、持病の渋さ・戻りの
悪さがかなり改善されたが、摺動抵抗の少なさで定評あるホンダ車の部品に交換
するのが得策か。コンシールデザイン優先のつけで、ハンドル周りのケーブル類
の取り回しが無理にタイト。

◎スピードメーター

301Aで経験した磁力低下による表示誤差、メーター内部の錆は少ないようだ。
ケーブルは腹下の低い位置でブラブラしていたため、トルコンから漏出した熱油
を浴び、また何かに引っ掛けたのか、シースが伸びて中身のケーブルの頭が引っ
込み、メーター不動。シースを切り詰め、他部と競らないように留める。非常に
長いので流用可能な代用品があるかどうか。

◎ステップ

鉄板には幸い腐りなし。ゴムが縮みツノが取付穴から外れていたので、茹でて熱
いうちに伸ばして填め直したが、暫くするとまた縮んで、折角填めたツノを飛ば
してまた外れた。純正カーペット(?)あり。

タンデムステップのゴムは、右側が排ガス、左側は飛散したトルコン油の攻撃に
晒されて、触れば崩れるおぼろ豆腐の如し。

◎チューブレスタイヤとホィール

後ホィールには永年チューブが組まれていて、過去の修繕時に入れ忘れたのか、
何故かラバーシールが欠如、果して合わせ面が錆びていた。サンドペーパーを当
てて液体パッキンを薄く塗り、ホームセンターで求めた1mm NBRシートをオリジナ
ル同様サンドイッチし、現物合わせで孔明けしたところ、再使用できた。液体パ
ッキンのみではエア漏れしてNG。

タイヤ屋の弁。「フォークリフト等の合わせホィールの破裂による死亡事故が今
なお時折あるので、十分に注意すること」。

独コンチネンタルLB4.00-8(1本約6千円)は、現行国産品にないラウンドプロフ
ァイルで、直進性、安定性、操縦性、ウェット性能、乗り心地、いずれも元のチ
ューブ入り象皮タイヤ(五分山、装着後20年は経過していると思われた)とは隔
絶せる感触で、小径ならではの不安感が減じられた。交換直後、全開走行時に釘
を踏み不意のパンクに見舞われたが、チューブレスのお陰で大災なく済んだ。601
を実用に供される方には本品を強くお薦めする。
                               
◎スタンド

メインの頭がもげていたので、近場の鉄工所で熔接修理。その間サイドスタンド
のみで過ごしたが、異常に短いため土にめり込み、また舗装路でも傾斜の付いた
路肩に駐車したり、平地でもボンネットを上げたりすると、車が容易に転倒する
ので非常に危険。車重に対しメインの取付部も強度不足で、お世辞にも良い設計
とはいえない。

◎リアショック

蛇腹カバーが破損したまま走っていると、飛び石でロッドが傷付いたり水で錆び
たりし、その凸凹がオイルシールに悪影響を与え、倒立タイプのため中の作動油
が漏出して機能を失うようだ。

製造元のカヤバに情報提供を求めたが、素人ゆえ全く協力して頂けず。分解不可
とされていたが、カシメを叩いて起こし、リュータでカニ目等の治具が填まるよ
うキャップを削れば、中身にアクセスして修理〜再生できた。ゴム環を圧着する
形のシールなので更新困難、いずれまた洩れるか?

空気ばねは相当以前漏気し、パンク修理剤で手当したらしい。それがムシに絡み、
拙ガレージで車を移動中に「ぷしゅー」、前輪が宙を舞いダイヤフラム破裂かと
青ざめたが、ムシ交換のみで平癒。

◎ブレーキ

カム部に下駄を履かされていたシューは、目黒区内某専門業者にて貼り替え、4面
1台分で約3千円。旧車動態保存へのご厚意にしろ、相場より余りに安かったため
以前嫌味を書かれたが、この値段は事実。ドラムアッセンブリーごと持ち込むと、
適切なライニング厚に調整して下さる。材質も指定可能なので、今日的利用には
ブレーキバランスをオリジナルより若干前側に持って来ると良かろう。

チェーンケース上のアルミ製カバーはリアタイヤとの隙間が僅少で、走行中に小
枝でも挟まった場合に変形・接触してタイヤウォールを切り裂かぬよう、綿密に
位置決めする必要があった。

リアブレーキドラム放射状力骨部にヘアラインクラック数本、清掃の上、端部を
ドリリングして強力ロクタイトで処置したが、某トラックの欠陥ハブ問題を想起
させられた。寿命は近い。

◎電装系

ハンドル周りで、絶縁テープとからげ結線による不可解な配線変更が行われてい
て、BEAM・TURNインジケータ不点灯。ついでに白色LED化してやろうかと思った
が今回見送り。ホーンは非純正品に変えられているのか、「ブー」という耳障り
のよい低音。

レギュレータユニットは異状なかったものの、清掃調整。ギボシ端子やヒューズ
ボックスでの酸化による接触不良が目立つ。セルダイにはセルダイ用のブラシを
使う。電装屋の弁では、ローター修理は難しいので大切に、とのこと。進角装置
はQ&Aを参考にさせて頂き、バッテリーは国産高規格品GS PORTALAC PXL12072単発。

◎燃料系

20年物の腐敗ガソリンが入っていた割には、タンク内の防錆塗料砕片は少なく、
コック共に簡単な清掃で済んだ。プラスチック製カップは経年劣化でひび割れて
ガソリン滲み出し著しく、業務用瞬間接着剤で補修しタイラップで鉢巻して再使
用。やはり601の燃料落ちは301よりも良好。

燃料計不動。抜き取って見たらケース(薄くて手で押しただけで凹む)にディン
プル3つ、過去の整備時に付けた傷で、そこにフロートが引っかかっていたため
と判明。車のへこみ修理の要領で、長い棒でケースを内側から突き出して直し、
ゲージを手曲げしてE〜Fのスケールを較正。ついでに文字盤を手書きで化粧直し、
割れていたガラスはアクリル製のCDのケースから削り出して填めた。

キャブOH後、シュラウドをファン側半分のみで試走したら、パーコレーションで
すぐエンストした。熱対策の重要さを再認識。

◎エンジンマウント

給脂を怠ったまま乗り続けたらしく、軸ボルト・ブッシュに段付摩耗が見られ、
遊び由来のシミーが触知される。ゴムブロック劣化で振動甚だしく、ウォブルも
増幅していたので、NBRシートを積層接着して自作したら、別の車になったように
しゃっきりした。Oリングも汎用品に交換。
                        
◎エンジン

2スト・4ストを問わず、強制空冷エンジンは塵埃堆積によるオーバーヒート由来
の障害が起き勝ち。距離が延びるに連れ状態は二次曲線的に悪化するので、往時
より未舗装路が少なくなったとはいえ、シュラウドを外しての点検清掃は励行し
たい。空気取入口に付くゴムフラップは風化著しく除去した。

メインベアリングが破損し、此所のオイルシール劣化が601のアキレス腱なのかも
知れない。当方の601は更に、オイルシールが断片の一部を残して消失していた
(=遅いのを我慢すれば、この状態でも走れてしまう!)。

焼き付きにより取付座がえぐられたメインベアリング6205は、ボーリング加工を
期に大径化するつもりだったが、厚みも増して通気孔と競合するため断念、自作
カラーに6205を糊留めした。但し、トルコン側・セルダイ側両サイドベアリング
を同径でアンギュラーの7205とするのは、クランクシャフトのスラスト方向のぶ
れ止め(主にトルコン保護)に有効と思われる。

或いは、両サイドをDDタイプのシールドの片側を取り外し、中身のグリスを洗浄
除去して半開放型として用いれば(オリジナルも潤滑は一方からのみ)、片側に
残したシールによってメインシールだけが受け留めていたケース内圧を分担、或
いはメインシール破損時のフェイルセーフとして、脆弱性を補いOH間隔を伸ばす
ことができるかも知れない。今後の研究課題。

ポート研磨など愚策を弄さず、純正の調子を見極めることにした。不思議にもコ
ンロッド大端・小端に過大なガタは認められず。STDピストンはスカート部に若干
筋付きがあったが、代用ピストン入手不能でリングのみ更新して組み、初期馴染
みのため二硫化モリブテンスプレーを塗付。

ヘッドボルトのスプリングワッシャーが一部割れ落ち、締付トルク不均衡で歪み
を生じているものと思われるので、若干面研。ヘッドガスケットはグロメット付
きで製作に手間が懸かるため、洗浄点検の上マフラー補修用パテ(下記参照)を
擦り込んで再使用。

圧縮低下とマフラー内部故障(膨張室内S字結腸状メッシュパイプ欠損)による
背圧過昇で、残念ながら現状では本来性能が発揮できていないものと思われる。
諸悪の根元は、長大過ぎて狂い易いクランクシャフトか。目黒区内某内燃機屋で
芯出し修整代5千円だった。

◎トルコン

幾らエア抜きをしても、走ればまた噛んでしまうような場合、トルコン側の問題
ではなく上記の通りメインシール不良による一次圧縮漏れが疑われる。加速が鈍
く、チェーンオイルの劣化が早かったり、ケースの注油孔を外すと中から脈動音
が聞こえたり、アイドル回転が落ちたりするなら、メインシール破損であるから、
迷いなくエンジンOHに取り掛かるべき。クランクシャフトが真直で、かつ各部の
オイルシールが健全であれば、エアは簡単に抜けて二度と噛まず、漏油もない。

現行乗用車のトルコン油は常温粘度が相当低く設定されているようなので、同種
で規格が古いらしいパワステ油を採用(一部欧州車用純正トルコン油も可か)。

◎マフラー

圧力・振動に対し構造・材質・工作共に脆弱過ぎ、耐久力が無いのではないか。
アイドル域では静粛だが、容量不足か回すと共振して轟音を発する。ロードクリ
アランスが小さく、サスも軟らかいのに車体は重量級なので、歩道に乗り上げる
際など簡単に腹を擦ってしまうのも難。

プレス部品を最中合わせに点付けしただけの、膨張室(非分解式)内メッシュパ
イプが粉砕し、暴れ回っていたので除去。親子を連結するパイプもこの延長にあ
り、肉薄で弱い。干渉室には既に何か(石綿?)が巻いてあったが相当剥落して
いたのでグラスウールを追加挿入したが、行く先は他車のチャンバーの移植か、
再製作しかなかろう。

修理屋が入れ忘れて欠如していたエキパイガスケットは、銅板で再製したが漏れ
たので、柔らかい石綿ガスケット紙2枚重ねにマフラー補修パテを擦り込んで使
ったところ、治まった。但し、マフラー修理には白色パテよりもデブコンや耐熱
エポキシパテの方が良い。

◎駆動系

チェーンケースにヘアラインクラック数本、ここから漏油あり、ロクタイトで処
置。トルコンを含めた駆動系が完調なら、スーパーフローは空車で押し引きして
も重さは殆ど同じ、であると修理後に判明。ケースと競るほどの伸びがないのを
幸いにチェーン・スプロケは再使用。             
                                 【以上】