22年間にわたって製造され、日本の文化の一端を担ってきたラビットスクーターも、
この日、一台のハイスーパー、S−211A 型(車体番号 S211-22565)のラインオフで
終わりをつげた。
元中央スバル会長の 小川清氏は、この時のことを次のように述べている。
亡びゆくものは、美しいという。されど亡びゆくことは悲しいことである。
企業の歴史も、人間の歴史も、その時々の思いを秘めたまま二度と再び同じ
ことを再現する事はない。平家物語の書き出しに、
「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘のこえ、諸行無常(しょぎょうむじょう)
のひびきあり、沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色、盛者(しょうじゃ)
必衰(ひっすい)のことわりをあらわす。奢(おご)れる者も久しからず、
ただ春の夢の如し。たけき者もつひにはほろびぬ、ひとへに風のまへのちり
に同じ」
とあるのを思い出す。
心の中で別の私が呼んでいる。そんなことはない、亡びはしない。
一緒に真剣にラビットと共にその時々を生きていた人たちが大勢いるではないか。
その人々の心の中に、必ず生き残っているよ、と。