S211A、S301A、S301B型に使われているクラッチは、定容量型自動切断式
の湿式多板(2枚)式で自動遠心クラッチとオートバイ的なハンドクラッチの特性を共有
している。
このクラッチの信頼性は高く、ほとんど故障は無いが長期間使用していると以下の状況が
出るときがある。クラッチの構造を把握しそれぞれに応じた対策をとる必要がある。
1.クラッチが滑る
A. 摩擦板の摩耗、焼損 ------------ 点検、交換
B. クラッチばねのへたり ---------- 点検、交換
C. 重錘の作動不良 --------------- 点検、 修正
D. クラッチケーブルの張りすぎ ---- 点検、調整
E. チェーンオイル量の過多 -------- 指定油を規定値に調整
2.クラッチが切れない
A. クラッチケーブルの調整不良------ 正規に調整
B. 摩擦板のひねり不良 ------------- 点検、修正、交換
C. チェーンオイル量の過多 --------- 指定油を規定値に調整
D. クラッチレリーズレバーの摩耗 --- 点検、交換
3.クラッチ操作が重い
A. クラッチケーブルの調整不良 ----- 調整
B, クラッチケーブルの抵抗が多い --- ケーブル内部の錆び付き ----交換
ケーブルを所定の位置を通す様にする。
クラッチの構造
重錘 @ は、エンジン回転が上昇することによって遠心力が働きバネ受け D を
介して P 方向にクラッチバネ A を押し、クラッチプレート B を押しつける。
バネ D は、クラッチドラム C にて動く範囲が制限されており、遠心力は必要
以上にクラッチバネ A には加わらず、クラッチプレート B には常にクラッチ
バネ A の力のみが作用する。
クラッチを切る時はリリーズレバー E がリリーズピース F を引っ張り、
リリーズボルト G がクラッチプレート B を摩擦板 H より引き離す。
この場合、エンジン回転が高くとも遠心力には関係なくクラッチバネ A の力
のみ切ることとなる。
自動遠心クラッチは、エンジン回転数 1900rpm 以下で滑る特性になっている。
このため、坂道で三速で走行の場合は、25〜30km/h に車速が低下したら二速
に切換え、更に二速で 17〜20 km/h に低下したら一速に切り替えるのが好ましい。