宝を求めてやまない者。宝を求める事をやめられない者、諦めるべきときに諦められない者、断念しなければならないときにも断念する事が出来ない者。そういう人間は一般的には子供と権力者といえるだろう。一方には幼い子供、それも聞き分けのない駄々ッ子。そして他方には権力者、それも暴君か無分別で政治能力のない王様である。
しかし聞き分けの良い、聡明な子供も自分なりのつつましい宝物をせっせと集めるし、賢帝とか、英邁な、などと言われる君主も、宝を求めることにやぶさかではない。

分別のある大人には宝物以前に獲得すべきものが沢山ある。

宝を求めてやまない者は、心の幼いものであり、時には心を病める者かも知れない。
もちろん、ロマン主義者であるかもしれないが、
しかしまた欲張りな者かもしれない。
一方には単調と煩雑と実務を厭う怠け者。
しかし他方には遠い夢を求めて疲れを知らずに働く勤勉な人々。

ある種の人は忙しさに耐えることが出来ない。頭が実務で占領されることにも絶えることが出来ない。

そう。頭が実務で占領されるとが恐ろしい。
永遠の宝物、遠い夢へのあこがれを忘れる事が恐ろしい。
それが楽しい事であってさえも､それに埋没する事が恐ろしい。
何をそんなに恐れるのか、そんな実体の知れない漠然としたものに気を取られては生きて行く事さえ出来ないではないか。

一方で優れた実務家が忙しさに押しつぶされ、死に追い込まれる事もある。

分別ある大人が功成り名遂げて、とまでは行かなくとも、ある程度のゆとりを得て集める宝物。多くは美術工芸品はどのようにして出来たものなのだろう。

2004/10/18