■石止めと石種

石止めから見た石の特徴について

★ダイヤモンド

■止め方の種類

止め方は石を浮かセル立爪ないし立爪型の爪止め、あるいは通常のパイプ状石座の爪止め、レール止め、伏込み(覆輪止め)またはチョコ止めのいずれかと、他にメンズリングに用いられる五光止めがあります。爪止めとレール止めはデザインによっては石全体の形が見えますが、伏込みはガードル(周縁部)より下が完全にパイプの中に隠れてしまいます。他の止め方に比べて欠陥のある石の場合はそれを隠しやすい面はあります。他にチョコ止めの場合もガードル以下は完全に隠れる止め方で、これは伏込みに似たデザインにも多いですが、地金部分の多いマッシブなデザイン、特にメンズリングに多い止め方です。メンズリングにはまた五光止めが用いられます。これも地金の多い、マッシブな枠に石を埋め込む形で、ダイヤの周囲に4本、見方によっては8本の光芒がタガネで彫られており、石が大きく見える止め方であるといわれています。恐らく甲丸とか印台と呼ばれるマッシブな枠に1ピースのダイヤを埋め込むのに向いたデザインであるからと思われます。
 石全体の形が見える立爪と、石が地金の中に埋没し、真上からしか見えないチョコ止め、また五光止めなどの正反対の止め方がいずれも真円のブリリアントカットダイヤモンド独特の止め方で、他の色石には殆ど見られないのは面白いところです。
 レール止めは1ピース止めの場合は石の両側で挟み込んだり、空間に嵌め込んだりするので凝ったデザインに多い止め方といえます。複数のダイヤを止める一文字の場合にも良く用いられる止め方です。
 どの止め方が難しいかということはあまり無く、デザインと枠の出来具合次第ですが、やはり石が大きくなるほど時間がかかるのはもちろん、正確さが要求され、ごまかしが効かなくなります。

■石の特徴

さすがに作業中に石にキズが着く事は全くないばかりか、大粒のきれいな石では割れたり、欠けたりすることもまずありませんが、欠陥のある石の場合、驚くほど簡単に割れたり、欠けたりすることもあります。超音波洗浄機で割れたケースもあります。しかし全体としてダイヤモンドの堅牢さというのはサファイヤなどに比べても圧倒的で、いかに硬く強い物質であるかということを常に実感させられます。

★メレダイヤ

■止め方の種類

 立爪ではなくパイプあるいはリング状の石座に止める爪止めの他、レール、伏込み、チョコ止めは大粒のダイヤの場合と同じですが、彫止め、パヴェ止め、くぎ止めなど多数の石を効果的に止める止め方があるのが特徴です。これらでは地金部分にも独特のパターンが出来、そのパターンと複数のダイヤが一体となってデザインの要素となります。したがって他の止め方以上にデザインと美しさを意識しながら作業する必要があります。

彫止めの中でも比較的効率的に美しく止められるのが連続止めで、桝止めはそれよりも難易度が高くなります。

キラキラ止めは地金部分にもダイヤのカットのようなテクスチャーをつけて地金に石を埋め込んみ、石と地金の境界をぼかすもので、石がたくさん止まっているように見えると言われています。これも色石ではなく小粒ダイヤ特有の使い方の一つといえます。

■石の特徴

大粒のダイヤと同じダイヤモンドですが、やはり小さくなると多少割れやすくなります。しかしもっとも良く用いられる1/100カラット程度までの石では十分に堅牢で、無理な扱いをしなければそうそう割れるものではありません。しかし、1/200カラットになりますと、かなり割れやすくなるように思います。見た目でも1/100カラットの石では1ピースでも美しく輝いて見えますが、1/200カラッとになると、何粒か並べても少々物足らない感じです。もちろんデザインにもよることではあります。
★バケット、プリンセス、テイパーダイヤモンド

■止め方の種類

これらはいずれも伏込みかレールで、テイパーを取り巻きに使う場合に爪を併用することも良くあります。石あわせ、あるいは逆に石にあわせて枠を修正する、あるいは成形する必要がある点で、手数がかかります。マーキス、ペアシェープ、オーヴァル等も同様。

■石の特徴

いずれも割れ易そうな形ですが、やはりダイヤモンドであるだけにある程度の大きさがあれば割れることはあまりありません。割れ易くなってくるのはメレーと同様、1/100カラットよりも小さいサイズのようです。

★色石各種

■止め方の種類

色石の場合大きな石も小粒の石の場合も殆どが爪止めですが、伏込み(覆輪止め)も良くあります。特に大きな石の場合は伏込みが増えてくるようです。
小粒の場合はダイヤと同様に爪止め以外の止め方をする場合もあります。特にダイヤと混ぜて使う場合にレール止め、釘止めなどで止める場合がありますが、彫止めはめったにありません。色石の場合、彫止めにすると、爪や地金のパターンのなかに石が暗く隠されたように見えるように思います。またカットのプロポーションがダイヤモンドとは異なっているためと、割れやすいために、止めるのに困難が伴ないます。少なくとも色の濃い石、透明度の低い石は彫り止めやチョコ止めなど、埋め込みタイプの止めには向かない様に思われます。
■石種による特徴
★ルビー、サファイヤ
ルビーとサファイヤはダイヤに比べると周囲(ガードル)が欠け易くなります。ダイヤでは普通起こらない事ですがカットのエッジがつぶれることも他の色石と同様に起き易く、注意を要します。しかし石が大きく二つに割れるようなことはまず無く、欠陥のあるダイヤでたまに起きるような壁開面などで割れるようなこともありません。
★エメラルド
壊れ易いことで有名なエメラルドですが、実際、よく問題が発生します。元々完全な石が殆ど無い種類の石ですが、止替えなどの場合、汚れで欠陥が隠されているケースなどももあり、いろいろと誤解の発生し易い石です。一般に次のようなことは言えるでしょう。

1.やすり、やっとこ、鉄製のタガネ等、石止めで通常使用する工具でカット面に掻き傷、削り傷等が新しく発生することは通常あり得ません。これはエメラルドのモース硬度が8であることから明らかです。そのように見える傷の多くは止める前から入っていたものです。 (石に近づけてはならない工具は各種のダイヤモンド工具、超硬合金工具、グラインダー、研削といし、サンドペーパー、研削材入りのラバーホイール等といえます)

2.周縁部が欠けたりカットのエッジがつぶれたりすることは他の色石同様に起こりがちなので特に注意する必要があります。

3.元から入っているクラックから割れる事は多くの場合、細心の注意によって防ぐことは出来ますが、止め方、デザイン等の原因で、あるいは止替えの繰り返しで痛んでいるために避けられない場合もあります。見かけ上非常に危うく見える石でも十分に止められる場合もあり、止める前に目で判断することは非常に難しいことです。

4.洗浄でオイルが抜けた場合、再び含浸させることになりますが、少し温めて油の粘性を下げることによって完全に含浸させることが出来ます。

★硬度7以上のその他の石

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Copyright (C) 2001/6/20 Junichi Tanaka