
村上康成・絵
『999ひきのきょうだい』 木村 研
絵本は、子どもが最初に出会う本。いいかえれば、人生で最初に出会う本ともいえる。
だからこそ、絵本といい出会いをしてほしい、と思っている。
そのため「手づくり絵本」の講師をすることも少なくない。
本といい出会いをした子は、大好きな絵本と出会うチャンスが多く、大好きな1冊を持っていることが多い。
「これだよ」とよくみせてくれるが、うらやましい限りである。
しかし、早いからいいというわけではない。小学生になってからでも中学生になってからでも遅くないし、
ボクのように大人になってからでもいいと思っている。
ボクの絵本『999ひきのきょうだい』が好きといってくれる子もたくさんいる。
「毎日、寝る前に読まされるんですよ」とか「旅先にまで持っていくんですよ」とうれしい声できくこともある。
「はるです。かえるのおかあさんが、999このたまごをうみました」とはじまるこのお話は、
最初に生まれたのんびりやの兄さんが、お母さんに「いいかげんに、おきなさーい」といわれて
やっとおたまじゃくしになるが、そのときはもう弟たちには手や足がはえている。
弟たちがカエルになっても、兄さんはまだおたまじゃくしのまま・・・
それでもヘビをやっつけたりして、やっぱりお兄ちゃんはすごい、と思わせる。
そんなのんびりしたおたまじゃくしが保育者に大人気の画家・村上康成さんの絵で、とってもいい。
ボクは、この絵本にサインを求められると
「ゆっくり、ゆっくり生きたいね」
と書くことにしている。
早く早くとせかされている、今の子どもたちにぜひ読んでほしい1冊である。