アメリカにおける紙・板紙の規格  


 「ニューズウイーク」や「タイム」といったアメリカで出版された雑誌の記事を、コピーに取ろうとして気づかれた方が多いと思うが、これらの雑誌のサイズは、日本で言うところの「A4」に近いが、正確に言うと「A4」よりも少し横に長く縦に短い。「A4」サイズは、メートル法を採用する国、ということは、アメリカ以外のほとんどの国では、コピー用紙や一般用紙の標準サイズとなっているが、アメリカだけは今でも固有のサイズを守っている。このアメリカ特有の サイズは、ヤード・ポンド法に基づくものである。世界の趨勢がメートル法に移行しつつある中で、アメリカだけはまだかたくなにヤード・ポンド法を固執している。ハイウエイを走っても、 道路標識に出てくる数字はマイルだし、野球の世界でも投手の球速はマイルで表示され、「100マイル投手」は時速160キロのスピードボールを投げるピッチャーをいう。コロラド・ロッキーズの本拠地のデンバーは、標高1,600メートルのところにあるため「Mile-high city」と呼ばれる。また、気温は摂氏ではなく華氏で表現される。人の身長や体重も6フィート,150ポンドと言ったりする。 紙パ業界では、新聞巻取の重量がようやくメトリック・トンで表示されるようになったが、まだまだヤード・ポンド法が幅をきかせている。ヨーロッパではEUが、「EU域内に輸出しようとするも のは、必ずメートル法で表示すること」を義務づけたため、アメリカにとって輸出の多いライナーやパルプについてはメートル法を採用しているが、それも輸出する場合に限ってのことで、 国内向けは依然としてヤード、フィート、インチ、ポンドが使われている。

T:アメリカの紙の寸法・連量・米坪

 アメリカの紙、特に印刷用紙などの一般紙は、「連量」を表す数字がポンドで示される。「上 級紙 15 ポンドもの」(Uncoated Woodfree 15-lb)とか「書籍用紙No.3 オフセット 45ポンド」 (Bookpaper No.3, Offset 45-lb) といった表現を使う。(注:lbとは 「libra」 の略で、重量ポンドのこと)。これらの「連量」には、実はそれぞれの品種が専属する「基本寸法」があるのだが、その寸法が省略されているため、「上級紙15ポンド」といわれても、それが米坪で何グラムに相当するのか、全く見当がつかない。従ってアメリカの紙の米坪を知るには、それぞれの品種がどの基本寸法に属するのかを先ず知らなければならない。上述の「上級紙15ポンド」は、正式に表現すると

 「17 x 22-500, #15」あるいは単に「17 x 22 #15

となる。これは

「寸法 17インチ x 22インチの紙が一連、すなわち500枚で 15ポンドの重さを持つ紙」

という意味である。一連 (連のことを Reamという)は、日本では洋紙の場合 1,000枚を指すが、アメリカでは500枚である。日本でも戦後の一時期まで、紙はポンドで表していたことがあり、当時の一連は500枚で、重さもポンドで示していた。しかし、1958年(昭和33年)10月から現在のメートル法へ移行した。  

 さて、17インチ x 22インチは、ミリ・メートル に換算すると 432ミリ x 559ミリで、日本の日刊新聞の一頁(407ミリ x 546ミリ)より一回り小さいサイズとなる。このサイズは一般にボンド(Bond)サイズと呼ばれており、アメリカにおける紙の最も基本的な寸法となっている。

 以下は代表的な基本寸法であるが、アメリカの紙について、その連量から米坪を算出したり、あるいは逆に日本の紙の米坪をアメリカ流の連量に換算するには、先ずその品種の紙が、どの基本寸法に属するかを求めなければならない。

基本寸法

  1. ボンド(Bond):17インチ x 22インチ = (432ミリ x 559ミリ)
    「Bond」の意味は、ビジネスでは一般に「社債」のことを指すが、広義では有価証券類を指し、 そのような証券類に使用される紙類を "Bond paper" といった。しかし、現在では 「Bond Paper」 と いえば証券用紙だけではなく、フォーム用紙、レターヘッド(上部に社名、アドレス、電話番号 などを印刷したタイプ用便箋)、コピー用紙などの上級紙 (Free sheet あるいは Woodfree paper ともいう)を意味する。冒頭に述べた日本の「A4」サイズ(210ミリ x 297ミリ)に近いアメリカの雑誌は、ボンド・サイズを二度折りにしたもの、すなわち、ボンド・サイズの1/4 になり正式の寸法は 8.5インチ x 11インチ (=216ミリ x 279ミリ)である。アメリカの会社のオフイスでよく使われる イエロー・パッド (Yellow pad。社内箋のようなもので、黄色の上質紙に横の罫線が入っている)も同じ寸法である。アメリカは出版王国であるため、この雑誌サイズは, メートル法を採用している欧州でも普及しており、たとえばロンドンで発行されている "Economist"誌などもこのサイズである。 なお、この寸法に属する紙は Bond paper 以外にLedger, Manifold, Mimeograph, Railroad manila, Writing などがある。

  2. ブック(Book):25インチ x 38インチ = (635ミリ x 965ミリ)
     文字通り書籍用紙の寸法である。アメリカの単行本は 6インチ x 9インチ (152ミリ x 229ミ リ)のものが圧倒的に多いが、このサイズは、ブック・サイズを四つ折りにして断裁したものである。日本で使用されているA列判、B列判は、いずれもその縦・横の比率が√:1になるように統一されている。つまり、A判もB判も、まん中を折ってゆくと何回折ってもそのサイズは、元のサイズと相似形をなす。しかし、アメリカの紙のサイズにはそのような性質がない。ただ、 ブック・サイズは、他のサイズと違って縦と横の比率が2:3になる。√:1の比率が長方形と しては最も美しいといわれるが、2:3も形が整っている。見る人の主観によって異なるのであ ろう。ブック・サイズに属する紙は、コート紙、上質紙、中・下級用紙などで、印刷・出版用紙はすべてこのグループに属する。なお、この寸法に属する紙としては Book 以外に Bible, Box cover などがある

  3. タッグ (Tag):24インチ x 36インチ=(610ミリ x 914ミリ)
      タッグとは「荷札」「値札」「預かり札」など、垂れさがったもの、ぶら下がったものなどを指し、昔は紙がこの用途に多用されたことから標準サイズになったものと考えられるが、現在では、薄物から厚物まで、このサイズは最も広範囲に使われている。面白いのは、このサイズの紙一連、すなわち 500枚がちょうど 3,000平方フィートというキリの良い面積になることである。 1 フィート=12インチであるから 24インチ x 36インチ= 2 フィート x 3フィートとなり、面積は 6平方フィートになる。従って、500枚では 3,000平方フィートである。 タッグ・サイズは、新聞巻取の基本サイズでもある。換言すれば、アメリカの新聞巻取一連は 3,000平方フィート(約 279平米)である。クラフト紙や一部の板紙なども、価格を表す時に単に「3,000平方フィート当りいくら」といった表し方をすることがあるが、要するに「24インチ x 36イ ンチ-500」と同じことである。なお、この寸法を基本とする紙には、Tagや Newsprint以外に Glassine, Tissue, Waxing, Wrapping などがある。

  4. カバー(Cover):20インチ x 26インチ=(508ミリ x 660ミリ)
      カバー・ペーパーの基本寸法で、カバー・ペーパーとは書籍、雑誌、パンフレット、カタログなどの表紙となる紙のことである。中味を保護しなければならないから、適当に厚さと強度がなければならない。しかも、印刷適性が求められる。そのため良質のカバー・ペーパーは、化学パルプにコットン・パルプを加えて作られることも多い。塗工されたものと非塗工のものがあり、塗工れたものは印刷の刷り上がりを良くするために、また非塗工はエンボス加工をする際によく使 われる。

  5. インデックス(Index): 25.5インチ x 30.5インチ=(648ミリ x 775ミリ)
     正確にはインデックス・ブリストール (Index Bristol) といい、「インデックス」とは「索引」 あるいは「指し示すもの」という意味、「ブリストール」は上級の厚い紙の総称である。(イギ リスのブリストール市で最初に作られたことからこの名がついた)。用途は、ファイルや記録、 その見出しなどに多用される。図書館で本を借りる時に、カードを繰って本を探すが、あのカー ドがインデックス・ブリストールの代表的な例である。紙は十分に腰があり、手や機械に触れる ことが多いので強度を持ち、かつ表面は繰りやすいように適当にラフでなければならない。

  6. ブリストール (Bristol): 22.5インチ x 28.5インチ=(572ミリ x 724ミリ)
     正しくは Printing Bristol といい、用途は挨拶状、値札、プログラム、レストランのメニューなどである。従って、「インデックス・ブリストール」の性格を持ちながら、これに印刷適性を兼ね備えて持つ。(5) の「インデックス」も (6) の「ブリストール」も、ともに板紙の代表的な基本寸法である。なお、この寸法を基本とする紙は、Bristolのほかには Postcard がある。

 ところで、わが国の紙・板紙の原紙寸法を見ると、紙では「A列」と「B列」に分かれ、それぞれ0 番から10番までがJIS規格として定められている。このうち、A列はメートル法を採用している国でひろく普及しているが、B列は、わが国が独自に採用しているものである。が、どの寸法をとってもミリ単位では端数がつく。たとえば最もポピュラーな「A4」のサイズは210ミ リ x 297ミリであり、「B4」は 257ミリ x364ミリ、というように、メートル法でありながら210ミリ x 300ミリといったラウンドの数字になっていない。さりとて、これらの数字をインチに換算しても、「A4」が8.5インチx11.75インチに近いが、正確には一致しない。このように、どの寸法もミリ単位で端数がつくのは、A列0番(全紙)の面積を1平米、B列0番の面積を1.5 平米と定めた上で、それぞれの2辺の比が「1対ルート2」となるように設定しているからである。その結果、A列0番の寸法は841ミリ x 1,189ミリとなり、これを一回折るごとに「A1」、 「A2」・・・・・・というように数が下がって行く。従って「A4」は、A列0番の全紙を4回折って(4裁して)出てくる寸法である。また紙の面積も、A列では全紙1平米が半裁するごとに、0.5平米、0.75平米、0.125平米・・・・・・・・となり、B列では全紙の1.5平米が 0.75平米、0.375平 米・・・・・・と半減してゆく。

  JIS規格は、このほかにA列本判 (625ミリx 880ミリ、0.55平米)、 B列本判 (765ミリx 1,085ミリ、0.83平米)、四六判(788ミリx 1,091ミリ、0.86平米)などを定めている。A本とB本は、A列、B列の紙加工(書籍など)仕上げ寸法に呼応して、断裁余白を含んだ寸法であり、「原紙寸法」と呼んでいる。四六判も原紙寸法であるが、この寸法はインチに換算すると31インチ x 43インチとなり、いかにもヤード・ポンド法にかなったサイ ズに見えるが、これは昔からわが国で使われていた「2尺6寸 x 3尺6寸」で、たまたま 1尺の長 さがほぼ1フィート、すなわち12インチに等しいことからこのようになっただけで、アメリカで使われている寸法ではない。

基本米坪 (Substance)  

  日本で米坪といえば、「一平米当りの紙一枚の重さをグラムで表したもの」を指すが、アメリカでは、「基本坪量」(Substance) と呼ばれるものと、そのほかに一般の「坪量」(Basis weight) というものの二つがある。「基本坪量」とはボンド・サイズの紙の坪量を指し、500枚の重さをポンドで表したものである。ボンド・サイズが、汎用紙の基本的なサイズとなるため、他のサイズの紙の坪量と区別したものである。

  さて、ボンド・サイズの代表的な坪量は、冒頭に掲げた「17x 22 #20」であるが、これは既述の通り 「17インチx 22インチ (432ミリ x 559ミリ) の紙 500枚の重量が、20ポンドになる」ことを示す。この紙を日本流の米坪に換算すると何グラムになるか、を計算するには以下のようにすればい。すなわち、1インチ= 25.4ミリであるから、

 17インチ x 22インチ= 432ミリ x 559ミリ
 = 0.432メートル x 0.559 メートル           
 =0.2415平米

連量の 20 ポンド については 1 ポンド= 453グラムであるから、20ポンド= 9,060 グラム。これは500枚の重さであるから、1枚では

9,060 ÷ 500 = 18.12 グラム

となる。つまり 0.2415平米の紙一枚の重さが18.12 グラムであるから、1平米の重さは、

18.12 ÷ 0.2415 = 75.0 グラム

ということになる。これは日本の四/六判でいうと〈65〉キロ、B本判では〈62〉5キロに相当する。

  逆に四/六判の〈45〉に相当するもの(米坪52.3 グラム)は、アメリカでは「17 x 22 #14」ということになる。しかし、一件ごとに上記の様な計算をしていたのでは面倒なので、簡単に算出するには次のようにすれば良い。すなわち、

「17インチ x 22インチ」という基本サイズの面積は、メートル法では上述の通り0.2415 平米である。また 1ポンドは 0.453キロであり、一連はアメリカの500枚に対し日本では 1,000枚(2倍)であるから、ボンド・サイズのアメリカ式坪量がA、日本流の米坪をBとすると、

 B= (A x 0.453 x 2)÷ 0.2415= A x 3.76

という関係になる。つまり、ポンド坪量に 3.76を掛ければ米坪が出てくる。たとえば、17 x22-#20 の米坪は、20 x 3.76= 75.2グラムであり、17x 22-#16 の場合は、 #16 に 3.76 を掛けて60.2グラムということになる。また、日本の米坪をアメリカの17 x 20 サイズの基本坪量に換算するには、上述の通り、 B = 3.76A であるから、 A= B÷3.76となり、米坪を3.76 で除してやれば良い。 (例。四/六判 〈90〉の米坪は 104.7グラム。これを 3.76 で割ると27.8 となるから 「17 x 22 #27.8」 ということになる。しかし、実際にはアメリカ の坪量には小数点がつかないから「17 x 22 #28」となる)。

坪量 (Basis weight)  

 「17インチ x 20インチ」サイズの紙の坪量を「基本米坪」(Substance) というのに対し、それ以外のサイズの米坪を「Basis weight」と呼んで「基本坪量」と区別している。よく使われる書籍用(Book) と新聞用(Tag) のサイズの坪量を見てみよう。

書籍用紙

 先に述べたように基本サイズは 「25インチx 38インチ」である。このサイズの連量は、30ポンド(25 x 38 #30)から 120 ポンド (25 x 38-#120)まであって,幅が広いが、代表的なものは 70ポンドである。基本米坪のところで述べた方法で「25 x 37 #70」の米坪を出すと次のようになる。すなわち、

25インチ x 38インチ = 635ミリ x 965ミリ=0.6128平米
70ポンド= 31.71キロ (500枚につき)。1,000枚では63.42キロ、1枚では 63.42 グラム。   
63.42÷0.6128= 103グラム/平米。

与えられたポンド連量を「A」,米坪を「B」とすると、

 B = (A x 0.453 x 2)÷ 0.6128= A x 1.4785,

すなわち、与えられたポンドに 1.48を掛ければ大体の米坪が出てくる。「25x 38 #70」であれば 70 x1.48=104 グラム、「25x 38 #30」 は 44グラム、「25 x 38 #120」は 177グラムである。逆に米坪からポンド連量を出すには、その米坪を1.48 で割ってやれば良い。たとえば、四/六判〈70〉キロ、米坪 81.4 グラムは、アメリカ流に表現すると「25 x 38 #55」ということになる。

新聞巻取
 
 新聞巻取については、アメリカが最初に軽量紙を使いはじめたこともあって、日本でも30ポンド、28 ポンドといった表現がしばしば使用される。1973年のオイル・シヨック以前は、新聞巻取の坪量は「32ポンド」と決まっていた。しかし同年暮れに、アラブ諸国が原油の対米禁輸を行い、そのあとアメリカにおける新聞用紙の需給は極端に逼迫したため、新聞社によっては原紙不足で減頁に追い込まれるところが多数出た。そのような状況の中で新聞社は、用紙の単位重量当りの面積を少しでも広くしようとして、それまでの標準坪量であった32 ポンドを 30 ポンドに移行させたのであった。その後、新聞用紙の軽量化は世界に普及し、日本ではアメリカよりも進んで、28 ポンドからさらに 26 ポンドへと下がり、現在では25ポンドが主流となった。これらの新聞巻取のサイズは「24インチ x 36インチ」であるから、30ポンドものは正確には「24x 36 #30」と表される。従ってアメリカの新聞巻取30 ポンドものの米坪は、

24インチ x 36インチ = 610ミリ x 914ミリ= 0.5575平米     
500枚の重量が 30 ポンドであるということは、1、000枚では60 ポンド、すなわち、27.2 キロ。一枚当りでは27.2 グラム。従って 27.2 ÷ 0.5575 = 48.7グラム/平米

ということになる。

 与えられたポンドから米坪を出すには、そのポンド連量に1.625を掛ければ良い。従って、24 x 36 #32 は 52グラム/平米であり、24 x 36 #28は、45.5グラム/平米とな る。  

その他の紙

 ここでカバー・サイズ、インデックス・サイズ、ブリストール・サイズについても、ポンド坪 量と米坪との関係を述べておく。ポンド坪量を「A」,米坪を「B」とすると、それぞれ以下のような関 係になる。

Cover: B= (A x 0.906)÷ (0.508 x 0.660)= 2.7022A 
Index: B= (A x 0.906)÷ (0.648 x 0.775)= 1.8041A  
Bristol:B =(A x 0.906)÷ (0.548 x 0.889)= 2.1899A

すべての紙に共通する計算方式

 以上は、個々のサイズごとに米坪とポンド連量の関係を示したものだが、全てのサイズに共通する関係式は次のようになる。すなわち、いまブック・サイズで「25 x 38 #50」 の紙があるとする。この紙の米坪を出すには、先ず500枚につき 50 ポンドであるから、一枚当りのグラム重量は、

   (50ポンド x 453グラム)÷ 500枚 =50 x 0.9072 = 45.36グラム

である。一方、面積の方は 25インチ x 38インチ=950平方インチで、これを平米に換算するに は、1平米 =1,550.05平方インチであるから、950÷1,550.05 (= 0.6129平米) としてやれば良い。米坪は、一枚の紙の重さ÷{縦寸法(メートル)x 横寸法(メートル)}であるから、「25 x38 #50」 の米坪は、次のようになる。

(50 x 0.9072)÷(950÷1550.05) = (50÷950)x 0.9072 x 1550.05 = (50÷950) x 1406.18

つまり、ある紙がどのような寸法であれ、そのインチ寸法とポンド連量さえ分かっておれば、換算米坪は、

   (ポンド連量x1406.18)÷{縦寸法(インチ)x 横寸法(インチ)}

ということになる。たとえば、いま 「17x22 #20」 の紙があるとしてこれを米坪に換算するには、

(20 x 1406.18)÷(17 x 22)= 75.1 グラム、とたちどころに出てくる。

新聞のサイズ  

 日本の新聞巻取のサイズは、A巻、B巻、C巻およびD巻とあり、それぞれの巻幅は、1,626ミリ、1,092ミリ、1,219ミリ、および 813ミリ ということになっている。これらの幅をインチに換算すると、A巻は64 インチ、B巻は 43 インチ、C巻は 48インチ、そしてD巻は32 インチとなる。このように日本の新聞巻取の幅が、インチの整数となっているのは、明治の初期、新聞を刷り始めたころの印刷機が外国製、紙や抄紙機もイギリスからの輸入品であったからである。ちなみに旧王子製紙がはじめて洋紙を抄いたのは明治七年(1874年)のことで、抄紙機はイギリス製の78 インチ幅のものであった。そのころのしきたりが、今日まで継承されてきた。
 現在、新聞巻取の主流をなすA巻は、輪転機にかけられると4頁一枚(横32インチ)の新聞がダブル(二列)で印刷される。 4頁一枚の新聞は、横が 32インチ、すなわち813 ミリ、縦が 21.5インチ、すなわち 546ミ リとなり、これが日本の新聞の統一された寸法となっている。しかしアメリカやイギリスの新聞は、日本の新聞のようにサイズが統一されていない。アメリカやイギリスで発行さ れた新聞を手に取ってみると良く分かるが、サイズは実にさまざまで、代表的な日刊紙一枚(4ページ)のサイズ は次のようなものである。(2005年5月現在)

Wall Street Journal: 30インチ x 22.75インチ。 すなわち 762ミリx 578ミリ。
New York Times: 27インチ x 21.75インチ。 すなわち 686ミリx 552ミリ。
Washington Post: 27 x 23.75インチ。すなわち 686ミリx603ミリ。 
U.S.A. Today: 28インチ x 23インチ。 すなわち 711ミリx 584ミリ。     
Globe & Mail: 26.5インチ x 23インチ。すなわち 673ミリx 584ミリ。
Financial Times: 30インチ x 22.25インチ。 すなわち762ミリx 565ミリ。
The Times: 29.5インチ x 23インチ。 すなわち749ミリx 584ミリ。
Daily Telegraph: 30インチ x 23.75インチ。すなわち 762ミリx 603ミリ。
The Guardian: 30インチ x 23.75インチ。すなわち 762ミリx 603ミリ。

 その結果、新聞巻取のサイズもこれを使用する新聞社によって異なる。しかし、日本の新聞のように4頁分をダブルで印刷するようなことはないから(つまりA巻タイプのものは使わない)、新聞一枚分(4頁)の横幅が、そのまま巻取の幅となる。上例でいうと、Wall Street Journal 紙は、30インチ 幅を、New York Times 紙は 27インチ幅の巻取を使用していることになる。新聞社によってその幅はまちまちであるが、概して27インチから 31インチ幅に集中している。 このように新聞社によって巻幅が違っているために、北米にある新聞用紙メーカーの抄紙機の取り幅も、日本のように一定でない。つまり、日本のメーカーの新聞抄紙機の取幅は、「A巻四丁取り」、すなわち、64インチx 4= 256インチ (6,504ミリ)幅が主流になっているが、いずれにせよ、どのマシンも取り幅は32インチの倍数である。これに対して北米メーカーの場合は、 30インチ前後の倍数を中心にしてさまざまな取り幅がある。

巻取の決済はグロス重量建て  

 新聞やライナーなどの巻取紙の決済は、日本でもキロ当りの単価で支払いがなされているが、その重量を計算するには紙の面積がベースになっている。たとえば新聞の場合、かりに連量〈20〉5キ ロ、35連入りとすれば、A巻一本の重量は、717.5キロとなり、この717.5キロに単価を掛けて一本の金額を算出する。この場合、連量20.5キロ の米坪は、46.2 グラムとなるはずである。(新聞の標準面積は813ミリ x 546ミリ= 0.444平米。20.5÷0.444= 46.2グラム)しかし、連量 20.5キロ のもの全てが、米坪を46.2 グラムとして抄かれているとは限らない。強度や厚みが新聞社の要求を満たさないと、メーカーは「増目」と称して実際には47グラム程度で抄いて、新聞社には 46.2グラムとして出すことケースも少なくない。この場合のA巻一本の正確な重量は、

47グラム x 0.444平米 x 1000枚 x 35連=730.4キロ

となり、ノミナルな重量である 717.5 キロとの間に12.9 キロ、約 1.8% の差が出てくるが、これはメーカー側のサービスになっている。このほか、 日本には巻取一本につき約 50メートル の「巻増し」というサービスもつく。A巻35連入り一 本の長さは

0.546メートル x 35,000枚÷ 2= 9,555メートルである。

これに 50メートルの巻増しをつけるということは、約0.52%のサービスということになる。

 これに対してアメリカでは、完全な重量建てである。しかも、重量には巻取の心棒や包装紙まで含まれる。A巻の心棒を6キロ、包装紙は輸出用として 4キロと見ると、合計10キロのも のが新聞の重量に含まれる。従って、連量〈20〉5キロ、35連入りA巻一本の新聞用紙を新聞社に納めた場合、しかもその巻取が米坪47グラムで抄かれ、かつ 50メートルの巻増しがついていたと仮定すると、日米での取引重量、つまりインボイスに表示される数量には次のような差が出てくる。

日本 アメリカ
A巻一本の重量 715.5Kg 730.4Kg 14.9Kg
巻増し 50メートル=0 50メートル=3.8Kg(*) 3.8Kg
心棒 6Kg=0 6.0Kg 6Kg
包装紙 4Kg=0 4.0Kg 4Kg
合計 715.5Kg 744.2Kg 28.7Kg=約4%

       ※(50メートル x 1626ミリ x47グラム= 3,821 グラム)

 北米のメーカーが日本の新聞社に新聞巻取を売る場合には、競争上このような日本の商習慣に従う必要がある。つまり重量建てとはいえ実質的には面積ベースであり、しかも巻増しや増目の慣習があるから、価格面ではこの差を計算に入れな ければならない。このあたりの商習慣がアメリカ人には理解しにくく、一種の非関税障壁だと彼らは指摘する。

印刷用紙の分類  

 アメリカの業界紙に紹介される市況欄などを見ていると、コート紙のところに、「No.1」とか「No.2 」といった番号が出てくる。コート紙でない印刷用紙にも「No.3」, 「No.4」 などの番号が出てくる。印刷用紙をこのように番号で区分するようになったのは、1930年代に制定されたNRA(National Recovery Act) に基づくもので、わが国のJISに相当するものであった。この規格は、今では公式には存在しないが、業界では慣習的にまだ使われている。番号は、数が小さいほど上級で、その差は、主として白色度と原紙に使用されている原料や塗料によるものだが、内訳は以下の通りである。


両面コート紙

白色度 原料 塗料 用途
No.1 82ー88% 化学パルプ100% 二度塗、強光沢 年次報告書等
No.2 78-82% 化学パルプ100% 二度塗り 宣伝用パンフレット
No.3 76-82% 化学パルプ主。機械パルプ従。 一度塗り オフセット印刷等。
No.4 72-76% 化学パルプ、機械パルプ半々 一度塗り 雑誌(グラビア)用
No.5 68-72% 機械パルプ主。 一度塗り LWCがこの分類に入る

(注:白色度はエルレッフォ式)

 この分類は非塗工紙にも適用される。分け方も、コート紙と同様に白色度や原料配合によって決まる。しかし実際には、この規格は厳密には浸透していないようで、あるメーカーの「No.2」は、 他のメーカーの「No.1」より優れている、といったケースもある。アメリカでは、特に書籍などを見ると、あまり白い印刷用紙は好まれないようである。クリー ム色がかった、やや黄色味を帯びたものが多い。上の分類でいうなら、「No.2」や 「No.3」あたりに 人気がある。アメリカ人の家庭では、電灯に蛍光灯をつかわない。昔から白熱灯にカバーをつけ たものを好んで使う。紙についても、蛍光塗料の入った真っ白いものより、どちらかといえばク リーム系統の紙が好まれる。

包装用紙

 基本寸法はタッグ (Tag) サイズで、24インチx 36インチ。500枚でちょうど 3,000平方フィ ートになるので、24 x 36 #50 などと表現する代わりに#50/3000 Sq.Ft.と表すこともある。 (Sq.Ft.= Square Feet,すなわち平方フィート)。包装用紙といえばクラフト紙が代表的なものだが、大きく分けて次の三種類がある。

  1. Bag paper: 食品・雑貨類を包む軽包装用クラフト紙。
  2. Sack paper: アメリカのスーパーマーケットでは、買物客が大量の買物をするため、軽包装では破れてしまう。そのため厚手のクラフト紙で作った袋が利用される。この種のクラフト紙を Sack paperと呼び、Bag paperと区別している。クラフト紙には未晒 (Unbleached kraft paper) と晒 (Bleached kraft paper) がある。なお、アメリカではクラフト紙全体の約 60%が、Bag paper と Sack paper用である。
  3. Multi-wall sack:重袋用クラフト紙。クラフト紙を二層、A三層にして袋を作るもので セメント、穀物などの重いものを入れる。

段ボール原紙の規格  

 段ボール原紙は巻取が原則であるから、洋紙のような標準サイズはない。すべて1,000平方フィート当りの ポンド重量が連量となる。1平米は10.7642平方フィートであるから、1,000平方フィートは、1,000÷10.7642=92.9平米である。従って、ある段ボール原紙のポンド連量を「A」,米坪を「B」とすると、  

B= (A x 453)÷92.9= A x 4.876

となる。aaa

紙函用板紙 (Boxboard):クラフトパルプを主原料とした単層のものもあるが、通常は古紙入りの、しかも厚みを出すためにアンコ部分に古紙原紙を挟み、両面を化学パルプで抄き合わせた多層紙が多い。折り畳み式の函 (Setup boxboard) が中心になるため、平判が原則で、基準サイズは25インチ x 40イン チ, すなわち 635ミリ x1016ミリとなり、日本の寸法では菊判に近い。ただし25インチ x 40 インチは、面積にするとちょうど1,000平方インチ (0.645平米) となる。従って、250x 40 #60 のかわりに #60/1000 Sq.In. と表すこともある。

紙の厚さ (Caliper)  

 米坪と似て非なるものに「紙の厚さ」(Caliper)がある。アメリカでは紙と板紙を区別するために、板紙は厚さが0.012インチ 以上あること、などといったりするように、板紙によっては厚さで規格を定めているものもある。その際、厚さを「ポイント」(Point) や「ミル」(Mil)で 表現するが、「ポイント」は板紙に、「ミル」は紙に使われ、いずれも1/1000 インチ を 1 ポイントあるいは 1 ミルという。しかし、実際には紙、板紙ともに「ポイント」を使っているよ うである。またポイントやミルを使わず、そのままインチですますことも多い。そのインチが 0.0313 とか 0.0468 などと端数になっているのは、アメリカでの1 インチ 以 下の表現が、1/2, 1/4, 3/4, 3/8, 1/16 ・・・・・・・というように分母が2の二乗の数字でなされる ためである。その結果、1/64 インチ が 0.0156インチ、3/64インチ が 0.0469インチという ようになってゆく。このような計り方は、物を半分づつ分けて行く考え方によるものであり、紙でいうなら一枚の紙をどんどん半分づつに折って行くのと同じである。アメリカではこの種の計り方が随所に出てくる。たとえばコインの 50セントや 25 セント、ミルクの 1/4 ガロン、株価でいえば50-1/4ドル、50-3/8ドルといった付け方をするし、距離なども 1マイル以下は 1/2, 1/4, 3/8 などで表す。

U:市況欄価格表の見方

 アメリカの業界紙などで見られる紙・板紙の価格表にはさまざまな種類のものが登場するが、主なものの規格を拾ってみると次の通り。

Newsprint(新聞巻取):30-lbとあるのは タッグ・サイズのところで説明したように、寸法24インチx36イ ンチの紙が 500 枚で 30ポンドあるということであるから、米坪は48グラム、これがア メリカでは標準になっている。東部と西部では価格に差があるため(伝統的に東部が高かったが、最近は事情が変わって西部の方が高いことがある) 価格欄は東部と西部に分かれている。東部には「New York Times」や 「Washington Post」などの有力紙があり、主としてカナダから原紙の供給を受けている。西部での大手新聞は「Los Angeles Times」でカナダ、B.C.州などの西海岸の工場から原紙を購入している。
 アメリカの新聞は概して地方紙的な性格が濃いが、「Wall Street Journal」や「U.S.A.Today」などは、全米各地に印刷拠点をもっており、数少ない全国紙である。前者はダウ・ジョー ンズ (Dow Jones)社が、後者はガネット(Gannett)社が発行しているが、特にガネットは 傘下に90 近くの新聞発行チェーンを持ち、グループ全体で使用する新聞用紙は、年間100万トンに達するといわれている。

Uncoated Groundwood(中・下級紙):Groundwoodとは Wood(木)を Grind (すりつぶす)したもの、という意味であり、 要するに機械パルプ(Mechanical Pulp.機械的に処理して作ったパルプで、化学的な処理を施していないもの。木を砕いてすりつぶしただけのGroundwood Pulp、すなわち、GPはその代表)を主原料とした紙のことであり、日本流にいえば「中・下 級紙」に該当する。

Coated Publication(塗工印刷用紙)

 「No.1」 から 「No.5」までの分類については前掲の通り。いずれもサイズはブック・サイズの25インチ x 38インチ。「No.1」の代表的な連量である70-lb は 74グラム/平米。「No.3」は 60-lbで 88.8グラム。 「No.4」の 50-lb は 74グラム。「No.5」の34-lb は 50.3グラム, 40-lb は 59.2グラムとなる。 代表的な品種は次の通り。

Sanitary stock (衛生用紙製品)。Stock とは紙にする前段階の状態のもの(たとえば原紙)を指す。価格欄に出る数字は、ある年の価格を100として出した指数であることが多い。

Unbleached Kraft Paper(未晒クラフト紙)

Linerboard :(ライナー):42-LB Domestic, East: Kライナー 42 ポンド(204.8 グラム/平米)

Corrugating Medium : (中芯原紙) Semichemical, 26-lb : SCP(セミ・ケミカル・パルプ)を原料とした中芯。26 ーlb は 126.8グラム/平米。

Recycled folding boxboard: 古紙を主原料とした紙器用板紙。

20-pt clay coated, 80 brightの場合: 20-pt とは 20 ポイント、すなわち、厚さが20/1000インチのもの。クレイを塗布し、白色度が80% のもの。

20-pt chipboard, bending: Bending とは bending chip のことで、紙器用のチップ板紙。Bleached kraft board: 晒クラフト板紙。

15ーpt folding carton, C1S, 80 bright: Folding carton とは紙器のこと。C1Sは Coated one side の略称で片面塗工。

Unbleached kraft board:未晒クラフト板紙。

 
V:取引の数量単位

 単価の基準となる数量単位は、新聞のみ m. ton (Metric ton) で、あとは sh.ton (Short ton) か 1,000 Ft2 (平方フィート)などで表される。

 「トン」については、メトリック・トンは1トンが 1,000キログラム、 ショート・トンはアメリカで使用されていることから「米トン」ともいうが、1ショート・トン は 2,000 ポンド、即ち、907.2キログラムである。また、1 メトリック・トンは1.1023ショ ート・トンになる。従って、ショート・トンで表示された単価をメトリック・トンに換算するに1.1023 を掛けてやればよい。たとえば、ショート・トンで単価1,000ドルのものは、メトリッ ク・トンでは1,102.3ドルとなるし、メトリック・トンで単価1,000ドルのものはショート・ トンでは 907.2ドル ということになる。

 ライナーや中芯は、1、000 平方フィート当りの単価も出されている。ライナーの場合、かりに42 ポンドものの単価が 500ドル だとすると、1,000平方フィート当りではいくらになるか。1ショート・トンは 2,000 ポンドで、その価格が500ドルであるから、42ポンド即ち 1,000平方フィートではいくらになるか、ということである。従って、答えは(500ドル÷2,000) × 42= 10.5 ドル となる。中芯も同様に26 ポンド ものの単価が 400 ドルであったとすると、1,000平方フィー トでは 5.20 ドルになる。  

 このほか、同じ重量でも 「CWT」という単位がある。CWTとは「Centum Weight」 からきたもので、「centum」 とはラテン語の「100」という意味である。アメリカでは CWTはポンドに対するものであるから、CWTは 100 ポンドを指す。1 ショート・トン=2,000ポンドであるから、1 CWT = 1/20ショート・トンである。従って、ショート・トンで表示されている単価をCWT当りに換算 するにはショート・トン単価を20 で割ってやればよい。上述の 1 ショート・トン当り1,000ドルという単価は、CWT当りでは 50 ドルということになる。

W:価格表に出てくる用語

  ☆    ☆    ☆    ☆     ☆    ☆    ☆     ☆

X:ヤード・ポンド法について

 ヤード・ポンド法の煩雑さは、10進法になっていないことと、小さい単位になるに従い呼称が変わる点にある。たとえば、距離を計るマイル(Mile. 1 mile = 1.6キロ)は、

  1 mile = 80 chains = 320 rods =880 fathoms = 1,760 yards = 5,280 feet

といった具合である。

面積では森林の広さを表す場合には「エーカー」(acre)が用いられる。
1エーカー=4,046.86平方メートル= 40.4686アール=1,224.17坪となる。

液体の容積を図るギャロン (Gallon. 1 gallon= 3.785リットル)は、  1 gallon = 4 quarts= 8 pints = 16 gillsとなる。

 重量はオンス (Ounce)から始まって 16オンスが1ポンドになり、2,000ポンドが 1 シ ョート・トンになる。このように複雑なアメリカ流度量衡の単位も、その由来を探るとおもしろい。「マイル」とい うのは、その昔、ローマ帝国時代のローマ軍兵士が行進する際に、ダブル・ステップ(二歩)を一歩として 1,000ステップを要した距離、ということになっている。「ヤード」というのはイギリスのヘンリー一世(1068-1135)の鼻から手先(手を前方水平に伸ばした状態)までの長さを取ったものであり、「インチ」はローマ帝国のチャールズ大帝(742-814) の親指付け根の関節幅をもって 1インチにしたといわれている。

 森林面積の単位として使用される「エーカー」(Acre. 1 acre = 4,047平米。約 1,224坪) というのは、二頭の牡牛が一日で耕すことのできる面積とされている。

 アメリカでは温度についても「華氏」 (Fahrenheit)という独特の計り方をする。華氏は、氷点 を32度、沸点を 212度、この間を 180 度としたものである。つまり「摂氏」(Celsiusまたは Centigrade) の一度は、「華氏」の 1.8度になるわけだが、両者の関係は次のようになってい る。すなわち、摂氏をC,華氏をFとすると、

    C=(F−32)x5÷9     F=(Cx9÷5)+32 

ということになる。華氏を摂氏に換算するには、与えられた華氏から32 を引いて 5/9 を掛け ればよい。また、摂氏から華氏を出すには、摂氏に9/5 を掛けて、そのあとに 32 をたしてやればよいのだが、計算が面倒なので簡単に覚えるには「華氏の50度は摂氏の 10度、華氏の 100 度は摂氏の37.8度で、人間の体温が発熱状態になるレベル」と記憶しておくと、だいたいの計 算はできる。あるいは、華氏の 50 度は摂氏の15 度、華氏の 61 度は摂氏の 16 度、と覚えて おくのも一つの方法である。なお、同じ北米でも、カナダはすでに摂氏を採用している。しかし アメリカではいぜん華氏が幅をきかせており、摂氏に変わる動きは見られない。  

 さて、最後にアメリカにおけるメートル法について触れておきたい。メートル法というのは、 「メートル条約」に基づいて各国が採用している、いまでは世界共通の度量衡といえるものであ る。アメリカも今から百年以上も前の1875年にこの条約に調印した。しかし、当時の財界や労 働界から強い反対の声が出て、結局批准するまでにはいたらなかった。一方、ヤード・ポンド法の本家であるイギリスは、1965年にメートル条約を批准し、正式にメートル法に移行した。続いて1970年にはオーストラリアが、また1971年にはカナダが、イギリスにならってメートル法に変えた。その結果、旧英連邦のほとんどの国々がメートル法を採用することになった。そのうち1978年になってEU(当時のEC)が、「メートル法で表示されていない物品の輸入は禁止する」ことを決めたため、アメリカ国内でもEU向けの輸出が多い企業や多国籍企業などが、このままではアメ リカが孤立してしまう、として政府に働きかけた結果、1975年12月、フォード大統領の時代になってようやく「メートル換算法」(Metric Conversion Act) が議会を通過、メートル法が正式に認知された。しかし、この法律もメートル法を強制するものではなかったために、十分浸透していない。業種によって浸透の度合が異なる。典型的な例は航空産業で、安全性の観点からメートル法は採用されていない。「高度3万フィート、時速500マイル」といった言い方がいまでも世界共通である。カナダではメートル法を採用した直後に、飛行中の旅客機が燃料不足で最寄りの飛行場に緊急着陸する、という事故が発生した。それまで燃料を「ガロン」ベースで計測していたが、キロ・リットルを採用した際に係りがガロンと勘違いして飛び立ったためであった。
 紙パルプ業界も、まだインチ・ポンドが主流である。わずかに新聞がメートル法を採用しているにすぎない。ライナーやパルプも、ヨーロッパ向けの輸出についてはやむを得ずメートル法を使っているが、国内では依然としてヤード・ポンド法である。度量衡は、長年の習慣によるものであるから、もともと変更するには誰もが抵抗を感じる。とくにアメリカの場合は、それ自体が大きな経済圏をなしており、現行のままでも不便を感じないという意識があるから、これからも変わりそうにない。

附: ローマ数字について

 たとえば「MT」という単位は、「Metric ton」を示すこともあれば「Thousand tons」を意味することもあって、注意を要する。後者の「M」はローマ数字の「千」を表しているからである。ここでローマ数字のことに触れておく。ローマ数字では、

 I=1, V=5, X=10, L=50, C=100, D=500、 M=1,000 

配列は価の高いものに順次低いものを後続させる。たとえば XC=90 であり、MCMXCIX=1999となる。MCMXCIXについては、M(=1,000),CM(=900)、XC(=90)、XI(=9)とわけると分かりやすい。同様に、MDCLXVI=1,666である。

附:メトリックの略号

1,000,000,000,000=10の12乗 tera T one trillion times
1,000,000,000=10の9乗 giga G one billion times
1,000,000=10の6乗 mega M one million times
1,000=10の3乗 kilo k one thousand times
100=10の2乗 hecto h one hundred times
10=10 deka da ten times
0.1=10のマイナス1乗 deci d one tenth of
0.01=10のマイナス2乗 centi c one hundredth of
0.001=10のマイナス3乗 milli m one thousandth of
0.000001=10のマイナス6乗 micro one millionth of
0.000000001=10のマイナス9乗 nano n one billionth of
0.000000000000001=10のマイナス12乗 pico p one trillionth of

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