(4月17日付けの『僕が夜型から抜け出せない理由。』参照)
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「夜型の会」は1年くらい続いた。
週に3〜4日、彼女は夜中3時のなると僕の家のベルを鳴らした。
そして朝まで喋る。 それが「夜型の会」。
1年くらいたったある日から、パッタリと彼女は来なくなった。
別に約束してるわけでもないし、元はと言えば彼女が勝手に始めた
ことなので、彼女が急にやめたとしても、それはそれで。
またはもしかすると、仕事のシフトが変わったとか、引っ越したとか、
旅行に出てるとか・・・
僕はいろいろ考えた。 そうして1週間が過ぎた。 彼女は来なかった。
1年も喋っていながら、僕は彼女の連絡先も、彼女が何の仕事を
やっているのかも知らなかった。 名前すら知らなかった。
一度「名前はなんていうの?」と聞いたことがあったけど、彼女は
「そんなこと別にいいじゃない。 夜型の会の会員は2人だけなんだから、
『ねぇ』とか『あのさぁ』で通じるでしょう?」と笑った。
それもそうだけど、キミは玄関の表札を見て僕の名前を知ってるだろうけど、
僕はキミの名前を知らない。 これはフェアじゃないんじゃないか、
と言う僕に、彼女は「じゃあ私のことは『ツキ』って呼んで」と言った。
ツキ・・・夜にだけ現れるからツキ。
ツキのことについて、僕はなんにも知らなかった。
ツキは自分のことをあまり話したがらなかった。
「夜型の会」が開かれなくなってからも、僕の夜型ライフは続いた。
そうしてかれこれ1ヶ月が経ったある日、夜の10時近くに僕は
急に睡魔に襲われた。
なぜだかわからないが、とにかく眠い。
底なし沼にはまるように、僕はズプズプと眠りについた。
布団にたどりつくこともできないまま、机につっぷした。
夢の中・・・僕は自分の部屋の中にいた。
最初、そこが夢なのかどうかもわからなかった。
部屋にはツキがいた。
「アレ? ツキ・・・何時の間に・・・
今までどうしてたの?」
「ずっとココで待ってたのよ」
「ずっとここで??」
こうして夜型の会は再結成された。
いつもと同じように、ツキがコンビニで買ったサンドイッチや
ジュースを並べて、ただただ喋った。
そして夜が明けようとしたとき、彼女はじゃあネと言ってフワリと消えた。
そこで目が覚めた。 朝だった。
僕は机につっぷして寝ていた。
足がしびれていた。
不思議なことに、次の夜も僕は急な睡魔に襲われ、そしてまた夢の中で
夜型の会が開かれた。
その次の日も・・・次の日も・・・
日に日に睡魔に襲われる時刻が早くなっていった。
夢から覚める時刻が遅くなっていった。
「どちらが夢でどちらが現実なのかわからなくなってきたよ。」
「別にいいじゃない」
「・・・まぁね」
ツキはいつも僕の側にいる。
それでいいじゃないかと思えてきた。
どちらが現実だろうが、ツキのいる世界に僕もいたい。
そもそも現実ってナニ?
・・・あああ、オチ無し。