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『青い花の男』
at 2000 01/15 00:27

        とある男がおりました。
        男は花や草木が好きでした。
        青い花を育てるのが子供の頃から好きでした。

        ある日、男の育てた青い花が王様に見そめられ
        男は王家直属の花師のひとりになりました。
        男はどんどん花を育てました。

        王様が青い花を大量に欲しがったため、
        男の作る青い花は、芽が出たとたんに次々に
        引き抜かれ、王様の庭の鉢に移しかえられました。
        男は芽が出るまでの種子を育てるだけになりました。
        大好きな青い花を自分の目で見ることは
        できなくなりました。
        それでも男の作った青い花は、城下町でちょっとした評判になりました。
        男はどんどん青い花の種子を育てました。

        王様の家来は男に「王様は赤い花を見たいと言っておられる。 赤い花を作れ。」と
        命令しました。

        男は青い花しか作りたくありませんでした。
        「私には青い花しか作れません。 青い花しか作りたくありません。」と言いました。

        「赤い花を作らないというのなら、お前はもう用無しだ。 死刑にするぞ。」と
        王様の家来は言いました。
        男はしかたなく赤い花を作りました。
        赤い花用に土も入れ替えました。

        男が作った赤い花は、彼の青い花ほど魅力的ではありませんでした。
        王様も城下町の人々も、彼の作った赤い花には見向きもしませんでした。

        人々は口々に「あの男はもうダメだ」と噂しました。

        男は嫌になって城を出ました。

        山に小屋を建てて、そこにこもりました。
        窓もドアもないその小屋にこもり、自分の好きな青い花だけを作り続けました。
        自分のためだけに青い花を作り続けました。

        でも、どんなにキレイに作っても、誰も誉めてはくれませんでした。
        なぜなら小屋には窓もドアも無かったから。

        男は小屋に小さな窓をつけることにしました。
        そして窓際にキレイな青い花を置きました。

        小屋の前を通りすぎる人々が、
        キレイな青い花を見て立ち止まるようになりました。
        人々が立ち止まり青い花を見ているのを、
        男は小屋の中から見て、嬉しくなりました。

        男はどんどんどんどんキレイな花を作り、
        毎日窓際に飾りました。
        小屋の前で立ち止まって青い花を見る人は
        どんどん多くなりました。

        「みんなこの私の青い花を見て、何を話しているのだろう。
        どう感じてくれているのだろう。」
        男は外の人々がとても気になりました。
        でも男は人々と話すことはできませんでした。
        なぜなら小屋にはドアが無かったから。

        男は小屋にドアをつけることにしました。

        小屋の中をいっぱいの青い花で飾りました。

        いろんな人が遊びにくるようになりました。
        ひとりぼっちだった男に友達がいっぱいできました。

        男は元気になりましたとさ。



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