PSA異常の方が前立腺生検を受けるか悩んだ時に読むページ

癌の可能性が高い人だけに日帰り6箇所生検を行っている横浜市都筑区の木村泌尿器皮膚科です。
健診でPSA異常を指摘され、入院検査を指示されて悩まれている方に読んで欲しいページです。

治療最前線

「週刊がん もっといい日」VOL.96(2008年2月)に掲載していただきました。一部改変。)

被験者の侵襲を最低限に抑えることで日帰りでの前立腺針生検を実現

取材協力:木村泌尿器皮膚科(横浜・都筑区)木村明院長

木村明医師
プロフィール

きむら・あきら
1953年5月23日、広島県府中市生まれ。東京大学医学部卒業。東大病院、東芝中央病院、三井記念病院、都立駒込病院、青山病院、東京共済病院等への勤務を経て、2005年に木村泌尿器皮膚科を開業し院長。医学博士。


食の洋風化を背景に、増加を続ける前立腺がん。近い将来には、男性の場合、肺がんに次ぐ罹患率に達するものと見られている。しかし前立腺がんは、進行の遅いがんとしても知られており、早期で発見することができれば、きわめて高い確率で治療が可能となる。初期においては、ほとんど自覚症状を持たない前立腺がんだが、腫瘍マーカー(PSA)による精度の高いスクリーニングと、その後の的確な確定診断法が確立されたことにより、早期発見の確率も高くなってきている。

そんななかで、多くの医療機関が経直腸的針生検の本数を増やす傾向にあるのに対し、最小限度の6本という少ない針生検で、被験者の侵襲度を最小限に抑えながらも確実性の高い日帰り検査を行っている泌尿器科医がいる。横浜・都筑区にある木村泌尿器皮膚科の木村明院長に話を聞いた。

最小限の侵襲で精度の高い検査を目指す

木村医師が、現在のクリニックを開業したのは2年前のこと。それまでは、都内の大規模病院に勤務していた。博士論文のテーマには「前立腺がんの超音波診断」を選び、エコーやMRIなどの画像診断を特に得意とする木村医師。開業後もそうした技術を生かした、がんの早期発見と診断に力を入れている。  とくに木村医師が、「入院設備を持たないクリニックならではの簡便で精度の高い検査法を」と考え、実施している前立腺がんの経直腸的針生検術は、被験者の受ける身体的負担の小ささから、クリニックにおける検査法の一つのあり方として注目されている。

「針生検で刺す針の数は、基本的には6本以上とされてはいるものの、実際には少ない医療機関で8本、現状では12本の針を刺すところが多く、大学病院の中には26本も刺すところも出てきました。もちろん多く刺せば、それだけがん組織を捕える確率は高まりますが、患者の身体的なダメージも大きくなるので、どうしても入院が必要になります。そこで、最小限の侵襲で精度の高い検査を目指すことにしたのです」と木村医師。その方法とは、こうだ。

 基本的な検査の方法は、従来型の経直腸的前立腺針生検法と変わらない。抗生物質を点滴投与し、仙骨ブロックによる局所麻酔(1%キシロカイン10mlを硬膜外腔注入)をかける。そのうえで、肛門から超音波探子を挿入し、モニターに映し出される画像を見ながら穿刺していく。このときに木村医師は、前立腺の内腺には針は刺さずに、尿道から遠い外腺の、しかも経験的にがんの発症しやすい好発部位だけを狙って組織を採取していく。

「外腺だけに限定するのは、内腺に穿刺をすると血尿を伴う危険性が高いことと、内腺にのみ、がんが限局して発症するケースは極めて稀なため。外腺のなかでも『ここは!』という場所があるのですが、それは26本生検している大学病院の研究結果から勉強します。開業しても、学会や研究会にはできるだけ参加するようにしています。とはいえ、6本の穿刺で不十分な結果に終わることはまずありません」と胸を張る。

 検査そのものにかかる時間は、およそ10分程度。その後、被験者には、30分ほど休んでもらい、採尿して出血の有無を確認。問題がなければ帰宅となる。生検後数日で尿に血が混じることはあるが、これは、時間の経過とともに自然に治まる。また検査後は1週間、抗生物質の内服を続けることになる。 多くの病院では、この検査だけで2泊3日の入院を必要としていることを考えれば、働き盛りに多い疾患だけに、クリニックでできる日帰り生検の意義は小さくないといえよう。

4割の被験者にがんが見つかり、その大半が早期だった

木村医師のクリニックで、これまでに行われた経直腸的前立腺針生検は、約100件。そのうち4割の被験者に、がんが見つかったが、その大半が早期だった。いずれも、PSA検査によるスクリーニングで、陽性反応だった被験者を対象とした確定診断のための生検だったが、同クリニックで前立腺がんが見つかった場合は、医療連携を取る横浜労災病院などの後方支援病院に紹介され、術後のフォローアップは逆紹介のうえで、木村医師が担当することになる。 クリニックから必要に応じて病院へ、そして再度クリニック――という理想的な病診連携の流れのなかで、被験者は効率のよい医療を受けることができるのだ。

「生検の痛みが最小限で済むことは、この検査法の大きな特長。これまで生検の痛みが原因で検査を中断したり、中止したことはありません」と木村医師。単に日帰りというだけではなく、品質という面においても被験者にとって大きなメリットとなっている。  こうしたことができるのも、木村医師の豊富な経験によるもの。長年にわたって、大規模病院で多くの生検を行ってきたからこそ、僅かな穿刺で確実性の高い検査が可能となる。そうしたことは、患者や被験者も知っている。というのも同クリニックを訪れる人の多くは、木村医師を紹介するメディアやネット情報を見て、その存在を知るケースが多いからで、それだけ勉強してから受診する人が多いというわけである。

横浜市内はもちろん、東京都や埼玉県、千葉県、静岡県などから訪れる人も多く、病院ではない、入院病床を持たないクリニックとしては、きわめて広範囲な医療圏ということができるが、それだけ、「入院せずに検査を受けたい」という被験者側のニーズが高いということが言えるのだ。 日帰り手術の隆盛を見ても明らかなように、検査にも日帰りの需要は小さくない。しかもそれが、ハイクオリティで実現するのであればなおさらだ。今後、確実に増加する前立腺がんによる犠牲者を少しでも減らすためには、こうしたクリニックレベルでの取り組みが不可欠となってくる。木村医師の挑戦にかかる期待は、大きい。