慢性前立腺炎

正式病名は慢性骨盤疼痛症候群(印刷用のページ)

どんな病気か

会陰部や下腹部,陰嚢部などに鈍痛や不快感を感じます.頻尿,排尿痛,残尿感などもみられます。射精前後に痛みが起こることもあります。
慢性細菌性前立腺炎 非細菌性前立腺炎 前立腺痛
の3タイプに分類できます。

検査と診断


直腸に指を入れて前立腺マッサージによって前立腺分泌液を搾りだします.
分泌液(もしくは前立腺マッサージ後の尿もしくは精液)のなかに
①白血球,菌とも陽性なら慢性細菌性前立腺炎
②白血球のみ陽性なら非細菌性前立腺炎
③両方とも陰性なら前立腺痛と分類されます.

すでに他院で抗生物質を処方され、内服している最中だと正しい診断ができません。
非細菌性前立腺炎前立腺痛で、頻尿や残尿感などの症状が強い場合は尿流測定を行います。
非細菌性前立腺炎前立腺痛の患者の場合,前立腺周囲の静脈洞が開大しているという現象がエコー検査で観察されることがあります。
骨盤腔内の血液の循環が悪いいわゆるうっ血状態を意味しています。

治療法

慢性細菌性前立腺炎では、まずなるべく大量の水分を摂取するように勉めてもらいます。これは前立腺の病変部を洗い流す効果があります。また、便秘が前立腺炎症状を悪化させるので、整腸に留意することも大切です。前立腺のマッサージで、分泌腺内にたまっている膿性分泌物を排出させます。射精にも同じ効果があり、週1~2回行うように勧めている医師もいます。
細菌が消失するまで、4~12週間程度抗菌剤を内服してもらいます。
非細菌性前立腺炎の場合にも、細菌が外へ出てこないだけの潜在性の細菌感染の可能性もあるので、4週間程度抗菌剤を投薬します。
非細菌性前立腺炎前立腺痛のなかにはいろいろ基礎的な病態が含まれている可能性があります。
1.間質性膀胱炎に似た病態と考えられる症例、
2.骨盤底筋の緊張症状が特に強い症例(会陰部や下腹部の疼痛や不快感以外に症状がないという患者さん)、
3.尿流測定に異常を認め,排尿困難が疑われる症例、
4.骨盤腔内のうっ血を基盤とした病態と考えられる症例、
5.精神的要因の関与の強い症例、
6.それ以外の症例(病因も病態もいまだに全く不明)です。
1頻尿、残尿感、下腹部痛(特に尿が貯まったとき)が間質性膀胱炎のためである場合は、膀胱水圧拡張術が有効な事があります。
2骨盤底筋の緊張症状が特に強い症例(会陰部や下腹部の疼痛や不快感以外に症状がないという患者さん)には、筋弛緩作用のあるマイナートランキライザーや漢方薬などを投与します。海外には骨盤筋をリラックスさせるトレーニングを指導している大学もあります。
3尿流測定が異常な症例には,さらに尿流動態学的検査を行います。機能的な閉塞では、α-ブロッカー(前立腺肥大症治療薬)を投与、 器質的な閉塞では、経尿道的に膀胱頚部の切開術や切除術(TUR-Bn)が行われることがあります。
4前立腺痛症例のうちで骨盤腔内のうっ血を基盤とした病態と考えられる症例には,漢方薬の(駆オ血剤)を投与します。 当院での集計では、著効例20%、無効例30%でした。50%は途中で来院されなくなり治療効果が確認できていません。
5「細菌感染(性病)ではない」ということをデータを示しながら説明し、患者さんの不安を取り除きます。 職場でのトラブルなど心理的・精神的な問題が背景にあることも多く、心療内科や神経科を受診してもらうこともあります。
6会陰部や下腹部に鈍痛や不快感を感じても、その原因が前立腺にあるとは限りません。 肛門周囲の不快感のために長時間座っていられない状態は、整形外科医は馬尾神経障害と診断し、麻酔科医は陰部神経痛と診断します。 何科の医者がどんな病名をつけても、短期間に治癒させるのは困難な病態であり、慢性骨盤疼痛症候群と呼ぶべきでしょう。

慢性前立腺炎という病名は、陰部や下腹部に不快感を感じる青年男性にあまりにも簡単に付けられる病名(無知による病名のゴミ箱:Waste basket of clinical ignorance)であり、患者さんに前立腺の病気という先入観念を植え付けてしまいがちです。
前立腺分泌液の検査をやらないで、尿道炎でも前立腺肥大症でもないから、たぶん前立腺炎だろうという感じで診断されることがあるのです。
2010年、アメリカ泌尿器科学会の権威は、前立腺炎を一つの原因で説明するのは不可能とし、6つの原因を挙げました。細菌感染が原因の症例は16%に過ぎなかったとのことです。
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