第14回勉強会「団塊世代へのリストラを許すな」
                        ・・・1999.7.24

7月24日猛暑の中、東京管理職ユニオンの副委員長の森園吉夫氏を講師として、引き続く不況の中で厳しさを増すリストラについて知ることを課題として定例勉強会が開催された。
高橋代表からは「定年まで10年を切る中で団塊世代に集中したリストラ攻撃が強まっている。年金への不安も深刻な課題としてある。不況の中で雇用者側は産業競争力を理由に雇用責任を取ろうとしない傾向が強まっている。勉強会で現状を知り次の具体的行動へのステップにしたい。」との挨拶があった。
森園氏の講演内容は次の通り。
@東京管理職ユニオンの相談活動から見ると、ここ1〜2年前から解雇・退職強要・退職勧奨は増加しており、相談全体の59%となっている。深刻な内容が増えている。
Aホットライン活動の一環として行った「職場いじめ110番」では最高1045件に及ぶ相談が全国から寄せられた。このため全国のユニオンに協力を呼びかけ相談ネットワークを構築した。未組織労働者への相談窓口の開設が重要な課題だ。
Bその中でメンタルヘルスケアが必要なケースが18%程度あり、引き続きカウンセリングを必要とする事例がかなりある。
C組合員にはアドバイスや援助はするが指導も救済もせず、最終的な判断は自分でしてもらう。ユニオンは争議を抱えた者の相互に協力する場である。それが「今日の相談者が、明日の相談員へ」という活動につながっている。
D年代別に見ると99年の相談数では全体の20%が48から52歳に集中しており、
その60%が解雇・退職勧奨となっている。53〜54歳では70%が解雇・退職勧奨
である。またバブリーズと呼んでいる33〜37歳世代にも集中している。
E会社から不要な人材と通告されても、当事者にはまだ会社に忠誠を尽くそうという気持ちがあって、表だった抗議には二の足を踏む(一度決心すれば闘う戦士となるが)。
F退職勧奨された場合には会社にしがみつくことを勧めている。いわば「明るいリストラ社員として。その場合、賃金カットを少なくする交渉をする。しかし、最近は解雇される事例が増え退職金の上乗せもない(上場企業にも増えてきている)。
G政府が労働力の流動化、労働者が働きやすい環境をと言うのならば、アメリカのように「年齢差別禁止法」の制定が前提ではないか。

講演後、参加者の意見交換が行われたが、その一部を紹介する。
@深刻さを増しているなかで「明るいリストラ社員」だけではやっていけないのではないか。(ユニオンではオアシスフォーラム等の心のエネルギーを支える取り組みをしている。)
A安易なリストラによる信用喪失や中堅の人材を失うことによる会社の重要な要素が空洞化することは日本経済にも影響するのではないか。
B団塊世代は終身雇用制を前提として働いてきたが、若い世代は入り口から違う意識で働いている。雇用関係が複雑化するなかで既存の労働組合がリストラに対応できない理由になってる。労働者の側から権利を守るための契約関係を整備する必要がある。
C終身雇用・年功序列はすでに終わっている。リストラに落ち込むのではなく、自助努力が必要。団塊世代は集団に依存してきた世代ではないか。自分で何をやるかを考えるべき。
Dしかし、自分でできない層がどうなるかが重要であり、制度論としてどのような対応を国・経営側に求めるかという視点が必要ではないか。
E企業の経営理念は金融市場の要請からも変わってくる。資本の増殖に資する能力を常に形成しなければならない社会というのは大変きついが、それを踏まえて考えていく必要がある。
F企業の経営理念が変わったことは企業内労働組合の運動にも影響し、リストラ問題を容認している面がある。転換のきかない団塊の世代への制度論的な課題がテーマとなり難い状況がある。

「猪」の会員は労働者・管理職・経営者と多様であり、リストラ問題の背景も構造的な問題に根ざしているため、今回の議論だけでは問題解決のための方向は見いだすことは出来なかった。「次のステップ」へ向けた議論の継続が求められる。