プロジェクト猪第31回勉強会
            総選挙の本質を問う
                                                  二木啓孝「日刊ゲンダイ」ニュース編集局長
                                                           2003.10.29於:総評会館

二木です。プロジェクト猪的に言うと明治大学です。農学部ですが優秀な成績で除籍になりました。今日は選挙の話をしろということでまいりました。日刊ゲンダイという非常に上品な、いや品のない新聞の記者をしておりますんで、今日のテーマ「総選挙の本質を問う」という、これは私にとってみるととんでもないことで、「総選挙の表面をなぞる」ということで聞いて下さい。本質は皆さんに考えてもらうということで、むしろ私は永田町をウロウロしたり選挙区を回ったり、いろいろな政治家の人に聞いたりしたことをお話するということで、皆さんが総選挙の本質をつかむためのデーターになればいいかなということで少し話しでみようと思います。そういう意味では講師というよりも記者報告というふうにして聞いて頂けると私は非常に楽だということです。

月曜日(2003.10.27)に公示になりました今度の選挙、実は私は何回も選挙の取材をしているんですが、ちょっとワクワクして取材をしています。ワクワクするというのは「マニフェスト」という政権公約を民主党が出したということで、従来のパターンとちょっと違ってきているということです。今までの選挙、例えば自民党がリクルート事件と消費税アップでぼろ負けする89年の竹下政権の参議院選挙とか、93年の細川政権ができる時とか、98年の橋本政権が火だるま改革とか消費税アップ、それから国民負担が一挙に9兆円増えたというようなことがあって惨敗した時とかを取材してきて、自民党は相当ダメージがあるんじゃないかなというふうに思っているんですが、そのなかで特に今あげたいくつかの選挙と全然違うのは、野党側が政権を取ったときの期限と数値と財源、このことをハッキリ掲げたという意味でいうと、これは多分初めてだろうな、と思っています。

今までの選挙というのはハッキリ言ってどの野党も、例えば「子供が安心して暮らせる明るい日本」みたいな訳のわからない公約を掲げて、あとは自民党の悪口を言って票をかっさらうという、つまり自民党がチョンボをしたりスキャンダルを起こしたり、政策的に失敗したときに有権者が自民党にお灸をすえてやろうじゃないかということで野党に票を入れるという、すると野党は議席をふやして「勝った、勝った」と言う実に単純な構図があったわけですね。今回はそういうことではない形になりつつある。何か大きく変わるんじゃないかということを初めて、野党側、つまり民主党が出してきたということだと思います。

さきほど申し上げた敵失で野党が「勝った、勝った」というスタイルは55年体制なわけです。93年8月の細川政権は政権交代だというのですが、あれは政権交代ではありません。あれは自民党にお灸据えるということで反自民の票を野党8党派に入れたら、たまたま自民党を超えちゃったという話であって、政権構想もなにもないわけですから。そして案の定談合になって内輪ゲンカをして1年もたなかったということですから、政権交代とは呼ばないと思います。

ずいぶん古い時の話しですが、週間ポストの記者をしていた時に、竹下登さんに会って話をしたことがあったのですが、竹下さんが何人か若い記者を集めて「今日は君たちに政権維持の極意を教えてあげよう」というわけですね。あの竹下登ですから「おっ!」と思って聞いていると内政の極意は「政権の極意は社会党が言ったことを3年か5年遅れて取り上げて政策に入れればいいんですよ」というわけです。では外交の極意はというと「アメリカがいろんな要求をしてくると、アメリカに行ってご節ごもっとも、と。ご説ごもっともですが我が国には社会党という頑固者がおりまして、なかなかそのようには進まない、と言ってくればいいんだ」と。中国に対してはどうかというと、「中国もいろいろ言ってくる。軍国主義だなんだかんだと言ってくる。そういうときは中国に行って、大丈夫です、我が国には社会党というブレーキがあります」と、これが極意だと言っていたんです。私は割と本質をついているなと思っています。というのは、先程言ったように選挙になれば自民党の悪口で、自民党がチョンボすれば「勝った、勝った」という、55年体制というのは実は、社会党に代表される野党は自民党に利用される補完物でしかなかったということだと思うんですね。

そういう構図のなかで10年前の細川政権というのはたまたま敵失、チョンボが多かったということで政権を取ってしまったわけで、そういう意味では政権構想はないし、それから、政権交代で一番やらなくてはいけない岩盤のように固い官僚群を誰も崩せなかったと思うわけです。冒頭申し上げた「ワクワクする」というのは、自民党に取って代わる曲がりなりにも受け皿のようなことを言い始め、我々からすると政権選択選挙というような形の投票行動がようやくとれることになったのかなと思うわけです。

そうなると菅さんのマニフェストの是非とか、自民党が出している政権公約の是非という話になると思うんですが、この前、私のやっているラジオ番組に田原総一郎さんをゲストに呼んで、「今の政局は結局どうことなんですか」と聞いた田原さんが「自民党は賞味期限が切れている。野党はまだ政権をとる体力がない」と言ってました。私はそれは正解だろうなと思っています。つまり自民党は完全に賞味期限が切れているけども、小泉純一郎というピカピカの大きな絆創膏がペタとはられていて、それがパッチワークのように収まっていると。そのことに対しておかしいんじゃないかというふうになってきてマニフェストが出たけども、まだまだこれは具体的に政権とってうまくいくのかというと、そうでもなさそうだというようなことがあると思うんです。

しかし両方不十分という中でも選択しなくてはならない。皆さんの中でいろんな政党支持というのがあると思いますが、私は議会制民主主義を前提にすればよりベターな選択をということならば、賞味期限が切れたほうではなくてこれから伸びてくる方に賭けたいなあという思いがあるわけです。

その自民党の話をちょっとします。9月20日の総裁選で小泉さんが圧倒的な票をとって再選をされたわけですが、実は小泉さんとそれを支える人達はハッキリ言って完全に切れています。森喜朗さんは、小泉さんの後見役なんでまわりでウロウロしていますが、基本的に経世会は、野中さんが引退しましたんで今は青木さんが軸なんですが、「勝手にやっていいよ」という話です。もう何を言ってもいいということで、但し、予算と選挙だけはあんたがしっかりやりなさいね、という話であって、その点は小泉さんもよく分かっていて、ほとんど自分の興味のあること以外はやらないという状況なんですね。

最近、外務省の役人からおもしろい話を聞きました。小泉さんは日常的に官邸にいるときは、火、金は閣議、国会中は国会に行きます。休会中は何をやっているかというと、役人が外遊先とか、今の現状についてレクチャーに行くんですが、外務省の人が日露関係、今シベリヤの地下資源、天然ガスと石油とレアメタルが出るということで、これに日本が協力をしてシベリアを開発すると、天然ガスがでればあわよくばパイプラインを中国に通して、一時は北朝鮮も通すと言う話もあったんですが、そのパイプラインをひっぱってきて日本が独自のエネルギーを持つという計画は橋本政権のときからやっているわけですが、それに対する経済協力の話を持っていったときに、現状とアメリカと日露の今後をどうするかという話をしにいったということなんですね。今役所は全部A4なんですが、その綴りを持っていって、総理、今現状はこうなっておりまして・・と読み上げるわけですが、だいたい15分ぐらいで読んでいるところと小泉さんが開けているページがもう違うんですね。もう興味を失っちゃってる。目が泳ぐというんです。こういう人をどうやってレクチャーしようかということで、次回に地球儀を持っていったそうです。これで「シベリヤの資源はここにありまして、パイプラインがあってクレムリンはここでして、ここへ運ぶよりこっちのほうが近いんです・・」というと小泉さんは見るわけです。でも20分で飽きてしまう。でも地球儀はペーパーより5分は長く持つというんです。そして「総理何かご質問は?」というと、地球儀をくるっとまわして、「カスピ海ってここなんだ」と言ったというですね。つまりそういうことに全然彼は興味がないわけです。だからせいぜいペーパーで15分、地球儀とか絵を描いて20分しか持たない。多分ほかもそうなんでしょう。そこでは質問も出ないんで、それで「やってくれ」という話になって、この「やってくれ」というのが実は丸投げというヤツだと思うんです。

郵政民営化とか道路公団とか一時は真っ赤に燃え上がってやるんですが、最近はほとんど飽きてしまったような気がします。ブッシュさんもすごく頭の悪い人だというのが国家秘密ですが、この人もA4一枚で二枚目からはもう頭が混乱するというんです。だから世界情勢についてのレポートはA4一枚に書くようにというのがホワイトハウスの慣例になっているというんです。まあ、昔から頭のいい人ではないということで、最近の話ではクリントン夫人のヒラリーさんがクリントンとの回想録で、二人はエール大学ですが、最初の出会いは図書館で、クリントンという素敵な人がいたとヒラリーさんが書いているんですが、それをブッシュさんが読んで「こんなねつ造の本はない」と言ったというんですね。ブッシュさんもエール大学なんですけども、「エール大学では図書館みたことがなかった」という、つまり図書館行ったことがなかったようなんです。そういう意味でいうとA4以上はキャパスティがない大統領と、20分しかもたない日本の首相、これで日米関係やっているという、こんな恐いことはないわけです。

小泉さんの話に戻しますと、本当に興味があること以外はやらない。今、彼は何の興味もないだろうなと思っています。私も小泉ウォッチングをやっていますが、例えば、北朝鮮問題、これはもうほとんどぶん投げですね。全然やる気がありません。去年の9月17日に日朝会談をやって、共同宣言を結んで5人が10月15日に帰ってきてその前に8人死亡というのがあって、11月のシンガポールの日朝会談がこじれてあとはもう膠着状態、このあと彼はほとんど興味はないし、だいたいデーターが頭に入っていない。小泉さんと拉致された五人はずいぶん日がたってから会うわけですが、その時に小泉さんは五人を前にして「拉致されて何年だっけ?」と聞いたというんですね。それは失礼な話であって「28年です」というと「ほう、よく頑張った」と、貴乃花に言ったのと同じ台詞を言ってるんです。私も9月17日にピョンヤンに同行取材団で行きましたが、その時はかなり緊張した面持ちだったし、「ああ、ホントにやる気だな」と感じだったんです。しかし、日朝関係が膠着したらもうぶん投げです。後はもう六カ国協議に入るからアメリカの言うとおりにしておけばいいという感じです。

小泉さんはいろんな改革とかをぶちあげているんですが、それは自分の関心があったときはやるけども、一度壁にぶつかるともう飽きてしまうという、これほど一つのことについて長く出来ない首相は歴代初めてだろうと私は思います。むしろ小渕さんなんかは補正予算くんで100兆円くらい国債を積み上げてしまったんですが、やはり彼はまじめにやっていた。「私は世界一の借金王になってしまった」といいながら、どう株価を上げようかということを最後まで取り組んでいた。私から見ると、小泉さんは非常に飽きっぽい不真面目さを感じます。こういう小泉さんを自民党はよく知っているわけですから、いろんな改革だとか、政権公約なんて出しても、もうこれは面従腹背というのが現状だと思います。

総選挙についていろんな人から聞いたり、個別の候補から聞いたりした話をしてみたいと思います。今、各雑誌は当選予測のものを出しています。文春、週刊朝日、サンデー毎日それから部分的には週刊現代というふうに出しています。それから一昨日は日経新聞が現況みたいな感じで書いているんですが、だいたいどれをみても民主党優勢なんですね。10月10日の解散議席でいうと自民党が247、民主党が137という数字です。衆院の定数は480ですから過半数は241ということになります。241ですが自民、公明、保守で286持ってますから過半数を45プラスになっているんですね。選挙の予測を専門にやっている宮沢さんとか森田さんとか福岡さん、それから各新聞の世論調査や選挙班の話を聞くと、どうも積み上げていくと民主党有利という数字がでています。民主党が200に迫る勢いという言い方もしますし、自民党が220を割るかも知れないというふうな数字が出ているわけです。個別の積み上げでいうと確かにそのような形だし、今までとは違う民主党のスタイルになってきているから国民の関心も高い。朝日新聞の調査ですと自民党を軸にした連立が良いという答えが35%、民主党中心は32%です。このデーターは埼玉県だけのデーターなんですが、だいたい埼玉というと都市部と農村部があるんでちょうど日本の縮図だとすれば、自民中心か民主中心かはほぼ拮抗しているというふうに言えると思うんです。そういう中でいうと意外と自民党は今度は負けて民主党がとるんじゃないかという感じもいわれているわけなんですね。

でも、私がいろいろ歩いてみると、そういう予測通りにいかないんじゃないか。どうも自民党が意外に頑張ってしまうんじゃないかという思いがあるんです。何故かというと、確かに従来的に支えている大きな支持団体というのがへたっているというのは間違いない。例えば前回の参院選挙で郵政族といわれている特定郵便局の団体ですがこれまではコンスタントに100万から120万票を出してきたとこなんですが、前回、高祖という郵政官僚が出た時は55万票しか出ていない。また医師会とか医療四団体と言われているところも医療改革というか医療費の問題で三方一両損が実体的には患者に負担をかけることによって逆に医療費が抑制されるということがあって、そういうことにはついていけませんよ、というふうなことになってきているんで全面的な支持はない。もちろんゼネコンは公共事業が減らされてますから集票マシンとして動くこともない、あるいは日本遺族会にしても高齢化が進んでいるんでかつてのパワーはないというような、個別にみていくとそういう構図が見えてくるわけなんです。

ところが具体的選挙区の話でいうと、例えば、小泉さんは郵政民営化の話を政権公約に盛り込んだんですが、郵政族の連中、荒井さんという若いのがスポークスマンのようにやってますが、彼は公然と自民党の中で郵政民営化反対の署名運動をやっています。それから先週北陸に行ったんですが、途中で工事が止まっている道路については確実にやりますというようなことを言ってますし、鳩山邦夫さんは中央線の例の高架線の問題で「私が当選したらこの下に地下鉄を敷きます」なんてことを言っているんですね。要するに勝手なことを言っているんです。そういうことを言っても実は党執行部はOKなんです。先週の初めに、安部幹事長は記者との懇談で「いろんな勝手を言ってるじゃないですか」との質問に「政権公約と違うことを主張しても党としては処分するつもりはない」「個別に言ったことは有権者が判断することであって我々は共産党とかナチズムではない」という、ナチズムってそこで出るか、という話なんですが、それぞれについては放置するというふうになってます。

確かに、初めて政権選択選挙になって菅民主党のほうに寄ってきている。相対的に自民党はダメだと見えているし実際地方の経済状態は小泉不況で非常に悪いわけですから、そういうことに対する怒りがあるので自民党は弱いんじゃないかと皆議席予想するんですが、個別の人達はやはりけっこうきっちり利益誘導的なことをやっているし、東京がやることは東京でやるんですよという割り切りをやっているというふうなところが見えるわけです。そういうふうな選挙というのは実は一番どういう選挙制度が力を発揮するかというと小選挙区制ですね。そうすると私はそれほど自民党が負けるというのは、今はまだそうではないんじゃないかと思っています。

それからもう一つやはり自公保連合というのがいかがわしい。つまり公明党=創価学会票というのが自民党の下駄になっているという事だと思います。公明党は基礎票800万票とします。そうすると300選挙区ですから平均25000票が一選挙区にあるわけです。一般的に小選挙区で通るのが9万票とすれば、この2万5千票の下駄をはいたら勝ち、という構図になってきているんですね。だから選挙の公示日に実は小泉さんは、12区の太田さんという公明党が最重点候補のところに応援に行った。他党の応援に公示日に行くということはどういう党なの、ということです。みんなこの公明党票を当てにしているんです。公明党の2万5千票というのがどれくらいのパワーかといいますと、前回の選挙で当てはめて2万5千票を引いてみましたら、公明党の票が自民党候補に入らなければ、300選挙区のうち自民党が勝てるのは90選挙区なんですね。あと全て民主党が総取りすれば210です。これに公明党をのせたらどうなるかというと自民党は192、民主党は108ということになるわけですから、公明党の800万票が小選挙区で動けば100議席自民党が違う。800万票ですから当然そういうことになるんです。

おもしろいのは福岡二区。山崎拓さんです。あの独特の性癖を持った方(笑)ですが、あの人に公明党が推薦を出ししぶったんです。自民党候補に第二次推薦まで180人まで推薦を出したんですが、なんと山崎さんは推薦もれでした。あそこは公明党票は3万2千あるんですが、何故かというとやはり、あの人はイヤだという学会の人がいるんです。しかし山拓さんは公明党票がないと勝てないんです。ここでは古賀さんというのが民主党の重点候補になってます。これは49歳でして、カリフォルニアに留学してテニスがうまくて一時プロテニスプレイヤーだったという非常に爽やかな青年なんですが、これんがグングンのしている。これに勝つには3万2千票の公明党票を乗せなくてはいけないということです。そこで山拓陣営は、例えば九州電力とか大きな会社にお願いに行く紙に「私は比例区は公明党に投票します」と書いてあるものを回して署名を集めています。つまり小選挙区は山拓、比例区は公明党と書きますという企業ぐるみの選挙です。そういうのを集めてきて公明党本部に持っていって、これだけ集めてきたから是非推薦を下さい、と必死でやっている。一体これはどこの政党の選挙なの?ということです。公明党はそういうのを持ってくればうれしいんです。何故かというと、自動的に名簿ができますから。地方選挙のときはそこをまわればいい。九州電力では自民党に世話になっているから山拓さんまでは入れるけれど、公明党に入れますということで住所を書くことについてはそれは普通は躊躇しますよね。そこまで実は自民党の基礎票が崩れている。そこに公明党の800万票や1000万票が入ってきているということです。だから私は逆にこの800万票の強さということでみると、それほど負けないのじゃないかという根拠になっているんです。

今週日曜の埼玉の参議院補選の結果は皆さんご存知の通り、あの27.5%の低投票率で自民党が勝った。知事選で上田きよしがダブルスコアーで土屋県政の後をとったというのは、公明党が土屋県政を嫌ったから自民党推薦の候補に入れなかった。今回は選挙前だから入れましたということになれば、こう一挙に変わってしまうわけです。それほどこの公明党の800万票というのは恐ろしい勢力になってきている。よく公明党の票というのは棒杭(ボウクイ)というんですが、海中に刺さった棒杭が800万票だと見るわけです。棒クイが出るかどうかという波は投票率です。だから投票率があがれば棒杭は消えるんですが、低投票率になればなるほどこの800万の威力が出てくるんです。この棒杭800、たぶん今いろんな政党のなかで一番確実に持っている票です。ただで動くのは地震と創価学会員だといわれていますけれど、そういうところが今の自民党を支えていく。ここらが、いままでの自民党が強かった時代からちょっと変わってきているというようなことです。小泉さんはもともと公明党に全く何の関心も示さない、むしろ嫌いでした。つまり公明党と接触する機会がなかったんです。彼はまず地元ではもう自分の基盤が固まっているから公明党と競合することはないし、それから彼の地盤の神奈川県議会で彼の子分は3人しかいませんから県連で公明党とどう組むかということは関係ないし、それから国政レベルでいうと党三役を一回もやらないわけですから公明党と接触をいっさいしなかった人ですから公明党に対する認識はない。むしろ嫌いというタイプなんです。別れた奥さんの実家が比較的学会員が多いらしくて、それで嫌いなんだということも言われてる(笑)んです。その人が公明党の党大会にいって池田大作さんの撮った写真に感動したというんですね。これに学会の人は狂喜乱舞をしたわけなんですが、これも仕掛けがあって、公明党が喜ぶのはどういうことかということをわざわざリサーチをしています。草川さんという公明党の議員がたまたま官邸に来たときに小泉さんが「公明党のみなさんが喜ぶお話しって何でしょうか」といういうと「それは名誉会長の話ですよ」と、「写真でも俳句でもなんでもいいですから」という。「なにかないでしょうか」というと「いい写真がありますよ」と。あんな気配りのない人がそこまでやるということが、やはりこの選挙のなかで効いてくるとうところに、今予測されている「民主党が勝つ」という話とは違う潮の流れがあるような気がします。

さきほどの棒杭理論が成立するかどうかというのは投票率です。これは朝日の調査なんですが「投票したらどこに入れますか」という問いには3割が自民党に入れます。2割が民主党に入れます。4割がまだ決めていません。この4割がいわゆる無党派層という人達なんですが、この無党派層のなかでだいたい15%ぐらいがかなり関心の高い無党派層です。、この15%のうちの半分の7%の人が投票にいけば一挙に政界再編だと思います。前回の衆院選が62%だったんですが、これに7%のると69になる。7%というのは日本の有権者が1億人ですから700万人、つまりこれで学会票を飲んじゃうということです。よく我々は2%ルールというのですが、投票日の2日前に有権者が2%動くことによってガラッと変わる。最終的にやはりどう投票率をあげていくかということです。埼玉の補選のような結果として民主党が勝つという楽観論はちょっとやめたほうがいいな、と思います。

自民党はやはり55年以降づっと政権をとってきたという意味での手練手管でははるかにすごいわけですから、知恵とか底力についてはあなどれない。民主党の人達に聞くと世論調査なんかが良かったりするもんですから「いけ、いけ」なんて言ってますが、そうでもない。引き締めて投票にいかないと何のことはないというふうになってしまう訳です。

では選挙後はどうなるかという話です。

菅さんも小澤さんも200議席というようなことを言ってますが、これはハッキリいって無理です。本音ベースでいうと25議席以上のせれば大勝利ということだと思います。民主党の幹部が考えているのはこれで勢いをつけて来年の7月につないでいく。もう一回衆議院の解散に追い込むという、つまりホップ、ステップ、ジャンプの最初のホップがともかく合併効果も含めて20議席か30議席とっていけばいいムードが出てくるということです。そういう意味で掛け値なしの獲得目標は私は30議席プラス5とか、そのくらいの数字で読んでいるだろうなというふうに思います。

まだ始まったばかりなのでアバウトの話になりますが300議席のうち150議席は自民党が固めたと見ています。50議席を民主党が固めた。あと残りの100議席がどっちにいくかということですが、この内さらに50議席は前回選挙の自民対民主・自由の票を比例の票であてはめると、自民党か民主党です。これは小選挙区ですからこれにあと比例区の180がのってくる。私は、民主党は137から30のばすとこれは来年の7月に「押せ、押せ」のムードになってくるとと思います。それで次の衆院選で追い込んで初めて政権交代ということだろうと思います。

では負けた場合、1議席でも2議席でも減らした場合、つまり合併効果はないし民主党のマニフェストも国民に浸透しなかったということになった場合はどうなるかというと、私はこの段階で民主党は終わりだと思っています。なぜかというと、今、小澤さんは一兵卒ということでじっとしています。一兵卒というんですがこんなに睨みのきかせた一兵卒はないわけで「代表取締役一兵卒」(笑)という名前をつけているんですけれど、この人がもし選挙で議席減になった場合には確実に執行部にのりこんできます。来年の7月までの選挙の立て直しをやろうということになります。小澤さんの知恵袋といわれている平野さんとこの前飲んで、「ホントにこんなにおとなしくしているの?」という話をしたら「ぼくらは30人だから・・」ということでしたが、「どうすんの、負けたら」と聞いたら「それは乗り込むしかないでしょ」という話を途端にはじめました。まあ、なるほどと思いましたが、「民主党って学級崩壊党じゃん」というんですね。「ぼくら体育会派だからね」と。新進党からづっと小澤さんのやんちゃについてきて200数十人からついに30人になったという、これは「民主党と合併するなんてボクは前日聞いたぐらいだ」と、「いいも悪いもない、これでいくというのは体育会じゃないの」「学級崩壊党をなおすのはぼくらの仕事でしょ」と言ってました。菅代表で政権交代をやるという勢いがでているときには一兵卒でいくと思うんですが、潮が引いてきてもう一回陣形を組み直すということになったときはハッキリいって、菅が組織の立て直しといっても敗北した党首が何を言うか、という話になってくる。そういう意味では菅さんにとって正念場にきている。負ければ小澤さんが乗り込んでくる。乗り込んでくることによって旧社会党の人達がイヤだというし、それから新進党とうんざりするぐらい小澤さんにイヤなめに合わされた羽田さんとかという旧太陽とか旧新進党からきた人達というのはすごいアレルギーがありますんで、そうすると民主党というのは小澤民主党になってくるという感じです。

逆に自民党が負けた場合、241から20議席減らして220をきった段階で私は小泉政権は危険水域に入ると思っています。総裁選で再選された夜に青木さんと森さんと小泉さんがメシを食ったときに青木さんが「私はあんたの改革路線を支持して入れたんじゃないんだからな」と言って、小泉さんは「それはそうだな、ハッハッハ」と笑ったと言うんですね。つまり選挙の顔として小泉さんは立っているわけです。それがダメであれば、今一番力を持っている青木さんが、あの人は参議院ですから来年の7月の参議院で過半数を自民党でとるのが悲願の人ですから、小泉では勝てんわね、という話になってくれば動きが出てくる。

もう一つ非常に不気味な話しですが、山崎拓さんのところと加藤紘一さんのところが、合わせて42,3ありますが今永田町で秘密の選対本部をつくりました。選挙が終わったあとにこの二つの派閥は合流します。合流するんですが、この旗頭というのが反経世会、反森派です。だから今の主流派に対して特に山崎拓さんははらわたが煮えくりかえる思いです。女性問題スキャンダルは自分で撒いた種なんですが、その副総裁に棚上げされた。小泉さんとは盟友のはずなんですが、それを副総裁に棚上げして安部晋太郎が人気が出るという、それはやはりはらわたが煮えくりかえる思いがあって、小泉に裏切られたという気もあるし、実際は青木が首を切れという話しだったわけですが、それに対する怨念というものがある。もう一つは、ひょっとしたら自分は選挙で落ちるかも知れない。そうすると自分の派閥を誰か束ねて欲しいと、加藤さんは確実に通ってきますから、そういうことで投票後にこの二つは合流するわけです。

この新派閥と亀井さんの派閥は反主流派です。亀井さんはもう二回総裁選で煮え湯を飲まされています。それから亀井派の親分の中曽根さんはついに首を切られるという、ここも怨念の塊りのようになっていますから、小泉さんが20議席減らした段階で反小泉の人達が騒ぎ出す。そうなってくると党内は永田町でいう波乱政局ということになってくるので、これは小泉さんもたんだろうということになってくるんです。つまり来年の7月の参院選にむけて大混乱がはじまってくる。

そうなると実はもう一つの勢力が出てくるのが石原新党です。小泉さんが議席を減らして自民党の中がガタガタになって来年の参院選挙も負けるかも知れない、となった段階で石原慎太郎は一挙に新党を立ち上げるだろうと思っています。石原さんは非常にある意味では高い集票能力を持つ人ですから、新党ができると私は40議席ぐらい持つというふうに思っています。これはどういう計算かと言いますと、今年の4月、石原慎太郎さんが都知事選で308万票とりました。この308万票を東京の比例区で当てはめていくと、なんと12人通す力を持っているんです。知事選と衆院選はもちろん違いますけども、石原さんの308万票というのは衆議院の比例区の12人分の力があるわけなんです。そうすると慎太郎の下駄をはいて通っていきたいというひとが実は非常に多いわけです。今回、地方の選挙で長老の人達が出ていて世代交代ができない、地方の県会議員が選挙に出たくても小選挙区だから出られないという人達がいます。それから、今回引退したのが25人いるんですが、このうち11人は自分の子供か娘婿を出しています。ここでは世襲制は許さんといって自民党の県議は今、無派閥で出ています。この11人のうち10人は無派閥の自民党県議をぶつけられています。つまり、自民党が小選挙区で居座っているおかげで国政に出られない人がいっぱいいるわけです。その人達が石原新党で一挙に出てくるという構図なんです。

それからもう一つは徳田虎雄さんの自由連合です。ここは石原さんの金蔓です。それから民主党から一部合流する。ハッキリいってそれは鳩山由紀夫さんのグループです。鳩山由起夫さんは石原新党に乗る気です。6月14日に石原慎太郎さん鳩山由起夫さん、それから徳田虎雄、もう一人国会議員で新党の話しをしています。最初は小澤批判を慎太郎さんと由起夫さんが盛り上がり、これはやっぱり新しい潮流をつくらなければいけないという話しになって、そのときに慎太郎さんが「石原新党をつくるにはチャンスがふたつある」と、「秋の総裁選と来年の参議院選だ」と「新党を立ち上げるか見極めるのは9月の自民党の総裁選で小泉さんがどれくらい取るかなんだ」という話しをしているわけなんです。これには余談がありまして、この会議が終わったあとに由起夫さんが是非こんどは弟の邦夫と会ってくれ、と。「最近兄弟の仲がよくなっているんで是非会ってくださいね」という話しをしている。その話しがあったあと慎太郎さんが徳田さんに「あの兄弟、何考えているんだ」(笑)という話しです。つまり石原さんが新党を立ち上げたあと、都知事のポストが空いたところへ邦夫さんを据えようという鳩山家の利害がグッと出てきたということがありまして、このへんはさすが政治家だなぁと思います。いずれにしても鳩山由起夫さん、今民主党の中ではすっかり気持ちが裏返ってしまってるわけで、その会合のあとから彼は名刺に民主党という字を入れなくなってしまったんですね。「衆議院議員鳩山由起夫」しか書いていない。今政権交代研究会というのを由起夫さんとやってますが、民主党で21人入っています。半分ぐらいは由起夫さんについていくかなと。

もし、自民党が今度の選挙で210ぐらいになったとしますと、もちろん自公保で過半数は持っているわけなんですが、党内からは亀井さんとか山拓派が「おかしいじゃないか」と言い出すと混乱がはじまってくる、民主党が「押せ、押せ」になってくる、すると来年の参院選の土壇場で例によって石原慎太郎さんがどーんと後出しででてくるということになれば、私はけっこうその段階でうまく民主党が次ぎの議席を伸ばすかたちで配分をしていけば、1,2年後にはようやく民主党政権ができるのではないかと、かなり希望的観測も入れてなんですが、思っています。

私は自民党というのは不気味な組織だからなかなか惨敗はしないと思ってますが、ネガティブな要素を集めていってシュミレーションしてみると実は民主党は来年か再来年には政権交代ができるのではないかと見ています。それもこれも占うのは、今度の選挙で我々が少なくとも投票率を上げることです。余談でいつも言うんですが、政権交代したとしてもそんなに世の中が社会主義革命がおこるようにはならないわけなんです。しかし、一点だけ、政権交代すべきだというのは政官財の癒着ほど我々の税金を無駄にしているものはないし、汚職や犯罪行為というのをやるというのはないわけですから、少なくともそういうものをぶち切っていくのは政権交代しかないだろう。鈴木宗男のことを調べていて一連の疑獄事件といいますか、91年から自民党で当選して今まで東京地検に捕まった人が13人いるんです。つまり1年に一人ずつが逮捕されているわけです。少ないと思われるかもしれませんが、91年から自民党で立候補して当選した人がだいたい500人です。皆さんの携帯には500人登録できると思いますが、このなかで10人以上逮捕者がいるというひとは多分いない。30年前はいっぱいいたと思いますが(笑)、10人以上いるというのは多分暴力団しかないと思います。つまり暴力団と自民党は一緒なんです。その人達に予算を任せているということです。これは政権を交代しないからこういうことになるんです。冷戦構造が終わってから政権交代しなかった国は二つしかないんですが、イタリアと日本だけです。そうすると金正日の独裁を笑えないということですね。昔の皆さんのように革命を起こそうというわけではないわけです。軽々と政権交代をし、ダメならダメでかえればいいということなんですが、そのようなチャンスというのはなかなか巡ってこなかったけども今回は芽が出てきた。芽が出て来年とか再来年につながるような選挙になりそうだということで、少しワクワクしてるというう話しです。いくつがスケッチ風に話しましたが、とりあえずここで区切らせていただきます。