Just like wating for the weekend
-side Kuroko-
窓を叩く雨音に目を覚まし外を見遣れば、土砂降りの雨。ただでさえ、雨は人を重い気分にさせると言うのに、週の初めの月曜日がこの天気では、誰もがさぞかし滅入ってしまうことだろう。
けれど黒子は顔を洗って制服に着替えると、いそいそと学校へ向かう。
黒子は何も、雨が好きな訳ではない。靴やズボンの裾は濡れるし、身体だってダルイ。だからこんな日には、本当は部屋で心行くまで本を読んでいたいと思う。
けれど今は違う。まるで週末を待つような思いで月曜の朝を待ちわびる。試験期間で部活が強制的に休みになってしまった今週は尚更だ。彼に会える、そう思うだけで、憂鬱な気分など吹き飛んでしまう。
通りには鬱々とした表情で歩く人々。中には雨に文句を言いつつ歩いている女子の集団も。
そんな傘の群の間を、黒子は軽い足取りで擦り抜けて行く。
すれば前方に見えてくる、背の高い後ろ姿。特徴的な赤い髪は傘に隠れて見えないけれど。
「おはようございます、火神くん。凄い雨ですね。」
黒子は足を速めると、その背中に声をかけた。
土砂降りの月曜の朝だって、憂鬱な気分になんかならない。
だって、ボクの太陽に会える日なのだから。
-side Kagami-
アラームを止め重い瞼を持ち上げれば、部屋の中は薄暗い。ベッド脇にある窓から外を見れば、雲に覆われた空からは、雨が激しく降っている。
重い雲が人の心にもずっしりとのしかかる気分になりそうな空だ。けれど火神は億劫な素振りも見せず、朝食を掻き込む。
火神だって、雨はあまり好きではない。バスケは屋内スポーツだからあまり関係ないように思えるけれど、窓やドアを閉め切っているので、酷く蒸し蒸しするし、湿気の所為で床やボールの感触もいつもと違っている。生憎、雨に風情を感じるなんて心は持ち合わせていないので、続く長雨など、早く終われば良いのにと思う方だ。
しかし、今は激しく叩き付ける雨も気にならない。漸く訪れた月曜の朝、火神は家の前にできていた大きな水溜まりを軽いステップで飛び越える。
通学路には彩とりどりの傘の群。晴れた日ならば明るい声が飛び交う通りも、今日は重く沈んでいる。
けれどそんな空気にも、火神の気分は溶け込まない。くるりと傘を回し、雫など飛ばしてみる。
と。
「おはようございます、火神くん。凄い雨ですね。」
傘に当たる雨音に、ともすれば掻き消されてしまいそうな声が、けれど火神の耳にはしっかりと届いて。
火神は歩みを緩めて振り返ると、傘の下に広がる蒼空に目を眇めた。
毎日が土砂降りだって、構わない。
何故なら、傘の下ではオレの蒼空が微笑んでいるから。