学校の最寄り駅近く、コンビニの前で電車を待つ。

 とは言っても、駅から見て、学校とは反対側に十数メートル。改札口の様子が辛うじて窺える位置だ。そこで購入したパンを齧りつつ、駅を出入りする人々を眺める。

 滑り込んで来る電車。それが再び駅を離れた頃、駅を出て散って行く人の流れの中に目的の人物を認めて、火神は残りを口に放り込むと大股に歩き出す。

「ウス。」

「おはようございます。」

 追いついたそいつの水色の頭をくしゃり。速度を落とし、黒子と並んで学校へと向かう。

 偶然を装って。

 こんな待ち伏せじみた行為、我ながらどうかと思うけれども、そうまでしてでも一緒にいたいのだ。少しでも長く。

 クラスは同じで席は前後。部活も一緒で、一日のそのほとんどを近くにいると言うのに、それでもまだ足りないだなんて。

「どんだけハマってんだっつーの…」

 そんな自分に呆れつつ、今日も今日とて、火神は並んで登校するささやかな幸せを噛み締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます。」

「っっ?! っぐ、げっほげほごほっ、っ!!」

 ある朝。いつも通りにコンビニでパンを買い、店先で食べ始めるも、大きめのそれの半分ほどを一口に頬張ったところでかけられた声に、欠片を思い切り喉に詰まらせた。盛大に咽せる脇から「大丈夫ですか?」と差し出された牛乳を受け取り流し込んで、火神は大きく息を吐く。

「って! オマエ、どっから?! つか、いきなり出てくんな!」

「店内にいましたよ。」

 が、落ち着いている場合ではない。いつもの電車はまだ着いていない。なのに何故ここに黒子がいるのか。

 ギリギリと頭を掴めば、先刻から店内にいたらしい。ただでさえ影が薄い上に完全に気を抜いていた為、全く気づいていなかった。しかしたった今店を出て来たところだし、いつも待っていることには気づかれてはいないだろうと思いつつ、手を離す。

「で、何でんなとこいるんだよ。」

「いつも火神くんが待ってくれているので、たまにはボクが待っていようかと。」

「?!!」

 コンビニなら駅のすぐ隣にもある。それを十数メートルとは言え、学校とは反対側のコンビニへわざわざ寄るなど、マジバのシェイクのように何かこだわりのPB商品でもあるのかと問えば、黒子はいつもの朝が偶然ではないことにも疾うに気づいていたよう。あたふたする火神に、もう少し自分が目立つと言うことを自覚した方が良いですよと、少々呆れた目を向ける。

 しかし。

「でも…好きな人を待つと言うのは、何だか凄く気恥ずかしいものですね。」

 ふと表情を緩めた黒子は、そう言うとほんのりと頬を染め、照れ臭そうな笑みを浮かべて。

 赤くなった顔を隠すように、火神は頭を抱えしゃがみ込んだ。

 

 

 

「火神くん?」
「…何でもねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

Honey Morning

 

 

 

 

 

 

 

(可愛すぎんだろ、ちくしょう!!)