そんな、昼下がり

 

 

 

 

 

 

 

 ふ、わわわわわ…

 

 隣で漏れた大欠伸に、動物みたいな人だなぁと思う。

 バスケの時の、特に強い相手と対峙した時の鋭い瞳は、獲物を狙う肉食獣。そう言えば、監督が彼の第一印象を『野生の虎』と表していた。

 ならば今の火神は、満腹になった虎か。

 そう思ったら、何だか可笑しくなってくすりと笑う。

「…んだよ?」

「何でもありませんよ。」

 当然、火神は訝しげな視線を寄越すが素知らぬ顔。眉間に皺寄せ睨むその顔を見ても、今は可愛く思えてしまうから困ったものだ。弛みそうになる顔を隠すように、黒子は手元の本に視線を落とす。

 が。

「あー…ダメだ。眠ぃ。」

「え、ちょっ…!」

 次の瞬間、目を見開いた。寝る、と宣言した火神がゴロリと横になったのだ。

 それは一向に構わないのだが、頭は何故か黒子の膝の上。片目を開けて焦る黒子をちらりとだけ見上げると、そのまますうっと寝入ってしまう。

「……重いんですけど…」

 その口元が少し笑っている気がして口惜しい。けれど、起こすことなく、黒子は火神の髪に触れる。

「あ…予鈴…」

 暫くそうしていると、校舎から予鈴が響いて来たけれど。

 どうせ自分はいなくても気づかれないだろうしと、黒子はそのまま静かに火神の髪を撫で続けていた。

 

 普段は決して届かない彼の髪に触れられるのは、とても貴重なことなのだ。