微熱

 

 

 

 

 

 

 

「おす。」

「………おはようございます。」

 マフラーを巻き直しながら正門を潜ったら、後ろから頭を鷲掴まれた。そのままくしゃくしゃと髪を掻き回し離れて行く大きな手を横目に睨んで、黒子は乱された髪を指を通して整える。

「髪を掻き回すのは止めてくださいって言ってるのに…」

「あー…何かテメエの髪…猫っ毛っつーのか? 触り心地良いんだよな。」

 そうしながら恨み言を呟くも、再び伸びて来て髪を掻き乱す手。それが、最近凄く嫌だと思う。

 別に女の子じゃないのだから、少々髪が乱れたところで気にはならない。勿論、火神に触れられるのが嫌だと言う訳でもない。

 ただ、触れられる度に早くなる鼓動や、溜息ひとつでその行動を許してしまっている自分に気づいてしまうのが嫌なのだ。

「ここは日本ですから、過剰なスキンシップは誤解を招きますよ?」

「…誤解じゃねぇって言ったら?」

「………は?」

 アメリカとは違うのだからと、部室のドアに手をかけながら言えば、火神は振り返った黒子の耳元に顔を寄せる。

 そうして。

「テメエだけだぜ? 触りてぇって思うのは。」

「ばっっ…っ!! バカですか、あんたはっっ!!」

 低く囁かれた言葉に怒鳴り返すと、黒子は逃げ込むように部室に入り、力一杯ドアを閉めた。

 

 

 

「………どした、黒子?」
 珍しい黒子の怒声と乱暴な動作に、中にいた部員がみんな目を丸くしていた。

 

 

 

 

 

——頭、くらくらする…

 胸の奥で燻っていた微熱は、現在急上昇中。