明日の朝日が昇ったら

 

 

 

 

 

 

 

 例えば。

 普段、表情に乏しいヤツが不意に笑うとドキリとする。これはきっと、そういうものだと思っている。

「火神くんは本当にバスケが好きですね。」

「テメエだって相当だろ。」

 店で鉢合わせるばかりか、うっかり同席してしまうのももう何度目か。結局バーガーを食べ尽くすまでそのまま過ごし、一緒に店を出て家路を辿る。

 そうしながら話すのは、やはりバスケのことばかりで。アメリカにいた頃のことなど話していると、じっと聞いていた黒子がしみじみと呟く。

 その口元が僅かに弧を描いていることに鼓動が跳ねてしまうのは、普段はその表情に顕著な変化が見られないからだ。

 そう、内心で己にそう言い聞かせ、才能ねぇって言われても引かなかったくせにと返す。

 すれば増々深まる笑み。

「はい。好きです。」

 そうして紡がれた言葉に、一層鼓動が跳ねたことになど気づきたくなかった。けれど忙しなく動き出した心臓は大量に血液を送り出し、耳がじわじわと熱くなってくる。

「じゃあ、ボクはこっちですので。」

「あ、おう。」

 夜で良かった、などと考えていたら、いつの間にか分かれ道に差しかかっていたらしい。また明日、と、頭を下げて帰って行く後ろ姿をぼんやりと見送る。

 しかし。

「火神くんと、火神くんとするバスケが一番好きです。」

 ふと立ち止まり振り返った黒子の言葉に、飛び出してしまうかと思う程、心臓が大きく跳ねて。

「…明日会ったら、ただじゃおかねぇ…っ!」

 既に誰もいない路地に向かってどうにかそれだけ絞り出すと、火神は弛む顔を必死に抑えながら、踵を返し歩き出した。