「普通に考えて、無理ですよね。」
部屋でDVDを見つつ、黒子を後ろから足の間に抱え込んだら、急にくすくすと笑い出した。
何のことかと思えば、地区大会決勝の日の帰りのこと。そういやテメエあの時はよくも、と抱え込んだ腕に力を込めたが、黒子はもう時効ですよと益々楽しそうに笑う。
「だって、無理に決まってるじゃないですか。」
「だったら、最初から無理だって言えよ。つーか、そもそも、ジャンケンに参加すんな。」
確かに、黒子が自分を背負うなんて無理だろう。何せこの体格差。今だって、黒子は自分の腕にすっぽりと収まっている。
「他の人が火神くんに触るのが嫌だったんです。」
「黒子…」
「って言ったら、喜びますかね。」
柔らかな髪を掻き混ぜながら言えば、ちょっと拗ねたように尖る口。じんとしてそれを啄ばもうとするも、続いた言葉にがくりと項垂れ、もう一度きつく両腕で締め上げる。
「いたたた! 冗談ですよ!」
「テメエ、冗談苦手だって言ってたよな。」
すればさすがに苦しいらしく、黒子は逃れようとじたばたもがいて。それを利用し床に押し倒すと、火神は押さえ込むようにその上に覆い被さる。
「覚悟はできてるよな?」
「えーと………せめて、ベッドでお願いします。」
ニヤリと口角を吊り上げれば、視線を彷徨わせた黒子は、けれどすぐに観念した様に目を伏せて。
喉を鳴らして笑いながら、火神は黒子を抱き上げ柔らかくベッドに横たえた。
「でも、火神くんが他の人にこういう風に触れるのが嫌なのは本当ですよ?」
「オマエだけだっつの。」