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第3章怒涛の乗鞍・御岳・中央アルプス編 2000年8月3日〜8月11日
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旅の理由 地図とルート 食糧と装備 ポンポコ・ムンクの自己紹介
■白骨温泉で白骨になるほど温泉三昧だ!■(快楽登山22日目)
8月3日(木) 現在地=乗鞍岳付近
昨晩はビール2缶にチューハイ1缶、水割り2杯も飲んだんだって! しかもきょうは白骨温泉で高山以来(3日ぶり)の入浴。しかもいい温泉でもう最高!!
というポンポコからの電話がかかってきたのは、午後5時15分ごろだった。今朝は上高地のキャンプ場から乗鞍に向かうというスケジュール。もちろん乗り物は使わない。すべて徒歩だ。途中、大正池のほとりを通りかかったポンポコさん。このとき避暑にきていた夏休み中の子供に指をさされてしまったらしい。「あのひと何であんな格好してるの?」。リゾート気分で散策しているところに、真っ黒に日に焼けた巨大なザックを背負った怪しいげな男がズンズン歩いていたら、子供の目から見ても異様でしょう。
大丈夫だよ、ボク。この人はポンポコ浦澤さんといって、ひとりで日本縦断の山登りをしているおじさんなんだよ。おじさんは本当は、「無印良品南乗鞍キャンプ場」に泊まろうと思っているけど、利用料が2000円とは高い! といって、野営をしようかなあと思っているんだって。良い子はおじさんの真似しちゃだめだからね。
(ポンポコ浦澤のコメント)
きょうも10時間は歩いたかな。でも途中、身体がとろけるほど心地よい温泉につかって極楽、極楽。きょうは天気もよかったし、なかなか順調な1日だったよ。
■ポンポコ、雷におちょくられる■(快楽登山23日目)
8月4日(金) 現在地=乗鞍岳の麓
午後3時5分、私のケータイが鳴った。出てみると「いま乗鞍山頂でーす」という一言だけで電波が途切れてしまった。しかし、便利なものですなあケータイって。3000m級の山の頂から実況中継できるのですから。
それから2時間後こんどは「疲れたー」という電話が。きょうの乗鞍のお天気は不安定。ヒョウが降ったりカミナリが鳴ったり雨がパラついたり。山頂から下山を始めたときも、カミナリが迫ってきていて2時間ずっと走って山を下りていたらしい。まるでカミナリにからかわれていたみたいだったってポンポコは言っていた。その上、ゴツゴツした溶岩みたいな地形に足はとられるし、カミナリをやり過ごそうにも隠れる場所もない。
登山道にはポンポコをおびえさせたものがもうひとつあった。1kmおきぐらいの間隔で道の端っこに道祖神が祭られていたんだって。それが不気味で仕方なかったと嘆く。この弱虫! でもひとりで歩いているとちょっとコワイかも。
きょうの寝場所は新築のログハウス風山小屋だとか。ポンポコ以外にはまた誰もいない孤独な一晩をそこで過ごすらしい。「夏山シーズンで登山者が多いかと思ったのに、どうして小屋に泊まる人がいないんだろう?」と聞くと、「だって乗鞍なんて9合目まで車で登って、あとはスニーカーでも登れるんだぜ。みんな日帰りだから山小屋なんか使わないよ」という。ふーん、そういうものなのか、と山の素人であるムンクは納得したのでした。
(ポンポコ浦澤のコメント)
乗鞍岳に至る道中、女の子が喜びそうなペンションが立ち並んでいた。あーあ、オレもたまにはあんなところに泊まってみてー。ペンションには髭面の無口な主人がいて、香り高いコーヒーを入れてくれるわけ。朝飯は焼き立てのパンで、「このジャムは庭で取れた木苺で作ったんです。このバターは親戚の牧場のものです。よかったら絞りたての牛乳もどうぞ」なんて髭の主人の奥さんがすすめてくれる。あの中ではそんな世界が展開されているんだよ、きっと。
来週ムンクと落ち合うときには、こんなペンションに泊まりたいねえ。
とりあえずきょうは木の香りがする真新しい山小屋で大の字になって寝てやる! やれやれ、テントを張らなくて済むだけでもありがたい。きょうも10時間は歩いたからな。
■きたなくて、ゴメンナサイ■(快楽登山24日目)
8月5日(土) 現在地=乗鞍と御岳の間にある高根村
ポンポコからの電話は午前9時半ごろにあった。「いま、無印良品南乗鞍キャンプ場に到着しました。もう、いたたまれんよ、オレは」「え? 家族連れやカップルばっかりだから?」「それもあるけど、ここの施設は立派でさあ、並んでいるテントは≪建物≫ってカンジなんだよ。恥ずかしくてここでオレのテントは張れないよ。それにオレみたいにきたない格好している人はいないし……。こんなところには泊まれない。早く出て、ダムにでも行くよ」。
都会の生活をそのまま移したような清潔で充実した施設のキャンプ場は、”野生児”ポンポコにとっては、ひどく居心地が悪いらしい。「オマエがこの週末も会いにきてくれたら、一緒にキャンプ場の中でカヌーしたり釣りでもしたのに」とぼやく。資料では、このキャンプ場には露天風呂もコインランドリーもあるらしい。
結局、ポンポコはコインランドリーを利用して、そそくさとキャンプ場をあとにした。しかし、それ以後も身ギレイな観光客にたくさん出会うことになる。付近の日和田高原でお祭があるためだ。「ここなら人も少なかろう」と野営するためにやってきた「高根第一ダム」にも人が。「観光客がいるからテントが張れないよお。だって変に正義感の強い人に『ここはキャンプ禁止です』なんて言われたらイヤだし。通報でもされたら困る」とポンポコさん。以外と心配性なのである。
(ポンポコ浦澤のコメント)
トイレのある建物は「サニタリー棟」だって。うーん、無印良品キャンプ場はキレイすぎて立派過ぎてオレにはどうも気後れしちゃうよ。
せっかくひとけのいない場所を選んだつもりだったのに、ダムにきても人通りが多い。早くいなくなってくれないかなー。
うわーー! ゲジゲジが出た! さっきも見かけたんだよな。このあたりはゲジゲジの巣窟かも。ゲジゲジって見た目の気持ち悪さも苦手だし、刺されると相当痛いらしいから気をつけないとな。さっき外人が「モンキー、モンキー」と叫んでいたから、どうやらサルも出るらしいな。
■おーいポンポコさん、無事ですか?■(快楽登山25日目)
8月6日(日) 現在地=御岳のはず
ポンポコからの電話を朝からずっと待っていたのに、電話のベルは鳴らず……。きょうは御岳に登る予定だと思うのだが。音信不通の日は心配で仕方ない。「日本縦断激痩ダイエット登山」も中盤にさしかかり、疲れと慣れからケガをするのではないか、と不安はつのる。しかも、きのうの深夜0時50分ごろ、私のけータイに雑音だらけの無言電話があったのだ。「まさかポンポコのSOSでは」とついマイナス志向になる。
あーあ、待つ身はつらいよ。あしたになれば、「オレ、オレ」って元気な声で電話が入るに違いないから、美味しいものでも食べてグッスリ寝ちゃおう!
[ポンポコ浦澤の登山中の写真を大公開!]
先週、ポンポコと飛騨高山で落ち合ったとき彼が登山中に撮った写真を預かってきました。出発した7月13日から7月30日までの記録の一部をご紹介! 併せて預かってきた登山日記からの抜粋とともにご覧下さい。
尚、「ポンポコ浦澤の登山日記」は、全行程終了後、このホームページで公開いたします。
”物書き”の彼は今回の「快楽登山」で、何を得、何を感じ取ったか。どうぞお楽しみに!
2000年7月22日(土) 到達地点=池ノ平の山小屋 撮影=ポンポコ浦澤
「極楽じゃ」
「きょうで3日連続の露天風呂だ。でも、きのう、おとといのとはちょっと違うぞ。きょうのは剣岳を
目前にした大展望の五右衛門風呂だあ。地上2000mの五右衛門風呂。山に囲まれた露天風呂
もいいけど、山を見下ろす五右衛門風呂はもっと最高だね。目の前に広がる絶景、ほのかにただよ
ってくる薪の焦げるニオイ。風呂から上がれば、黒部の谷から吹き上げてくる豪快な風がタオルの
かわりに、仁王立ちのオレをさっと乾かす。こりゃ、快楽だわ。
ここはどんなにがんばったって、人里からはまる2日はかかる山の上。そんなところで風呂に入れ
るだけでもありがたいのに、この絶景、この風、この薪の香りである」
(ポンポコ浦澤の「登山日記」より)
写真左上=池ノ平にある標高2000mにある山小屋の五右衛門風呂。写真右上=あまりの心地よさと絶景に満足の
笑みがこぼれる。五右衛門風呂の中で自分を写すポンポコ浦澤。
■「もうひとりでは行かせない!」■(快楽登山26日目)
8月7日(月) 現在地=?
ムンクはきょう、ほとんど仕事が手につかなかった。ひとりで食べるランチはまるで味がしなかった。いつポンポコから電話が入るか、いまごろ無事に登山を続けているのか心配で仕方なかったのだ。
結局、2日連続でポンポコからは電話がない。御岳付近ならメジャーなルートだから、途中に公衆電話ぐらいないのか? 標高が高いのだからケータイの電波が通りやすいということはないのか?
いままででも、3日間音信不通という日があった。もちろんそのときも、ポンポコはぴんぴんしており、ただ電話が通じないところにいただけである。今回もそうに違いない、とは思うが……。ただ待つしかないのはつらい。
よーし、こんどポンポコがこんな冒険の旅に出るといったら、私もついていくからね!
[ポンポコ浦澤の登山中の写真を大公開!]
■2000年7月21日(金) 撮影地点=欅平から阿曽原温泉に向かう道 撮影=ポンポコ浦澤
「欅平から阿曽原温泉まで水平道を歩く。6時間緊張のしっぱなしだ。よくこんなところに道を
つけたものだ。ふつうなら、2、3mの滑落ですむが、ここでは即、2、300mの滑落につなが
り、THE ENDだ。
戦前、関西電力がつけた道だが、さぞ多くの犠牲が出たことだろう。オレのおじいちゃんもき
っとここを歩いて、送電線の保守とかをしていたのだろう。その同じ道を歩いていると思うと妙
な感じがした。顔を覚えていないが…、いざとなったら、おじいちゃんが助けてくれるだろうと、
後半は開き直って、道だけ見て歩いた」
(ポンポコ浦澤の登山日記より)
■ムンクの食欲倍増■(快楽登山27日目)
8月8日(火) 現在地=木曽福島
あー、きょうのお昼ご飯はおいしかった。ホテルのレストランで和定食をパクついて満足、満足。きのうのランチタイムは、「ポンポコが遭難したとしたら、どこに通報して私はどこを探せばいいのか」と考え込んで、ほとんど食欲もなかったのに……。だってポンポコから連絡のなかった2日間、連続して雑音だらけの無言電話が私のケータイに入ったのだ。そのうち、1回は電話口から少し離れたところで、コツコツコツコツと何かを叩く音がしていた。てっきり私は「ポンポコからのSOSかも」ととんでもない想像が膨らんでいったのだ。
それがけさ、待ちに待ったポンポコから無事を知らせる電話。胸のつかえが解けて食欲も倍増してしまったようだ。
ご心配おかけしまいた。本日、午前6時50分、ポンポコから「おーい、6時45分に御岳に登頂しました」と電話が! 2日ぶりに元気な声を聞き、どれだけホッとしたことか。ポンポコの携帯の調子が悪く、きょう御岳にある公衆電話にたどりつくまで、連絡ができなかったのだという。
さて、連絡のなかった空白の2日間ポンポコはどうしていたのか。乗鞍岳を下山してから、2日間ほど里を歩き、きのうの晩は御岳山頂近くの避難小屋に泊まり、きょうの早朝に頂に立ったということだ。
きのう一夜を過ごした避難小屋では、富山大学地球物理学科の学生さんとご一緒したらしい。彼はひとりで地震の研究のために1週間も山篭りをしているということで、ポンポコも久しぶりに会話を楽しむことができたようだ。きょうはそのまま下山して、木曽福島でゆっくりするそうだ。
それを聞いてムンクもきょうは大の字になって熟睡できそうだ。
(ポンポコ浦澤のコメント)
御岳は屋久島に負けない、人の手が加えられていない生の自然が残っていて、本当に素晴らしかったよ。ほとんどの観光客があの緑の輝きを見ることなく、ロープーウェイで山頂に登ってしまうなんてもったいないよ。
時間はかかるし、かなりの体力を必要とするけど、御岳の美しさを満喫したかったら、やっぱり麓から一歩一歩登るのがいいんじゃないかな。山頂に至る途中のあの森の美しさ、みんなに見てほしいなあ。
■やばい! 免許が……■(快楽登山28日目)
8月9日(水) 現在地=木曽駒高原
「警察に電話してくれ」。きょうのポンポコからの電話の第一声がこれである。一体何事だ?
問題はポンポコの誕生日だった。彼は8月30日生まれ。今年は運悪く(?)免許の書き換えの年であり、しかし、いまのペースだと相当頑張らないと、誕生日までに帰ってこれそうもないというのだ。それで、誕生日が過ぎても免許の更新ができるなら、もう少しラクなスケジュールが立てられるから、警察に問い合わせてほしいということだった。
「もし、誕生日までに帰らなきゃならないなら、オマエがこっちにきてもかなりハードな日程をこなしてもらわないといけなくなるから」のポンポコのひとことで、私は「そんなのたまらん」とばかりに、仕事そっちのけで電話をかけた。すると、いろんな制約はあるが、6か月以内に失効手続きをすれば、なんとかなりそうだとわかった。ああ、よかった。
実は私のお盆休みを利用して、この週末にはポンポコと2週間ぶりに落ち合うことになっているのだ。落ち合う場所は、長野県伊那市。そこで一泊して、翌日からムンクは山登りに挑戦することになっている。たぶん、仙丈ケ岳を登ることになると思う。もし、免許の書き換えに間に合わせるために、強行スケジュールを組まれたら……。考えるだけでぞっとする。なにしろ私は3000m級の山など登ったことのない山の素人だし、ポンポコのように体力にも恵まれていないのだから。
免許の心配はしなくていいと知り、ポンポコも安心したようす。きょうは木曽駒ケ岳のキャンプ場でひとり(またもやキャンプ場には彼ひとりしかいなかったらしい)で、酒盛りを楽しんだようだ。
(ポンポコ浦澤のコメント)
きょうは何だか疲れたなあ。バスが行き交う単調な道ばかりを歩いたからか。それとも途中のスーパーで酒、馬肉のスモーク、りんごなんかを買いこんだからか? たまには、うまいもん食わないとね。
■ポンポコ、ハエにたかられる■(快楽登山29日目)
8月10日(木) 現在地=木曽駒ケ岳
駒ケ岳の山頂に向かう途中、ポンポコはお湯をわかしてスープを飲むことにした。するとどうだろう。どこからともなく何十匹ものハエが。彼らは何を狙っているのか、ザックにたかるは、ポンポコにへばりつくは。手で追い払うだけでは逃げない。はたかないと飛び去ってはくれないのだ。「ヤツラは普段何を食べてるんだ。オレやザックに止まっても、えさになるものなんかないと思うんだけど。あんなハエの群れに囲まれたのは初めてだ。あー気持ち悪かったよお」。虫の苦手なポンポコは嘆く。
きょうは駒ケ岳登頂後、少し下ったところにあるキャンプ場でテントを張ると言っていた。このキャンプ場には登山者がたくさんいると、ポンポコは喜んでいた。やっぱりひとりで登山していると、人恋しくなるのだろうか。下界では自称「人嫌い」なのに……。
(ポンポコ浦澤のコメント)
北アルプスにくらべて、この辺りの森林限界は高くなってきたような気がする。北アルプスには雪渓があり、標高2000mを過ぎると樹木は見かけられなかったのに、このところ、2500m近くになっても木を目にする。だから山頂近くにもあんなにたくさんハエがいたのかなあ。
ムンクが一緒に登ったら、気持ち悪がるに違いない。だけどこれが自然というもんなんだよ。
■苦闘30日のアカがハエを引き寄せる?■(快楽登山30日目)
8月11日(金) 現在地=木曽駒ケ岳付近のキャンプ地
明日は、いよいよポンポコと2週間ぶりの再会だ。長野県の伊那市で落ち合うことになっているのだが、今回も2週間前同様、私は救援物資をお届けせねばならない。ただえさえ荷物が多いというのに、ポンポコは「布製品とかのニオイとか除菌できるスプレー頼むよ」ですって。ほら、「ファブリーズ」とかいうスプレーね。
それで、ポンポコにまとわりつくハエを撃退しようというのだ。近頃、里におりてきて、『この辺りはハエが多いなあ』と思っていたら、たかられるのは自分だけと気づいたらしい。それを証拠に、きょう一夜を明かすキャンプ場で、コーヒーを飲んでいる他の人たちは涼しい顔をしているのに、タバコを吸っているポンポコのまわりだけに飛び回るハエ。
そろそろ、出発から1ヶ月だもの。ハエにとってはさぞおいしそうなニオイがただよっていることでしょう。うーん、ポンポコに会うのがコワイ。
さて、この続きは→
3000m峰目白押しの山行から感動のゴールまで→勝手に生きろ!南アルプス編
現状写真:これが腑抜けてしまった出発前のポンポコ浦澤のカラダだ!
参考写真:10年前ジーンズが似合う男だった頃のポンポコ浦澤はコッチ!
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