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ガムラン・スマル・プグリンガンとは〜その概略〜
- 1.どういう意味か?
- スマル(semar)とは、スマラ(Semara)神、愛の神様のこと。
プグリンガン(pegulingan)とは「眠っている」の意味。
(これはプラケンパ (Prakempa)というロンタルを解釈したマデ・バンデム氏によります。)
- 現在もっともメジャーな編成のガムランは「ゴン・クビャール(gong kebyar)」と呼ばれていますが、これは20世紀になってできた編成です。スマル・プグリンガンさらに古くから(16世紀?)存在しており、ゴン・グデ(gong gede)やガンブー(gambuh)と同時期の、各地の宮廷芸術が華やかりし頃に盛んだったと言われます。
- ※ガムラン・ゴン・グデ(gamelan gong gede):寺院の祭儀に用いられる大編成のガムラン。古くからの楽器は残存わずかといわれる。
- ※ガムラン・ガンブー(gamelan gambuh):14世紀ごろからあると言われる舞踊劇「ガンブー」に使われるガムラン。座って吹くには大きすぎて上体が反ってしまうくらいに長い縦笛「スリン・ガンブー」主体のもの。
- 2.楽器編成
- トロンポン1、ガンサ偶数台、ジュブラーク2、ジェゴガン2、クンダン2、カジャール1、チェンチェン1、グントオラッグ1、クンプール1、クレントン(クモン)1、スリン複数、グンデル・ランバット2※、グマナッ複数※、ポンガン1※
- ※任意の楽器、または特定のガムランにのみ見られる楽器。
- →詳しくはこちらをご覧下さい(スマルプグリンガンの楽器)。
- 3.音階について
- 総称して「ペロッグpelog」と呼ばれる音階が使用されています(した)。7音で1「オクターブ」になるのですが、実際の曲はそのうちの5音をピックアップしたものを使って作られ、演奏されます。その場合残りの2音も飾りとして使われることがあります。さらに、曲の途中で別の5音の組み合わせに「転調」することもあったようです。
- 5音の音階しか持たない楽器でも「スマルプグリンガン」を自称するガムランはあります。
- 7音の音階を持つ楽器だと明言したい場合は「ガムラン・スマルプグリンガン・サイ・ピトゥ(gamelan semar pegulingan saih pitu)」(長いっ!)と表現されます。サイ・ピトゥとは7音の音階、といった意味になります。対して5音のものはサイ・リモ(saih lima)といいます。
- この7音についてどういう音程を取るかについては、絶対的な基準がありません。ピアノが個体によって音程や音高がむちゃくちゃに異なっていることはまずあり得ませんが、スマル・プグリンガンに限らずガムラン楽器全般について、その個体差(ガムランセットごとの差)は西洋楽器の比ではありません。
- あるガムラン・スマルプグリンガンのガンサという青銅楽器では、7枚の鍵盤の音は、以下のようになっています。
(左から右へ)C# D E F G# A B
ド# レ ミ ファ ソ# ラ シ
- が、また別のセットの同じ楽器は
(左から右へ)E F G A B C D
ミ ファ ソ ラ シ ド レ
- となっていたりしています。
- (音階について、調律についての詳しい話は準備中。)
- 4.奏法〜どうやって弾くのか?
- まず、座っていただきます。 (立って演奏することはありません)
- 金槌のような木製の撥(ばち。パングルという)で青銅の鍵盤を叩くもの、細いすりこぎのような棒で、上にコブのついた鍋を叩くもの、両面太鼓(手で叩く)、吊るしたゴングのコブを、コブのついた棒で叩く、など、基本的に叩き系。(例外もあります)
- 5.どんなときに演奏されたのか?
- 1.王が寝室にいるときに演奏された、とか (愛の神が眠っている、はここから?)
- 2.当初、王の召使い達によって踊られていたレコ(leko)やガンドルン (gandrung)の伴奏に用いられた、とか。
- 3.宮廷がない現在では、やはりお祭りの時に出されたり、 バリ州芸術祭(PKB)に出たりしていますね。
- 6.レパートリ〜どんな曲があるのか
- スマルプグリンガンの曲について、をご覧下さい。
- 7.現存する楽器〜どこにあるのか
- 古い楽器で7音のものはパガン・クロッド(Pagan Kelod@デンパサール)とカマサン(Kamasan@クルンクン)に生き長らえています。5音のものはタガス(Teges)やビノー(Binoh)が有名。CDが出たブサンーアバビ(Besang-Ababi)、サディン(Sading)などにもありますが、これらはいづれも「ガムラン・プレゴンガン」というべき演奏と編成になっています。
- ※ガムラン・プレゴンガン(gamelan pelegongan):レゴン(legong)舞踊の伴奏用に特化した編成のガムラン。(7音の)スマル・プグリンガンと共通する楽器やレパートリーが多いので、実際プレゴンガンであってもこれを自称「スマル・プグリンガン」と呼ぶ例はあるようだ。逆に7音のスマルプグリンガンをプレゴンガンと呼ぶ例は無い。
Shigeki 'Pong' Shiroshima (c)
2001.11.04.初版
2006.8.4.文言や表記の修正。