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  理学部応用数学科の大学院に在籍する彼女の専攻は暗号の基礎理論である。研究室に着くと高子はさっさく自分の端末を立ち上げ、論文用の資料の作成を開始した。ドクター論文の提出まではもう2カ月を切っている。今が正念場だった。この論文は楕円曲線暗号の攻撃方法に関する物で、4096bitまでの鍵長の長さの暗号を複数のコンピュータに超立体的に作業を分担することにより極めて短時間で解読する、というものである。まさに鮮度が命と云うべき研究で、ライバルも多い。論文の締め切りを別にしても、彼女には急ぐ必要があった。
  しかし、である。今日はどうも身が入らない。理由は分かりきっていた。朝の「アレ」である。忙しいからと無視したが、本来ああいう怪しげなものは大好きなのだ…。しばらくは邪念に耐えつつキーボードを叩いていた高子は、悪態を一つつくとネットにアクセスした。このままではラチがあかない。
  今朝ダウンロードしなかったため、【挑戦状】はサーバ上に残っていた。人騒がせな、誰だ?と思って調べたが、差出人の名前はnobodyとなっている。全くふざけている。胡散臭さを感じつつも、彼女はそのメールを開いた。こういうところが我ながら救いようがないと思うのだが、高子は自分がわくわくしているのに気づいていた。
  メールは案の定暗号で書かれていた。彼女は自分に15分だけ、といい聞かせてこの暗号にとりかかった。

ゑあみけちよね、よわふ。おなゐせま えせ。
なんみきむ んそろんえ いせえゐ さすらわ のをぬふへは ねちやみよ。
とかむへ あすつす えせ。ねわんふへ やよもやみよ。

ねゐわはろ ふとなる ゑさろなんやせ。
かむわ おみは ねちよえ やそえんえ およあん。
ろくお さめは てんよん。
おなゐせま







  暗号は解かれることを前提としたものらしく、5分もたたないうちに解けた。しかし、このあと高子は先ほど以上に研究に手がつかないことになる。メールの差出人は佐々木蔵之介。かつてのジェット団のリーダーとして高子と命がけ(?)の死闘を演じたライバルであり、そして近い将来に高子の夫となる男であった。

fin


※解答ページはありません。解きっぱなしです。あしからず… (-。-)y-゚゚゚




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