Go West!−3(さぁ,お家に帰ろう!)

おめでとう,K1君・トモミさん(ごめんね晒して)

 15:50 披露宴会場出発。予定より10分遅れなので急ぐ。
 フライト30分前に空港に到着したが駐車やら荷物運びやらで10分ロス。更に礼服のままだったので、更衣室を借りてライディングジャケットに着替えた。脱いだ礼服をしわくちゃ覚悟でスーツケースに放り込むと、弟は出発ゲートに駆け込んで行った。さて、これで奴は間に合うだろう。こちらは、これからが勝負だ。

 午後4時半過ぎ…。

 東京まで1331km。明日は月曜日だ、仕事場に遅くとも朝9時には着いていなくてなならない。5時までに家に帰れれば少しは寝られる。往路は遊び。今回のチャレンジの正念場はこれからだ

復路ペースノート

 16:36 溝辺鹿児島空港I.C.ゲート通過、ストップウォッチスタート。ペースノート通りに走れば、東京到着は4:15だ。日が暮れるまでが勝負だ。blogに出発だけ報告。帰路は余計な報告を入れる時間すらもったいない。
 加速車線からアクセル全開。体が浮きそうになる。ほぼ一気に6速まで引っ張り上げ、道が許す限りの速度で突っ走る。さぁ、家に帰るぞっ。

 鹿児島から熊本南部までは山間部だ。カーブではどうしても1.8SGまで落とさざるを得ない。でもここいらの車はすぐどいてくれるからそれでも比較的良いペースで走ることができた。62km先の山江SAで給油。休まずにすぐ出発した。熊本県の北半分に入るころから車量が増えてくる。久留米・福岡といった大都市に向かうにつれ、ファミリーカーが増え、みんな右を走りたがっていて往生する。左に目をやると夕日がだんだん低くなってきていた。地平線からおよそ仰角15度,あと1時間で日が暮れる。すり抜けもやむ無しか…。地方の、サンデードライバーの間を走るのは正直怖かったが、用心しいしいすり抜けていった。

 18:35、古賀SA(275km)に到着。トイレに寄って戻ると、となりに土浦ナンバーのZX-7Rが居たので声をかける。彼もこのまま高速で帰ると言う。似たような馬鹿はいるものだ。一瞬、一緒に帰ったら楽しいだろうな〜と考えるも、ゆっくり走る暇はないので別れを告げた。給油して18:47出発。タイムテーブルに対し3分間先行…。
 関門海峡を超える時、バックミラーの中で夕日が最後の余光を揺らめかせて地平線に沈んだ。 だがまだ完全に暗くなるまで30分はあるだろう。この間に距離を稼ぐことだ。
 しかし日が暮れて暗くなると想像以上にペースが落ちてしまう。新しいヘルメットのシールドにスモークを入れたのも失敗だった。しかも山陽道分岐までの中国道は今回一番のワインディングで、往路はとっても楽しかったのに、暗い中では怖いばっかりだ。ペースも最高で1.6SG、車もそれなりに居る。これはマズイことになってきたな。
 トンネルの中でペースノートをチラ見する。いまのところ20分先行。なんとかこの進行を維持しなければ…。ところがトンネルから出ると、バイクとヘルメットにぱらぱらと落ちてくるものが…。 雨!? 最悪の事態だ。これだと本当に仕事に間に合わないかも知れない。だんだん元気が無くなってきた。こんなアホなチャレンジ、しなきゃよかったなぁ…。まぁ今はそんなに降りは強くない。道が濡れてくるまで、せいぜいとばしておくか…。
 一番近くのパーキングエリアでとりあえず停めた。カッパを出そうとしたが、おかしいぞ、地面が濡れていないじゃないか。あれ?止んだかな? しかもバイクを見てもジャケットを見ても濡れている気配はない。ただハヤブサの鼻っつらといい、ヘルメットのシールドといい大量の羽虫がくっついている。ひょっとして雨と思ったのはこれだったのか…? あまりの気持ち悪さにウェットティッシュで掃除する時間を許す。潰れた虫は草の匂いがした(-_-;

 山口ジャンクションから山陽道へ入る。さっきのZX-7Rが,中国道は夜はSAの給油所が閉まってしまうと教えてくれたのだ。この辺から道もようやくまっすぐになってきた。トンネルになると明るいからスピードが上がる。出発してから休憩らしい休憩はとってなかったがまだまだ元気。条件がいいところでは2.0SGでも余裕であった.(伏線)
 20:30宮島SA(488km)で給油。ほとんど休憩は取らなかった。
 少し寒くなってきたからパーカーを出してジャケットの中に着込む。見上げると星は出てないけど、雨はもう心配ないみたいだ。しばらく休もうと思ったけど、割と元気なのと、気が落ち着かないのでさっさと出発することにした。ここまで、大体給油200km前後を1時間40分、ペースノートに5分先行。

 22:47龍野西SA(730km)で給油。
 この調子で…なんて考えて突っ走り続けるも、そろそろ疲労が出てきた。給油ポイントまでがやけに遠いのだ。さっきまであっという間に50kmくらい駆け抜けてたのに、なかなか距離表示が減って行かない。
 不思議なのは、おもったよりペースノートに先行できないこと。だって平均114km/hでペースノートを組んでいて、流せるときは1.6〜1.8SG、車につまった時だってだいたいメーター上100〜120km/hは出ているだろうに、なんでほぼタイムどおりなんだ? 時速1.4SG平均くらいはいってると思うんだけどなぁ…。
(これを書きながら計算してみたら、時速136km平均で75分走って15分休憩すると、時速114km平均になると判明。メーター誤差も考えると、こんなもんだったんだろう)

 神戸〜大阪圏は街路灯に照らされてたのですっごく走りやすくなった。ちょっと走り屋っぽい車と一瞬バトってあっという間に置き去りにする。これでスイッチが入った。脳内iPodで椎名林檎の「歌舞伎町の女王」をエンドレスで流しながら、ノリノリで黄色い道路を駆け抜けて行った。

 吹田ジャンクションを過ぎると、道路脇のキロポスト表示が東京からの距離になる。あと…515km。まだ0時前だ。いける、これなら行けるぞっ!
 養老SAを目指すうち、おかしなことに気がついた。道はまっすぐで、車もトラックは多いがみな左に寄っている。決して悪い条件ではないのにトップスピードが1.6SGが限界なのだ。眠くはない。眠くないのに、スピードが落ちてきている。これが疲労なのか…。回せば出るのは分かっていたけど、体がこれ以上ダメなものはしょうがない。出せるだけのペースで距離をつぶしていく。

 日が変わって0:45、岐阜県養老SA到着。空港インターから983km、残り382km。さすがに疲れた…。考えてみれば結婚式でだらだら3時過ぎまで食べていたとはいえ、晩メシも食べていない。食欲はぜんぜんなかったが、集中力低下はエネルギー切れのせいかも知れなかったので、おにぎり2つを無理やり押し込んだ。
 もうここまで来てしまえばあと4時間はかかるまい。約20分間の大休止を取る。メットをとっても耳鳴りが止まらない。あまりに肩がコチコチだったので、十分にストレッチした。

 食べたのが良かったのか、少し元気が出てきた。しかしそれもつかの間、またしてもペースが落ちてくる。気がつくと1.4SGまで落ちている。眠くは無いのだ。それなのに、それ以上は怖いのだ。これは不思議体験。

 さて名古屋あたりで、事件がおきた。(本当は書きたくないんだよな〜。ハヤブサ乗りとしてめちゃめちゃ恥ずかしいことなので) 遅いペースになってきた僕の前に、高速に上がってきたばかりのワンボックス(エルグランドか、アルファード)が割り込んで来たのだ。別にワンボックスと競ってもしょーがないしなーと後ろで見ていたのだが、そのうち前を走る車をかなりえげつなく煽り始めたのだ。少し面白くなってきたので目が覚めた。ハイビームやらブ〜やらで道を開けさせて突っ走るワンボックスを露払いにくっついていくと、運転手が追走者に気づいたのか、急加速し始めた。1.6SG、1.8SG…。あら、リミッターカットしてるのね。 ワンボックスは更に加速していって2.0SG、2.2SG…。どういういじり方をしてるんだ? でも奴は更に加速!
 そして…。
 白状します、2.2SGより僕は出せず、結果としてハヤブサでワンボックスにぶっちぎられました(-_-;;;; (300mも置いていかれて、奴は高速を降りてっちまいました。) すみません、僕はブサ乗りの面汚しです…

 小牧ジャンクションを過ぎ、いよいよあとは東名1本。でも体力的にかなりきつくなってきて、もう100km連続で走れない。戸川準やBoowy、TopGunのサントラなど、元気が出そうな歌を大声で歌い集中力を維持するも、Topスピードは更に低下、へたしたら120km/hで走っていることさえあった。なんでもないトラックが怖く見えてスピードが上がらない。道に集中できない。キャッツアイが踊って見える、やばいなぁ…。
 富士川SAで最後の給油。ここまで1203km。あと128km。時刻は3時を回っていた。大丈夫、なんとか走り続けて5時までに帰るんだ…!

 もう無理はしない。体が120km/hで走れといってるんだ、要求するペースで走ろう。このスピードならバイザーを上げて走れる。そしたら風が冷たくて目が覚めてきた。裾野から御殿場を過ぎると、箱根帰りでいつも使っているルート。道を知ってるってのは安心感がある。それに、4時を回ったころからうっすらと空が白んできた。道が見えるぞっ! これはイケる!
 急に元気になってきた。見えるだけでペースがぜんぜん違う。足柄からの上り坂→下りを1.6SGぐらいでびゅんびゅん降りていく。大井松田を過ぎ3車線になると、完全にホームグラウンドだ。焦るな、と自制しながら走り続けた。
 途中一度覆面に追われた様な気がして海老バーに逃げ込む。でも気のせいだったようだ。残り31km。ラストスパート!!

 夜が明ける寸前の、紫色の高速道路を疾走。もう疲れなんて関係ない。首都に近づくにつれ車量が増えてきたが、もう待てない。気にせずにびゅんびゅん抜く。カウントダウンのように、キロポスト表示が減っていく。あと5km、4、3、2… 最後の丘を越えると、目の前いっぱいに、東京料金所の広いブースが広がった。

 やった、やったぞぉ…。時刻は午前4時30分。
 ストップウォッチのタイムは11時間53分。なんとか目標タイムの12時間も切ることができた。料金21,150円(係員さんは鹿児島からでもぜんぜん珍しがらなかった。さすが東京ICだ。)を払って、とりあえず携帯からblogに帰着報告だけ送信した。

 さぁまだ気を緩めるのは早い。ここから家に帰らなくては。
 僕は軽く伸びをすると、グローブをはめ、再びハヤブサにギアを入れた。

May.22nd.2005