羽づくろい3:ブレーキパッド交換


  こりゃあかん…。

 先日の箱根ツーリングの際、師匠に指摘されたブレーキパッド。見事に減りきっていて,パッド交換の指標になるミゾがほとんど無くなっている状態だった.厚さ1mmもないくらいだったが,かろうじてパッドは残っており,ローターも無傷.しかし交換に執行猶予なし,ということで,その日は早々に切り上げて師匠と別れると,僕は用賀インターからバイクショップ(NAPs 世田谷店)に直行した.
 ブレーキパッドなんて純正でよかろ〜,と思っていたら甘かった.ショップには純正品は置いておらず,売り場には無数のパッドが鈴なりになっていたのである.ハヤブサ用,ハヤブサ用…と探していくと,結局取り扱い7社,どのメーカーもフロント用のパッドはサポートしており,またリア用は3社が在庫がある様だった.
 まぁ,はっきり言ってどれを選んでいいやらわからない.
 途方に暮れていると,他の客が店員にタイムリーな質問をした.「そこそこしっかり止まって,あんまり高くないパッドないですかねぇ?」 おぉ,それそれ!(耳ダンボ).店員はそれなら,とデイトナ社の「赤パッド」を勧めていた.客が立ち去ったあと,デイトナの売り場に忍び寄る. …なるほど,赤パッドだ.赤く塗装されている.しかし,どうにも格好悪い.(ぺかぺかの安っちいペンキなのだ)
いくらコストパフォーマンスがよかったとしても,これはだめだ.
 仕方がなく,30分前に別れたばかりの師匠に電話した.

 師曰く、「うむ,金があるならジクウ,無いならフェロードにしておけ。」

 というわけで(迷わず)フェロードのパッドを2セット購入.リアはフェロードが無かったから,デイトナの赤くない方に決定.ふぅ,やれやれ.買い物でこんなにつまづくとは思わなかったわい….

 同日は箱根から戻ってから家族サービスの予定だったため,交換は翌週末の宿直番の時に仕事場で行った(どーせ大した仕事はないのだ)

 今回もまた「イトシン」のメンテ書を片手に初挑戦.(注:この本には「ブレーキまわりは自信がつくまでベテランと一緒にやるかショップに任せた方がいい」とはっきり書かれている(^^;;) まず右フロントのTOKIKOと書かれているキャリパーを外す…つもりが,いきなりキャリパーをバラす方のボルトを緩めてしまい慌てた(まったく,言わんこっちゃない! 幸いオイル漏れなどはなかった).2本の固定ボルトを抜いたあと,ローターからキャリパーを外そうとするが,ホイールに干渉するのと,ブレーキホースの長さに限りがあるのとでうまくいかない.はて,と試行錯誤しているうちに閃く.パッドの隙間を広げればいいのでは? キャリパーをローターに押しつけたり,引っ張ったりしてみると,まんまとパッドの隙間が開いていく.ようやくローターからキャリパーをフリーにすることができた.(一度でもメンテしたことがある人にとっては,考えもしないようなあたりまえの事なんだろうなぁ…)


 裏側のカバーをとったあと,リリースピンを取ってパッドピンが抜いたら古いパッドが取れた.
 まず外側と,見える限りの内部を中性洗剤(今回はチャーミーグリーンを使用)および使い古しのハブラシ(メーカー不明)を使用して清掃.相当ガンコな汚れを想像していたが,案外あっさりキレイになった.さて,次は問題のピストンの掃除だ.ピストンは油圧で連動していて,1つを押しこむと,ヨソのピストンが出てくる.ピストンはできるだけ飛びださせておくほうが,奥まで綺麗にできるが,ここに落とし穴がある.ピストンはあまり飛びださせてしまうと,落っこちてしまうのだ(さらにブレーキオイルがドバーと出てくる)
 しばし作戦を練ってから行動.まずピストンを6個とも(ハヤブサのブレーキはフロントの片側だけで6ピストンもあるので,掃除が大変!)手で押しこむ.ちょうどうまい具合にソケットレンチがピストン間にはまる大きさだったので,φ22mmくらいの幅広のソケットを4つのピストンに咬ませておいた.出しすぎを警戒しつつ,おっかなびっくり,フロントブレーキを握ると,目論見どおり,残り2つのピストンだけがゆっくりと飛びだして来た.左右差があったので,あまり出てない方はまず押し込んでしまい,ピストンが10mmくらい出るようにして,お掃除.やはりこれも中性洗剤ですぐ綺麗になる.十分に水で洗い流したあと,シリコングリスをピストンにたっぷり塗りこんでおいた.6つのピストンを順繰りに清掃.ここまでで30分くらい,かな?
 ブレーキを握るとピストンが6つ揃って出てくる…とまでは行かなかったが,ピストンの動きはだいぶスムーズになった.まぁこんなもんだろう.もう一度ピストンを押し込んでおいて,新パッドを取り付ける.パッドピンはすこしハゲチョロゲていたが,曲がりやすごい摩耗なんかはなかったからそのまま使用.パッドピンとパッド裏面(理由は不明だがやっとけ!と言われているらしい)にもシリコングリスを付けて,組み直した.取り付けは全くトラブルなし.
 ブレーキを何度もゆっくり握ってピストンを出す.初めはぜんぜん手応えがなかったが,パッドが両側ローターに密着すると,しっかりした手応えになった.さらにブレーキを最後まで,なんども握った.
 さ,これで作業は完了したはずだ.テストしてみようかね.

 最初はバイクを手で押してから,ブレーキ.造作なく停まる.エンジンを掛けて,今度は時速20kmくらいで挑戦.万が一フルロックしてしまっても,あるいは逆に全くブレーキが利かなくても大丈夫な心構えでゆっくりとブレーキを入力.少し「Sh〜」という様な音が聞こえるが,しっかりと効いている.擦れ音はブレーキを離すと消えるから,問題なさそうだ(このパッドの特性なのかな?).この後時速60kmくらいまで徐々に車速を上げながら試したが,特に問題なし.よ〜し,うむうむ,よ〜し!


 気を良くしたので,リアブレーキのパッドも一気に交換した.リアもパッド残量はほとんど無し.ダメ.も〜全然ダメ.つくづく,日頃の点検がなっちょらんと思い知らされた.  
左:銀色のレコードみたいなの(ローター)に触れている,薄い白いのがパッド.0.5mmも残ってない.
右:リアは対向2ピストンしかありません.クリーニング後(ピカピカです)テストしてこちらも結果良好.



 この日は日差しが強く,昼下がりから1時間半ほどの作業だったが既に頬っぺたや鼻面が火照っていた.ちくしょ〜仕事じゃなきゃビール飲めるのによぅ,とぼやきながら道具を片づけて,ハヤブサを駐車場に戻す.立ち去りかけて,おっと鍵をしておかなきゃね〜とディスクロックを掛けようとしたときに気が付いた.

左のフロントがまだじゃないか… _| ̄|○


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今回使用したフェロードのパッド.パッドの厚さは5mmくらい.


フロントから外した4枚のパッドのうちの2枚.かなり減りに偏りがある.左のものはまだかろうじて3本の溝が残っているが,右のは完全に溝の気配すら消失しており,さらに→に示すように,通常では見えっこない凹ミゾが露出している.


リア.左が新品.右がついてたものだが,ベースメタルの丸い打ち抜きが透けてきている.恐ろしい….


おまけ:住電ブレーキ社のサイトは,ちょっと面白いです.ブレーキの読み物です.
    http://www.sei-brake.co.jp/"

1st.Jun.2004