道連れ探し

 大勢で走るのって,どんなだろう?
 ソロや数人でのツーリングを重ねているうちに,そんな興味が湧いてきた.高速道路で編隊(千鳥)を組み,あるいは大観山ドライブインなどで集うグループ・ツーリスト達は,ちょっと楽しそうに見えた.一緒に走る人がいないわけではない.ただ,いろいろなバイクの楽しみ方の一つとして,マス・ツーリングは面白そうだったし,グループに参加すればいろいろな事(例えばメンテとか,バイク生活のTips(コツ)とか)も学べるのでは,という目論見もあった.ともあれ,1度どこかに入ってみよう,そう思い夏の終わり頃から機会を伺っていた.

 ツーリング・グループにもいろいろある.オートバイ雑誌やらインターネットでいろいろ見て回ったが,雨の日も風の日もひるまず走るイケイケ軍団から,同じバイクばっかりの集団(オーナーズクラブ),走り半分・飲むのも半分というヘタレグループまで様々である.その中で目を引くグループがあった.「青空二輪友の会」は名前はムムムだが(失礼),月1〜2回と活動が多く,またツーリングのみでなくサーキットで草レースをやるなど,上級ライダーも沢山いるようである.またインターネット上でツーリング企画から出欠確認,活動報告まで展開していて,インターネット依存症(?)のおいらには取っつきやすそうだった.しばらく2週間ほどインターネットサイトや掲示板をROM(見ているだけ)していて,一度ツーリングに参加してみてもいいかも…と思えたので,思い切ってメールを出してみた.そして約10日間後仮メンバーとして登録され,10月26日麦草峠ツーリングに初参加することになった.

 ガスを入れて,バッテリーを充電して,タイヤの空気圧見て…と,いつもの準備の他に,今回は少し前後のサスを柔らかめにしてみた.バイクについてはこれでOK.一番迷ったのは服装だ.ロングツーリングだし峠を含むコースだから,一応プロテクション入りの服の方がいいのだろう.ところが僕の鎧は,ジャケットは3シーズン(春夏秋用),パンツに至っては完璧夏用のメッシュだ.秋とはいえ,目的地は標高2000mの山の上だし,集合は上里に朝7時半だし(わははは,は…),これじゃぁ絶対に凍えるのは目に見えていた.かといって新しい上下を買えるわけでもなし(実は見に行ったんだけど,手がとどきませんでした),どうしよう?
 出発直前まで迷ったけど,結局手持ちの鎧の上にオーバーパンツをはいて,上はウィンドブレーカを来ていくことにした.結果はオーライで,全然寒くなかったし,日中はオバパンを脱ぎ去って,快適でした (^^)(脱いだ服入れるためにリアにバッグが必要になっちゃったけど…)

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 ツーリング当日.心配されてた台風も逸れて快晴.バッテリーを積み込み,6時ちょい前に出発(早いとは思ってたけど,時間わからなかったし,遅刻したくなかったし…)して,調布あたりから甲州街道東進→環八北上→新目白通り西進,と山の手を大きく逆コの字を描いて関越へ.でも練馬インターでチケットを取った時,まだ家出てから30分も経ってないこと判明.明らかに早すぎる(笑).関越もがらがらだったし,気持ちよく飛ばして高坂S.A.に立ち寄り休憩,ゆっくり朝食.ここにも他のツーリンググループが集まり始めていた.
 さて,既存のグループに初参加するということで当然不安はあったんだけど,僕にはもう1つ心配事があった.それは「何を目印に青空の人達と認識すればいいんだろう?」ということ.もちろん事前に掲示板で目印について聞いてみたんだけど,「いちばん賑やかなのが青空です」という極めて漠然とした御回答.その他にもバイクの車種を教えてくれたが,バイク1年生の私にはちんぷんかんぷん(それでも最近少しは分かるようになってきたんだけどね).まぁ,行けばなんとかなるかな〜くらいの気持ちで来てしまったのだが,こうなるとやっぱり不安だ.

 7時になったので,高坂S.A.を出発.意識してゆっくり走ったが7時15分には着いてしまった.バイク駐車場まで行くも既に一杯で,その端にこそっと駐車.ヘルメットを取って見回すと,どうやら2つのグループがいる模様.ううう,どっちが青空の人たちだ? ともあれトイレに行って,コーヒーを買って,しばし観察.第1集団は平均年齢30歳前後で全て男性,一部に背中にコブのついたツナギの人もいる.第2集団は平均年齢25歳前後.男女比1:1くらいの構成だ.どっちかっていうと第1集団がクサイが….眺めていると,第1集団にかなりレーシーな赤いバイクが加わった.見てみると,かなりイジってあって,ふと見るとフロントに「Aozora Racing Club」の文字が!
 声をかける前に改めて集団を観察.年齢は22歳前後〜40歳くらいまで,スタイルはわりとまちまち.ただし3名ほどヒザつきのツナギの人がいる.パッと見で悪人はいなさそう.会話は明るい.僕の他に初めての人が数名いるのだが,それらしき人物が2名.バイクを再確認.青空のステッカーを貼ったバイクを他にもう1台確認.間違いない….  僕は最後に来た人物(「96さん」)に声をかけた.「あの,はじめまして…」

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 給油を済ませたあと,7:55頃から全員でミーティング.思ったよりきっちり注意事項やルートを確かめる.追い越しや走行時などに決められたルールがあるのが面白い.なお僕は初心者かつ初回ということで第2グループ(ゆっくり組)で走ることになった.
 8:10いよいよ出発.高速道路ではフリー走行制のため,松井田妙義インターまでは各々自由に走る.藤岡インターから先僕の前は男性1名・女性1名が見えていたけど,やっぱりアヴェレージは早い.ついて行くのに精一杯なんてことはなかったけど,あまり遠慮する必要もなく走る事ができた.
 服装の選択も間違ってなかった.ちょっと上に来てたウィンドブレーカが短め(鎧の上から着てるからね)だったけど,Gパンで来てた人たちは寒い寒い言ってたから,とりあえず寒くないのはありがたい.今日は晴れてるからきっと後で暑くなるだろうけど,そしたら脱げばいいこと,さ.

 さて松井田妙義までもうすぐのところで,先行していた男性がパタパタと手を振った.左に寄れ,又は次で出るよ,ということらしい.素直に従いその男性の後ろに付く.料金所はバイクで行列を作るからさすがに時間が掛かっていた.この間に準備をしておくか….手袋を外し,タンクバッグ(今回初めて導入)の高速券を確認,したまでは良かったが,あれれ? ない,ない? ないぞ!? オサイフがない〜!!
 バイクを一旦脇に寄せて駐車.サイフは確かポッケに入れておいたはず.さっき上里で給油したばかりなんだから間違いない.尻ポッケじゃ落とすからと,わざわざジャケットのポッケに入れたのに….オバパン・ジャケット・タンクバッグと探すもサイフは現れることはなかった.取りあえず同行の男性(たぶん「沼じい」さん)にサイフを落とした旨を告げる.料金所のおじさんが,高速警察隊の事務所へ行けというから従った.きっと青い顔をしていただろう….  調書を取られ,紛失の届け出を済ませると,僕は隼を料金所手前に残したまま青空のメンバーの方へ走っていった.初参加だってのに,なんてマヌケなんだ,僕は….えらい迷惑をかけちまった.
 でも事情を告げると皆親身になってくれた.アドヴァイスに従いカード会社に連絡しカードの利用を止める(幸い使用された形跡はなかった).また,これからツーリングだってのに文無しになってしまった僕に,同じく初参加の「タマゾウ」さんがお金を貸してくれた.初対面だし金など貸したくないのが普通だろうに,「困った時は,お互い様」と快く貸してくれた.すごく申し訳なかったし,ありがたかった.

 高速料金を払い,スタンバイしている皆に合流.ここからの妙義山越えは下道,2グループは千鳥走行だ.初のグループ走行ということもあったが,今の事件で自分がブルーになってるのが分かっていたから,ちょっと気合いを入れ直した.
 妙義山は第1グループのバイクの故障があったものの,すんなり通過…というか,あまり覚えがない (まだ千鳥走行が不慣れで,隊列を組んだまま走るってことに集中してたからだろう).ペース的には全く無理がなく,とりあえず置いて行かれることはなかった.どんどこ山を登っていって見晴らしのいいドライブインで休憩.かなり冷え込んでたのに,みんなソフトクリーム食べてた.信じられない.(僕はオヤキにマツタケ茶とかなりジジー)
 妙義山を下りるとしばらく一般道.車も走ってるし,千鳥でのこのこ大名行列.下り坂のせいか,前傾姿勢がつらくなってくる.先導の人が左手を左モモに置いて,腰を休めながら片手運転していたので真似をしてみたが,性に合わなかったのでがんばって背筋鍛えてみた.
 小一時間ほど下道を走ると,今度は麦草峠越え.第1グループはまたエキゾーストノートを響かせて視界から消えて行った(少し大げさ).第2グループはまた千鳥あるいは道幅によって一列縦隊だったのだが,そろそろ千鳥にも慣れてきたし,麦草峠越えは周りの紅葉を眺めながら,のんびりと走ることができた(そういやモミジ狩りツーリングだったんだよね,これ).紅葉はちょうどベストシーズンで,初夏のころの山も素敵だけれど,なにしろ気持ちよかった.それに,やっぱり誰かと走るってのは楽しい.すごくいい気分.この場合,道連れはみんな初対面の人ばかりだったけど,それでも,とっても嬉しい.このころにはサイフを無くしたウツウツはとっくにどこかに消し飛んでいた.
 ビーナスラインも「いかにも高原」って感じでかなり良い雰囲気.ここを走っているうち,なんかここいら見覚えのあるな〜と思っていたら,なんと昔バイトしてたスキー場(「ピラタス蓼科」「白樺湖2 in 1」「ロイヤルヒル」の3つ)を通り過ぎた.秋と,雪の積もったシーズンとだから大分雰囲気は違ったが,確かに見覚えがある.特にロイヤルヒルはしばらく合宿みたいな生活してたから,懐かしいような,ほろ苦いような,腹の下が重くなるような(?),ちょっとせつなく思い出してみたり….

 車山を上るときは右も左も見渡す限りのススキの丘でものすごい景色だった.道もすいてて最高に気持ちがいい.山頂あたりのドライブインにて大休止.リッタークラスのバイクが20台以上も並んで羽を休めている様は壮観だ.僕を含む新参者は,メンバー紹介ページ用のバイク写真を撮って貰ったりしたあと,ようやくちょっと遅めの昼飯になった(実はお腹空いてて仕方なかったんだよね)



 ここからは帰途.各々の巣に向かって帰るのだが,中央高速組と関越組に分かれての道行きとなった.中央高速組は自分を含めて6〜7人.秋のこと,途中で真っ暗になってしまったけど,特にトラブルなし(関越組は1人怪我した人がいたと後で聞いた).談合坂で小休止の後は単独行となり,19時過ぎには家にたどり着いた.

 初めてのマス・ツーリングで,これまでの単独又は少人数でのツーリングだいぶ勝手が違ったが,悪くなかった.帰ってきてからネットで話をしたり,写真を貰ったりしたのも嬉しかったし,なにより全く怖い思いをしなかった(これまでのツーリングでは,大なり小なりヒヤリとすることが1回はあったから…).やっぱり仕事してるわけだし,家族もいるから,バイク生活は(可能な限り)安全志向でなければいけない.このテのツーリングは性に合ってるのかも知れない.まだ初参加だし,無対面(?)の人も多いが,ちょっとじっくりつき合ってみるか….  

Nov.16th.2003