人の一生は重荷を負いて遠き道を行くがごとし、急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なし。心に望み起こらば困窮したる時を思いだすべし。堪忍は無事長久の基、怒りを敵とおもえ。勝つことばかり知りて、負くることを知らざば、害その身にいたる。おのれを責めて人を責むるな。及ばざるは過ぎたるより勝れり。

慶長八年正月十五日

人はただ身の程をしれ草の葉の つゆも重きはおつるものかな

徳川家康