一年間に二度の百日咳菌凝集素価の明らかな上昇を認めた成人百日咳反復感染の一例
(臨牀と研究 87:543-4、2010)
はじめに
百日咳は自然感染しても終生免疫が得られない疾患である。ワクチンの効果も10年程度しか持続しない。2007年に我が国初の成人百日咳の集団感染が発生したことは記憶に新しいが、成人百日咳の臨床像は現在でも未知な部分が多い。
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著者らは前回の報告後に成人百日咳症例の数の多さの理由について議論した。その結果、成人百日咳は複数回感染・発症する疾患であるという仮説に至った。今回、一年間に二度の百日咳菌凝集素価の明らかな上昇を認めた成人百日咳反復感染の一例を経験したので報告する。
症例
30歳台、女性。
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2007年11月に当院を再診。山口株320倍、東浜株2560倍であり、成人百日咳と診断した。
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2008年5月、咳嗽が持続するため百日咳菌凝集素を測定した。山口株40倍、東浜株1280倍であり、再び成人百日咳と診断した。
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考察
百日咳は子供にみられる疾患で成人には少ないと思われてきた。しかし、流行地や家庭内の感染調査の結果、細菌学的に成人百日咳と診断される症例が報告されるようになった。海外では長引く咳嗽の原因の12%〜32%が成人百日咳であるという報告がある。
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実際の診療で百日咳菌凝集素が1280倍以上だけを成人百日咳と診断するとfalse negative の症例が増加すると考えられる。遷延する咳嗽がある症例で、百日咳の臨床像として頻度の高い発作性の咳込みや吸気性笛声などの臨床症状のある症例では成人百日咳の可能性を念頭に置いて診療をする必要があると考えられる。また、本症例のように成人百日咳は反復感染する疾患であるということも考慮して診療を行うべきであると考えられる。